恨み恨みて 余りある
雄略天皇 如何にせん
墓を暴きて 奴霊魂
報復せずに 置くべきや
顕宗天皇 積年の
墓を壊せの 命出すに
兄の意祁命 申し出る
「恨み抱くは 我れもまた
墓を暴くは 我が役目
屹度の果たし 約束すにて」
行きて意祁命 陵の
傍ら少し 取り壊ち
帰り「役目を 果たせり」と
報告為すに 顕宗天皇は
「早き帰りは 訝しや
如何に壊ちし 兄者人」
「少し壊ち」と 意祁命
「父が仇なる 墓なるぞ
悉と壊ち 何故に為ん」
聞きて兄意祁命 諭すには
「恨み晴らすは 孝行ぞ
したが父上 従弟にて
国の天皇 なれる方
悉と壊ち 後の世の
人の誹謗を 受けずかや
如何なるかや 天皇」
兄の言い条 道理なと
顕宗天皇は 頷けり
顕宗天皇 後受けて
兄の意祁命 即位して
仁賢天皇 御代となる
続きその皇子 小長谷
若雀命 即位され
武烈天皇 なるぞかし
武烈天皇 御子なしに
近江国お住みの 袁本杼命
応神天皇 五世子孫
上京らせ申し 皇后にと
武烈天皇 姉君の
手白髪郎女 お迎えし
継体天皇 お成りなる
以下にと続く 天皇は
安閑天皇
宣化天皇
欽明天皇
敏達天皇
用命天皇
崇峻天皇
最後推古の 天皇が
継がれる以ちて 巻閉じる
ここに縷々とぞ 語り来し
古事記の ものがたり
全巻正に 完結なり