ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

旅人編(19)見舞いご苦労 無事お帰りを

2010年09月30日 | 旅人編
■平成22年9月30日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★死に病 九死一生 見舞い人 安堵見送り ひのもり八幡やしろ

草枕 旅行く君を うるはしみ たぐひてそし 志賀しか浜辺はまべ
《あんたはん 旅立たれるの しよって ついて来たんや 志賀の浜まで》
                         ―大伴百代―〔巻四・五五六〕 
周防すはなる 磐国山いはくにやまを えむ日は よくせよ 荒しその道
《岩国の 山越える日は 神さんに ちゃんとおがみや 道けわしから》
                         ―山口若麿―〔巻四・五五七〕 




磐国山いはくにやまを】へ


旅人編(18)えらいことやで病気になった

2010年09月27日 | 旅人編
■平成22年9月27日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★遠国で 思わぬ病 得て仕舞て 息も絶え絶え さすが旅人も

わが盛り いたくくたちぬ 雲に飛ぶ 薬はむとも また変若ちめやも
《もう年や  長生き薬 飲んだかて 若返ること できやせんがな》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八四七〕 
雲に飛ぶ 薬はむよは 都見ば いやしきが身 また変若ちぬべし
《長生きの 薬飲むより 一目ひとめでも 都を見たら また若返る》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八四八〕 

【便りもらいし 吉田宜】 
遙遙はろはろに 思ほゆるかも 白雲の 千重ちへへだてる 筑紫つくしの国は
《白雲が 隔てて遠い 筑紫国 思う心も 遥々はるばる遠い》
                         ―吉田宜よしだのよろし―〔巻五・八六六〕
君がゆき 長くなりぬ 奈良路なる 山斎しま木立こだちも かむさびにけり
《行ってもて 長い日たった 奈良の家 庭の木立こだちも うら寂びてもた》
                         ―吉田宜よしだのよろし―〔巻五・五六七〕

【病床旅人 元気なころに】
さす竹の 大宮人おほみやびとの 家と住む 佐保の山をば 思ふやも君
《あんたはん  奈良の都で 住んどった 佐保のお山が 懐かしないか》
                         ―石川足人いしかわのたりひと―〔巻六・九五五〕
やすみしし わご大君おほきみの 食国をすくには やまと此処ここも 同じとそ思ふ
《何を言う 何処どこっても おんなじや 日本の国やで 大和もここも》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九五六〕 




【倭も此処も】へ


旅人編(17)わしは逢うたで 玉島天女

2010年09月23日 | 旅人編
■平成22年9月23日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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よろしへと 送る便りに 戯歌ぎか添えて 羨ましいか 玉島娘子おとめたで

松浦川 川の瀬早み くれなゐの の裾濡れて 鮎か釣るらむ
《川の瀬が  早いよってに 紅い裾 濡らして鮎を 釣ってんやろか》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八六一〕 
ひとみなの 見らむ松浦まつらの 玉島を 見ずてやわれは 恋ひつつらむ
みんなして 見てる玉島 ええ景色 わし見られんと あこがれるだけ》
                         ―大伴旅人―〔巻五・五六二〕 
松浦川 玉島の浦に 若鮎わかゆ釣る いもらを見らむ 人のともしさ
《玉島の  浦で若鮎 釣る児らを 見てるあんたら 羨ましいで》
                         ―大伴旅人―〔巻五・五六三〕 

吉田宜よしだのよろしからの返書

君を待つ 松浦の浦の 娘子をとめらは 常世とこよの国の 天娘子あまをとめかも
《あんたはん 待ってるうた 娘子おとめらは 桃源郷の 仙女せんにょやきっと》
                           ―吉田宜よしだのよろし―〔巻五・八六五〕





【天娘子かも】へ


旅人編(16)川跳ねるんは 若鮎(あゆ)娘子(おとめ)か

2010年09月16日 | 旅人編
■平成22年9月16日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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松浦川まつらがわ 桃源郷の 水淵に 遊ぶ娘子おとめは うつつか夢か
 
旅人たびとの問いかけ歌】
あさりする 海人あまの児どもと 人はいへど 見るに知らえぬ 良人うまひとの子と
《魚釣る 漁師の子やと うけども 見たら分かるで 良家ええしの子やろ》

娘子おとめの応える歌】
玉島の この川上かはかみに 家はあれど 君をやさしみ あらはさずありき
《そうやねん うち川上に あるけども 恥ずかしよって うそついたんや》

旅人たびとの娘子を誘う歌】
松浦川まつらがは 川の瀬光り あゆ釣ると 立たせるいもが すそれぬ
《鮎釣ろと 光る川瀬に 立ってはる あんたのすそ 濡れてるやんか》〔乾かしたろか〕
松浦なる 玉島川に 鮎釣ると 立たせる子らが 家路いへぢ知らずも
《玉島の 川の瀬立って 鮎釣りを してるあんたら うち何処どこやねん》
とほつ人 松浦の川に 若鮎わかゆ釣る いも手本たもとを われこそ巻かめ
《松浦の  川で若鮎 釣ってはる あんたと一緒に 泊まってみたい》

【娘子の誘いに応える歌】 
若鮎わかゆ釣る 松浦の川の 川波の なみにしはば われ恋ひめやも
《若鮎を  釣ってる川の 波みたい 浮いた気持ちと 違うでうちは》
春されば 吾家わぎへの里の 川門かはとには あゆばしる 君待ちがてに
《春来たら  うちの家ある 里の川 鮎飛び跳ねる あんたを待って》
松浦川 七瀬ななせの淀は よどむとも われはよどまず 君をし侍たむ
《川の瀬が  淀むようには 悩まんと あんた信じて うち待ってるで》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八五三~八六〇〕 




【鮎子さ走る】へ


旅人編(15)都の友に お裾分け

2010年09月13日 | 旅人編
■平成22年9月13日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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うたげ果て 名残を胸に この思い よろしわかれと 筆を執る


残りたる 雪にまじれる 梅の花 早くな散りそ 雪はぬとも
《残り雪  混じって咲いてる 梅の花 雪消えたかて 散らんといてや》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八四九〕 
雪の色を  奪ひて咲ける 梅の花 今盛りなり 見む人もがも
《白雪に 負けんと咲いてる 梅の花 誰か見る人 てへんやろか》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八五〇〕 
わが宿やどに 盛りに咲ける 梅の花 散るべくなりぬ 見む人もがも
《うちの庭 咲いてる梅は 散りそうや 誰か見る人 らへんやろか》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八五一〕 
梅の花 いめに語らく 風流みやびたる 花とあれふ 酒に浮べこそ
《梅の花 夢でうたで 酒坏さかづきに 浮かべて欲しい わし風流人すきもんや》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八五二〕 

おくれ居て ながひせずは 御園生みそのふの 梅の花にも ならましものを
うらやんで 梅のうたげを 思うより いっそ成りたい ぬしの梅花》
                         ―吉田宜よしだのよろし―〔巻五・五六四〕




【雪にまじれる】へ


旅人編(14)酔えば益々 気勢が上がる

2010年09月09日 | 旅人編
■平成22年9月9日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★降る雪か 咲いた梅かと 見紛うぞ 酔いが回れば まして尚更
【第四組の歌】 
春の野に り立ち渡り 降る雪と 人の見るまで 梅の花散る
《春の野で  霧立つみたいに 雪降ると 思うほどまで 梅散っとおる》
                      ―筑前目田氏真上でんしのまかみ―〔巻五・八三九〕

はるやなぎ かづらに折りし 梅の花 たれうかべし 酒坏さかづき
《柳の葉 折って頭に 飾ってる 誰か酒坏さかづき 花浮かべてる》
                      ―壱岐目村氏彼方そんしのをちかた―〔巻五・八四〇〕

鶯の おと聞くなへに 梅の花 吾家わぎへの園に 咲きて散る見ゆ
《鶯の  声に合わせて うちの庭 梅が花咲き 散るんが見える》
                      ―対馬つしまの高氏老かうしのおゆ―〔巻五・八四一〕

わが宿の 梅の下枝しつえに 遊びつつ 鶯鳴くも 散らまく惜しみ
《下枝で  鳴いてる鶯 上枝で 咲いてる梅を 散らしとないんや》
                      ―薩摩さつまの目高氏海人あまひと―〔巻五・八四二〕

梅の花 折り插頭かざしつつ 諸人もろひとの 遊ぶを見れば 都しぞ
《梅の花  頭に挿して 遊んでる そんなん見たら 都が恋し》
                      ―土師はにし氏御道しのみみち―〔巻五・八四三〕

いもに 雪かも降ると 見るまで ここだもまがふ 梅の花かも
《お前ん 乱れ散るんは 雪やろか そう見えたけど 梅の花やで》
                      ―小野氏くにかた―〔巻五・八四四〕

鶯の  待ちかてにせし 梅が花 散らずありこそ 思ふ子がため
《鶯が 咲くの待ってた 梅の花 散らんといてや みな見たいんや》
                      ―筑前じやう門氏石足もんしのいはたり―〔巻五・八四五〕

霞立つ 長き春日はるひを 插頭かざせれど いやなつかしき 梅の花かも
《花して 春日はるひ一日いちにち 遊んでも 梅のみやびは 堪能たんのうできん》
                      ―小野氏淡理たもり―〔巻四・八四六〕




【誰か浮かべし】へ


旅人編(13)飲めや歌えや 宴盛り上げて

2010年09月06日 | 旅人編
■平成22年9月6日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★宴盛ん 盛り上げ図る そのネタは 梅に鶯 宴に酒か
【第参組の歌】 
春なれば うべも咲きたる 梅の花 君を思ふと 夜眠よいなくに
《春が来て  やっぱり咲いた 梅の花 寝られんほどに 楽しみしてた》
                      ―壱岐守いきのかみ板氏安麿はんしのやすまろ―〔巻五・八三一〕

梅の花 折りてかざせる 諸人もろひとは 今日けふあひだは たのしくあるべし
みんなみな 梅をかみし 遊んでる 今日一日を 楽しもやんか》
                      ―神司かむづかさ荒氏稲布こうしのいなしき―〔巻五・八三二〕

毎年としのはに 春のきたらば かくしこそ 梅を插頭かざして 楽しく飲まめ
《年毎に 春が来たなら こないして 梅を頭挿かざして 飲んで楽しも》
                      ―大令史だいりやうし野氏宿奈麿やしのすくなまろ―〔巻五・八三三〕

梅の花 今盛りなり 百鳥ももどりの 声のこほしき 春来たるらし
《梅の花 今真っ盛り 鳥々とりどりの 声聞きとなる 春が来たんや》
                      ―少令史せうりやうし田氏肥人でんしのうまひと―〔巻五・八三四〕

春さらば はむとひし 梅の花 今日けふあそびに あひ見つるか
《春来たら 逢いたいおもてた 梅の花 今日のうたげで 逢うことでけた》
                      ―薬師高氏義通かうしぎつう―〔巻五・八三五〕

梅の花 手折たを插頭かざして 遊べども らぬ日は 今日にしありけり                    
《梅の花 頭に挿して 一日を ほうけ尽くして まだ飽きたらん》
                      ―陰陽師おんやうじ礒氏法麿ぎしののりまろ―〔巻五・八三六〕

春の野に 鳴くや鶯 なつけむと わが家の園に 梅が花咲く
《春の野で  鳴く鶯を 呼ぼとして うちの庭先 梅 花咲かす》
                      ―笇師さんし志氏大道ししのおほみち―〔巻五・八三七〕

梅の花 散りまがひたる おかには 鶯鳴くも 春かたけて
《梅の花  散ってる岡で 鶯も 鳴きに来てるで 春もうそこや》
                      ―大隅目おおすみのさくわん榎氏鉢麿かしのはちまろ―〔巻五・八三八〕




【飽き足らぬ日は】へ


旅人編(12)春は楽しや 皆して遊ぼ

2010年09月02日 | 旅人編
■平成22年9月2日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★梅花に 柳蘰し 春愛でる 今日の日楽し 暮れんで欲しな

【第弐組の歌】
梅の花 らくは何処いづく しかすがに このの山に 雪は降りつつ
《花何処どこに 散ってるんやろ ああそうか 城山きやまに降ってる 雪のことかい》
                      ―大監だいけん伴氏百代ばんしのももよ―〔巻五・八二三〕

梅の花 散らまく惜しみ わが園の 竹の林に うぐひす鳴くも
《梅の花  散るん惜しいと 庭に来て 鶯竹で 鳴いとおるがな》
                      ―少監しょうげん阿氏奥島あしのおくしま―〔巻五・八二四〕

梅の花 咲きたる園の 青柳を かづらにしつつ 遊び暮らさな
《梅の花 咲いてる庭の やなぎを 頭にして 一日遊ぼ》
                      ―少監しょうげん土氏百村としのももむら―〔巻五・八二五〕

うちなびく 春の柳と わが宿やどの 梅の花とを 如何いかにか分かむ
《春風に 靡く柳と 咲く梅と どっちええやろ う~んむつかし》
                      ―大典史氏ししの大原―〔巻五・八二六〕

春されば 木末こぬれかくれて 鶯そ 鳴きてぬなる 梅が下枝しづえ
《梢では  姿見えんと 鶯は 鳴き移ってく 下の枝へと》
                      ―少典山氏若麿―〔巻五・八二七〕 

ひとごとに 折り插頭かざしつつ 遊べども いやづらしき 梅の花かも
《いろいろに  頭に挿して 遊んでも 梅のゆかしさ 尽きることない》
                      ―大判事だいはんじ丹氏麿たんしのまろ―〔巻五・八二八〕

梅の花  咲きて散りなば 桜花 継ぎて咲くべく なりにてあらずや
《梅の花  散ってしもても その次は 桜の花が 待ってて咲くよ》
                      ―薬師くすりし張氏福子ちやうしのふくし―〔巻五・八二九〕

万代に 年はとも 梅の花 絶ゆることなく 咲き渡るべし
《このあとも 毎年毎年 梅の花 ずうっとずっと 続けて咲けよ》
                     ―筑前すけ佐氏子首さしのこおびと―〔巻五・八三〇〕






【折り插頭かざしつつ】へ