歴史編（37）あの皇子が ああ あの皇子が

■平成21年12月9日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★壬申の　乱を制した　高市皇子たけちみこ　身罷り歴史　区切りをつける　

〈前半は「歴史編〔18〕天下分け目の決戦や」〉
・・・わご大君　皇子みこの御門みかどを 神宮かむみやに 装よそひまつりて 使はしし
御門みかどの人も 白拷しろたへの　麻衣あさごろも着き
《〔亡くなりはった〕皇子おうじの御殿みやを　飾って祀まつり　　白装束しろしょうぞくの　仕つかえの人は》
埴安はにやすの 御門の原に 茜あかねさす 日のことごと 鹿ししじもの い匍はひ伏ふしつつ
ぬばたまの　夕ゆふへになれば　大殿を ふり放さけ見つつ　鶉うづらなす い匍はひもとほり
《日中ひなか一日　腹はら這ばい伏して　夕べ来たなら　這はいずり回る》
侍さもらへど　侍さもらひ得えねば　春鳥はるとりの さまよひぬれば　
嘆なげきも いまだ過ぎぬに 憶おもひも いまだ尽つきねば
《心虚うつろに　狼狽うろたえばかり　嘆きは消えず　思いも尽きず》
言ことさへく 百済くだらの原ゆ　神葬かみはふり 葬はふりいませて 麻裳あさもよし 城上きのへの宮を　
常宮とこみやと 高くしまつりて 神ながら 鎮しづまりましぬ
《野辺の送りに　百済原くだらを通り　城上きのえに常宮とこみや　高々作り　御霊みたま鎮めと　お祀まつり申す》
然しかれども わご大君の 万代よろづよと 思ほしめして 作らしし 香具山の宮
万代に　過ぎむと思へや　天あめの如　ふり放け見つつ　玉襷たまだすき　かけて偲しのはむ 恐かしこくありとも
《祀まつりしつつも　万世よろずよまでと　思おもうて作った　香具山宮を
　いついつまでも　心に懸けて　皇子みこを偲んで　振り仰ぎ見ん》
―柿本人麻呂―　（巻二・一九九後半）

ひさかたの　天あめ知しらしぬる　君ゆゑに　日月ひつきも知らに　恋ひ渡るかも
《高市たけち皇子みこ　天昇られた　思おもうても　何日経たっても　諦めきれん》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―　（巻二・二〇〇）
埴安はにやすの　池の堤つつみの　隠沼こもりぬの　行方ゆくへを知らに　舎人とねりはまとふ
《埴安の　池の淀んだ　水みたい　お付きの舎人　行き所どころない》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―　（巻二・二〇一）
哭沢なきさわの　神社もりに神酒みわすゑ　祷祈いのれども　わご大君は　高日知らしぬ
《哭沢の　神さんの前　酒据すえて　祈ったけども　甲斐かいないこっちゃ》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―桧隈女王ひのくまのおほきみ―（巻二・二〇二）





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歴史編（36）別れたあとで悔いるん男

■平成21年12月7日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★但馬皇女ひめみこの　訃報を聞いて　穂積皇子ほづみみこ　雪降る空に　昔を偲ぶ
降る雪は　あはには降りそ　吉隠よなばりの　猪養ゐかひの岡の　寒からまくに
《雪そない　降ったらあかん　猪養いかい岡おか　あの人の墓　寒がるよって》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―穂積皇子―〔巻二・二〇三〕

★鳴く雁の　声に思わず　蘇る　但馬皇女ひめみこ詠う　悲痛の心
言ことしげき　里に住まずは　今朝けさ鳴きし　雁かりに副たぐひて　去いなましものを
《人の口　うるさい里捨て　今朝鳴いた　雁と一緒に　去いてしまいたい》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―但馬皇女―〔巻八・一五一五〕

★黄葉葉もみじばの　散るんを見たら　胸痛い　雁の声聞き　なお更つらい
今朝けさの朝明あさけ　雁かりが音ね聞きつ　春日山かすがやま　黄葉もみちにけらし　わが情こころ痛いたし
《雁の声　明け方聞いた　春日山　黄葉こうようしたんや　胸締めつける》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―穂積皇子―〔巻八・一五一三〕

秋萩は　咲くべくあるらし　わが屋戸やどの　浅茅あさぢが花の　散りぬる見れば
《秋萩は　もう咲くんやろ　家うちの庭　浅茅の花は　散って仕舞しもうた》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―穂積皇子―〔巻八・一五一四〕





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歴史編（35）恋の火点いたら命もいらん

■平成21年12月3日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★但馬皇女たじまひめ　点いた恋の火　止め様よない　火でも水でも　お構いなしや
秋の田の　穂ほ向むきに寄れる　片かた寄よりに　君に寄りなな　言痛こちたくありとも
《なにやかや　うるそう言われ　辛つらいけど　あんたに寄りたい　稲穂いなほみたいに》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―但馬皇女―〔巻二・一一四〕　

後おくれ居ゐて　恋ひつつあらずは　追おひ及しかむ　道の隈回くまみに　標しめ結ゆへ我わが背せ
《残されて　泣いてるよりは　追おうて行く　通る道々　〔追っ手止める〕標縄しめ張れあんた》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―但馬皇女―〔巻二・一一五〕　


人言ひとごとを　繁しげみ言痛こちたみ　己おのが世に　いまだ渡らぬ　朝川渡る
《あんまりに　やかましよって　心決め　一線越えた　うちのせい違ちゃう》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―但馬皇女―〔巻二・一一六〕　





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歴史編（34）お日さん東 月西に

■平成21年11月30日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★人麻呂の　かぎろい名歌　生んだ野は　今も静かに　夜明け待つ

やすみしし　わが大王おほきみの　高たか照てらす　日ひの皇子みこ　
神かむながら　神かむさびせすと　太敷ふとしかす　京みやこをおきて
《天皇おおきみの御子おこ　皇子おうじさん　立派に成長　しなさって　天皇おおきみ治める　京みやこ出発たち》
隠口こもりくの　泊瀬はつせの山やまは　真木まき立つ　荒あら山道やまみちを　石いはが根ね　禁樹さへきおしなべ
《初瀬はつせの山の　山道を　岩よじ登り　木を分けて》
坂さか鳥とりの　朝越えまして　玉たまかぎる　夕さりくれば　み雪降る　安騎あきの大野おおのに　
旗薄はたすすき　小竹しのをおしなべ　草枕　旅宿りせす　いにしへ思ひて
《朝越えなさり　夕方ゆうべには　雪の降ってる　安騎野あきの着き
　ススキや竹を　　敷きつめて　父君偲んで　旅宿り》
―柿本人麻呂―〔巻一・四五〕　
　
阿騎あきの野に　宿やどる旅人　うちなびき　眠いも寝ぬらめやも　いにしへ思おもふに
《阿騎あき野のまで　狩りに来たのに　昔来た　草壁皇子みこ思い出し　みな寝ねられへん》
―柿本人麻呂―〔巻一・四六〕　
ま草刈る　荒野にはあれど　黄葉もみぢばの　過ぎにし君が　形見かたみとぞ来こし
《ここ阿騎野　荒れ野やけども　草壁皇子みこさんが　儚はかのうなった　追慕ついぼの場所や》
―柿本人麻呂―〔巻一・四七〕　
東ひむかしの　野に炎かぎろひの　立つ見えて　かへり見すれば　月傾かたぶきぬ
《日が昇る　月沈んでく　西空に　草壁皇子みこの面影　浮かんで消える》
―柿本人麻呂―〔巻一・四八〕　
日並ひなみしの　皇子みこの命みことの　馬並なめて　御猟みかり立たしし　時は来き向むかふ
《今はない　草壁くさかべ皇子みこが　馬並べ　狩に出たんも　いまこの時分》
―柿本人麻呂―〔巻一・四九〕　






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歴史編（33）あの児いまごろ・・・

■平成21年11月26日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★都居り　瞑目めいもくすれば　潮騒が　聞こえる伊勢の　行幸みゆき風景

鳴呼見乃浦あみのうらに　船乗ふなのりすらむ　孃嬬おとめらが　珠裳たまもの裾すそに　潮満みつらむか
《あみの浦　　船遊びする　あの児らの　裾を濡らすか　潮満ちてきて》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻一・四〇〕　


釧くしろ著つく　　手節たふしの崎さきに　今日けふもかも　大宮人おおみやびとの　玉たま藻も刈かるらむ
《喜々として　手節たふしの崎で　きれえな藻　採とってるやろか　今日もあの児ら》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻一・四一〕　


潮騒しほさゐに　伊良虞いらごの島辺しまへ　漕ぐ船に　妹乗るらむか　荒き島廻しまみを
《波荒い　　伊良湖の島の　島めぐり　喜んでるか　あの児も乗って》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻一・四二〕　






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歴史編（32）神さんみんな仕えてなさる

■平成21年11月20日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★山や川　ひれ伏すように　声響く　人麿詠う　宮殿みやどの讃歌

やすみしし　わご大君　神ながら　神さびせすと　
吉野川　激たぎつ河内かふちに　高殿を　高知りまして　登り立ち　国見をせせば
《天皇さんは　神さんや　吉野の川の　河かわ淵ふちに　御殿やかた造られ　登りみる》
畳たたなはる　青垣山あおかきやま　山神やまつみの　奉まつる御調みつきと　
春べは　花かざし持ち　秋立てば　黄葉もみちかざせり　
《山の神さん　飾かざりやと　春には花を　咲かせはり　秋には黄葉もみじ　作りはる》
逝ゆき副そふ　川の神も　大御食おほみけに　仕つかへ奉まつると　
上かみつ瀬に　鵜川うかはを立ち　下しもつ瀬に　小網さでさし渡す　
《川の神さん　御馳走ごちそうと　上流かみで鵜飼を　楽しませ　下流しもで網取り　さしなさる》
山川も　依よりて仕つかふる　神の御代かも
《山や川　みんな仕える　天皇おおきみさんに》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻一・三八〕　

山川も　依よりて仕つかふる　神ながら　たぎつ河内かふちに　船出せすかも
《山川の　神も仕つかえる　天皇おおきみが　逆巻く川に　船出ふなでしなさる》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻一・三九〕　






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歴史編（31）吉野宮滝ええとこでっせ

■平成21年11月18日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★大海人の　思い出深い　宮滝に　離宮作りて　行幸みゆき重ねる
やすみしし　わご大君の　聞きこし食めす　天あめの下に　国はしも　多さはにあれども　
山川の　清き河内かふちと　御心を　吉野の国の　花はな散ちらふ　秋津の野辺のへに　
宮柱　太ふと敷しきませば
《天皇おおきみの　お治めなさる　国々は　仰山ぎょうさんあるが
　山川の　綺麗きれえなとこと　気に入りの　吉野の国の　秋津野あきつのに
　宮殿みやどの作り　おわしまし》
百磯城ももしきの　大宮人は　船ふね並なめて　朝川渡り　舟ふな競こそひ　夕河渡る　
《お連れの人は　朝となく　夕ゆうべとなしに　船遊び》
この川の　絶ゆることなく　この山の　いや高知らす　
水みず激たぎつ　滝たぎの都は　見れど飽あかぬかも
《流れ続ける　川水と　高たこう高たこうに　茂る山　その滝の宮　見飽けへん》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻一・三六〕　

見れど飽かぬ　吉野の河の　常滑とこなめの　絶ゆることなく　また還り見む
《見飽けへん　　吉野の川に　また来たい　またまた来たい　ずうっとずっと》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻一・三七〕　





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歴史編（30）湖淋しに日が暮れる

■平成21年11月16日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★草茂り　霧が流れる　古宮は　雲を霞と　消え果て流る
玉襷たまだすき　畝火うねびの山やまの　橿原かしはらの　日知ひじりの御代みよゆ　生あれましし　神かみのことごと　
樛つがの木きの　いやつぎつぎに　天あめの下した　知しらしめししを　
《畝傍の山の　橿原の　神武じんむの御代みよを　始めとし
　引き継ぎ来きたる　大君おおきみの　治め給いし　都やに》
天そらにみつ　大和やまとをおきて　あをによし　奈良山ならやまを越こえ　いかさまに　思おもほしめせか　
《何を思おもたか　大和捨て　奈良山越えて　はるばると》
天離あまざかる　夷ひなにはあれど　石いは走ばしる　淡海あふみの国くにの　
楽浪さざなみの　大津おおつの宮みやに　天あめの下した　知しらしめしけむ　
《近江の国の　大津宮おおつみや　都移しを　したんやろ》
天皇すめろぎの　神かみの命みことの　大宮おおみやは　ここと聞きけども　大殿おおとのは　ここと言いえども　
春草はるくさの　繁しげく生おひたる　霞かすみ立ち　春日はるひの霧きれる　ももしきの　大宮処おおみやどころ　見れば悲しも
《それや言うのに　　その都　目当ての場所は　草繁り　大宮大殿　見当たらん
　どこ行ったか　雲霞かすみ　悲しさ募る　大宮処》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻一・二九〕　

ささなみの　志賀の辛崎からさき　幸さきくあれど　大宮人びとの　船待ちかねつ
《唐崎は　そのまんまやが　待ってても　古都人ふるみやひとも　船も来えへん》
―柿本人麻呂―〔巻一・三〇〕　

ささなみの　志賀の大わだ　淀よどむとも　昔の人に　またも逢あはめやも
《詮せん無ないな　淀よど水みずみたいに　留とどまって　昔の人に　逢あおう思おもても》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻一・三一〕　

古いにしへの　人にわれあるや　ささなみの　故ふるき京みやこを　見れば悲しき
《この古い　都見てたら　泣けてくる　古い時代の　自分ひとやないのに》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―高市黒人たけちのくろひと―〔巻一・三二〕

淡海あふみの海うみ　夕浪ゆうなみ千鳥ちどり　汝なが鳴なけば　情こころもしのに　古いにしへ思おもほゆ
《おい千鳥　そんなに啼きな　啼くたんび　古都みやこ思うて　堪たまらんよって》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻三―二六六〕　





【ささなみの】へ

歴史編（29）誰もがみんなぼっとして

■平成21年11月12日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★舎人らの　すすり泣き声　聞こえてる　皇子の御殿は　寂しゅうなった
ひさかたの　天あめ見るごとく　仰あふぎ見し　皇子みこの御門みかどの　荒れまく惜おしも
《慕いつつ　仰いで見てた　皇子みこの御殿みや　人住まへんで　荒れて行くんや》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻二・一六八〕　

★日は天皇てんの　月は皇子さん　二人いて　この国御代は　栄え行くのに
あかねさす　日は照らせれど　ぬばたまの　夜渡る月の　隠かくらく惜おしも
《明るうに　日は照るけども　月みたい　光ひかってられた　皇子みこ見られへん》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻二・一六九〕　

★鳥かても　ご主人探し　泳いでる　いくら待っても　出でなさらんに
島の宮　勾まがりの池の　放ち鳥どり　人目に恋ひて　池に潜かづかず
《皇子みこがいた　宮の池住む　放ち鳥　人恋しいと　水に潜もぐらん》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻二・一七〇〕　




【池に潜かず】へ

歴史編（28）なんでやねん！

■平成21年月日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★政敵を　葬り去って　わが子（草壁皇子）をば　やっと帝位に　就かそとしたに

天地あめつちの　始はじめの時　ひさかたの　天あまの河原かはらに　
八百万やほよろづ　千万神ちよろづかみの　神集かむつどひ　集ひ座いまして　神分かむあがち　分あがちし時に　
《天あまの河原に　世の始め　神々多く　集まって　統治おさめの国の　定めした》
天あま照てらす　日女ひるめの尊みこと　天あめをば　知らしめすと　
葦原あしはらの　瑞穂みづほの国を　天地の　寄り合ひの極きはみ　知らしめす　神の命みことと　
天雲あまぐもの　八重かき別けて　神かむ下くだし　座いませまつりし
《天国あまくに統治おさめる　天照あまてらす　国の極みの　瑞穂みずほ国くに　治め給えと　孫みこさんを
　雲かき分けて　降くだらせる》
高照らす　日の皇子は　飛鳥とぶとりの　浄きよみの宮に　神かむながら　太ふと敷しきまして　
天皇すめろぎの　敷しきます国と　天の原　石門いはとを開き　神あがり　あがり座いましぬ
《孫みこの子孫そのみこ　天武帝　飛鳥の宮に　国作る
　作った天皇おおきみ　身罷みまかって　天てんの国くにへと　上のぼられる》
わご王おほきみ　皇子みこの命みことの　天の下　知らしめしせば　
春はる花はなの　貴たふとからむと　望月もちづきの　満たたはしけむと　
天の下　四方よもの人の　大船ふねの　思ひ憑たのみて　天つ水　仰あふぎて待つに　
いかさまに　思ほしめせか　
《天武帝みかどの　その御子おこが　治め給えば　この国は
　春は花咲き　望月は　満みつベきものと
　世の人の　望み頼みて　その時が　今に来るかと　思いしに》　
由縁つれもなき　真弓まゆみの岡をかに　宮柱　太敷き座いまし　御殿みあらかを　高知りまして　
朝ごとに　御言みこと問はさぬ　日月ひつきの　数多まねくなりぬる　
そこゆゑに　皇子の宮人　行方知らずも　
《縁無き里の　真弓まゆみ岡おか　築いた御殿みやは　殯宮あらきみや
　お言葉なしの　日数ひかず過ぎ　仕える宮人みやびと　途方にくれる》　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―柿本人麻呂―〔巻二・一六七〕　
　　　　　　　　　　　　　　　※殯宮あらきのみや―埋葬に先立つ新城あらきでの祀り





【仰ぎて待つに】へ

歴史編（27）山の神さん守ってあげて

■平成21年11月4日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★大津皇子おおつみこ　胸に無念の　思い秘め　鴨に別れの　水面が揺れる
百もも伝づたふ　　磐余いはれの池に　鳴く鴨を　今日のみ見てや　雲隠りなむ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―大津皇子―〔巻三・四一六〕　
《磐余いわれ池いけ　鳴く鴨見るん　今日だけや　定めや思おもて　この世を去るか》

★仰ぎ見る　二上山ふたかみやまに　陽が沈む　独りぽっちの　大伯おおくや哀れ
うつせみの　人にあるわれや　明日よりは　二上山ふたかみやまを　弟世いろせとわが見む
《明日あしたから　二上山ふたかみやまを　弟と　思おもうて暮らそ　この世でひとり》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―大伯皇女―〔巻二・一六五〕　

★馬酔木花　風にゆれるを　眺め見る　大伯の胸に　風吹き抜ける
磯の上うへに　生おふる馬酔木あしびを　手た折をらめど　見すべき君が　ありと言はなくに
《岸に咲く　馬酔木あしびの花を　採とりたいと　思おもても見せる　お前は居らん》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―大伯皇女―〔巻二・一六六〕　




【二上山を】へ

歴史編（25）永遠の別れか姉弟

■平成21年10月27日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★雲行きは　天武身罷り　定まらず　大津・草壁　衝突するか
わが背子せこを　大和へ遣やるとさ夜更けて　暁あかとき露つゆに　わが立ち濡れし
《お前だけ　　大和帰して　夜明けまで　夜露に濡れて　立ち尽くしてた》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―大伯皇女―〔巻二・一〇五〕　

★身に迫る　危険知らずか　大津皇子おおつみこ　馬を飛ばして　都へ戻る
二人行けど　　行き過ぎ難き　秋山を　いかにか君が　独り越ゆらむ
《二人でも　　行きにくい山　どないして　お前　一人で　越えて行くんか》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―大伯皇女―〔巻二・一〇六〕　






【暁あかときつゆに】へ

歴史編（23）ええ女にはみな参る

■平成21年10月21日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★郎女いらつめの　魅力に負けて　大津皇子おおつみこ　じっと我慢の　山陰やまかげしずく
あしひきの　　山のしづくに　妹待つと　われ立ちぬれぬ　山のしづくに
《お前待ち　夜更けの露に　濡れてもた　お前待ってて　雫しずくに濡れた》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―大津皇子―〔巻二・一〇七〕　

★郎女の　返しの歌は　蠱惑的　大津益々　思いが募る
われ待つと　　君がぬれけむ　あしひきの　山のしづくに　成らましものを
《うち待って　あんたが濡れた　山やま雫しずく　成りたかったな　その山やま雫しずく》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―石川郎女いしかわのいらつめ―〔巻二・一〇八〕

★現場をば　持統密偵　暴かれて　開き直るは　大津の皇子おうじ
大船の　津守の占うらに　告のらむとは　正まさしに知りて　わが二人寝ねし
《見つかんの　　分かってたんや　始めから　知ってた上で　二人寝たんや》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―大津皇子―〔巻二・一〇九〕　






【われ立ちねれぬ】へ

歴史編（22）からこうたけどワシの負け

■平成21年10月19日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★すぐそこの　実家の妻に　構かまい文　したり顔する　天武の帝みかど
わが里に　大雪降れり　大原の古ふりにし里に　降らまくは後のち
《わしの里　大雪降った　お前居おる　そっちの田舎　まだまだやろな》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―天武天皇―〔巻二・一〇三〕　

★受け取った　機知の夫人は　負けてない　思わず苦笑　天武の帝みかど
わが岡の　おかみに言ひて　降らしめし　雪のくだけし　そこに散りけむ　
《そら違ちゃうで　うちの神さん　願いして　降らしてもろた　雪のカケラや》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―藤原夫人ふじはらのぶにん―〔巻二・一〇四〕





【大雪降れり】へ

歴史編（21）わし見て育て

■平成21年10月15日■
万葉集に詠われた歌を　歴史の流れに沿って　採り上げ　「大阪弁」で訳します
いわく　「大阪弁万葉集」
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★懐ふところに　皇子を抱き　思い出す　逃れし吉野　今ここに立つ
淑よき人の　　　　　　　　《よろし人〔わしが〕　
　よしとよく見て　　　　　　よう〔状況〕見てからに　
　　よしと言いし　　　　　　　よし〔出陣〕言うた　
　　　吉野よく見よ　　　　　　　吉野　よう見い〔覚えとくんや〕　
　　　　良き人よく見　　　　　　　よろし人〔わしを〕よう見〔見習うんや〕》　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―天武天皇―〔巻一・二七〕　

＜日めくり万葉集５月（その２）との重複　ご容赦ください＞



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