ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

坂上郎女編(04)うちにこの縁 勿体ないわ

2011年04月28日 | 坂上郎女編
■平成23年4月28日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★藤原の 麻呂とのえにし 深まって 坂上郎女いらつめ胸は 小躍り頻り

むしぶすま なごやが下に せれども 妹とし寝ねば 肌し寒しも
あったかな 布団で寝ても 肌寒い お前と一緒 寝てへんからや》
                         ―藤原麻呂―〈巻四・五二四〉 
よく渡る 人は年にも ありといふを 何時いつの間にそも 我が恋ひにける
辛抱しんぼして 一年逢わへん 彦星ひとあるに 辛抱のできん 恋してしもた》
                         ―藤原麻呂―〈巻四・五二三〉 

佐保河さほがはの 小石踏み渡り ぬばたまの 黒馬くろま来る夜は 年にもあらぬか
ねん一度 それでも嬉し 佐保河原かわら 黒馬乗って あんた来るのん》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五二五〉 
千鳥鳴く 佐保の河門かはとの 瀬を広み 打橋渡す と思へば
《千鳥鳴く  佐保の川の瀬 広いんで うち橋作る あんた来るなら》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五二八〉 

千鳥鳴く 佐保の河瀬かはせの さざれ波 む時もなし 我が恋ふらくは
《千鳥鳴く 佐保の川瀬の 細波なみみたい 寄せる思いが 止まれへんがな》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五二六〉 
娘子をとめらが 玉櫛笥くしげなる 玉櫛の 神さびけむも 妹に逢はずあれば
《美しい 櫛箱みたい 上等な 人間ひとなって仕舞う 逢わんかったら》
                         ―藤原麻呂―〈巻四・五二二〉 
佐保河の 岸のつかさの 柴な刈りそね ありつつも 春しきたらば 立ちかくるがね
《佐保川の  土手に生えてる 草刈らんとき そしたなら 春来たときに 隠れ逢えるで》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五二九〉 
でてなむ 時しはあらむを ことさらに 妻恋つまごひしつつ 立ちていぬべしや
《帰るんは  頃合いあるで 奥さんが 恋しなったて 言う人あるか》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五八五〉 




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坂上郎女編(03)うちの命は 恋なんや

2011年04月25日 | 坂上郎女編
■平成23年4月25日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★郎女の 才色兼備 男呼ぶ 恋歌磨き 益々光る

我れのみぞ 君には恋ふる 我が背子が 恋ふといふことは ことなぐさ
《うちだけや  恋し思うん 決まってる あんた口先 ばっかりやんか》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六五六〉 
思はじと 言ひてしものを 朱華色はねずいろの うつろひやすき 我が心かも
《恋なんか もうせえへんで うてたが うちの決心 怪しいもんや》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六五七〉 
思へども しるしもなしと 知るものを 何かここだく 我が恋ひわたる
《うちの恋 なんぼ思ても かなわへん 分かってるのに し続けとるわ》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六五八〉 
あらかじめ 人言ひとごとしげし かくしあらば しゑや我が背子 奥もいかにあらめ
《初めから あれこれ言われ うっとしい これやと後が 思いやられる》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六五九〉 
をと吾を 人ぞくなる いで吾君あがきみ 人の中言なかごと 聞きこすなゆめ
《ふたり仲 こ思う人 てるから あんたそんなん 聞いたらあかん》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六六〇〉 
恋ひ恋ひて 逢へる時だに うるはしき こと尽してよ 長くと思はば
《恋い焦がれ やっと逢えたで いてたら 甘い言葉を いっぱいうて》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六六一〉 




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坂上郎女編(02)うちは生きるで 恋の道

2011年04月21日 | 坂上郎女編
■平成23年4月21日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★先立った 皇子みこけたか 恋炎 若い郎女 ここぞと燃やす

言ふ言の かしこき国ぞ くれなゐの 色になでそ 思ひ死ぬとも
うわさする 人の言葉は おそろしで 本心ほんね隠しや なんぼろても》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八三〉 
今はは 死なむよ我が背 けりとも 我れに依るべしと 言ふといはなくに
《もううちは 死んで仕舞しもたる 生きてても あんたその気に ならへんさかい》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八四〉 
人言ひとごとを しげみか君が 二鞘ふたさやの 家をへだてて 恋ひつつをらむ
《人の口  うるさいよって 別々の 家に分かれて 恋い焦がれてる》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八五〉 
このころは 千年ちとせきも 過ぎぬると 我れやしかふ 見まくりかも
《近頃は うち思うんや 千年も うてへんなと ああ いたいな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八六〉 
うつくしと 我がふ心 速川はやかわの きにくとも なほやえなむ
《あんたはん 恋しと思う うちの気持は 抑え付けても 溢れ出てくる》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八七〉 
青山を 横ぎる雲の いちしろく 我れとまして 人に知らゆな
《うちの顔 じっと微笑ほほえみ 見たあかん 他人ひとに知れたら 困るよってに》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八八〉 
海山も 隔たらなくに 何しかも 目言めことをだにも ここだともしき
《海や山 隔ててへんに 逢うことも 声掛かるんも 少ないちゃうか》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八九〉 




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坂上郎女編(01)郎女の 相手初老の 皇子様なるぞ

2011年04月18日 | 坂上郎女編
■平成23年4月18日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★大伴の 安麻呂娘 郎女いらつめを 穂積ほづみ皇子おうじへ 嫁がす策か

家にありし ひつにかぎさし をさめてし 恋のやっこの つかみかかりて
《家にある 箱にかぎかけ 封印とじこめた 好色心すきものごころ またぞろうずく》
                         ―穂積皇子ほづみのみこ―〈巻十六・三八一六〉

狩高かりたかの 高円山たかまとやまを 高みかも 出で来る月の 遅く照るらむ
《すぐそばに 迫る高円山たかまど 高いんで 月出て照るん 遅いんやなあ》
ぬばたまの 夜霧の立ちて おほほしく 照れる月夜つくよの 見れば悲しさ
《霧立って  ぼやっと照る月 見てたなら なんや悲しに なってきたがな》
山の端の ささら壮士をとこ 天の原 渡る光 見らくしよしも
《山のはし かかって光る お月さん 空渡るんを 見てたら楽し》 
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―〈巻六・九八一~三〉



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赤人編(16)やがて枯れるか わが歌の旅

2011年04月14日 | 赤人編
■平成23年4月14日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★枯れ枝に 止まる鶯 何を待つ 冬越す春を 何処で待つやら

百済野くだらのの 萩の古枝ふるえに 春待つと 居りしうぐひす 鳴きにけむかも
《百済野の 萩の古枝 止まってた 春待ちどりは もう鳴いたかな》
                         ―山部赤人―〔巻八・一四三一〕 

あしひきの  山谷越えて 野づかさに 今は鳴くらむ うぐひすの声
《山や谷  越えて野の岡 来て今は 鳴いてるやろな 鶯の声》
                         ―山部赤人―〔巻十七・三九一五〕 

恋しけば 形見にせむと わが屋戸やどに 植ゑし藤波 いま咲きにけり
郭公かっこうを 偲ぶよすがに 植えといた うちの藤花 今咲いたがな》
                         ―山部赤人―〔巻八・一四七一〕



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赤人編(15)この嬉しさよ 手児名よ 手児名

2011年04月11日 | 赤人編
■平成23年4月11日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★惹かれ来た 真間の手児奈の 伝説に 今こそ逢えた 歌人冥利みょうり

葛飾かづしかの 真間まま手児奈てこなを まことかもわれに寄すとふ 真間の手児奈を
《ほんまかな 真間の手児名が わしのこと 思てる言うが うそちゃうやろか》
                    ―下総国歌―〔巻十四・三三八四〕 
葛飾かづしかの 真間まま手児奈てこなが ありしばか 真間の磯辺おすひに 波もとどろに
《葛飾の 真間の手児名が 生きてたら 波騒ぐよに ひと騒ぐやろ》
                    ―下総国歌―〔巻十四・三三八五〕 
鳰鳥にほどりの 葛飾かづしか早稲わせを にへすとも そのかなしきを に立てめやも
新嘗にいなめの 男子おとこ禁制はっとの 最中さなかやが 外であんたを 待たすのでけん》
                    ―下総国歌―〔巻十四・三三八六〕 
おとせず 行かむ駒もが 葛飾かづしかの 真間まま継橋つぎはし やまずかよはむ
《足音の てん馬欲し 知られんと 真間の継橋 ずっと来れるに》
                    ―下総国歌―〔巻十四・三三八七〕 

いにしへに りけむ人の 倭文幡しつはたの 帯きかへて 伏屋ふせや立て 
妻問つまどひしけむ 葛飾かづしかの 真間まま手児名てこなが おく
 
《その昔 ここに住んでた 男ども 一緒にもと 小屋立てて
 次から次と 結婚えんぐみを 申し出た言う 葛飾の 真間の手児名の 墓処はかどころ
こことは聞けど 真木まきの葉や 茂りたるらむ 松の根や 遠く久しき 
ことのみも 名のみもわれは 忘らえなくに

《ここと聞いたが 何処どこやろか 真木まきの葉茂り 松の根も 古びてしもて 分かれへん
 分からんけども 真間の地の 伝え話や この名前 心掛かって 忘れられん》 
                         ―山部赤人―〔巻三・四三一〕 
われも見つ 人にもげむ 葛飾かづしかの 真間まま手児名てこなが おくどころ
《わし見たで 皆におせたろ 葛飾の 真間の手児名の 墓あるあたり》
                         ―山部赤人―〔巻三・四三二〕 
葛飾かづしかの 真間まま入江いりえに うちなびく 玉藻刈りけむ 手児名てこなし思ほゆ
《葛飾の  真間の入江で 藻ぉ刈った 手児名のことが 偲ばれるがな》
                         ―山部赤人―〔巻三・四三三〕 


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赤人編(14)これや これやが この富士山や

2011年04月07日 | 赤人編
■平成23年4月7日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★目の前に かぶさるような 富士姿 思わず絶句 赤人唖然あぜん

天地あめつちの わかれし時ゆ かむさびて 高く貴き 
駿河なる 布士ふじの高嶺を あまの原 ふりけ見れば 
渡る日の 影もかくらひ 照る月の 光も見えず  
白雲も い行きはばかり  時じくぞ 雪は降りける  
語りつぎ 言ひつぎ行かむ 不尽ふじの高嶺は

天地てんちのできた その昔 神が作った その山は 
 駿河の国の 富士の山  振り仰いでも 高過ぎて 
 お日さん隠れ よう見えん  月の光も 届かへん 
 白雲漂い よう行かん  雪はいっつも 降っている 
 威容すがた尊い この山は 国の誇りや 富士の山》 
                         ―山部赤人 ―(巻三・三一七)

田児の浦ゆ うち出でて見れば ま白にぞ 不尽の高嶺に 雪は降りける 
《田子の浦 回って見たら パッと富士 山のてっぺん 雪降ってるで》 
                         ―山部赤人 ―(巻三・三一八)



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赤人編(13)わしもとうとう ここ迄来たぞ

2011年04月04日 | 赤人編
■平成23年4月4日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★人麻呂の 吉野賛歌の 彷彿と 湧き出る如し 赤人の声

やすみしし わご大君おほきみの し給ふ  吉野の宮は 山高み 雲そたな引く 
川速み 瀬のそ清き かむさびて 見れば貴く よろしなへ 見ればさやけし
 
天皇おおきみの お治めなさる 吉野宮 山が高こうて 雲なび
 流れ速うて 音清い 神々こうごうしいて とうとうて 清らかなんは 当然や》
この山の きばのみこそ この川の 絶えばのみこそ 
ももしきの 大宮所おほみやどころ む時もあらめ

《山の姿が  消えるなら 川の流れが 絶えるなら
 その時こそは 大宮の うなる時や それは無いけど》
                         ―山部赤人―〔巻六・一〇〇五〕 

神代より 吉野の宮に ありがよひ たからせるは 山川をよみ
《昔から 吉野の宮に かようんは 山と川とが 素晴らしからや》
                         ―山部赤人―〔巻六・一〇〇六〕 




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