ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

憶良編(13)春の一日呑気に暮らそ

2010年06月28日 | 憶良編
■平成22年6月28日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
―――――――――――――――――――――――――――――――――

★若き日を 思いに辿る 憶良はん 昔の歌が 懐かし響く

白波の 浜松の木の むけぐさ 幾代までにか 年はぬらむ
《松の木に 幣布きれ結び付け 祈るんは ずうっと前から 続く習慣ならわし
                         ―山上憶良―〔巻九・一七一六〕 
天翔あまがけり ありがよひつつ 見らめども 人こそ知らね 松は知るらむ 
《空飛んで 皇子みこの魂 かよて来る 人間ひと見えんでも 松は知っとる》
                         ―山上憶良―〔巻二・一四五〕 

秋の野に 咲きたる花を および折り かき数ふれば 七種ななくさの花
《秋の野に 咲いてる花を 数えたら 秋ずる花 種類は七つ》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五三七〕 
はぎの花 尾花をばな 葛花くずばな 瞿麦なでしこの花
女郎花をみなへし また藤袴ふぢばかま 朝貌あさがほの花

《萩の花 すすき葛花 撫子なでしこの花
女郎花おみなえし ふじばかまばな 桔梗ききょうばななり》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五三八〕 

春されば まづ咲く宿の 梅の花 独り見つつや 春日暮らさむ 
《春来たら 最初さいしょ咲く花 梅の花 独り見るには 惜しい春やな》
                       ―山上憶良―〔巻五・八一八〕 





【春日暮らさむ】へ


日めくり万葉集<12月>(その9)

2010年06月24日 | 日めくり万葉集
■平成22年6月24日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
――――――――――――――――――――――――――――――――

★他の人 大赦許され 帰ったに うち、、のあの人 居らへんやんか

帰りける 人来れりと 言ひしかば ほとほと死にき 君かと思ひて
ゆるされて 帰る人来る 聞いた時 心臓しんぞ止まった あんたやおもて》
                         ―狭野弟上娘子さののおとかみのおとめ―<巻十五・三七七二>

姉妹あねいもと みたい住んでた 仲やのに 離れた暮らし ごなって仕舞

沫雪の 消ぬべきものを 今までに 流らへぬるは 妹に逢はむとぞ
《雪みたい 消えになって 生きてるは あんたに会おと 思うよってや》
                         ―大伴田村大嬢おおとものたむらのおおいらつめ―<巻八・一六六二>

★せめてもと 逢うたら治る 恋やない 逢たら逢うたで また恋しなる

人のる 味寝うまいずて はしきやし 君が目すらを りし嘆かむ
《皆してる 共寝もせんで 可愛い児に せめて一目と 切ない恋や》
                         ―柿本人麻呂歌集―<巻十一・二三六九> 


憶良編(12)天の川原の逢瀬が過ぎる

2010年06月21日 | 憶良編
■平成22年6月21日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
―――――――――――――――――――――――――――――――――

★一日の 逢瀬の為に 一年ひととせを 待ち焦がれする 二人可哀想かわいそ

牽牛ひこぼしの つま迎へぶね 漕ぎらし あま川原かはらに 霧の立てるは
《彦星の  迎えの船が 出たんやな 天の川原に 霧出てるがな》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二七〕 

天の川 ふつの波音なみおと 騒ぐなり わが待つ君し 舟出すらしも
《天の川 波ざわざわと 騒いでる うち待つあんた 船したんや》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二九〕 
ひさかたの あまの川瀬に 船けて 今夜こよひか君が わがまさむ
《天の川  船浮かばして 今夜こんや来る あんたと逢える うち待つ岸で》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五一九〕 
かすみつ 天の川原に 君待つと いゆきかへるに の裾ぬれぬ
《霞んでる 川原かわらまで出て あんた待つ 行ったり来たり 裾まで濡らし》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二八〕 
あまかは 相向き立ちて わが恋ひし 君ますなり ひも解きけな
《天の川 隔て離され 焦がれ待つ あんた来る来る 早よ支度したくせな》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五一八〕 
秋風の  吹きにし日より いつしかと わが待ち恋ひし 君そ来ませる
立秋あきの風 吹いた時から 待ちに待つ うち待つあんた ようやっと来る》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二三〕 

玉かぎる 髣髴ほのかに見えて 別れなば もとなや恋ひむ 達ふ時までは
《喜びの 逢瀬おうせ束の間 夜明よあけたら また焦がれや 今度逢うまで》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二六〕 





わがまさむ】へ


日めくり万葉集<12月>(その8)

2010年06月17日 | 日めくり万葉集
■平成22年6月17日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
――――――――――――――――――――――――――――――――

★因幡国 新年祝う 年賀宴 家待詠う 止めの歌
あらたしき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事よごと
新年しんねんと 立春はつはる重なり 雪までも こんなえこと ますます積もれ》
                         ―大伴家持―(巻二十・四五一六) 

★別れです 旅人旦那に 長い日々 仕えしてきた 明軍詠う
かくのみに  ありけるものを 萩の花 咲きてありやと 問ひし君はも
《萩の花  咲いてるやろかと 聞いてたに これが定めと 言うもんやろか》
                         ―余明軍―(巻三・四五五) 

★月に住む 水汲み人が 汲む水の 雫落ち来い 口開け待とう
天橋あまはしも 長くもがも 高山も 高くもがも 月読つくよみの 持てるみづ
 い取り来て 君に奉りて 得てしかも

《天昇る橋  高うあれ 背ぇ高い山 もっと高こ 月の神さん 持ってはる 若返り水
 取りに行き あんたあげたい 若返り水》 
                         ―作者未詳―(巻十三・三二四五) 


憶良編(11)年に一度の逢瀬を待って

2010年06月14日 | 憶良編
■平成22年6月14日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
―――――――――――――――――――――――――――――――――

★七夕の ロマンは今に 続くけど 科学知らずの ロマン遥けし

牽牛ひこぼしは 織女たなばたつめと 天地あめつちの 別れし時ゆ いなうしろ 川に向き立ち  思ふそら 安からなくに 嘆くそら 安からなくに 
《彦星はんと 織姫おりひめはん 太古の昔 仲裂かれ 思い交わせず 嘆きおる》
青波あをなみに 望みは絶えぬ 白雲に 涙は尽きぬ 
かくのみや  いきき居らむ かくのみや 恋ひつつあらむ

《逢いたい気持ち 波はばむ 白い雲見て 涙する 溜息ためいきもらし 恋焦がる》
ぬりの 小舟をぶねもがも たままきの かいもがも 
あさなぎに いき渡り 夕潮に いぎ渡り 
ひさかたの あま川原かはらに あま飛ぶや 領巾ひれ片敷き 
玉手たまでの 玉手たまでさしへ あまた夜も ねてしかも 秋にあらずとも

《赤い船欲し 櫂も欲し 朝は川越え 夕べ漕ぎ  天の川原かわらに 領布ひれ敷いて 腕をからめて 寝てみたい 七夕あきだけごて 幾晩も》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二〇〕 

風雲は 二つの岸に 通へども わが遠妻とほづまの ことそ通はぬ
《風や雲 岸から岸へ 渡るのに いとしお前の 声届かへん》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二一〕 
たぶてにも げ越しつべき あまがは 隔てればかも あまたすべ無き
《石投げて 届きそやのに 天の川 水が邪魔して こんなに遠い》 
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二二〕 
天の川 いと川波は 立たねども 伺候さもらかたし 近きこの瀬を
《天の川 波も立たんと 近いのに たずねもでけん 口惜くやしいこっちゃ》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二四〕 
袖振らば 見もかはしつべく 近けども 渡るすべ無し 秋にしあらねば 
《袖振るの 見えてるやんか それそこに なんで渡れん 七夕あきちゃうからか》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二五〕 





【渡るすべ無し】へ


日めくり万葉集<12月>(その7)

2010年06月10日 | 日めくり万葉集
■平成22年6月10日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
――――――――――――――――――――――――――――――――

意吉麻呂おきまろよ 次の言葉で 歌詠めや 鐉具せんぐ雑器ぞうき 狐声こせい河橋かきょう
さし鍋に 湯沸かせ子ども 櫟津いちひつの ばしより来む 狐にむさむ
《鍋で湯を 沸かせよ皆 檜橋ひのきばし 渡る狐に 湯ぅかぶしたろ》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―<巻十六・三八二四>

軽皇子かるのみこ 付いて安騎野の 狩り来たが 思い出すのは 父の草壁皇子くさかべ
ひむがしの 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ
《日が昇る 月沈んでく 西空に 草壁皇子みこの面影 浮かんで消える》
                         ―柿本人麻呂―<巻一・四八> 

★覚悟して 池佇めば 鴨つがい 水輪みなわ残して 草陰消える
百伝ももづたふ 磐余いはれの池に 鳴く鴨を 今日のみ見てや 雲隠りなむ
磐余いわれいけ 鳴く鴨見るん 今日だけや 定めやおもて この世を去るか》
                         ―大津皇子―<巻三・四一六> 


憶良編(10)都見るのん楽しみしてた・・・

2010年06月07日 | 憶良編
■平成22年6月7日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
―――――――――――――――――――――――――――――――――

★都への 楽しみ旅が 暗転し 熊凝くまこり哀れ 道辺に倒る

うち日さす 宮へのぼると たらちしや 母が手はなれ 
つね知らぬ 国の奥処おくかを 百重山ももへやま 越えて過ぎ行き 
何時いつしかも 京師みやこを見むと 思ひつつ 語らひれど
 
《都へ行くと 故郷くにあとに 知らぬ他国の 奥山やま越えて
 早く都を 見たいなと 噂しながら 来たけども》 
おのが身し いたはしければ 玉桙たまほこの 道の隈廻くまみに 
手折たをり 柴取り敷きて とこじもの うちして 
思ひつつ 嘆きせらく
 
《思いも掛けず 病気なり  道のほとりに 草や柴
 敷いて作った 仮床かりどこに 身を横たえて 思うには》
国に在らば 父とり見まし 家に在らば 母とり見まし  
世間よのなかは かくのみならし いぬじもの 道にしてや いのちぎなむ

故郷くににおったら おっあん 家におったら おっさん
 枕そば来て 看取みとるのに ままにならんと 道のはた 犬が死ぬよに くたばるよ》
                         ―山上憶良―〔巻五・八八六〕 

たらちしの 母が目見ずて おほほしく 何方いづち向きてか が別るらむ
かあちゃんに 会わんとくか 鬱々うつうつと 何処どこをどうして 行ったらんや》
常知らぬ 道の長手ながてを くれくれと 如何いかにか行かむ かりては無しに
《行ったこと ない道続く あの世旅 弁当べんと持たんと どないに行くか》
家に在りて 母がとりば 慰むる 心はあらまし 死なば死ぬとも 
《家って おかあが看取り するんなら 例え死んでも くやめへんのに》
出でて行きし 日を数へつつ 今日けふ今日けふと を待たすらむ 父母らはも
《出てからも 今か今かと 指折って 待ってるやろな  おとうとおかあ
一世ひとよには 二遍ふたたび見えぬ 父母を 置きてや長く が別れなむ
《この世では もう会われへん ととかか 残してくのか ひとりあの世へ》
                    ―山上憶良―〔巻五・八八七~八九一〕 






【京師を見んと】へ


日めくり万葉集<12月>(その6)

2010年06月03日 | 日めくり万葉集
■平成22年6月3日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
――――――――――――――――――――――――――――――――

★夕日背に たたずむ人に 啼く千鳥 何を語るか 寄せ来る波は
近江の海  夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに いにしへ思ほゆ
《おい千鳥 そんなに啼きな 啼くたんび 古都むかし思うて たまらんよって》
                         ―柿本人麻呂―(巻三・二六六) 

★自慢鷹 「大黒」失くし 手に入れた 真白の鷹や 大事にしいや
矢形尾の  真白の鷹を 宿に据ゑ 掻き撫で見つつ 飼はくしよしも
《矢の形 した尾の白鷹たかを 家で飼い 撫でたり見たり 嬉しいかぎり》
                         ―大伴家持―(巻十九・四一五五) 

いかずちの 丘ちっちゃいが その名前 いかにもかみなり 住んでるみたい
大君は  神にしませば 天雲の 雷の上に 廬りせるかも
《天皇は 神さんやから 雲の上 いかずちおかに 住んではるんや》
                         ―柿本人麻呂―(巻三・二三五)