ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

古事記ものがたり・下つ巻(21)おのれ小癪な 志毘臣め

2013年08月26日 | 古事記ものがたり
おのれ小癪こしゃくな 志毘しびおみ

歌垣競う 海石榴市つばいち
志毘しびおみ立ちて 手を取るは
袁祁命おけのみことが めとるとて
 思いし 乙女にて
菟田うだのおびとの 大魚おおうお

られなるかと 袁祁命おけみこと
 で競いと 受けて立つ






先ずに志毘しびおみ 謡う歌

王家の宮殿みやの あの軒端のきば
            (勢力)
傾きるぞ つぶれるぞ

  大宮の おと端手はたで すみかたぶけり
                ―古事記歌謡(百五)―

応え袁祁命おけみこ 謡う歌

大工だいく下手へたで 傾けり
(大工=王家支える臣の志毘)
王家わが所為せいならず お前こそ

  大匠おおたくみ 拙劣おじなみこそ すみかたぶけれ
                ―古事記歌謡(百六)―

重ね志毘しびおみ 謡う歌

王家勢い 衰えて
われが築きし 柴垣に
         (勢力)
はいることなど 出来ようか
(凌ぐ)

  おおきみの 心をゆら
  おみの子の 八重の柴垣
  り立たずあり
                ―古事記歌謡(百七)―

また袁祁命おけみこの 謡う歌

浅瀬寄り来る 岸波へ 
泳ぎ来た志毘しび そのはた
我れが恋しの つま立ち居るぞ

  潮瀬しおせの 波折なおりを見れば
  遊び来る しび鰭手はたで
   妻立てり見ゆ
                ―古事記歌謡(百八)―

怒り志毘しびおみ 謡う歌

王家の宮殿みやの 柴垣は
          (勢力)
堅固かた幾重いくえに 結ぶとも
やすに切れる 焼け落ちる

  大君の みこの柴垣
  八節やふじまり しまもとほ
   切れる柴垣 焼ける柴垣
                ―古事記歌謡(百九)―








更に袁祁命おけみこ 謡う歌

しび(大魚)取ろねらう 志毘しび海人あま
しび(大魚)が逃げらば 悲しかろ
しび(大魚)狙う志毘しび 覚悟しや

  大魚おうおよし しび突く海人あま
  れば うらこおしけん
  しび突く志毘しび
                ―古事記歌謡(百十)―

丁々発止ちょうちょうはっし 掛け合いは
よるを徹して 明けるまで








帰り弟袁祁命おとうと 兄意祁命あにみこ
談じはかりて 策を

「宮に仕える 宮人みやびと
 朝に参内さんだい 昼志毘宅しび

 勢力ちから着けしは のぞくべし
 禍根かこんつは 今ぞかし

 寝入る志毘宅しびへと 攻め込めば
 容易討ち取り たがい無し」

軍をおこすや たちまちに
屋敷包囲かこみて 殺し








身中しんちゅう虫を 除き
皇位こういてきすは いずれかと
互い 譲りて その果てに

 我れ兄なれど 今あるは
 れが播磨国はりまの 志自牟しじむ屋敷
 名を明かしたが もといなり
 天下統治おさむは れぞかし」



古事記ものがたり・下つ巻(20)我ら隠れの 王なるぞ

2013年08月19日 | 古事記ものがたり
我らかくれの みこなるぞ

雄略ゆうりゃく天皇おおきみ 崩御みまかりて
お子の白髪しらかの 大倭おおやまと
根子命ねこのみことが 即位して
清寧せいねい天皇おおきみ お成りなる









清寧せいねい天皇おおきみ 皇后きさき無く
御子御座おわさずて 崩御みまかられ
皇位くらいぐべき みこ探す

時に市辺之いちのへ 忍歯王おしはみこ
いもうと飯豊いいどよ みこすを
政務せいむなすべく 皇位くらいにと
















折しも播磨国はりま 長官に
山部連やまべのむらじ 小楯おだて成り
任地に於ける 新築あらたや
うたげ臨席おでまし 願うとて
招かれたるは 志自牟しじむ

うたげさかりの たけなわ
順次つなぎの 舞となる

そこに火焚ひたきの かまどそば
二人わらわに 舞うべしの
うながし来るに 途惑とまどいて









 兄上どうか お先に」と
 いいやお前が 先舞え」と

互い讓るを 宴人うたげびと
いやしのわらわ 似合わぬ」と
声上げはやし 笑う中

 が舞い終え さればとて
弟立ちて 朗誦うたいなす






武人ますらお腰に ける 
大刀柄たちつかみこの しゅに塗りて
下げひもみこの 赤布あか飾り
立てる旗これ みこの赤
目立つよそおい したとても
繁れる竹藪やぶの 中れば
隠れ見えず の 日を過ごす









竹藪やぶり取りて 割りきて
並べ作りし 八弦やつおこと
かなで調べの でたきに
天下の統治おさめ なされた
伊耶本和気命いざほわけみこ 天皇すめらみこ
御子おこ市辺之いちのへ 忍歯王おしはみこ
その子なるぞよ このやっこ







驚く小楯おだて 床転ころげ落ち
うたげ集人つどいを 追い出すや
二柱ふたはしらを 膝に抱き
辛苦しんく経緯いきさつ 聞きて泣く

直ち人民ひと寄せ 仮宮みや造り
住まわせなさり 早馬うま

叔母おば飯豊王いいどよ これ聞きて
歓喜よろこ宮殿みやへ 呼び寄せる