ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

古事記ものがたり・上つ巻(10)少名毘古那神と 国造り

2012年12月31日 | 古事記ものがたり
少名毘古那神すくなびこなと国造り


大国主おおくにぬしの かみみこと
出雲いずも美保みほの 岬立ち
国の統一おさめの 策を練る





そこ へ遥かな 沖辺から
 を漕ぎ寄す 神がいる

さいガガイモ 舟にして
羽虫羽根はね着た さい神

 けど名告らぬ その神を
不思議思いし 大国主神おおくに
がま案山子かかしの 助け借り

神産巣日神かんむすひかみ お子様の
少名毘古那すくなびこなの 神と知る 

少名毘古那神すくなびこなに 下されし
天の命じは 大国主神おおくに
 合わせの 国造り

播磨 の国で 二つ神 
ふざけ競いを したと云う

大国主神おおくに我慢 くそこらえ 
少名毘古那神すくなつち背に 過重おもみ

負けた大国主神おおくに したくそに 
勝った少名毘古那神すくなは 土かぶ

これぞ 実りの 儀式にて 
じんのう神の 起こりとや
                (播磨風土記より)


伊予 国至り 二つ神 
些細ささいなことで いさかいに
弾みで少名毘古那神すくな 息絶える 



   悔やむ大国主神おおくに 思案すえ
   肥前 別府の 湯を引いて 
   少名毘古那神すくなひたすに よみがえ

   少名毘古那神すくなおどり 良う寝たと 
   云うが道後どうご湯 起こりとや
                     (伊予風土記逸文より)


国造つくなかばを 終えたとき
なんたることか 少名毘古那神すくなびこ
粟茎あわくきはじき 常世辺とこよべ

困り果てたる 大国主神おおくに
海面うなも光らせ 寄り来たる
神が申すに 「まつ
しからばれに 手を貸すが」

何処いずこまつれば 意に沿うや」

「大和御諸みもろの 山の上
 我れをまつれば 叶うぞよ」
これぞ大物おおもの 主神ぬしのかみ

 に成ったる 国造り
葦原あしはら中国なかくに 繁栄にぎわい
 は届きて 天上へ








古事記ものがたり・上つ巻(09)行かすものかと 須勢理比売命

2012年12月27日 | 古事記ものがたり
■行かすものかと 須勢理毘売命すせりひめ



大国主神おおくにぬしの 正妻まさづま
須勢理毘売命すせりひめみこ 嫉妬深しっとぶか
いつも大国主神おおくに 困らせる

   出雲国いずもくにから 大和国やまとへと
   出立いでたち支度じたく 済まわせて
   馬の背くらに 手を掛けて
   足をあぶみに 入れ乗せて

   送る 妻見て 謡う歌

   お身に着けたる  黒衣装
   似合いこの上 無いうに
    もと眺め これ合わぬ
   言いてかたわら 脱ぎ捨てる



  ぬばたまの 黒き御衣みけし
  つぶさに 取りよそ
   (ぴったりと)
  沖つ鳥 むな見る時
  はたたぎも これふさわず
   (袖広げ)
  つ波 そに

替わり着けたる  青衣装
これ は似合うと 思うのに
 もと眺め も一つと
言いてかたわら 脱ぎ捨てる

  そに鳥の 青き御衣みけし
  つぶさに 取りよそ
   (ぴったりと)
  沖つ鳥 むな見る時
  はたたぎも ふさわず
   (袖広げ)
  辺つ波 そに

山畑やまで育てた たでいた
木染きぞめの汁で 染めたふく
着替え またまた 身に着けて
 もと眺め これ良しと

  山方やまがたに きし あたね
  染木そめきが汁に きぬ
  つぶさに 取りよそ
   (ぴったりと)
  沖つ鳥 むな見る時
  はたたぎも よろ
   (袖広げ)

   言いてこのわし  困らせる
   何といとしい 我が妻よ
   わしがみな連れ 行ったなら
   わし がここ出て 行ったらば
   泣かず 待つよと 言うたとて



  いとこやの いもみこと 
  群鳥むらとりの 我が群れなば
  引け鳥の 我が引けなば
  泣かじとは は言うとも

山でえてる 薄花すすきばな
項垂うなだれて 泣く様子さま
 の雨が 霧となろ
ああいとしやな 我が妻よ
 故事いにしえごとは くのごと

  山処やまとの 一本ひともとすすき
  項傾うなかぶし が泣かさまく
  朝雨あささめの 霧に立たんぞ
  若草の 妻のみこと 
   事の 語りごとも をば
                ―古事記歌謡(五)―

須勢理比売すせり酒杯さかづき 手に取りて
かたわら 寄り沿うて 捧げ酒杯はい持ち 謡う歌

八千矛神やちほこがみよ 我が夫
この国べる 我が夫
男に御座おわす お前さま
めぐる島々 崎々に
めぐる磯々 どこにでも
たおやか妻が 待ち居ろう

  八千矛やちほこの 神のみこと
  吾が 大国主おおくにぬし
  こそは せば
  打ちる 島の崎々
  かきる 磯の崎ちず
   若草の 妻持たせらめ

この身おみなの わらわには
お前 さまより 男無い
お前さま外 おっと無い

  我はもよ にしあれば
  て は無し
  て つまは無し


   あや帷帳とばりの 揺れる下
   麻の布団ふとんの やわい下
   こうぞ布団ふとんの 鳴る下で
   ふくよかやわい この胸を
   白く輝く このかいな
   撫でてさすって いだ
   共にこの手を からませて
   足くつろげて 共寝なませや
   さあさこの美酒みき 召されませ




  綾垣あやかきの わやが下に
  苧衾むしぶすま にこやが下に
  栲衾たくぶすま さやぐが下に
  沫雪あわゆきの 若やる胸を
  栲綱たくづのの 白きただむき
  そだたき たたまながり 
  (撫で擦り  (抱き愛おしみ)
  真玉手またまで 玉手さし
  股長ももながに をし
  豊御酒とよみき たてまつらせ
                ―古事記歌謡(六)―

   二人してから 酒杯はい上げて
   大和 なんぞへ 今よりは
   屹度きっと行かぬと 約束やく交わし

互いの首に うで回し
ここの出雲いずもに 鎮座なされる











古事記ものがたり・上つ巻(08)八千矛神通う 沼河比売に

2012年12月24日 | 古事記ものがたり
八千矛神やちほこ通う 沼河比売ぬなかわひめ


出雲の国で 大国主神おおくに
待ちて家る 八上比売やかみひめ

   須勢理比売すせり伴い 戻れるを
   くやなげかし 思えども
   須勢理比売すせり神の子 須佐之男命すさのお
   娘なるかに 口つぐ

   やがて須勢理比売すせりの 気強したたか
   気圧けおされえて おそれてか
   した木俣神きまたを 残し置き
   悲しさ胸に 因幡国くに帰る



諸々もろもろ国を 従えに
旅先出向く 大国主神おおくに
行く先々で 妻めと

妻をめとるが 先なのか 
国の治めが 目的めあてかや
国治おさめと共に 重要だいじなは
子孫残すの 妻めと

妻を求めて 八千矛神やちほこは 
           (大国主神の別名)
 の国へと 出掛け行き

沼河比売ぬなかわひめを めとるとて 
屋敷 訪ねて 謡う歌

我れ八千矛神やちほこは 良き妻と
国中くにじゅ探すが 見当たらず
遥か 遠くの 越国に
賢明かしこおみな 居ると聞き
うるわおみな 居る聞きて
めとんとて 国でて
道はるばると 辿たどり来る

  八千矛やちほこの 神のみことは 
  八島国やしまくに 妻きかねて 
  遠々とおとおし 高志こしの国に 
  さかを 有りと聞かして 
  くわを 有りと聞こして 
  さよばいに あり立たし 
  よばいに あり通わせ 

大刀たちはずして 羽織はおり脱ぐ
くつろいとま あらばこそ
娘子おとめの眠る 板の戸を
押して開こと はするが
引いて開こと もするが

  大刀たちも いまだかずて 
  おすいをも いまだかねば 
  娘子おとめの すや板戸を 
   押そぶらい 我が立たせれば 
  (押し揺すり)
   引こづらい 我が立たせれば 
  (引き揺すり)

明け方近く ぬえが鳴く
夜明けすぐにと きじが鳴く
今やにわとり 鳴きはじ
忌々いまいましやな 鳥ども
ぶち殺すぞや 鳥ども
 あまけ鳥の 伝えたる
 故事いにしえごとは くのごと

  青山に ぬえは鳴きぬ 
  さ野つ鳥 きぎしとよむ 
  庭つ鳥 かけは鳴く 
  心痛うれたくも 鳴くなる鳥か 
  この鳥も 打ちめこせね 
    うや 天馳使あまはせづかい 
    事の 語りごとも をば
           ―古事記歌謡(二)―

聞いた沼河比売ぬなかわ 戸はけず
屋敷うちにて 謡う歌

八千矛神やちほこがみよ お願いよ
わらわおみなの 身なればぞ
入江なぎさに 棲む鳥よ
ひとり寂しに る鳥よ

  八千矛やちほこの 神のみこと 
  え草の おみなにしあれば 
  我が心 浦渚うらすの鳥ぞ 
  今こそは 我鳥わどりにあらめ 

明日はそなたの 鳥と成ろ
鳴鳥なくを許せや 殺すなや
 あまけ鳥の 伝えたる
 故事いにしえごとは くのごと

  のちは 汝鳥などりにあらんを 
  いのちは な死せたまいそ 
    うや 天馳使あまはせづかい 
    事の 語りごとも をば
           ―古事記歌謡(三)―

 b>今日のこの日が 暮れたらば
明日の夜けに またここへ
 勇んで お越しあれ
  青山に 日がかくらば 
  ぬばたまの でなん 
  朝日の み栄え来て 


   白く輝く このかいな
   ふくよかやわい この胸を
   撫でてさすりて いだ
   共にこの手を からませて
   足くつろげて 共寝もしよう
   焦がれこらえて お待ちあれ
   八千矛神やちほこがみよ お願いよ
   故事いにしえごとは くのごと




   栲綱たくづのの 白きただむき 
   沫雪あわゆきの 若やる胸を 
   そだたき たたまながり 
   (撫で擦り(抱き愛おしみ)
  真玉手またまで 玉手さしき 
  股長ももながに さんを 
  極度あやに な恋い聞こし 
  八千矛やちほこの 神のみこと
    事の 語りごとも をば
           ―古事記歌謡(四)―

その夜の逢瀬おうせ かなわずに 
明くる来る夜に 逢いし








古事記ものがたり・上つ巻(07)迫る炎に 大国主神は

2012年12月20日 | 古事記ものがたり
■迫る炎に 大国主神おおくにぬし

須佐之男命すさのおもとに 辿たどり着き
やかたうに 迎え出た
須佐之男命すさのお娘 須勢理比売すせりひめ

大国主神おおくに見るに 一目

振舞ふるまい 気にさわ
須佐之男命すさのおみこと らしめと
大国主神おおくにぬしを 蛇小屋ごや

須勢理比売すせり機転きてんに 領巾ひれ渡し
 蛇が来たらば 三度振れ」
お陰大国主神おおくに 良き目覚め

翌晩つぎに泊まるは 百足むかで小屋
またも百足むかでの み嫌う
領巾ひれを貰いて 退治
難を逃れた 大国主神ぬしのかみ


   さればと須佐之男命みこと 野に行きて
   矢を飛ばして 取れよとて
   大国主神おおくに行かせ 火を放つ

   迫る炎に むせけむ
   そこにでたる 野の鼠
    内はほらほら 外はすぶ」
          (中は洞穴  口すぼむ)



察し大国主神おおくに 穴中あななか
やがて 火は去り 野の鼠
た矢くわえて 得意したり

「ここは居れぬ」と 大国主神ぬしのかみ
寝入る須佐之男命みことの 髪の毛を
柱々に わえつけ

須佐之男命みこと自慢の 大刀たち弓矢
持って須勢理比売すせりを 背と逃げる

気付き目覚ます 須佐之男命みことがみ

追う は逃げるは 着きたるは
葦原中国あしはら 根之堅州国ねかたす 国境くにざかい

追うこれまでと 須佐之男命みことがみ

「我が大刀たちゆみで 兄神あにがみ
  討ち滅ぼして 国造れ
  くれてやるぞよ 我が娘」

須佐之男命みこと大刀たち弓 たずさえて
八十やそ兄神あにがみ 次々と
 の尾根にと 追い伏せて
河の瀬ごとに 追い払い
出雲いずもくにへと 戻り

ここに伊耶那岐神いざなき 始めたる
豊葦原とよあしはらの 水穂みずほくに
統一おさめ成し遂げ 足掛かり
得たる大国主神おおくに 今こそと
果たす旅にと で向かう







古事記ものがたり・上つ巻(06)助けられたる 因幡の兎

2012年12月17日 | 古事記ものがたり
■助けられたる 因幡いなばの兎

須佐之男命すさのおみことの 子や孫が
次々 産まれ 六代目

生まれなさった  神こそは
五つ名の持つ 名高なだか

先ずは大国おおくに 主神ぬしのかみ
又の名前を 大穴牟遅神おおなむち
又に葦原あしはら 色許男神しこおかみ
又に八千矛やちほこ かみ
宇都志国うつしくに 玉神たまのかみ

大国主神おおくにぬしは 末っ子で
八十兄神やそあにがみの 疎外者つまはじき

みな連れ立って 因幡いなばへと
向かう目当ては 八上比売やかみひめ
妻にめとろと 旅に出る











   大国主神おおくにぬしは 兄神あにがみ
   荷物 持たされ 大袋

   行く手気多岬けたさき 海岸に
   赤裸はだか兎が 伏せている

聞けば棲居すまいは 隠岐おきの島
わにたばかり 海越そと
たが露見ろけんし 皮がる






兄神あにがみ虚言うそに 乗せられて
海水みずひたって 日にすが
皮膚かわは引きれ 死ぬ思い

哀れ思いて 大国主神おおくに
清ら 水にて 身を洗い
がまの穂綿に くるまれと
助言ことば残して 兄神あにを追う

残る兎は 合点がてんする
八上比売やかみを得るは 大国主神おおくに

 思いの 現れか
八上比売やかみ選ぶは 大国主神おおくにぞ 

いか八十兄神やそがみ 談わし
大国主神おおくにぬしを き者と

伯耆ほうき手間山てまやま ふもとにて
いのししを 狩るが故
れが待ち受け 捕えよと
言いて火焼岩ひいわで 抱き殺す

嘆く母命ははがみ 天界に
助け求めて  知恵貰う

貝の白身しろみを 削り取り
貝汁しる練り合わせ 塗るや否
大国主神おおくにぬしは 蘇生よみがえ

驚く兄神あには また謀議はか

大木たいぼく引きて け目
くさびめした 隙間すきまへと
大国主神おおくに誘い 挟潰しめ殺す

またも助けに 母命ははみこと

「いずれき者 ここ居れば
 そちのおやなる 須佐之男命すさのお
 いま根之堅州国ねかたす 訪ね行き
 逃げて隠れ」と 追いいだ








古事記ものがたり・上つ巻(05)大蛇退治の 須佐之男命

2012年12月13日 | 古事記ものがたり
大蛇おろち退治の 須佐之男命すさのおみこと



天上 世界 追放の
須佐之男命すさのおみこと り立つは
出雲国いずも肥川ひかわの 川ほと

流れる 箸に 誘われて
のぼる川上 嘆き声
おきなおうなと その娘
櫛名田比売くしなだひめが 泣きて伏す

聞けば 恐ろし 哀れにも
山奥まう 大大蛇おろち
里にり来て 娘食う

八つ の頭に 八つ尾持つ
八つたに八つ とぐろ巻く
高志こし八俣やまたの 大蛇おろち

ここ に至るに 七娘
既に喰われて 残る
今に 今年も  食いに来る

聞いた須佐之男命すさのお 策さず


「重ねかもした 強い酒
 垣を八つに めぐらせて
 造った棚に おけ八つ
 酒をたせて って待て」

やがてり来た 大蛇おろち
 の匂いに 誘われて
八つの鎌首 桶中おけなか

酔った大蛇おろちを 須佐之男命すさのお
十拳とつかつるぎで 八つに


切った尻尾しりおに 出るつるぎ
霊妙たえなるつるぎ 神宿かみなりと
天照大御神あまてるもとへ さし送る
これぞ草薙くさなぎ つるぎなり

助けた娘 櫛名田比売くしなだ
めと出雲いずもに 清々すがすが
居場所求めて 辿たどり着く

そこに宮殿みやどの 築く時
雲立ちのぼる 様子さまを見て
謡い なされし 歌ぞこれ

《雲湧きあがる ここ出雲いずも
 立つ雲八重やえに 重なれる
 妻こもらせに 作る垣
 囲み幾重いくえの 八重の垣
 我れめぐらせる 八重の垣》

  八雲立つ 出雲いずも八重垣
  妻みに 八重垣作る 
   その八重垣を
        ―古事記歌謡(一)―








古事記ものがたり・上つ巻(04)岩戸隠れの 天照大御神

2012年12月10日 | 古事記ものがたり
岩戸隠れの 天照大御神あまてらす


恐れいかれる 天照大御神あまてらす
思案しあん余って 天岩屋あめいわや
もりはいって 身を隠す

天上世界 陰おお
高天原たかまがはらは 暗闇に

地上葦原あしはら 中つ国
真っ暗 闇の 夜ばかり

高天原たかまがはらの 安河原やすかわら
八百万神やおよろずかみ 集りて
思案投げ首 策さぐ

思金神おもいかねがみ 知恵の神
思い付き たる その策は

集め来たとり 鳴きめに

あめ香久山かぐやま 茂り立つ
根こそぎった さかき
八尺やさか勾玉まがたま 八咫やた
楮布こうぞ麻布あさを 垂らし

天児屋命あめのこやねが 祝詞のりと寿ぐ 

そこ に登場 極めつき

天宇受売命あめのうずめが おけに乗り
足踏み 鳴らし 舞い踊る
あらわ姿の 神憑くるい舞

どっと喚声かんせい 万神よろずがみ
響く鶏声とりごえ 天を

岩戸いわとひそむ 天照大御神あまてらす
何事なりと 怪訝けげん
細め岩屋戸いわやと 開き見る



   戸際とぎわ控えし 手力男命たぢからお
   得たりとお手を とらえ引く

   射し込むかり の光
   天上 地上 闇晴れる







古事記ものがたり・上つ巻(03)荒れて暴れる 須佐之男命

2012年12月06日 | 古事記ものがたり
荒れて暴れる 須佐之男命すさのおみこと


貴い 神の 三つ柱
産んだ伊耶那岐神いざなき 喜ばれ

天照大御神あまてらすかみ 天上世界てんじょう
月読命つくよみそなた 夜世界
須佐之男命すさのおそちは 海原世界うなばら
しずめ治めと めい下す

めいに従い それぞれが
おさめ給える その中に
須佐之男命すさのおひとり おさめせず

大人なるまで 泣きめで

涙のもとの 水吸引いて
川や海れ 干上がって
 の草木は 枯れ果てる

そこに悪神わるがみ つけ込みて
暴れまくって  国荒れる

泣く理由わけただす 伊耶那岐神いざなき
須佐之男命すさのおみこと 答えるは

 無き我れは 甘えたや
何処いずこるやの 確かめに
根之堅州国ねのかたすくに 訪ねたや

聞いた伊耶那岐神いざなき 腹立てて
置いて 置けぬぞ この国に
何処どこなと行けと 突き放す

ならと須佐之男命すさのお その場蹴り
いとまいをば し来ると
天照大御神あまてらす居る 空目指し
あらぶれわめき 駆けのぼ

空待ち受ける 天照大御神あまてらす
戦闘いくさ支度じたくに 身を包み
「何に来た」と 呼ばわれば

 悪意さらさら 持ちはせぬ
 母無き言うに 勘気かんき触れ
 別れ告げに」と 須佐之男命みこと言う

なんじこと 信ずるに
 何ぞ証拠あかしの あらばこそ」

「ならば誓約うけいで 証明あかさん」と
天の安河やすかわ 中にして
向かい 対する 二つ神

天照大御神あまてらすかみ 進み出て
須佐之男命みことつるぎ 折りくだ
三つの女神めがみを 生みいだ

須佐之男命すさのおみこと 負けじとて
天照大御神みかみ装身具かざりを くだ
生んだ男神おがみが 五つ柱

中に天孫てんそん 降臨こうりん
登場 いたす 神これぞ
天之忍穂あめのおしほの 耳命みみみこと

「我がつるぎより 生まれたる
 三つの柱は 女神おんながみ
 争いせぬは おみなにて
 これぞ潔白けっぱく あかしなり」

言うや須佐之男命すさのお 勝ち誇り
縦横無人じゅうおうむじん し放題




   あぜを断ち切り みぞを埋め
   御殿ごてんくそを き散らす
   果ては機屋はたやの 屋根こぼ
   馬のぎ皮 投げ落とす







古事記ものがたり・上つ巻(02)禊ぎ濯ぎて 三つ柱

2012年12月03日 | 古事記ものがたり
みそすすぎて 三つ柱

あとに残りし 伊耶那岐神いざなき
焦がれ妻追い 黄泉よみくに

辿たど辿たどりて あの世国
尋ね当てたる 伊耶那美神いざなみ
岩戸さかいに 呼び掛ける

り残したる 国造り
 共にさんに 戻れぬか」

「我れは黄泉よみくに 釜戸かまどめし
  食いしからには 戻れぬが
 なんじいとしに 黄泉よみがみ
 願いかなうや だんじるに
 しばし時を」と 岩戸奥

待つに久しの 伊耶那岐神いざなき
今や遅しの れ心
え切れずして 岩戸中

囲む暗闇くらやみ せめてもと
櫛歯くしは抜き取り 火をとも

広がる火影ほかげ 浮かびしは
見る におぞまし 腐り果て
うじにまみれた 妻姿すがた

驚き逃げる 伊耶那岐神いざなき
「我れに恥をば かせし」と
仰臥せる伊耶那美神いざなみ 浮き立ちて
 しや待てと 追いて来る



   かてて加えて 黄泉よみくに
   雷鬼かみなりおにや 鬼醜女おにしこめ
   わさわさわさと 湧きいだ
   つかみ掛かりて 襲い来る

   逃げる伊耶那岐神いざなき 髪飾り
   投げてわせた 山葡萄やまぶどう
   鬼醜女しこめらう 逃げ走る


なおも追い来る 鬼醜女しこめへと
投げるくしの歯 たけのこ
らう逃げて また走る

れる伊耶那美神いざなみ しからばと
雷鬼かみなりおにに 黄泉よみ軍隊へい
加勢 と付けて 迫り来る

十拳とつかつるぎで 伊耶那岐神いざなき
雷鬼おにや軍勢 切り伏せて
黄泉よみ比良坂ひらさかに 辿たどり着き
生える桃の木 魔除まよけの実
三つをもぎ取り 投げてば
さしもの雷鬼おにも 軍勢も
呪力じゅりょくに負けて 引き返す

なおも追い来る 伊耶那美神いざなみ
通じ比良坂ひらさか ふさぐにと
千引ちびき大岩 引きいだ
すやに ふたをする

千引岩いわの向こうで 伊耶那美神いざなみ
「おのれ悔しや 我がのろ
 日に千人せんたりを 締殺ころすにて」

ならと伊耶那岐神いざなき 「我れ建てる
千五百せんごひゃくなる 産屋うぶやを」と

這々ほうほうていで 黄泉よみくに
抜けだしえた 伊耶那岐神いざなき

けがれ落しの みそぎにと
川にはいりて 身をすす

すすぎするたび 次々に
新し神が 生まれ
ついにお顔を 洗う時

左目産むは 天照大御神あまてらす
つくよみみこと 右目から
須佐之男命すさのおみこと お鼻から