源氏：桐壺（21）大臣の御里に

大臣おとどの御里に
　　　　　―左大臣おとど娘を妻にとて―

宮中　下がり　源氏君
その夜左大臣おとどの　お邸やしきに
婿むこ取り儀式　この上の
無　きまでのもの　丁重さ

若やか源氏君げんじ　見る左大臣おとど
目映まばゆ可愛かわいと　ご覧なる

娘　の姫は　年上で
源氏君げんじを見るに　まだ子供
似合わぬ様さまに　気詰まりも







臣下一等　左大臣さのおとど
帝みかど信頼　篤あつきにて

正室なるは　帝みかどとは
母　の同じの　皇女にて
夫婦　共々　華やかな
系譜つながり持てる　家なるに
そこに源氏君げんじを　迎えたは

次春宮とうぐう祖父の　右大臣
やがて　国政　掌握の
その威勢をも　凌しのぐかに

左大臣ひだりおとどは　幾人いくたりの
夫人ふじんとの中　数多いくたお子
中　に姫との　同母なる
兄の蔵人くろうど　少将しょうしょうは
若く　魅力の　人なりし

右大臣みぎのおとどは　蔵人少将しょうしょうを
両家　悪きの　仲なれど
見過ごし　するの　出来ずとに
大切育ての　四しの姫の
　　　　　　　（四番目娘）
婿むこと迎えて　居りしにて

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【蔵人少将くろうどのしょうしょう】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　近衛少将と蔵人を兼務による呼び名

迎え婿君　大切だいじ為すは
両家同じき　婿舅むこしゅうと