ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

日めくり万葉集<10月>(その7)

2010年01月28日 | 日めくり万葉集
■平成22年1月28日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★筑波嶺に 登り蟲麻呂 嬥歌かがひ見る 混じりもせんと 筆走らせる

わしの住む 筑波の山の 裳羽服津もはきつの 
   その津のうへに あともひて
       未通女をとめ壮士をとこの 行きつど
          かがふ嬥歌かがひ
 
《筑波の山の の泉 連れもちつどう 女や男
    歌の掛け合い 袖引く催事まつり
人妻ひとづまに われも交らむ わが妻に ひとこと
   この山を うしはく神の 昔より
      いさめぬ行事わざぞ 今日けふのみは
         めぐしもな見そ 言もとがむな

《よその嫁はん わし口説きたい うちの嫁はん 口説いてえで
      神さん認めた この日の催事まつり 何も言わんと 目ぇつぶってよ》
                    ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五九〕 

の神に 雲立ちのぼり 時雨しぐれ降り とほるとも われ帰らめや
《雲湧いて  時雨が降って 濡れたかて つれ出来るまで ワシいねへんぞ》
                    ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七六〇〕 


人麻呂編(10)帰って来たで大和の国に

2010年01月25日 | 人麻呂編
■平成22年1月25日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★夢に見た 大和島山 滲んでる 霞の所為せいか 涙の所為か

稲日野いなびのも 行きぎかてに 思へれば 心こほしき 可古かこしま
《退屈な 印南野いなみのつづく おお見えた 加古の港や 待ってたんやで》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五三〕 

飼飯けひの海の にはくあらし 刈薦かりこもの みだづ見ゆ 海人あまの釣船
飼飯けひうみは いだみたいや つり船が いっぱい出てきた こら大漁や》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五六〕 

天離あまざかる ひな長道ながぢゆ 恋ひれば 明石のより 大和島やまとしま見ゆ
《長い道 恋し恋しと 明石来た 海峡かいきょう向こうに 大和の山や》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五五〕 






【大和島見ゆ】へ


日めくり万葉集<10月>(その6)

2010年01月21日 | 日めくり万葉集
■平成22年1月21日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★一瞬の 恋に懸けるは おんなさが 男嬉しが 少したじろぐ

恋ひ恋ひて へる時だに うるはしき こと尽してよ 長くと思はば
《恋い焦がれ やっと逢えたで いてたら 甘い言葉を いっぱいうて》
                       ―大伴坂上郎女―〔巻四・六六一〕 

★弟を 思う切ない 姉ごころ 露に濡れつつ 一人たたずむ
ふたり行けど  行き過ぎかたき 秋山を いかにか君が ひとり越ゆらむ
《二人でも  行きにくい山 どないして お前 一人で 越えて行くんか》
                         ―大伯皇女―〔巻二・一〇六〕 

★越前へ 向かう旅路の 近江路の ふと人恋し 一人旅ゆえ
伊香山いかごやま 野に咲きたる 萩見れば 君が家なる 尾花をばなし思ほゆ
《咲く萩を 伊香いかごの山で 見かけたら あんたの家の 尾花が浮かぶ》
                         ―笠金村―〔巻八・一五三三〕 



人麻呂編(09)海の藻見たらお前懐かし

2010年01月19日 | 人麻呂編
■平成22年1月19日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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旅道たびみちは 死別れ覚悟 辛い道 見る海落ち葉 皆妻恋に

つのさはふ 石見いはみの海の ことさへく からの崎なる 
海石いくりにそ 深海松ふかみるふる 荒磯ありそにそ 玉藻はふる

からみさきの 海底うみそこの 岩にはミルが 生えている 磯には玉藻 育ってる》 
玉藻なす なびし児を 深海松ふかみるの 深めておもへど 
し夜は いくだもあらず つたの 別れしれば
 
《靡く藻みたいに 寝たあの児 深い心で おもてたが
 寝た夜なんぼも あれへんに 置いて出て来て しもたんや》 
きも向かふ 心をいたみ 思ひつつ かへりみすれど 
大船の わたりの山の 黄葉もみちばの 散りのまがひに 妹がそで さやにも見えず
 
《せつうなって 振り向いた 落葉えらいに 降ってきて お前振る袖 見えやせん》 
嬬隠つまごもる 屋上やがみの山の 雲間より 渡らふ月の しけども かくろひ来れば 
《お前住んでる 屋上やがみ山 照ってる月を 隠すよに 隠れてしもて さみしなる》
あまつたふ 入日さしぬれ 大夫ますらをと 思へるわれも 敷栲しきたへの ころもの袖は 通りて濡れぬ
《お日さん沈んで わびしなり なんぼわしでも 泣けてきて 袖を濡らして 仕舞しもたんや》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三五〕 
青駒あおごまの 足掻あがきを早み 雲居くもゐにそ いもがあたりを 過ぎてにける
《馬のやつ 足早いんや 早すぎて お前の家を 通り過ぎたで》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三六〕 
秋山に 落つる黄葉 しましくは な散りまがひそ 妹があたり見む
《ちょっとの 落ち葉るのん 待ってんか お前の家が 見えへんよって》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三七〕 






【つのさはふ】へ


日めくり万葉集<10月>(その5)

2010年01月15日 | 日めくり万葉集
■平成21年12月日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★万葉の 竹取がたり 翁をば 邪険娘を 諭して詠う

・・・春さりて  野辺を巡れば おもしろみ 我れを思へか さ野つ鳥 来鳴きかけらふ
秋さりて  山辺を行けば なつかしと 我れを思へか 天雲も 行きたなびく
かへり立ち 道を来れば うちひさす 宮女みやをみな さす竹の 舎人とねり壮士をとこ
しのぶらひ  かへらひ見つつ 誰が子そとや 思はえてある・・・

《・・・春が来て  野原歩くと わしのこと 愉快思うか 鳥が来て 鳴き飛び交うよ
 秋が来て  山道行くと わしのこと 素敵思うか 空の雲 り寄ってくる
 帰ろうと  道を来たなら 官女らも 舎人男も こっそりと
 振り返っては  わしのこと どこの美男か 思うて通る・・・》 
                         ―竹取翁―<巻十六・三七九一> 


人麻呂編(08)邪魔する山よ飛んでまえ

2010年01月14日 | 人麻呂編
■平成22年1月14日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★妹置いて 都へ上る 人麻呂に 石見の烈風かぜが 吹き付ける

石見いはみうみ つの浦廻うらみを 浦しと 人こそ見らめ かたしと 人こそ見らめ 
よしゑやし 浦は無くとも よしゑやし 潟は無くとも 

《石見の国の 都野つのの浦 よろし湊も 浜もない
 かまへんえで 湊なし 浜はうても この海は》
鯨魚いなさ取り 海辺をさして 和多豆にきたづの 荒磯ありその上に か青なる 玉藻おきつ藻 
朝羽振あさはふるる 風こそ寄せめ ゆふ羽振はふる 浪こそ来寄れ

《魚捕れるし  磯の上 朝には風が 夕べ波 青い玉藻を 持って来る》
浪のむた か寄りかく寄り 玉藻なす 寄り寝し妹を 露霜つゆしもの 置きてしれば
《その藻みたいに 寄りうて 寝てたお前を 置いてきた》
この道の 八十隈やそくまごとに よろづたび かへりみすれど
いやとほに 里はさかりぬ いや高に 山も越え来ぬ

《振り向き振り向き 来たけども お前る里 遠なるし 山たこなって へだたるし》
夏草の 思ひしなえて しのふらむ いもが門かど見む
《胸のつぶれる 思いして お前のるとこ 見たなった》
 なびけこの山
《邪魔する山よ  飛んでまえ》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三一〕 
石見いはみのや 高角山たかつのやまの より わが振るそでを いも見つらむか
《恋しいて 高角たかつの山の あいだ 袖振ったけど 見えたかお前》
小竹ささの葉は み山もさやに さやげども われは妹思ふ 別れぬれば
《笹の葉が  ざわざわ揺れる ざわざわと わしの胸かて 風吹き抜ける》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三二、一三三〕 






【靡けこの山】へ


日めくり万葉集<10月>(その4)

2010年01月13日 | 日めくり万葉集
■平成22年1月13日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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額田王おおきみが 作った歌の 初出歌 皇極上皇じょうこの 比良行幸みゆき

秋の野の み草刈り葺き 宿れりし 宇治の都の 仮廬かりいほし思ほゆ
《秋の野で  草刈り葺いて 泊まりした 宇治の都の 仮小屋恋し》
                         ―額田王―〔巻一・七〕 

★防人の 徴発命は 絶対や 母子の絆 あろとなかろと
たらちねの 母を別れて まこと我 旅の仮廬かりほに 安く寝むかも
《おっ母と  離れて旅の 仮小屋で ほんまこのわし よう寝るやろか》
                         ―日下部三中くさかべのみなか―〔巻二十・四三四八〕

★いつの世も 他人のことを 気にせんと  もの言う声は あっけらかんと
防人さきもりに 行くはと 問ふ人を 見るがともししさ 物思ものもひもせず
《防人に  行くのんどこの 旦那やと 聞くのん悔し 人の気知らんと》
                         ―昔年の防人の妻―〔巻二十・四四二五〕 



人麻呂編(07)浜辺で死んでる哀れな人よ

2010年01月08日 | 人麻呂編
■平成22年1月8日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★船旅は 明日あした命は 波の上 今日の手向けは 人事やない
玉藻たまもよし 讃岐の国は 
国柄くにからか 見れどかぬ 神柄かむからか ここだたふと
 
《讃岐の国は  ええ国や 見飽けへんほど ええ国や》
天地あめつち 日月とともに りゆかむ かみ御面みおも 
《日に日にうなる 別嬪べっぴんさん》
ぎ来たる なか水門みなとゆ 船けて わが漕ぎれば 時つ風 雲居に吹くに
《そこの湊を  出た船は 突如吹き出す 風に会い》
沖見れば とゐ浪立ち 見れば 白浪さわく いさな取り 海をかしこ 
《沖は大波 岸も白波なみ 怖い恐ろし 荒れる海》
行く船の かじ引き折りて をちこちの 島は多けど 名くはし 狭岑さみねの島の 荒磯面ありそもに いほりて見れば
《船梶止めて さみねじま なんけ船を 寄せたなら》
浪のの 繁き浜辺を 敷栲しきたへの 枕になして 荒床あらとこに 自伏ころふす君が 
《波音高い  浜の陰 一人の人が 死んでいる》
家知らば 行きても告げむ 妻知らば も問はましを 玉桙たまほこの 道だに知らず 
《知らしたいけど  家分からん どこの誰やら 知らん人》
おほほしく 待ちか恋ふらむ しき妻らは
《奥さんさぞかし  待ってるやろに》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二〇〕 

妻もあらば みてたげまし 佐美さみの山 野ののうはぎ 過ぎにけらずや
よめると んでそなえて やったやろ えてるヨメナ とう立ってもた》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二一〕 
沖つ波 よる荒磯ありそを 敷栲しきたへの まくらきて せる君かも
《波寄せる さみしい磯に 横なって 死んでる人は どこの誰やろ》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二二〕 







【野ののうはぎ】へ


日めくり万葉集<10月>(その3)

2010年01月06日 | 日めくり万葉集
■平成22年1月6日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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<歴史編(32)再録>
★山や川 ひれ伏すように 声響く 人麿詠う 宮殿みやどの讃歌

やすみしし わご大君 神ながら 神さびせすと 
吉野川 たぎ河内かふちに 高殿を 高知りまして 登り立ち 国見をせせば

《天皇さんは 神さんや 吉野の川の かわふちに 御殿やかた造られ 登りみる》
たたなはる 青垣山あおかきやま 山神やまつみの まつ御調みつきと 
春べは 花かざし持ち 秋立てば 黄葉もみちかざせり
 
《山の神さん かざりやと 春には花を 咲かせはり 秋には黄葉もみじ 作りはる》
ふ 川の神も 大御食おほみけに つかまつると 
かみつ瀬に 鵜川うかはを立ち しもつ瀬に 小網さでさし渡す
 
《川の神さん 御馳走ごちそうと 上流かみで鵜飼を 楽しませ 下流しもで網取り さしなさる》
山川も りてつかふる 神の御代かも
《山や川 みんな仕える 天皇おおきみさんに》
                          ―柿本人麻呂―〔巻一・三八〕 

山川も りてつかふる 神ながら たぎつ河内かふちに 船出せすかも
《山川の 神もつかえる 天皇おおきみが 逆巻く川に 船出ふなでしなさる》
                          ―柿本人麻呂―〔巻一・三九〕 





【依りて仕ふる】へ


人麻呂編(06)都離れて田舎の国へ

2010年01月05日 | 人麻呂編
■平成22年1月5日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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歌人うたびとの 任解かれたか 石見いわみへと 下る人麻呂 侘しさ募る

たま刈る 敏馬みぬめを過ぎて 夏草の 野島のしまの崎に 舟近づきぬ
《にぎやかな 藻を刈る敏馬みぬめ 後にして 草ぼうぼうや 野島の岬》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五〇〕 

留火ともしびの 明石あかし大門おほとに らむ日や ぎ別れなむ 家のあたり見ず
《日ィ沈む 明石の大門おおと 目を返しゃ 大和とおなる 家も見えへん》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五四〕 

淡路あはぢの 野島の崎の 浜風に いもむすびし ひも吹きかへす
《無事でねと  お前結んで くれた紐 野島の風が 吹き返しよる》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五一〕 

荒拷あらたへの 藤江ふぢえの浦に すずき釣る 白水郎あまとか見らむ 旅行くわれを
《藤江浜 すずき釣ってる 漁師りょうしやと 見られんちゃうか わし旅やのに》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五二〕 

名くはしき 稲見いなみの海の 沖つ波 千重ちへかくりぬ 大和島根は
稲見いなみうみ 次から次と 来る波に 隠れてしもた 大和の山々やまは》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・三〇三〕 

大君おほきみの とほ朝廷みかどと ありがよふ 島門しまとを見れば 神代かみよおもほゆ
《にぎやかに 筑紫行きの 船とおる じま見たら 神秘的やな》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・三〇四〕 






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