ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

家持編(一)青春・恋の遍歴(09)気に入り同士 喜び頻り

2011年07月28日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年7月28日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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笠女郎いらつめは 直向き恋に 身を焦がす 家待宛てて 歌次々と

白鳥しらとりの 飛羽山とばやま松の 待ちつつぞ 我が恋ひわたる この月ごろを
《待ってんの もう長いこと なって仕舞た あんたしとうて 恋し続けて》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五八八〉

衣手ころもでを 打廻うちみの里に ある我れを 知らにぞ人は 待てどずける
打廻里さとって じっと待ってる 心内こころうち 知ってるやろに あんたえへん》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五八九〉

あらたまの 年のぬれば 今しはと ゆめよ我が背子せこ 我が名らすな
年月としつきが 経ったからて うち、、の名を ええやろ思て うたらあかん》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五九〇〉

我がおもひを 人に知るれか 玉匣たまくしげ 開きけつと いめにし見ゆる
《隠してる うち、、の思いが 知れたんか 櫛箱くしばこ開いてる 夢見てしもた》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五九一〉

やみに 鳴くなるたづの よそのみに 聞きつつかあらむ 逢ふとはなしに
《暗い夜に  鳴く鶴みたい 逢われんで あんたの噂 聞いてるだけや》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五九二〉

君に恋ひ いたすべなみ 平城山ならやまの 小松がしたに 立ち嘆くかも
《恋しゅうて どう仕様しょうて 奈良山の 松の下来て 嘆息ぼけっとしてる》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五九三〉

我が屋戸やどの 夕蔭草ゆふかげぐさの 白露の ぬがにもとな 思ほゆるかも
《庭に咲く 夕影草くさに置いてる 露みたい 心もとない 気持ちやうち、、は》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五九四〉

我が命の またけむ限り 忘れめや いやには 思ひすとも
《あんたはん うち、、は死んでも 忘れへん 日に日に募る 思いかかえて》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五九五〉



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家持編(一)青春・恋の遍歴(08)嬉し家待 はしゃぎにはしゃぐ

2011年07月25日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年7月25日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★これこそが 真実ほんまの恋や 見つけたぞ 笠女郎かさのいらつめ 似合いやわしに 

水鳥の 鴨の羽色はいろの 春山の おほつかなくも 思ほゆるかも
《春の山 ぼっと霞んで 見えんに あんたの気持ち よう分からへん》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻八・一四五一〉

朝ごとに 我が見る屋戸やどの 瞿麦なでしこの 花にも君は ありこせぬかも
《毎朝に 見る撫子なでしこの 花みたい あんた毎日 見たいて思う》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻八・一六一六〉

ぎりの おほに相見し 人ゆゑに 命死ぬべく 恋ひわたるかも
《霧みたい かおおぼろしか 見てへんに なんでこんなに 恋しいのやろ》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五九九〉

皆人みなひとを よとの鐘は 打つなれど 君をしへば ねかてぬかも
みんなみな 早よと鐘は 鳴るけども あんた思たら 寝られへんがな》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・六〇七〉

託馬野つくまのに ふる紫草むらさき きぬめ いまだ着ずして 色にでにけり
託馬野つくまのに えてる紫草くさで 染めた服 着てもせんのに 見られてしもた
〈あんたとは こころを染めた だけやのに 逢わへんうちに 知られてしもた〉》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻三・三九五〉

陸奥みちのくの 真野まの草原かやはら 遠けども 面影おもかげにして 見ゆといふものを
《あんたには しばらうて ないけども 面影浮かび うち、、見えてるで》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻三・三九六〉

奥山おくやまの 岩本いはもとすげを ふかめて 結びし心 忘れかねつも
《忘れへん あんなふこうに ちこたんや あんたの心 うち、、忘れへん》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻三・三九七〉

我が形見かたみ 見つつしのはせ あらたまの 年の長く 我れもおもはむ
《思ててや  うちの身代わり 見てながら うちもずうっと 思てるさかい》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〈巻四・五八七〉





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家持編(一)青春・恋の遍歴(07)こんな娘子児(おとめご) 見たことないぞ

2011年07月21日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年7月21日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★宮中で 見つけ娘子おとめに 一目惚れ 家待追うが 見事な振られ

かくしてや なほや退まからむ 近からぬ 道のあひだを なづみまゐ来て
《苦労して 来たのに帰れ うのんか 遠い道のり 難儀むりして来たに》
                         ―大伴家持―〈巻四・七〇〇〉 

こころには 思ひ渡れど よしを無み よそのみにして 嘆きぞ我がする
《心では おもうてるけど 伝手つてうて 余所よそながら見て わし嘆いてる》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一四〉 
千鳥鳴く 佐保の河門かはとの 清き瀬を 馬うち渡し 何時いつかよはむ
《佐保川の 千鳥鳴いてる 清い瀬を 馬走らして 早よかよいたい》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一五〉 
夜昼よるひると いふわき知らず 我が恋ふる 心はけだし いめに見えきや
《思てるで  夜昼無しの 恋ごころ きっとあんたの 夢に出たやろ》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一六〉 
つれも無く あるらむ人を 片思かたもひに 我れし思へば わびしくもあるか
《惚れたけど 連れないり されてもて ひとり思うん せつないこっちゃ》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一七〉 
思はぬに 妹がゑまひを いめに見て 心のうちに 燃えつつそ居る
微笑顔ほほえみを 思いがけずに 夢に見て わしの恋心こころは 燃え上ったで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一八〉 
大夫ますらをと 思へる我れを かくばかり みつれにみつれ 片思かたもひをせむ
《このわしが 苦恋こいするもんか おもてたに 胸きむしる 片恋かたこいすんや》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一九〉 
村肝むらぎもの こころくだけて かくばかり 我が恋ふらくを 知らずかあるらむ
《この胸が  張り裂けそうな わしの恋 あんたほんまに 知ってんやろか》
                         ―大伴家持―〈巻四・七二〇〉 

かくばかり 恋ひつつあらずは 石木いはきにも ならましものを 物はずして
《こんなにも 恋い焦がれんと 石や木に 成りたいもんや 心のたん》 
                         ―大伴家持―〈巻四・七二二〉 



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家持編(一)青春・恋の遍歴(06)なさずに措くか この恋の道

2011年07月14日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年7月14日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★実るかな 同じ身分の ひと相手 苦心家待 精を出す

夜中よなかに 友呼ぶ千鳥ちどり 物思ふと わびをる時に 鳴きつつもとな
《物思い  してる夜中に やかましに 千鳥鳴きよる よけ沈むがな》
                         ―大神女郎おおみわのいらつめ―〈巻四・六一八〉

霍公鳥ほととぎす 鳴きし登時すなはち 君がいへに 行けと追ひしは 至りけむかも
《鳴いたんで  思いを乗せて ホトトギス そっち行かした 着いたやろうか》
                         ―大神女郎おおみわのいらつめ―〈巻八・一五〇五〉

をみなへし 佐紀沢さきさわふる 花かつみ かつても知らぬ 恋もするかも
《佐紀沢に  咲いてるカツミ〔あやめ〕 かつてうち こんな思いは したことないわ》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七五〉

春日山かすがやま 朝ゐる雲の おほほしく 知らぬ人にも 恋ふるものかも
《山かる 朝雲みたい 気ィ晴れん なんであんたに 惚れたんやろか》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七七〉

ただに逢ひて 見てばのみこそ たまきはる いのちに向ふ 我が恋まめ
《命かけ 惚れた私の 恋ごころ じかに逢わんと おさまらへんわ》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七八〉

いなと言はば ひめや我が背 すがの根の 思ひ乱れて 恋ひつつもあらむ
《逢いたない  言うんやったら 無理言わん じっと我慢で 恋忍んでる》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七九〉

わたの底 奥を深めて 我が思へる 君には逢はむ 年はぬとも
《胸の奥 深うに思う あんたはん 時間掛けても きっとうたる》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七六〉

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ももしきの 大宮人は 多かれど こころに乗りて 思ほゆるいも
《宮仕え する女官さん いけども 心懸かるん あんただけやで》

上辺うはへなき 妹にもあるかも かくばかり 人のこころを 尽さく思へば
《このわしに  こんな思いを させるやて 罪な人やで あんた云う人》
                         ―大伴家持 ―〈巻四・六九一~二〉




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家持編(一)青春・恋の遍歴(05)やんごとなきを 相手にするか

2011年07月11日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年7月11日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★家持は 趣向を変えて 女王ひめぎみへ 恋の狩人 触手を伸ばす

おもふと 人に見えじと なまじひに 常に思へり ありぞかねつる
《物思い 知られんとこと 無理をして 思い悩むん ほんまにつらい》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一三〉

葦辺あしへより 満ちしほの いや増しに 思へか君が 忘れかねつる
《潮ちる みたいに慕情おもい こみあげて あんたのことが 忘られへんよ》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一七〉

秋萩に 置きたる露の 風吹きて 落つる涙は とどめかねつも
《風吹いて 萩の玉露 散るみたい うちの涙は められへんわ》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻八・一六一七〉

あひおもはぬ 人をやもとな 白栲しろたへの 袖つまでに ねのみし泣くも
《片思い  分かってんのに 思い詰め 袖びしょ濡れに なるまで泣くよ》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一四〉

我が背子せこは あひはずとも 敷栲しきたへの 君が枕は いめに見えこそ
《あんたはん  思ててくれん 思うけど せめて夢でも 出てくれへんか》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一五〉

剣太刀つるぎたち 名のしけくも 我れはなし 君に逢はずて 年のぬれば
《うちなんか なに言われても もうえわ 逢えん日なごう 続いたよって》
                         ―山口女王やまぐちのおおきみ―〈巻四・六一六〉





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家持編(一)青春・恋の遍歴(04)これは旨いぞ この手で行こか

2011年07月07日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年7月7日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★壷を得て 恋を求める 家持は 次から次と 手当たり次第

我が背子せこを あひ見しその日 今日けふまでに 我が衣手ころもでは る時も無し
《逢い引きの  日から今日まで ご無沙汰や うちは涙で 袖ぐしょ濡れや》
                         ―巫部麻蘇娘子かむなぎへのまそのをとめ―〈巻四・七〇三〉
栲縄たくなはの ながき命を りしくは 絶えずて人を 見まく欲りこそ
永遠とわまでの 命欲しいと おもたんは ずっとあんたと てたいからや》
                         ―巫部麻蘇娘子かむなぎへのまそのをとめ―〈巻四・七〇四〉

我が屋外やどの 萩花はぎはな咲けり 見に来ませ いま二日ふつかだみ あらば散りなむ
うちの庭 萩が咲いたで 見においで 二日もしたら 散ってしまうで》
                         ―巫部麻蘇娘子かむなぎへのまそのをとめ―〈巻八・一六二一〉

たれ聞きつ 此間ゆ鳴き渡る 雁がねの つま呼ぶ声の ともしくもあるか
《連れ呼んで 鳴き飛ぶ雁が うらやまし 誰かさんかて 聞いたんちゃうか》
                         ―巫部麻蘇娘子かむなぎへのまそのをとめ―〈巻八・一五六二〉

聞きつやと 妹が問はせる かりは まことも遠く 雲隠くもがくるなり
《聞いたかと あんたたずねる 雁の声 雲に隠れて 聞こえんかった》
                         ―大伴家持―〈巻八・一五六三〉 

秋づけば 尾花が上に 置く露の ぬべくも は 思ほゆるかも
《秋来たら すすき置く露 消えるに うちの命も 消えそに思う》
                         ―日置長枝娘子へきのながえのをとめ―〈巻八・一五六四〉

我が屋外やどの 一群ひとむら萩を 思ふ児に 見せずほとほと 散らしつるかも
うちの庭 れ咲く萩を いとし児に 見せず大方おおかた 散らしてしもた》
                         ―大伴家持―〈巻八・一五六五〉 





【いま二日だみ】へ


家持編(一)青春・恋の遍歴(03)何処にあるんや ほんまの恋は

2011年07月04日 | 家持編(一)青春・恋の遍歴
■平成23年7月4日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★家待の 恋の憧れ 募り増す 今日はあの児に 明日あしたはこの児

はつはつに 人をあひ見て いかにあらむ いづれの日にか またよそに見む
《ちょっとの 逢瀬おうせのあんた いつえる ちらっと姿 見られんやろか》
                         ―河内百枝娘子かふちのももえのをとめ―〈巻四・七〇一〉

ぬばたまの その夜の月夜つくよ 今日けふまでに 我れは忘れず なくし思へば
うたの あのえ月が 忘られん ずっとあんたを おもてるさかい》
                         ―河内百枝娘子かふちのももえのをとめ―〈巻四・七〇二〉

思ひる すべの知らねば 片もひの 底にそ我れは 恋ひなりにける
《恋心  晴らす仕方が 分からんで 片恋底に うち沈んでる》
                         ―粟田女娘子あはためのおとめ―〈巻四・七〇七〉
またも逢はむ よしもあらぬか 白栲しろたへの 我が衣手に いはひ留めむ
う手立て ないもんかなと 袖の端 結び合わして 祈ってるんや》
                         ―粟田女娘子あはためのおとめ―〈巻四・七〇八〉

鴨鳥かもどりの 遊ぶこの池に の葉落ちて 浮きたる心 我が思はなくに
《鴨遊ぶ 池に浮いてる 葉ぁみたい 軽い気持ちで るんとちゃうで》
                         ―丹波大女娘子たにはのおほめのをとめ―〈巻四・七一一〉

味酒うまさけを 三輪みわはふりが いはふ杉 れしつみか 君に逢ひがたき
《三輪山の 神さん杉に 手えさわり ばち当たったか あんた逢われん
〈身分ちゃう 人に誘われ その気なり うちアホやった うてもらえん〉》
                         ―丹波大女娘子たにはのおほめのをとめ―〈巻四・七一二〉

垣穂かきほなす 人言ひとごと聞きて 我が背子せこが こころたゆたひ 逢はぬこのころ
《取り巻きの 中傷うわさを聞いて あんたはん 躊躇とまどうてんか うてくれへん》
                         ―丹波大女娘子たにはのおほめのをとめ―〈巻四・七一三〉



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