ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

旅人編(11)春や梅やで 皆して遊ぼ

2010年08月30日 | 旅人編
■平成22年9月日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★年代わり 主な官人 皆集い 春や春来た 梅花宴うめはなうたげ
【第壱組の歌】 
正月むつき立ち 春のきたらば かくしこそ 梅をきつつ たのしきを
《正月の 新春来たぞ 今日の日を 梅めたたえ 楽しゅう過ごそ》
                         ―大弐だいに紀卿きのまえつきみ―〔巻五・八一五〕

梅の花 今咲けるごと 散り過ぎず わが家の園に ありこせぬかも
《今まさに ここで咲いてる 梅のに うちの庭でも 咲き続けてや》
                         ―少弐せうに小野大夫おののだいぶ―〔巻五・八一六〕

梅の花 咲きたる園の 青柳あをやぎは かづらにすべく 成りにけらずや
《梅の花 咲いてる庭の やなぎは かづらに丁度 ええんとちゃうか》
                         ―少弐粟田あはたの大夫―〔巻五・八一七〕

春されば まづ咲く宿の 梅の花 独り見つつや はるくらさむ
《春来たら 最初さいしょ咲く花 梅の花 独り見るには 惜しい春やな》
                       ―筑前守つくしのみちのくちのかみ山上やまのうへの大夫―〔巻五・八一八〕

世の中は 恋しげしゑや かくしあらば 梅の花にも 成らましものを             《人生は 関わり事が いよって 梅の花でも 成りたいもんや》
                         ―豊後守とよのみちのしりのかみ大伴おほともの大夫―〔巻五・八一九〕

梅の花 今盛りなり 思ふどち 插頭かざしにしてな 今盛りなり
《梅の花  今真っ盛り みんなして 髪にかざそや 盛りの花を》
                         ―筑後守つくしのみちのしりのかみ葛井ふぢゐの大夫―〔巻五・八二〇〕

青柳あおやなぎ 梅との花を 折りかざし 飲みての後は 散りぬともよし
《梅の花 柳と一緒に 髪に挿し 飲みかしたら 散ってもええで》
                         ―笠沙弥かさのさみ―〔巻五・八二一〕

わがそのに 梅の花散る ひきかたの あめより雪の 流れ来るかも
《梅の花  空に舞うよに 散って来る 天から雪が 降ってきたんか》
                         ―主人あるじ―〔巻五・八二二〕





【天より雪の】へ


旅人編(10)夢で見た琴 差し上げまっさ

2010年08月26日 | 旅人編
■平成22年8月26日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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房前ふささきへ 贈る和琴の 心底こころそこ 何処いずこに有りや 大伴旅人

如何いかにあらむ 日の時にかも 声知らむ 人のひざ わがまくらかむ
《うちのこと 分かってくれる 人の膝 乗れる日来るの 何時いつのことやろ》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八一〇〕 

ことはぬ にはありとも うるはしき 君が手馴たなれの 琴にしあるべし
《元々は ィやったのに 今はもう 上手の人に 似合いの琴や》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八一一〕 

ことはぬ 木にもありとも わが背子せこが 手馴たなれのこと つちに置かめやも
《あんたはん 愛用してた 琴やから 大事にするで 元はやけど》
                         ―藤原房前―〔巻五・八一二〕 






【君が手馴れの】へ


旅人編(09)昔馴染みは 懐かしもんや

2010年08月23日 | 旅人編
■平成22年8月23日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★その昔 情け交わした 女友とも有りて 往年思い 鬱の気晴れる

高円たかまとの 秋の野のうへの 瞿麦なでしこの花
   うらわかみ  人のかざしし 瞿麦の花

《秋の野で 綺麗きれに咲いてた 撫子なでしこ花を 可愛らし言うて んだん誰や》
                         ―丹生女王にふのおほきみ―〔巻八・一六一〇〕
あまくもの 遠隔そくへきはみ 遠けども 心し行けば 恋ふるものかも
《身ぃ遠に 離れてるけど 恋してる 心は飛んで かようておるで》
                         ―丹生女王にふのおほきみ―〔巻四・五五三〕
いにしへの 人のこせる 吉備きびの酒 めばすべなし 貫簀ぬきすたばらむ
《吉備の酒 昔あんたと 飲んだ酒 もう飲めんから 貫簀ぬきすちょうだい》
                         ―丹生女王にふのおほきみ―〔巻四・五五四〕
たつも 今も得てしか あをによし 奈良の都に 行きて来む為
《都まで 行って帰って 来たいんで あまけ馬を 今すぐ欲しい》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八〇六〕 
たつを あれは求めむ あをによし 奈良の都に む人のため
あまける 馬絶対に 手に入れる 都来たいと 言う人のため》
                         ―作者未詳―〔巻五・八〇八〕 
うつつには 逢ふよしも無し ぬばたまの よるいめにを ぎて見えこそ
《逢うことが  出けへんよって 夢の中 せめて毎晩 逢いに来てんか》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八〇七〕 
ただに逢はず らくも多く 敷拷しきたへの 枕らずて いめにし見えむ
《逢わへんの ご続くけど 思慕おもてるで そやから毎晩 夢見るきっと》
                         ―作者未詳―〔巻五・八〇九〕 




【龍の馬も】へ


旅人編(08)しょうないないこっちゃ 受け入れせんと

2010年08月19日 | 旅人編
■平成22年8月19日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★過ぎていく 日々が癒しの 糧となる 心よぎるか 奈良の日々

わがをかに さ鹿しか来鳴く 初萩はつはぎの 花嬬はなづま問ひに 来鳴くさ男鹿
《咲いた初萩はぎ 連れ合いおもて 鳴くのんか 近くの岡で 鳴くおす鹿しかよ》
                         ―大伴旅人―〔巻八・一五四一〕 

わが岡の  秋萩の花 風をいたみ 散るべくなりぬ 見む人もがも
《風吹いて 散ってしまうで 秋萩はぎの花 見る人ったなら 見せたりたいな》
                         ―大伴旅人―〔巻八・一五四二〕 

あわゆきの ほどろほどろに 降りけば 平城ならみやこし 思ほゆるかも
《あわあわと  雪次々に 降って来る ああ思い出す 奈良の都を》
                         ―大伴旅人―〔巻八・一六三九〕 

わがをかに 盛りに咲ける 梅の花 残れる雪を まがへつるかも
《庭山に  いっぱい咲いた 梅の花 残った雪と 間違いそうや》
                         ―大伴旅人―〔巻八・一六四〇〕 





【ほどろほどろに】へ


旅人編(07)女々し出けんぞ いついつまでも

2010年08月16日 | 旅人編
■平成22年8月16日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★取り戻る 快活胸に 旅人はん 九州きゅうしゅあちこち 巡りの旅へ

いざ子ども 香椎かしひかたに 白妙しろたへの 袖さへぬれて 朝菜みてむ
《さあみんな 香椎かしいかたで 袖濡らし 朝の食事の 海藻うみももや》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九五七〕 

時つ風 吹くべくなりぬ 香椎かしひかた 潮干しほひの浦に 玉藻刈りてな
《風吹いて 香椎かしいかたに 潮満ちる 引いてるァに 藻を採ってまお》
                         ―小野老おののおゆ―〔巻六・九五八〕

かへり 常にわが見し 香椎潟 明日あすのちには 見むよしも無し
《行き帰り いっつも見てた 香椎潟かしいがた 明日あしたなったら もう見られへん》
                         ―宇努首男人うののおびとをひと―〔巻六・九五九〕

隼人はやひとの 湍門せといはほも 年魚あゆ走る 吉野のたぎに なほかずけり
隼人はやとくに 瀬戸の岩磯 すごいけど 鮎飛ぶ滝の 吉野が勝ちや》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九六〇〕 

湯の原に 鳴くあしたづは わがごとく いもに恋ふれや 時わかず鳴く
温泉おゆく 原で鳴く鶴 鳴き続け わしと同じに 妻恋しいか》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九六一〕 





香椎かしひかたに】へ


旅人編(06)わしはその気になかなかなれん

2010年08月12日 | 旅人編
■平成22年8月12日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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郎女いらつめを 亡くし旅人は 弔問の 使者迎えるが 心は晴れず

うつくしき 人のきてし 敷拷しきたへの わが手枕たまくらを  纒く人あらめや
可愛かいらしい お前が枕に して寝てた この手枕に 寝る人らん》
                         ―大伴旅人―〔巻三・四三八〕 

霍公鳥ほととぎす 鳴きとよもす の花の 共にやしと 問はましものを
霍公鳥ほととぎす 鳴いてるお前に 聞きたいな 卯の花咲くのと 同じに来たか》
                         ―石上堅魚いそのかみのかつを―〔巻八・一四七二〕

橘の 花散る里の 霍公鳥ほととぎす 片恋しつつ 鳴く日しそ多き
霍公鳥ほととぎす 散った橘 恋しいと 甲斐もないのに 鳴く日が多い》
                         ―大伴旅人―〔巻八・一四七三〕 




【わが手枕を】へ


旅人編(05)わしの気持で歌うかお主

2010年08月09日 | 旅人編
■平成22年8月9日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★妻亡くし 茫然旅人 訪ね来た 憶良衷心 肝胆照らす

大君おほきみの 遠の朝廷みかどと しらぬひ 筑紫つくしの国に 泣く子なす 慕ひ来まして 
いきだにも いまだやすめず 年月としつきも いまだあらねば 心ゆも 思はいあひだに 
うち摩き こやしぬれ

《遠く離れた 筑紫へと 子供みたいな お前連れ  落ち着かんに 月日経ち
 しんみり話も せんうちに お前病気に なってもた》
言はむすべ すべ知らに 石木いはきをも け知らず 家ならば かたちはあらむを 
うらめしき いもみことの あれをばも 如何いかにせよとか 鳰鳥にほどりの 二人並び 
語らひし 心そむきて 家さかりいます

《どしたらえか 分からへん 石や木ィかて 答えよらん あんな元気で ったのに
 どないせ言うんや このわしに 二人仲良う  暮らそうと  言うたお前は もうらん》
                         ―山上憶良―〔巻五・七九四〕 

家に行きて 如何いかにか吾がせむ 枕づく 妻屋つまやさぶしく 思ほゆべしも
《家帰り どしたらんや このワシは 寝床を見ても さみしいだけや》
しきよし かくのみからに したし 妹がこころの すべもすべなさ
可愛かいらしく あんないっぱい 甘え来た お前気持に こたえられんで》
くやしかも かく知らませば あをによし 国内くぬちことごと 見せましものを
《悔しいな こんなことなら 景色え 筑紫の国中くにじゅう 見せたったのに》
いもが見し あふちのち花は 散りぬべし わが泣くなみだ いまだなくに
栴檀せんだんの 花散りそうや 思いの よすがうなる えもせんのに》
大野山おほのやま 霧立ち渡る わが嘆く 息嘯おきその風に 霧立ちわたる
《大野山 霧が立ってる わし嘆く 溜息ためいきたまって 霧になったで》
                         ―山上憶良―〔巻五・七九五~七九九〕 

世の中は むなしきものと 知る時し いよよますます かなしかりけり
《人の世は からっぽなんやと 知ったんや おもうてたより ずうっと悲しい》
                         ―大伴旅人―〔巻五・七九三〕 





【空しきものと】へ


旅人編(04)飲まれたいんや この味酒(うまざけ)に

2010年08月05日 | 旅人編
■平成22年8月5日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★美味い酒 飲んでもみんと 飲むな言う 人知らんやろ この味酒さけの味

あなみにく さかしらをすと 酒飲まぬ 人をよく見れば 猿にかも
《ああ嫌や  酒も飲まんと 偉そうに 言う奴の顔 猿そっくりや》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四四〕 

あたひ無き たからといふとも 一つきの にごれる酒に あにさめやも
《極上の  高値の宝 なんかより 酒一杯が わしにはええで》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四五〕 
よるひかる 玉といふとも さけ飲みて こころをやるに あにかめやも
夜光やこうだま そんなもんより 酒飲んで 憂さ晴らすが ええなわしには》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四六〕 
世のなかの みやびの道に すすしくは ゑひなきするに あるべくあるらし
《風流の 道を極めて 澄ますより 酔うて泣くが ええのんちゃうか》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四七〕 
この世にし 楽しくあらば には 虫に烏にも われはなりなむ
《この世さえ  楽しいでけたら 次の世は 虫とか鳥に 成ってもええで》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四八〕 
ける者 つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな
《人いつか  死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅうしょうや》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四九〕 
黙然もだをりて さかしらするは 酒飲みて 酔泣ゑひなきするに なほ若かずけり
《澄まし込み かしこるより 酒飲んで 泣いてる方が まだ益しちゃうか》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三五〇〕 





【猿にかも似る】へ


旅人編(03)酒飲んで何で悪いか下されものを

2010年08月02日 | 旅人編
■平成22年8月2日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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しるしなき 物をおもはずは 一坏ひとつきの にごれる酒を 飲むべくあるらし
仕様しょうもない 考えせんと 一杯の どぶろく酒を 飲むがええで》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三三八〕 
酒の名を ひじりおほせし いにしへの おほき聖の ことのよろしさ
《酒のこと ひじりやなんて うまいこと 言うたもんやな 昔の聖人ひとは》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三三九〕 
いにしへの ななさかしき 人どもも りせしものは 酒にしあるらし
《高名な なな賢人けんじんも 人並みに 欲しがったんは 酒やでやっぱ》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四〇〕 
さかしみと 物いふよりは 酒飲みて ゑひ泣きするし まさりたるらし
えらぶって 講釈するより 酒飲んで 泣いてる方が ええんとちゃうか》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四一〕 
言はむすべ せむすべ知らず きはまりて たふときものは 酒にしあるらし
《なんやかや うたりおもたり してみても 行きつくとこは やっぱり酒や》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四二〕 
なかなかに 人とあらずは さかつぼに 成りにてしかも 酒にみなむ
《酒壺に 成って仕舞しもうて 酒にも 鳴かず飛ばずの 人生よりか》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四三〕 






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