ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

蟲麻呂編(08)わしも成りたや 孤高の富士に

2010年11月29日 | 蟲麻呂編
■平成22年11月29日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★高名な 富士を生き生き 詠うのは 赤人なりや 蟲麻呂なりや

なまよみの 甲斐かひの国 うち寄する 駿河するがの国と こちごちの 国のみなか
出で立てる 不尽ふじ高嶺たかね
 
《甲斐のお国と 駿河国するがくに 二つの国の まん中に デンと控える 富士の山》 
天雲あまぐもも い行きはばかり 飛ぶ鳥も 飛びものぼらず 
燃ゆる火を 雪もちち 降る雪を 火もちちつつ 
言ひもえず づけも知らず くすしくも います神かも
 
てん行く雲も 行きよどみ 空飛ぶ鳥も のぼられん
 噴火の炎  雪が消す 降り来る雪も 火が溶かす
 言うことなしの 神の山》 
石花の海と 名づけてあるも その山の つつめる海そ 
不尽河ふじがはと 人の渡るも その山の 水のたぎちそ
 
石花の海うんも せき止め湖 富士川流れも き水や》
もとの 大和やまとの国の しづめとも います神かも たからとも 
れる山かも 駿河なる 不尽の高嶺は 見れどかぬかも

《鎮めの山や この国の 宝物たからもんやで この国の ほんまえ山 富士の山》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻三・三一九〕 

不尽ふじに 降り置く雪は 六月みなつきの 十五日もちゆれば その降りけり
富士山ふじさんの 積もった雪は 真夏日に 消えたらその晩 もう降るんやで》 
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻三・三二〇〕 
不尽の嶺を 高みかしこみ 天雲あまぐもも い行きはばかり たなびくものを
《雲行かず 棚引たなびいてるは 富士山を 高こうて偉い おもてるよって》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻三・三二一〕 





【火もち消ちつつ】へ


蟲麻呂編(07)これこれ 一人で来たかったのじゃ

2010年11月25日 | 蟲麻呂編
■平成22年11月25日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★誰一人 居らん筑波嶺 登り来て 孤愁蟲麻呂 心を癒す
 
草枕くさまくら 旅のうれへを          《赴任の旅の 気ふさぎを 
なぐさもる 事もありやと         ちょっとの間でも 晴らそうと  
筑波嶺つくばねに 登りて見れば       筑波の山に やってきた  
尾花散る 師付しづく田居たゐ      ススキ田んぼで 揺れとおる 
かりがねも 寒く来鳴きなきぬ       雁もさむそに 鳴いとおる 
新治にひばりの 鳥羽とば淡海あふみ        鳥羽の湖 風吹いて  
秋風に 白浪立ちぬ           寒々白波 立っとおる 
筑波嶺の よけくを見れば       それでも お山は ええ景色 
ながきけに 思ひ積み       いっぱいまった
うれへはみぬ              気鬱きうつは消えた》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五七〕 

筑波嶺つくばねの 裾廻すそみ田居たゐに 秋田あきたる 妹許いもがりらむ 黄葉もみぢ折らな
《筑波嶺の 山の麓で 田刈りする あの児にやりたい 黄葉もみじを採って》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五八〕 





【師付(しづく)の田居(たゐ)に】へ


蟲麻呂編(06)行きとうないが 帰しとないが

2010年11月22日 | 蟲麻呂編
■平成22年11月22日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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都人みやこびと 送る心の 切なさは 残る浜辺に 打ち寄る波か

牡牛ことひうしの 三宅みやけかたに さし向ふ 鹿島のさきに 
丹塗にぬの 小船をぶねけ 玉纒たままきの 小揖をかぢ繁貫しじぬき 
しほの ちのとどみに 御船子おふなごを あともひ立てて 
呼び立てて  御船出でなば
 
三宅潟みやけの向い 鹿島の崎に お役目船に かじ付け回し
 夕潮満ちて  頃あい来たと 船頭集めて 船出をしたら》
浜もに 後れて 反側こひまろび 恋ひかもらむ 
足ずりし のみや泣かむ 海上うなかみの その津を指して 君がぎ行かば

《狭い浜辺に  見送る人は 心乱して 地団駄踏んで
 あんた恋しと 泣き叫ぶやろ あんた乗る船 ちいそうなると》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七八〇〕 

うみの ぎなむ時も 渡らなむ かく立つ波に 船出ふなですべしや
《波こんな 高いに船出 するんかい 静かな時に したらえのに》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七八一〕 




【君が漕ぎ行かば】へ


蟲麻呂編(05)行きたかったで このわしも

2010年11月18日 | 蟲麻呂編
■平成22年11月18日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★筑波嶺に 登る客人 思い遣り 詠う蟲麻呂 我れもの思い

衣手ころもで 常陸ひたちの国に ふたならぶ 筑波の山を 見まくり 君ませりと 
あつけくに 汗かきなけ の根取り うそむき登り うへを 君に見すれば
 
《常陸の国の 二つのみねの 筑波のお山 見たいと言うた
 お前さまとの 連れ立ち登り 汗もしとどに 息はずませて
 登りたった 峯から見たら》
の神も 許したまひ の神も ちはひ給ひて 時となく 雲居くもゐ雨降る 
筑波つくはを さやかに照らし いふかりし 国のまらを 委曲つばらかに 示し賜へば

男神おがみ女神の 加護得たからか いつも雲立ち 雨降る嶺を
 ものの見事に 澄み渡らせて 国の隅々すみずみ ひらけて見せる》
うれしみと ひもきて 家のごと 解けてそ遊ぶ 
うちなびく 春見ましゆは 夏草の 茂くはあれど 今日けふの楽しさ

《喜びくつろぎ 打ち解けうて 春もえけど 真夏もえで
 なんと楽しい この日の登山やまは》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五三〕 

今日けふの日に いかにかかむ 筑波つくはに 昔の人の けむその日も
《これまでに 仰山ぎょうさんの人 来た筑波 一番え日は 今日ちゃうやろか》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五四〕 


筑波嶺つくはねに わが行かりせば 霍公鳥ほととぎす 山彦とよめ 鳴かましやそれ
霍公鳥ほととぎす わし筑波嶺に 行ってたら 鳴いてくれたか 山ひびくほど》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻八・一四九七〕 






【今日の楽しさ】へ


蟲麻呂編(04)来たでとうとう 筑波のかがい

2010年11月15日 | 蟲麻呂編
■平成22年11月15日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★筑波嶺に おとこおんなが 集うてる 見てる蟲麻呂 歌作ってる

わしの住む 筑波の山の 裳羽服津もはきつの その津のうへに 
あともひて 未通女をとめ壮士をとこの 行きつどひ かがふ嬥歌かがひ
 
《筑波の山の の泉
 連れもちつどう 女や男 歌の掛け合い 袖引く催事まつり
人妻ひとづまに われも交らむ わが妻に ひとこと
この山を うしはく神の 昔より いさめぬ行事わざぞ 
今日けふのみは めぐしもな見そ 言もとがむな

《よその嫁はん  わし口説きたい うちの嫁はん 口説いてえで
 神さん認めた この日の催事まつり 何も言わんと 目ぇつぶってよ》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五九〕 
の神に 雲立ちのぼり 時雨しぐれ降り とほるとも われ帰らめや
《雲湧いて  時雨が降って 濡れたかて つれ出来るまで ワシいねへんぞ》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七六〇〕 





【かがふ嬥歌かがひに】へ


蟲麻呂編(03)胸大きいて 腰細い

2010年11月11日 | 蟲麻呂編
■平成22年11月11日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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自堕落じだらくな 女の噂 聞きつけて 男蟲麻呂 心が騒ぐ

しなが鳥 安房あはぎたる 梓弓あずさゆみ 周淮すゑ珠名たまなは 
胸別むなわけの ひろき吾妹わぎも 腰細こしぼその すがる娘子をとめ

《安房の隣の 周淮すえくに そこになさる 珠名ちゃん 胸大きいて 腰細い》 
その姿かほ端正きらきらしきに 花のごと みて立てれば 
玉桙たまほこの 道行く人は おのが行く 道は行かずて ばなくに かどに至りぬ

端正きれえな顔で 笑みこぼしゃ 通る人らは 用忘れ 呼びもせんのに 門くぐる》 
さしならぶ 隣の君は あらかじめ 己妻おのづまれて はなくにかぎさへまつ
隣のおっさん 嫁帰し 言われもせんのに 鍵渡す》 
人皆の かくまどへれば かほきに よりてそいもは たはれてありける
《男がみんな まどうから 美貌きれえ自慢の 珠名ちゃん 増長のぼせ上がって 調子乗る》
                      ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七三八〕 

金門かなとにし 人のてば 夜中にも 身はたな知らず でてそ逢ひける
門口かどぐちへ 男立ったら 引き入れる 気にも懸けんと 夜昼なしに》 
                      ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七三九〕 




【周淮の珠名は】へ


蟲麻呂編(02)とうとう来たで 噂の真間に

2010年11月08日 | 蟲麻呂編
■平成22年11月8日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★訪ね来た 手児奈悲しや いにしえの 伝説はなし言うても 泣けるで今も

とりが鳴く あづまの国に いにしへに ありける事と
今までに 絶えず言ひ
  
あずまの国に 伝わる話 昔を今に 伝える話》
勝鹿の 真間の手児奈てこなが 
麻衣あさぎぬに 青衿あをくびけ ひたを にはて 
髪だにも きはけづらず くつをだに 穿かず行けども 
にしきあやの 中につつめる 斎児いはひごも いもかめや
 
《真間の手児奈てこなと 言う名のむすめ
 粗末な服着て 髪けずらんと くつ穿かんと 暮らしてるに
 にしきの服着て 育った児にも 負けん位に 器量きりょうえ児》
望月もちづきの れるおもわに 花のごと みて立てれば 
夏虫の 火にるが如 水門みなとりに 船漕ぐ如く 行きかぐれ 人のいふ時
 
綺麗きれえ面差おもざし 笑顔で立つと
 火に入る虫か 集まる船か 男が押しかけ  嫁にと騒ぐ》
いくばくも けらじものを 何すとか 身をたな知りて 
波のの さわみなとの 奥津城おくつきに 妹がこやせる
 
《気楽に生きても 人生なのに 私ごときに このよな騒ぎ
 そんな値打ちは うちには無いと 水底みなそこ深く 沈みてすよ》
とほき代に ありける事を 昨日きのふしも 見けむがごとも 思ほゆるかも
《昔のことと 伝えは言うが 昨日きのうのことに 思われる》
                      ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一八〇七〕 

葛飾かつしかの 真間ままを見れば 立ちならし 水ましけむ 手児奈てこなし思ほゆ
真間ままの井を 見てると見える あの手児奈てこな ここで水汲む 可愛かいらし姿》
                      ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一八〇八〕 




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蟲麻呂編(01)常陸風土記の 伝承何処

2010年11月04日 | 蟲麻呂編
■平成22年11月4日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★蟲麻呂は 主人宇合 命により 説話集めに 忙しい

埼玉さきたまの 小埼をさきの沼に 鴨そはねきる
おのが尾に 降り置ける霜を はらふとにあらし

小埼おさき沼 鴨がつばさを 震わしとおる
 尻尾しっぽから 積もった霜を 落としとるんや
〔鴨も寒いんや〕》 
               ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四四〕

三栗みつくりの 那賀にむかへる 曝井さらしゐの 絶えずかよはむ そこに妻もが 
曝井さらしいの 水絶えへんと 湧いとおる ええ人ったら 絶えずかよたる》
  ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四五〕 

遠妻とほづまし たかにありせば 知らずとも 手綱たづなの浜の 尋ね来なまし
留守居るすい妻 もしもったら ここ多賀に 道知らんでも 尋ねて来たる
 〔ここはタヅなの浜や〕》 
                    ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四六〕 





【手綱の浜の】へ


旅人編(27)遂に来たかや 最後の時が

2010年11月01日 | 旅人編
■平成22年11月1日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★大納言 旅人今際今わに ぎるのは 故郷くにの飛鳥の 山川萩花はな

須臾しましくも 行きて見てしか 神名火かむなびの 淵はさびて 瀬にかなるらむ
一寸ちょっとでも 行ってみたいな 飛鳥あすかふち あそなって瀬に なったんちゃうか》
指進さしずみの 栗栖くるすの小野の はぎが花 らむ時にし 行きてけむ
《飛鳥野の 栗栖くるすの里へ 行きたいな 萩散る頃に 先祖参りに》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九六九、九七〇〕 

見れどかず いましし君が 黄葉もみちばの うつりいれば 悲しくもあるか
《いつまでも あがめよおもてた あんたはん 死んでしもうて 悲しいこっちゃ》
                         ―犬養人上いぬかひのひとがみ―〔巻三・四五九〕

しきやし さかえし君の いましせば 昨日きのふ今日けふも さましを
《慕うてた あなた存命ったら お召声めしごえ 昨日も今日も 掛ったやろに》
かくのみに ありけるものを はぎの花 咲きてありやと 問ひし君はも
《萩の花  咲いてるやろかと 聞いてたに これが定めと 言うもんやろか》
君に恋ひ いたもすべ無み あしたづの のみし泣くゆ 朝夕あさよひにして
《あなたはん  恋し思ても 甲斐ないな 泣き泣きおるで 朝晩なしに》
とほながく つかへむものと 思へりし 君いまさねば こころもなし
《いつまでも  お仕えしょうと 思てたに あなた居らんで しょぼくれとおる》
若子みどりごの ひたもとほり 朝夕あさよひに のみそわが泣く 君無しにして
《赤ん  這いずり回り 泣くみたい 朝晩泣いてる あなた居らんで》
                         ―余明軍よのみやうぐん―〔巻三・四五四~四五八〕




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