ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

家持編(一)青春・恋の遍歴(27)どしたら良んや わし分らんわ

2011年09月29日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年9月29日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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おみな寄り 示し合わせの 悪戯いたずらに 為す術なしの 憐れ家待

一重ひとへ山 へなれるものを 月夜つくよよみ かどに出で立ち いもか待つらむ
《山一つ はなれてるのに 月から もん出てお前 待ってんやろか》
                         ―大伴家持―〈巻四・七六五〉 

みちとほみ じとは知れる ものからに  しかそ待つらむ 君が目を
《道とおて 来られんはずと おもうても 待ってはります あんた逢いとて》
                         ―藤原郎女ふぢはらのいらつめ―〈巻四・七六六〉

ひと多み 逢はなくのみそ こころさへ 妹を忘れて わが思はなくに
《人眼避け 逢わへんだけや 心まで お前忘れて 仕舞しもたんちゃうで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七〇〉 
いつはりも つきてそする うつしくも まこと吾妹子わぎもこ われに恋ひめや
《嘘つくん もっともらしに 言うもんや 真実ほんまにお前 わし好きなんか》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七一〉 
いめにだに 見えむとわれは ほどけども 逢はずしへば うべ見えずあらむ
《夢でもと  思てるのんに 逢わんとこ 思てんかして 夢出て来んわ》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七二〉 

ことはぬ 木すら紫陽花あぢさゐ 諸弟もろとらが ねりむらに あざむかえけり
《紫陽花も 色変えるのに 占い師 心変かわってへんて 言うのん嘘や》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七三〉 
ももたび 恋ふと言ふとも 諸弟もろとらが ねりのことばは われはたのまじ
《百千も  恋してる言う 占いが 出てもこのわし 信用せんで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七四〉 



【木すら紫陽花】へ


家持編(一)青春・恋の遍歴(26)後の祭や ええいもう

2011年09月26日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年9月26日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★家待の 必死取りなし 実らずて 憐れ独りで 泣き寝入り

ことしは ことなるか 小山田をやまだの 苗代なはしろみづの 中淀なかよどにして
《先に声  掛けて来たんは 誰やろか なんで今更 尻込みすんや》
                         ―紀女郎―〈巻四・七七六〉 

吾妹子わぎもこが 屋戸やどまがきを 見に行かば けだしかどより かへしてむかも
《お前ん 間垣まがき見ようと 行ったなら 門からお前 返すのやろか》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七七〉 
うつたへに まがきの姿 見まく欲り 行かむと言へや 君を見にこそ
《そうやない がき見とうて 行くんちゃう あんた見とうて 出かけるんやで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七八〉 

板葺いたぶきの 黒木くろきの屋根は 山近し 明日あすの日取りて 持ちてまゐ
《板葺きの 黒木の屋根を 明日あしたにも 持っていきます 山近いんで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七九〉 
黒木取り かやりつつ つかへめど いそしきわけと めむともあらず
《黒木取り 草も刈り取り したけども ようやったなと めへんやろな》
                         ―大伴家持―〈巻四・七八〇〉 
ぬばたまの 昨夜きそかへしつ 今夜こよひさへ われを還すな 路の長道ながて
《真黒な 夜道昨日きのうは かえされた 今日は還しな 道中どうちゅう長い》
                         ―大伴家持―〈巻四・七八一〉 

風高く には吹けども 妹がため 袖さへ濡れて 刈れる玉藻たまも
《岸辺には 風吹き波も 高いのに 袖を濡らして 採ったぉやで》
                         ―紀女郎―〈巻四・七八二〉 
〈尻軽な 浮気男の 相聞の 波風しのぎ 守った玉藻もぉみさお〉や〉


瞿麦なでしこは 咲きて散りぬと 人は言へど わがめし野の 花にあらめやも
撫子なでしこは 咲いて散ったて 聞いたけど わし眼ぇ付けた 花ちゃうやろな》
                         ―大伴家持―〈巻八・一五一〇〉 




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家持編(一)青春・恋の遍歴(25)あっちも良えが こっちも好み

2011年09月22日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年9月22日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★気の多い 家待掛けた 二股は 功を奏すか 裏目と出るか

うづら鳴く りにしさとゆ 思へども なにそも妹に 逢ふよしも無き
奈良ならきょうに ったときから 気にしてた 逢える手立てが なんで無いんや》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七五〉 

かむさぶと いなとにはあらね はたやはた かくしてのちに さぶしけむかも
《恋するに 歳はかかわり 無い云うが 誘いに乗って いへんやろか》
                         ―紀女郎―〈巻四・七六二〉 
玉のを 沫緒あわをによりて むすべらば ありてのちにも 逢はざらめやも
《この命 あわつぶつなぎ 延ばせたら 先ではきっと 逢うことできる》
                         ―紀女郎―〈巻四・七六三〉 

百年ももとせに 老舌おいじたでて よよむとも われはいとはじ 恋ひはすとも
百歳ひゃくになり 舌垂れ身体からだ よろけても わしかまへんで なおすがな》
                         ―大伴家持―〈巻四・七六四〉 

前年をととしの さきとしより 今年ことしまで 恋ふれどそも 妹に逢ひがた
一昨年おととしも 去年今年も ずううっと 思とるいうに なんで逢えんか》
                         ―大伴家持―〈巻四・七八三〉 
うつつには またもはじ いめにだに 妹が手本たもとを 卷きとし見ば
《お前とは  ほんま寝たいと まで言わん 夢でええから 寝てみたいんや》
                         ―大伴家持―〈巻四・七八四〉 
わが屋戸やどの 草の上白く 置く露の 命もしからず 妹に逢はずあれば
《逢われんで るくらいなら この命 草露みたい 消えてもえで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七八五〉 
いもが家の 門田かどたを見むと うち出来でこし こころもしるく 照る月夜つくよかも
門前もんまえの 田んぼ見ようと 出てきたら うまい具合に え月やがな》
                         ―大伴家持―〈巻八・一五九六〉 



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家持編(一)青春・恋の遍歴(24)あの人(こ)その気や 信じて良んか

2011年09月19日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年9月19日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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紀女郎いらつめの 構いに乗った 家持は 本気なられて こら仕舞たわい

戯奴わけがため わが手もすまに 春の野に 抜ける茅花ちばなそ してえませ
《ぼんちをば おもうてった 茅花ちばな食べ ちょっとえてや 痩せ身のぼんち》
                         ―紀郎女きのいらつめ―〈巻八・一四六〇〉
昼は咲き よるは恋ひる 合歓木ねむの花 君のみ見めや 戯奴わけさへに見よ
《昼咲いて 夜は恋見る 合歓ねむの花 ねえさま見たで ぼんちも見いや》
                         ―紀郎女きのいらつめ―〈巻八・一四六一〉

わが君に 戯奴わけは恋ふらし たはりたる 茅花ちばなめど いやせに
ねえさまに ぼんち恋した ろた茅花はな たけどせる またまた痩せる》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六六二〉 
吾妹子わぎもこが 形見の合歓木ねむは 花のみに 咲きてけだしく にならじかも
合歓ねむの花 いとしあんたに 似てる花 はなやかやけど 〈恋の〉らへんわ》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六六三〉 

ひさかたの 月夜つくよきよみ 梅の花 心ひらけて おもへる君
清々すがすがし つき光に 梅咲いた うちの心も あんたに咲いた》
                         ―紀小鹿郎女きのおしかのいらつめ―〈巻八・一六六一〉
                   〈紀郎女は紀鹿人きのかひとの娘 ために「小鹿」の愛称〉

闇夜やみならば うべも来まさじ 梅の花 咲ける月夜に 出でまさじとや
闇夜やみよなら えへのんは 仕様しょうないが 梅花はな咲く月夜 なんで来んのや》
                         ―紀女郎―〈巻八・一四五二〉 





戯奴わけは恋ふらし】へ


家持編(一)青春・恋の遍歴(23)憐れ紀女郎(いらつめ) 安貴王(おう)しくじりで 

2011年09月15日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年9月15日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★恭仁京で 紀郎女きのいらつめを 垣間見て 昔思うて 家待誘う

ひさかたの 雨の降る日を ただひとり 山辺やまへにをれば いぶせかりけり
鬱陶うっとしい 雨の降る日に 独りだけ 山陰やまかげったら 憂鬱ゆううつなるわ》
                         ―大伴家持―〈巻四・七六九〉 
 
十二月しはすには あわゆき降ると 知らねかも 梅の花咲く ふふめらずして
《十二月 まだ雪降るの 知らんのか つぼみほころび 梅花咲いた》
                         ―紀小鹿郎女きのおしかのいらつめ―〈巻八・一六四八〉
                 〈紀郎女は紀鹿人きのかひとの娘 ために「小鹿」の愛称〉


世間よのなかの をみなにしあらば わが渡る 痛背あなせの河を 渡りかねめや
《このうちは 運無いよって 世間並み あんたしとても 一緒行かれん》
                         ―紀郎女きのいらつめ―〈巻四・六四三〉
今はは びそしにける いきに 思ひし君を ゆるさくおもへば
《今うちは 沈んで仕舞しもてる 命とも 思てたあんた 行かしてしもて》
                         ―紀郎女―〈巻四・六四四〉 
白栲しろたへの そで別るべき 日を近み 心にむせひ ねのみし泣かゆ
いややけど 別れならん日 近づいて 心の中で むせび泣いてる》
                         ―紀郎女―〈巻四・六四五〉 




山辺やまへにをれば】へ


家持編(一)青春・恋の遍歴(22)一緒の生活(くらし) 始めたのんに

2011年09月12日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年9月12日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★彷徨の 行幸の果てに 久邇くにの宮 山陰寂し お前が恋し

春霞 たなびく山の へなれれば 妹に逢はずて 月そにける
《春霞 かってる山 邪魔してて お前逢わんと 一月った》
                         ―大伴家持―〈巻八・一四六四〉 
都路みやこぢを 遠みか妹が このころは うけひて宿れど いめに見え
久邇京みやこまで 遠いよってに この頃は 祈り寝るけど お前夢出ん》
                         ―大伴家持―〈巻四・七六七〉 
今しらす 久邇くにみやこに 妹に逢はず 久しくなりぬ 行きてはや見な
《新しい 久邇京みやこ居るんで なご逢わん 出かけ訪ねて 早よ逢いたいな》
                         ―大伴家持―〈巻四・七六八〉 
今造る 久邇くにみやこに 秋の夜の 長きに独り るが苦しさ
《造ってる 久邇の京で 秋の夜を 独りで寝るん る瀬ないがな》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六三一〉 
〈安倍郎女―坂上郎女の従弟いとこ安倍蟲麻呂の娘?―へ〉
あしひきの 山辺やまへに居りて 秋風の 日にけに吹けば いもをしそ思ふ
久邇くに山で 日増し秋風 吹いてきて 寒さ思たら お前恋しい》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六三二〉 





久邇くにみやこに】へ


家持編(一)青春・恋の遍歴(21)ずっと一緒に 居りたいのんに

2011年09月08日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年9月8日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★邪魔無しの 晴れて通いの 日々なれど 一緒生活くらしが 早よ来ぬものか

わが屋前やどの 時じき藤の めづらしく 今も見てしか 妹が咲容ゑまひ
あいらしい 時節じせつ外れの 藤咲いた お前の笑顔 見となったがな》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六二七〉 
わが屋前やどの 萩の下葉したばは 秋風も いまだ吹かねば かくぞ黄変もみてる
《庭の萩 まだ秋風も 吹かんのに 下の葉ほれ見 黄葉こうようしてる》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六二八〉 

ねもころに 物を思へば 言はむすべ すべも無し 
《しみじみと 恋しさおもたら 言いない 晴らす方法ほうほも 見当たらん》
妹とわれと 手たづさはりて あしたには 庭にで立ち ゆふべには  床とこうち払ひ 
白栲しろたへの 袖さしへて さし夜や 常にありける
 
《お前とわしと 手ぇつなぎ 朝に庭出て 夕べには とこ延べ清め 袖まじ
 一緒寝たよる ちょっとだけ》
あしひきの 山鳥こそは むかひに 妻問つまどひすといへ 現世うつせみの 人にあるわれや 何すとか 一日ひとひ一夜ひとよも さかり居て 嘆き恋ふらむ ここへば 胸こそ痛き 
《山にむ鳥 峰越えて 連れと一緒に る言うに この世生まれた このわしは
 なんで毎日 毎晩も 離れ暮らして 嘆くんか それを思たら 胸痛い》  
そこゆゑに こころぐやと 高円たかまとの 山にも野にも うち行きて 遊びあるけど  
花のみし にほひてあれば 見るごとに ましてしのはゆ 
いかにして  忘れむものそ 恋といふものを

仕様しょう無いよって なぐさみに 高円山の 山や野に 出かけて行って 遊んだら 花が綺麗きれえに 咲いてたが それ見るたんびに 益々ますますに お前のことが 偲ばれる
 どしたらんや 忘れんの 思うならん 恋うもんは》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六二九〉 
高円たかまとの 野辺のへ容花かほばな 面影に 見えつつ妹は 忘れかねつも
《高円の  野辺の昼顔 面影に 見えてお前を 忘られんのや》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六三〇〉 



【かくぞ黄変もみてる】へ


家持編(一)青春・恋の遍歴(20)なんで散らすか アホほととぎす

2011年09月05日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年9月5日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★橘の 花に託して 家待が 大嬢に 思いを告げる

いかといかと あるわが屋前やどに 百枝ももえさし ふる橘 
玉にく  五月さつきを近み あえぬがに 花咲きにけり 朝にに 出で見るごとに
 
《庭植えて  どない育つか 楽しみに してた橘 枝伸ばし
 薬玉くすだまに する五月 近づいたころ いっぱいに 花付けたんで 朝昼と 見に行くたんび おもたんや》 
いきに わがおもふ妹に 真澄鏡まそかがみ 清き月夜つくよに 
ただ一目ひとめ 見するまでには 散りこすな ゆめといひつつ ここだくも わがるものを うれたきや
 
いのちと思う お前ちゃん 澄んだ月夜に 一目でも
 見せたるまでは 散らんとき 屹度きっとやでえと 一生懸命いっしょけめ 丹精たんせいしたに 腹立つな》
しこ霍公鳥ほととぎす あかときの うら悲しきに 追へど追へど なほし来鳴きて いたづらに 
つちに散らせば すべみ  ぢて手折たをりつ 見ませ吾妹子わぎもこ

《アホほととぎす 夜明け前 うっとしことに 飛んできて 追いに追うても 来て鳴いて
 花台無だいなしに 散らしよる 仕様しょう無いよって 残り花 折り採ったんや 見たって欲しな》
                         ―大伴家持―〈巻八・一五〇七〉 
十五夜もちくたち 清き月夜つくよに 吾妹子わぎもこに 見せむと思ひし 屋前やどの橘
十六夜いざよいの 澄んだ月夜に お前にと 見せよ思てた 庭橘や》
                         ―大伴家持―〈巻八・一五〇八〉 
妹が見て のちも鳴かなむ 霍公鳥ほととぎす 花橘を つちに散らしつ
《ほととぎす 橘花を 鳴き散らす お前見たあと 鳴いたらのに》
                         ―大伴家持―〈巻八・一五〇九〉 




つちに散らしつ】へ


家持編(一)青春・恋の遍歴(19)やっと逢えたが それでも恋し

2011年09月01日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年9月1日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★もう良えと 破れかぶれの 逢瀬には 世間素知らん 顔してるがな

朝夕あさゆふに 見む時さへや 吾妹子わぎもこが 見とも見ぬごと なほ恋しけむ
《朝晩に お前に逢える 時来ても 逢うてないは 恋してならん》
                         ―大伴家持―〈巻四・七四五〉 
ける世に われはいまだ見ず ことえて かくおもしろく へる袋は
《わしいまだ 見たことないわ こんなにも 器用上手に うた袋は》
                         ―大伴家持―〈巻四・七四六〉 
吾妹子わぎもこが 形見のころも 下に着て ただに逢ふまでは われかめやも
《わたしやと おもてとれた 下衣はだぎ着け じかに逢うまで わしがんとく》
                         ―大伴家持―〈巻四・七四七〉 

のほどろ わが出でて来れば 吾妹子わぎもこが 思へりしくし 面影に見ゆ
よる明けて 帰る途中で 浮かんだで 思い切ない お前の顔が》
                         ―大伴家持―〈巻四・七五四〉 

のほどろ 出でつつらく たびまねく なればわが胸 ち焼くごとし
明方あけがたに 帰ってくるん 重なると 胸張り裂けて 焼けげるや》
                         ―大伴家持―〈巻四・七五五〉 



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