ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

歴史編(16)みんなそれぞれ往ってもた

2009年09月30日 | 歴史編
■平成21年9月30日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★稀代英雄 天智が崩御 有りし日偲び おおきみ詠う
かからむの おもひ知りせば 大御船おおみふね 泊てしとまりに しめはましを
《こうなんの 分かってたなら あんたる 場所に標縄しめなわ 〔悪霊入らんよう〕張っといたのに》
                         ―額田ぬかたの おほきみ―〔巻二・一五一〕

★鏡山御陵での 奉仕を終え それぞれが去って行く 私ももう 去らねばならぬのか
やすみしし わご大君の かしこきや 御陵みはか仕ふる 山科の 鏡の山に 
よるはも のことごと 昼はも 日のことごと のみを 泣きつつありてや 
百磯城ももしきの 大宮人は き別れなむ

天皇すめらみことの 墓守りと 鏡の山に 集まって 夜昼なしに 泣きつづけ
 終わってしもて みんなぬ 散り散りなって 帰ってく》
                         ―額田ぬかたの おほきみ―〔巻二・一五五〕





【去き別れなむ】へ


日めくり万葉集<4月>(その3)

2009年09月29日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月29日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★地方出て 都で勤め 励みしが 激し勤めに 耐えきれず 自ら命 絶つ奴あるか
大君の みことかしこみ おし照る 難波なにはの国に 
あらたまの 年るまでに 白拷しろたへの 衣もさず
朝夕あさよひに ありつる君は いかさまに おもひいませか 
うつせみの しきこの世を つゆしもの 置きてゆきけむ 
時にあらずして 

《役目大事と 難波の宮で 
 着替えもせんと 永年務め 
 昼夜ちゅうやいとわず 働くあんた
 何を思たか 大事な命 
 捨てて仕舞しもたら 仕様しょうないやんか
 まだこれからや いう時やのに》 
                         ―大伴三中おおとものみなか―〔巻三・四四三(後半)〕

★ちょい悪男 なぜもてる 女ごころの 不思議さよ
斑鳩いかるがの 因可よるかの池の よろしくも 君をはねば 思いぞ我がする
《ええ人と みんな言わへん そんなこと うち信じへん けど心配や》
                         ―作者未詳―〔巻十二・三〇二〇〕 

★何見ても あんたに見える 若い恋
春柳はるやなぎ 葛城山かづらきやまに 立つ雲の 立ちてもても 妹をしそ思ふ
《春が来て 葛城山に 雲よる 居ても立っても おまえ思てる》
                         ―柿本人麻呂歌集―〔巻十一・二四五三〕 

★恋の駆け引き 誇張に限る 溢れる思い 届かで措くか
こひは 千引ちびきの石を ななばかり 首に掛けむも 神のまにまに
《かまへんで 千人引きの 石七つ 首掛けるな 苦し恋でも》
                         ―大伴家持―〔巻四・七四三〕 

★赤人悔み ひとりごと あの児誘うて 来たらよかった  
春の野に すみれみにと しわれそ 野をなつかしみ 一夜ひとよ寝にける
《春の野に すみれを摘みに 来たんやが 気分えんで 泊ってしもた》
                         ―山部赤人―〔巻八・一四二四〕 

★なつかしい 春の情景 今いずこ
春日野かすがのに けぶり立つ見ゆ 娘子をとめらし 春野はるののうはぎ みて煮るらしも
《春日野で 煙見えてる 若いが ヨメナを摘んで いてんやなぁ》
                         ―作者未詳―〔巻十・一八七九〕 

歴史編(15)頼むからもう一寸生きててや

2009年09月28日 | 歴史編
■平成21年9月28日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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両親ふたおや兄弟 死なせた人の 終りに臨み きさきとしての 見取りは続く
あまの原 振りけ見れば 大君おほきみの 御寿みいのちは長く あまらしたり
《空見たら 広がりずうっと 続いてる まだ安心や あんたの命》 
                         ―倭大后やまとのおおきさき―〔巻二・一四七〕

★祈り空しう 別れの御霊 雲に棚引き 隠れ行く
青旗あをはたの 木幡こはたの上うへを かよふとは 目には見れども ただに逢はぬかも
木幡山こはたやま あんたの霊魂みたま ただようて 見えてるけども もうわれへん》
倭大后やまとのおおきさき―〔巻二・一四八〕

きさきやまとの 複雑こころ
人はよし 思ひむとも 玉蔓たまかづら 影に見えつつ 忘らえぬかも
ほかの人 忘れてもえ うちだけは まぶた浮かんで 忘れられへん》
倭大后やまとのおおきさき―〔巻二・一四九〕

★暮れる湖 嘆きは深い 苦楽を共の 人生哀歌
鯨魚いなさ取り 淡海あふみうみを 沖けて ぎ来る船 附きて 漕ぎ来る船 
沖つかい いたくなねそ つ櫂 いたくな撥ねそ 若草のつまの 思ふ鳥たつ

《琵琶湖をとおる 沖の船 岸辺漕いでく そこの船 どっちも ばしゃばしゃ がんとき
 あの人の 好きやった〔霊魂たましい宿ってる〕鳥 飛び立つやんか》
倭大后やまとのおおきさき―〔巻二・一五三〕






【木幡の上を】へ


日めくり万葉集<4月>(その2)

2009年09月25日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月25日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★爺さん 娘に 小馬鹿にされて 「若い時にはこのワシも」と詠う
 万葉版 竹取物語の一節 

・・・ひほひよる 児らが同年児よちひは 
みなわた か黒き髪を まくしもち ここにかき垂れ・・・

《・・・あんたらと おんなじような 年頃は
 真っ黒髪を ええ櫛で いてここまで き伸ばし・・・》
                         ―作者未詳―〔巻十六・三七九一〕 

★悲恋の娘子おとめ 「うち 死なへんで~」
我が背子せこが 帰り来まさむ 時のため いのち残さむ 忘れたまふな
《忘れなや 命大事に 生きてくで あんたの帰る その時待って》 
                         ―狭野弟上娘子さののおとがみのおとめ―〔巻十五・三七七四〕

穂積親王ほずみはん 相手但馬皇女たじまか 坂上郎女いらつめはんか それとも別の ひとかいな
家にありし ひつかぎし をさめてし  こひやっこの つかみかかりて
《家にある 箱にかぎかけ 封印とじこめた 浮気心が またぞろうずく》
                         ―穂積親王ほづみのみこ―〔巻十六・三八一六〕

★乳飲み児残し 若妻亡くし うろたえ人麻呂 目に見える
衾道ふすまぢを 引手ひきての山に いもを置きて 山路やまぢを行けば 生けりともなし
引手ひきて山 お前まつって 降りてきた ひとり生きてく 気ィならんがな》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二一二〕 

★春の息吹に 心は躍る 踊る心の 水の音
いはばしる 垂水たるみの上の さわらびの 萌えづる春に なりにけるかも
わらび 渓流ながれの水の 岩陰で 見たで見つけた 春や 春来た》 
                         ―志貴皇子―〔巻八・一四一八〕 

★塩津を越えて 越目指す 丈夫おとこ金村 何の旅
塩津しほつ山 うち越え行けば が乗れる 馬そつまづく いへふらしも
《わしの馬 塩津越えてて つまづいた 家で心配 してるできっと》
                         ―笠金村―〔巻三・三六五〕 

歴史編(14)うちとあんたにアキが来た?

2009年09月24日 | 歴史編
■平成21年9月24日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★天智の来訪 遠のく額田王ぬかた 鎌足亡くした 姉鏡王女かがみ
君待つと わが恋ひをれば わが屋戸やどの すだれ動かし 秋の風吹く
《あっすだれ 動いたおもたら 風やんか あんまりうちが 焦がれるよって》
                         ―額田王―〔巻四・四八八〕 


風をだに 恋ふるはともし 風をだに むとし待たば 何かなげかむ
うらやまし 風と間違まちごて うちなんか 待つ人おらんで なげかれへんわ》
                         ―鏡王女―〔巻四・四八九〕 





【すだれ動かし】へ


日めくり万葉集<4月>(その1)

2009年09月23日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月23日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★恋は知れたら 壊れてしまう・・・
あしひきの 山よりづる 月待つと 人にはひて いも待つ我を
みんなには 山出る月を 待ってるて 言うてお前を ワシ待ってんや》
                         ―作者未詳―〔巻十二・三〇〇二〕 

ちろがねも くがねも玉も・・・ の反歌が 続く
うりめば 子ども思ほゆ    《瓜を食うたら 思い出す
めば ましてしのはゆ     栗を食うても なおそうや
何処いづくより きたりしものそ     どこから来たんか この子供
眼交まなかひに もとなかかりて      目ぇつぶっても 顔浮かぶ
安眠やすいさぬ            ゆっくり寝られん 気になって》
                         ―山上憶良―〔巻五・八〇二〕 

★万葉集には 聖徳太子の歌一首
家にあらば いもが手まかむ 草枕 旅にやせる この旅人たびとあはれ
《家でなら 妻の まくらに 寝るやろに ここで死んでる いたわしこっちゃ》
                         ―聖徳太子―〔巻三・四一五〕 

★家持の憂鬱 春の所為せいばかりと言えず
うらうらに 照れる春日はるひに ひばり上がり 心悲しも ひとりしおもへば
《うららかな 雲雀も上がる 春の日に なんで悲しい 気持ちにんや》
                         ―大伴家持―〔巻十九・四二九二〕 

歴史編(13)貰うろた貰ろた!

2009年09月22日 | 歴史編
■平成21年月日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★豪胆鎌足 頬紅い
われはもや 安見児やすみこ得たり 皆人みなひとの 得難えかてにすといふ 安見児得たり
《わしろた 安見児ろた 誰もみな しい思おもてた 安見児貰ろた》
                         ―藤原鎌足―〔巻二・九五〕 





【安見児得たり】へ


日めくり万葉集<3月>(その4)

2009年09月21日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月21日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★海の航海 命がけ 人に手向けを 捧げるは 明日はわが身を 祈るため
行く船の かじ引き折りて 
をちこちの 島は多けど  
名くはし 狭岑さみねの島の 
荒磯面ありそもに いほりて見れば

《船梶止めて さみねじま なんけ船を 寄せたなら》
浪のの 繁き浜辺を 
敷栲しきたへの 枕になして 
荒床あらとこに 自伏ころふす君が
 
《波音高い 浜の陰 一人の人が 死んでいる》 
家知らば 行きても告げむ  
妻知らば も問はましを 
玉桙たまほこの 道だに知らず
 
《知らしたいけど 家分からん どこの誰やら 知らん人》 
おほほしく 待ちか恋ふらむ しき妻らは
《奥さんさぞかし 待ってるやろに》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二〇〕 

★大宰府の 赴任の先で 妻亡くし 旅人寂しい 戻り旅
行くさには 二人我が見し この崎を 独り過ぐれば 心悲しも 
《来るときは 二人で見たな このみさき ひとりとおるん 悲してならん》
                         ―大伴旅人―〔巻三・四五〇〕 

★春の憂いの 源は 我が身のことか 政治まつりのことか
春の野に 霞たなびき うら悲し この夕影ゆふかげに うぐひす鳴くも
《野に霞 日の射す宵に 鶯の 鳴いてる春が ワシもの悲し》 
                         ―大伴家持―〔巻十九・四二九〇〕 

★こんな可愛い子 取られてなるか
しめひて 我が定めてし 住吉すみのえの 浜の小松は のちも我が松
かこいして ワシのもんやと 決めた小松まつ おおきなっても ワシの松やで》
                         ―余明軍よのみょうぐん―〔巻三・三九四〕

★旅人帰還の 先行船は 郎党乗せて 大和を目指す
たまはやす 武庫むこの渡りに 天伝あまづたふ 日の暮れ行けば 家をしそおも
《きらきらと 武庫の海峡 日ィ暮れる 夕暮れ寂して 家思い出す》 
                       ―作者未詳―〔巻十七・三八九五〕 

赤人あかひと仰ぐ 霊峰は 今も皆人みなひと 仰ぎて誉める 
天地あめつちの わかれし時ゆ        《天地てんちのできた その昔
かむさびて 高く貴き          神が作った その山は  
駿河なる 布士ふじの高嶺を      駿河の国の 富士の山 
あまの原 ふりけ見れば      振り仰いでも 高過ぎて 
渡る日の 影もかくらひ        お日さん隠れ よう見えん 
照る月の 光も見えず         月の光も 届かへん  
白雲も い行きはばかり       白雲漂い よう行かん  
時じくぞ 雪は降りける        雪はいっつも 降っている 
語りつぎ 言ひつぎ行かむ     語り伝えて 言い継ごう  
不尽ふじの高嶺は             富士の高嶺の この尊さを》 
                         ―山部赤人―〔巻三・三一七〕 


歴史編(12)春がええんか秋やろか

2009年09月17日 | 歴史編
■平成21年9月17日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★春の花 秋のもみじの いづれが良いか 漢詩競いの 優劣つかず 
判定さばき任され おおきみ詠う


冬こもり 春さり来れば        《冬ってもて 春来たら
 鳴かざりし 鳥も鳴きぬ      鳴けへんかった 鳥も鳴く  
  咲かざりし 花も咲けれど       咲けへんかった 花も咲く  
                       そやけども  
   山をしげみ 入りても取らず      山茂ってて はいられん 
    ふかみ 取りても見ず        草深いから 取られへん 

秋山の 木の葉を見ては       秋山はいって 葉ぁ見たら
 黄葉もみちをば 取りてぞしの       紅葉こうようした葉は え思う
  青きをば 置きてぞなげ        けど青い葉は つまらへん 
 
そこしうらめし              そこが かなんな

秋山われは               〔うう~ん・・・〕秋やな うちは》 
                         ―額田王―〔巻一・一六〕 




【秋山われは】へ


日めくり万葉集<3月>(その3)

2009年09月16日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月16日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★夜勤妻 夫恋しと 呼び詠う 雇い主 粋な計らい 休暇授ける
いひめど うまくもあらず ぬれども 安くもあらず 
あかねさす 君がこころし 忘れかねつも 

めし食ても 美味おいしあらへん 寝てみても よう寝られへん
 あたたかな あんたの気持 忘れられへん》
                         ―佐為王さいのおおきみまかだち―〔巻十六・三八五七〕

★謀反罪 こうむる前夜 何話す 大和帰して よかったやろか 
わが背子せこを 大和へると さ夜更けて あかときつゆに わが立ち濡れし
《お前だけ 大和帰して 夜明けまで 夜露に濡れて 立ち尽くしてた》 
                         大伯皇女おおくのひめみこ―〔巻二・一〇五〕 

★恋仲の 男おどける 雪の中 何を見たかて 浮き立つ心
筑波嶺に 雪かも降らる いなをかも かなしき児ろが 布干さるかも 
筑波山つくばやま 雪降りやろか ちがうやろ わしの可愛かわい児 布干してんや》
                         ―東歌・常陸国歌―〔巻十四・三三五一〕 

★独り寝の ふと目覚めたら また独り
薦枕こもまくら あひまきし児も あらばこそ くらくも 我がしみせめ
《枕して 一緒に寝た児 生きてたら 夜のけるん 惜し思うのに》
                         ―作者未詳―〔巻七・一四一四〕 

★言霊を 出て行く船に 乗せて行け つ国向かう 遣唐使船
磯城島しきしまの 日本やまとの国は 言ことだまの たすくる国ぞ まさきくありこそ
日本やまとくに 言うたらかなう 言霊ことだまの 助ける国や 無事に帰れよ》
                       ―柿本人麻呂歌集―〔巻一三・三二五四〕 

★石見の国の 高角山たかつのやまで 依羅娘子よさみおとめを 恋しいと 袖振る人麻呂 無事帰れるか
笹の葉は み山もさやに さやげども われは妹思ふ 別れぬれば
《笹の葉が ざわざわ揺れる ざわざわと わしの胸かて 風吹き抜ける》 
                         柿本人麻呂―〔巻二・一三三〕 

歴史編(11)まだ惚れてんか元カノに

2009年09月15日 | 歴史編
■平成21年9月15日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
★兄に取られた おおきみ見つけ 近づく大海人おおあま とがめる額田
あかねさす 紫野むらさきの行き 標野しめの行き 野守のもりは見ずや 君が袖振る
《春野摘み 野守りが見るで して こっちを向いて 袖振ってたら》
                         ―額田王ぬかたのおおきみ―〔巻一・二〇〕

★委細構わず 大海人皇子おおあまおおじ 駒近づけて 呼びかける
紫の にほえるいもを 憎くあらば 人妻ゆゑに われ恋ひめやも
《そういな かわいいお前に 連れ合いが るん承知で さそたんやから》
                         ―大海人皇子おおあまのおうじ―〔巻一・二一〕




【茜さす】へ


日めくり万葉集<3月>(その2)

2009年09月14日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月14日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★東国で 徴発された 防守は 壱岐・対馬まで 死をして
父母が かしらで さきくあれて 言ひし言葉けとばぜ 忘れかねつる
ととかか 頭を撫ぜて 無事でなと 言うてくれたん 忘れられへん》
                         ―丈部稲麻呂はせつかべのいなまろ―〔巻二十・四三四六〕

★欲しいんは 足音せえへん 天馬かい
おとせず 行かむ駒もが 葛飾かづしかの 真間まま継橋つぎはし やまずかよはむ
《足音の てん馬欲し 知られんと 真間の継橋 ずっとれるで》
                       ―東歌・下総国歌―〔巻十四・三三八七〕 

★樹下美人 家持はんは ほんま見たんか
春の園 くれなゐにほふ 桃の花 したる道に で立つ娘子をとめ
《春さかり こう咲いてる 桃の花 下道したみちに 可愛かいらし児ぉが・・・》
                         ―大伴家持―〔巻十九・四一三九〕 

★奥深い 入野の果ては ずっと先
こひは まさかもかなし 草枕 多胡たご入野いりのの 奥もかなしも
《うちの恋 今も胸痛つらいし 奥深おくぶこう ずっうと先まで 胸痛つらいと思う》
                       ―東歌・上野国歌―〔巻十四・三四〇三〕 

★宮廷歌人 人麻呂さんも 人間ひとの思いも あらわに詠う
わが恋ふる 千重ちえ一重ひとえも なぐさもる こころもありやと 
吾妹子わぎもこが まず出で見し 軽のいちに わが立ち聞けば
 
えた気持ちを しずめよと
 お前のった 軽の市 行ってたずねて 探したが》
玉襷たまたすき 畝火うねびの山に 鳴く鳥の こゑも聞えず 
玉桙たまほこの 道行く人も 一人だに 似てし行かねば 
 
《行き交う人中ひとなか 声聞こえん 人多数よけるに 影見えん》
すべをみ 妹が名びて そでぞ振りつる
うろてしもて 名ぁ呼んで わめき回って 袖振りまわす》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二〇七〕 

歴史編(10)別れの旅や顔見せて

2009年09月11日 | 歴史編
■平成21年9月11日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
★明日香を捨てて 大津の宮へ 政務重視の 中大兄皇子おおえのおうじ 額田王おおきみ嘆く 三輪山別れ

味酒うまざけ 三輪みわの山 
あをによし 奈良の山の           《三輪山 奈良山 遠ざかる 
山のに いかくるまで 
道のくま いもるまでに           道まがるたび 隠れ行く 
つばらにも 見つつ行かむを         見つめときたい いつまでも  
しばしばも 見けむ山を          振り向き見たい 山やのに  
こころなく 雲の かくさふべしや        心無い雲  隠してしまう》 
                         ―額田王―〔巻一・一七〕 

三輪山を しかも隠すか 雲だにも こころあらなむ 隠さふべしや
《あかんがな うちの気持ちを 知ってたら 雲さん三輪山 隠さんといて》 
                         ―額田王―〔巻一・一八〕 





【雲だにも】へ


日めくり万葉集<3月>(その1)

2009年09月10日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月10日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
――――――――――――――――――――――――――――――――
★地霊を拝し 神饌そなえ 祈る有間に 利益りやくはあるか
家にあれば に盛るいひを 草枕 旅にしあれば しひの葉に盛る
《家ならば うつわに供えて 祈るのに 旅先やから しいで供える》
                         ―有間皇子ありまのみこ―〔巻二・一四二〕

★雪儚無はかのうに 消えたけど 恋心きもち果して 届いたやろか
梅の花 降りおほふ雪を 包み持ち 君に見せむと 取ればにつつ
《あの人に 梅に積む雪 見せたろと そっと持つけど ああ消えてまう》 
                         ―作者未詳―〔巻十・一八三三〕 

★思てたら わんといても 神さん届けて 呉れるんやろか
思はぬを 思ふと言はば 真鳥まとり住む 雲梯うなての社もりの 神し知らさむ
《思てるて 嘘をついたら 鷲の棲む 雲梯うなての神さん ばち当てはるで》
                         ―作者未詳―〔巻十二・三一〇〇〕 

★生きてたら ええことあるで 頑張ってみよ
事もなく 生きしものを 老いなみに かかる恋にも 我はあへるかも
《平凡に 生きてきたのに 年取って こんなまぶしい 恋するかワシ》 
                         ―大伴百代おおとものももよ―〔巻四・五五九〕

★大伴の 家名を背負う 家持に 叔母の郎女 未来を託す
草枕 旅行く君を さきくあれと 斎瓮いはひへゑつ 我がとこ
《越中へ 赴任のあんた 無事でねと うち祈ってる 陰膳据えて》 
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―〔巻十七・三九二七〕

歴史編(9)月出てきたし潮もええ

2009年09月09日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月9日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★新羅討伐 船が行く 熟田津湊にきたつみなと 月従えて
軍船の準備は 整っていた 
額田王おおきみ 月を 呼ぶのじゃ
そちの 霊力をもって 潮を叶える 月を呼びだすのじゃ」 

熟田津にきたつに 船乗ふなのりせむと 月待てば しほもかなひぬ 今はでな
熟田津にきたつで 月待ち潮待ち 船出ふなで待ち きた きた 来たぞ 今こそ行くぞ》
                        ―額田王ぬかたのおおきみ―〔巻一・八〕

額田王の朗唱が 合図となった  
船団は 一斉に 月夜の海へ 





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