ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

古事記ものがたり・中つ巻(09)垂仁天皇 危難を逃れ

2013年02月28日 | 古事記ものがたり
垂仁天皇すいにんおおきみ 危難を逃れ

崇神すじん天皇おおきみ そのお子の
伊久米伊理日子命いくめいりびこ 即位して
垂仁すいにん天皇おおきみ お成りなる
















皇后きさきとなりし 沙本比売さほひめ
兄の沙本比古さほひこ 沙本比売ひめに問う

いずいとしや おっとあに
「兄いとしや」と 沙本比売さほひめ

 されば二人で 天下をば 
 小刀かたな託すに 寝首ねくびを」と

皇后きさきの膝を 枕して
眠る垂仁天皇おおきみ 首元に
光るやいばが 二度三度








沙本比売ひめは胸く いとしさに
握る柄元つかもと 手が震え
落ちる涙は 垂仁天皇きみほほ

 夢を見たぞよ 顔に雨
  錦の小蛇 我が首に」

たばかり聞きて 垂仁天皇すめらみこ
軍をおこして 攻め掛かる

守るに稲城いなき 隠れ
沙本比古さほひこ哀れ 思いしか
沙本比売さほひめ抜けて 稲城中しろなか

なが引く陣に 沙本比売さほひめ
身籠みごもるお子を お産みなる

産まれ たる子を 陣の外
皇子みこおぼさば お育てを」

言うに垂仁天皇おおきみ 沙本比売ひめ恋いて
母子おやこ共々 拉致らちをとの
 を講じて 「母出せ」と

見抜く沙本比売さほひめ 髪を
かつらとなして 腕輪うでわひも
衣服ふく腐らせて 城の外

得たり と兵士 髪掴み
紐・衣服ふく捕るに からかいな

悲嘆垂仁天皇おおきみ 「子に名を」と
叫ぶ に応え 声届く

「戦い放火なか 生まれしに
 本牟智別王ほむちわけみこ 名付けませ」
 火=「ほ」→ほむちわけ)

やがての下知げちの 総攻めに
火は稲城しろおおい 兄いもと
共の出立いでたち 黄泉よみ世界











    ――――――――――
本牟智別王ほむちわけみこ 育ちしも
言葉は無しに 顎髭ひげ伸びる

 ああ」と初めて 発せしは
飛ぶ白鳥しらとりを 聞きし時

なおきざしの 鳥なれば
 捕えおそばに 置くべし」と
白鳥あとを 追いめぐ

 








紀伊国きいくに播磨国はりま 因幡国いなばくに
丹波国たんば但馬国たじまに 近江国おうみくに
美濃国みのくに尾張国おわり 信濃国しなのくに

越国こしとらうも 声は無し

甲斐なし気落ち 垂仁天皇おおきみ
我宮みやの修復 為すなれば
 がん叶える」と夢お告げ

何処神いずこかみやと 占えば
出雲大神いずもおおかみ たたりとや

夢告げ真実まこと ためしにと

さぎよ池落ち 死ぬべしと
死してたちまち 生き戻れ

葉広はびろ白樫かしの木 枯れ果てよ
枯れて 直ぐさま 繁れよと

鷺の生き死に 白樫かしの木の
枯れて 繁るを 目にしたは
真実まこと試しの あらわれと
出雲いずも向けての 旅が

本牟智別王ほむちみこ連れ 出雲着き
出雲大神いずもおおかみ 参拝おが
帰参きさん仮宮かりみや お膳時ぜんどき

ふと立ち上がる 本牟智別王ほむちみこ
「あの青葉山 模造品つくりかや
 大国主神おおくにまつる 祭祀場まつりばか」

突如 お声に 喜びて
早馬うまみやこへ 駆けりて

出雲大神いずもおおかみ 霊験おちから
伝え申すに 垂仁天皇すめらみこ

再度の使者つかい 出雲
宮殿みやどの高く 修造つくりなす










    ――――――――――
常世国とこよくに成育る かおりの実
垂仁すいにん天皇おおきみ 耳なされ
求め 見たしと 仰せなる

多遅摩毛理たじまもりをば つかわすに
 きて長きに 戻らずて
日月がちて 年過ぎる

苦労苦心に 多遅摩毛理たじまもり
さぞ やお待ちと 持ち帰る
かんつらなる 八つの実と
くしと連なる 八つの実を
ささげ奉らん 思いしに
くやしきことに 垂仁天皇きみ











垂仁天皇おおきみこれぞ 時じくの
                (季節変わらずの)
 かくの実ぞ 橘ぞ」

叫び泣き伏す 多遅摩毛理たじまもり

泣き伏し死にき 多遅摩毛理たじまもり



古事記ものがたり・中つ巻(08)崇神天皇 諸国を統べる

2013年02月25日 | 古事記ものがたり
崇神すじん天皇おおきみ 諸国をべる

崇神すじん天皇おおきみ 国中くになか
蔓延はびこる賊に 胸痛め

平定さだめよと 伯父おじぎみ
大毘古命おおびこ任じ 征伐せいばつ
軍勢ぐん遣わして で立つに










こしに向いし 山城坂やましろで 
腰裳こしも少女おとめの 歌を聞く

御真木入日子命みまきいりびこ 気を付けよ
御真木入日子命みまきいりびこ 気を付けよ
そなたの命 無き物と
背後はいごの戸から 抜けざま
前ある戸から り抜けに
ねらい居るのを 知らないか
御真木入日子命みまきいりびこ 気を付けよ

  御真木入日子みまきいりびこはや
  御真木入日子みまきいりびこはや
  おのを ぬすせんと
  しりつ戸よ いたが
  前つ戸よ いたが
  うかがわく 知らにと
  御真木入日子みまきいりびこはや
                ―古事記歌謡(二十三)―

取って返した 大毘古命おおびこ
聞いた崇神天皇おおきみ 断くだ

建波迩安王たけはにやすに 相違なし
 そなた異母兄あにする 謀反むほんなり」

大毘古命おおびこ戻り 軍進め
両軍対峙たいじ 木津の川

建波迩安王たけはにやすの 射掛け矢は
はずれ河原の 石を突く







うとはなてる 大毘古命おおびこ
見事建波迩安王はにやす 胸射貫いぬ

その他諸国に 派遣つかわれし
軍勢ぐんはそれぞれ 役目やく果たし
賊を誅滅ちゅうめつ 凱旋がいせん

ここにまつりは たいらかに



古事記ものがたり・中つ巻(07)意富多々泥古に 祀らせよ

2013年02月21日 | 古事記ものがたり
意富多々泥古おおたたねこに まつらせよ

綏靖すいぜい天皇おおきみ 後受けて
続きくらいに かれたは
以下の七代 天皇すめらみこ









安寧あんねい天皇おおきみ
懿徳いとく天皇きみ
孝昭こうしょう天皇おおきみ
孝安天皇こうあん
孝霊こうれい天皇おおきみ
孝元天皇こうげん
開化かいか天皇おおきみ 七代ぞ





















開化かいか天皇おおきみ その皇子みこ
御真木入日子命みまきいりびこ 即位して
崇神すじん天皇おおきみ 御代みよとなる

御代みよおそいたる 疫病えきびょう
心痛めに 夢枕ゆめまくら
大物主神おおものぬしが ご託宣たくせん

疫病やまい起こすは 我れなるぞ
 意富多々泥古おおたたねこに 我がやしろ
 まつりさすれば ますぞよ」







ただちの馬の 知らせ得て
河内かわち美努みぬ村 見つけたる
意富多々泥古おおたたねこの 申すには

「我れ大物主神ぬしかみの 血筋にて

 四代前なる 活玉いくたま
 依比売よりひめ寝所ねやに 現れし
 美男おとこ通いの 重なるに

 懐妊はらみ両親おやは いぶかりて
 麻糸いと針通し おとこ

 辿たどる三輪山 やしろなか
 大物主神おおものぬしと 知られたり」

大三輪おおみわ神社やしろ 神主に
(意富三輪)
意富多々泥古おおたたねこが 就任おつきなり

供物くもつを入れる 祭甕まつりかめ
まつり祈るに 天の神
地の神います おやしろ
あちら こちらと 定められ

赤い楯矛たてほこ 墨坂神すみさか
黒い楯矛たてほこ 大坂神おおさか

山際やまぎわ神と 川の神
全ておそなえ 差し上げる

ここに疫病えきびょう 退散し
 は平安 取り戻す

古事記ものがたり・中つ巻(06)三人の皇子に 危機迫る

2013年02月14日 | 古事記ものがたり
三人みたり皇子みこに 危機迫る

時に生まれし 皇子みこ三人みたり

日子ひこ八井やいみこと 筆頭に
次ぎに神八井かんやい みみみこと
さらに世継よつぎと 成りなさる
神沼河かみぬなかわの みみみこと

日向ひゅうが住む日に 伊波礼比古命いわれひこ
正妻つまに産ませし 多芸志美美命たぎしみみ
崩御みまかりの その後で
義母はは伊須気依比売よりひめ 妻と















ひそはかるは 多芸志美美命たぎしみみ
三人みたり皇子みこを き者と

知りて気を揉む 伊須気依比売いすけより

気付け 知れよと 謡う歌

狭井さい川上かわうえ 雲立って
畝傍うねびの山で 葉が騒ぐ
今に風吹く  気を付けなされ
  狭井さい川よ 雲起ち渡り
  畝傍山うねびやま の葉さやぎぬ
   風吹かんとす
           ―古事記歌謡(二十一)―
  










畝傍うねびの山に 雲動く
夕べ 来たなら 風吹くぞ
の葉ざわめく 気を付けなされ

  畝傍山うねびやま 昼は雲
  夕れば 風吹かんとぞ
  の葉さやげる
           ―古事記歌謡(二十二)―

知りたる皇子みこら 合いして

兄者あにじゃ武器持ち 踏みりて
 義兄あに多芸志美美命たぎしみみ き者に」

承知日子八井命ひこやい 踏み込むが
手足戦慄わななき 事せず

最早もはや止む無し 我が手でと
神沼河耳命ぬなかわみみは 武器いて
多芸志美美命たぎしみみをば 誅殺ほうむりき

父の後ぐ 談すに
「我れ兄なれど もの
 れずそなたが 成し遂げる

 天皇すめらみことの 地位継ぐは
 なんじいて 他になし」

神沼河耳命ぬなかわみみは 任に
綏靖すいぜい天皇おおきみ おおせらる



古事記ものがたり・中つ巻(05)伊須気依比売皇后に

2013年02月11日 | 古事記ものがたり
伊須気依比売いすけよりひめ 皇后に

即位なしたる 神武天皇すめらみこ
皇后きさき求むに 大久米命おおくめ
伊須気依比売いすけよりひめ 進言す 











伊須気依比売ひめは神の子 父こそは
大物主神おおものぬしの 三輪の神

母親比売ひめが 川また
用足し 折りに 矢と流れ
刺されしほとに 驚きて
持ちて帰りし 矢変身ばけこそ
りんたる姿 大物主神ぬしのかみ

大久米命おおくめ連れて 神武天皇すめらみこ
高佐士野たかさじのにて 遊び
七人ななたり乙女 出で合いき

そこで大久米命おおくめ 謡う歌

高佐士野たかさじの行く なな乙女おとめ
いずれ望むや 天皇すめらみこ

  やまとの 高佐士野たかさじの
  ななく 娘子おとめども
  たれをしかん
           古事記歌謡(十六)―







誰と定めは つかねども 
先頭さき乙女おとめが 気に入った

  つも いや先立てる
   (ともかくも)
  をしかん
           古事記歌謡(十七)―

神武天皇すめらみことの 意げんと 
寄る大久米命おおくめの 鯨文いれずみ

おび伊須気依比売よりひめ 謡う歌

雨燕あまつばめ鶺鴒せきれい千鳥ちどりしとどかと
まが鋭目さけめは 如何いかなるぞ 

   アメ ツツ チドリ まシトト
  などける鋭目とめ
           古事記歌謡(十八)―

うるわ乙女おとめ いたさに
我が目キリリと 引きけし

  娘子おとめに ただわんと
  我がける鋭目とめ
           古事記歌謡(十九)―






「承知」を受けて 神武天皇おおきみ
伊須気依比売ひめ草屋くさやに 宿り

のちに思い 神武天皇すめらみこ
参内まいり伊須気依比売ひめに 謡う歌

葦茂あししげむさき 小屋なれど
たたみ清よらに 敷きべて
二人共寝たやな あの時は

  葦原の しけしき小屋に
  菅畳すがだたみ いやさや敷きて
   我が二人寝し
           古事記歌謡(二十)―


古事記ものがたり・中つ巻(04)国開かれし 天皇

2013年02月07日 | 古事記ものがたり
■国開かれし 天皇すめらみこ

磯城しきの地至り 支配する
兄師木えしき弟師木おとしき 討ちし時
えと疲労の 我が兵に
兵糧かて与えやと 謡う歌
















たて並べ矢射る 伊那佐山いなさやま
抜け攻め 守りつつ
戦い疲れ るぞ
鵜を飼う部民たみよ 兵糧かて持ちて
助け来たれや 我がへい

  たてめて 伊那佐いなさの山の
  の間よも いき守らい
  戦えば 我はや
  島つ鳥 鵜飼うかいとも
  今助けに
                ―古事記歌謡(十五)―

更に と軍を 進めるに
現れ出たる 迩芸速日命にぎはやひ

高天原たかまがはらを 我れくだ
 あめ磐船いわふね あやつりて
 大和舞いり 登美毘古とみびこ
 従えして 支配る」

聞いた伊波礼比古命みことは 問いただ
真実まこと神の子 あかしは」と

これがあかしと 差し出すは
あめ羽羽矢ははやと 歩靫かちゆき

されば 示さん「我れも」とて
伊波礼比古命みこといだす 矢とゆき
 みて知れる 神御子に
「我れ仕えん」と迩芸速日命にぎはやひ

迩芸速日命にぎはやひみこ めとりしは
仕え登美毘古とみびこ 妹の
登美夜比毘売とみやひめにて 産みし子は

宇麻志麻遅命うましまじみこ その名にて
物部連もののべむらじ 祖先おやなりし

くの如きに 進み来て
刃向はむあだなす 悪神わるがみ
ことごと破り 平らげて

畝傍うねび橿原かしはら 宮処みやどこ
 開かれし お方こそ
神武じんむ天皇おおきみ なるぞかし
                (一部日本書紀より補完)



古事記ものがたり・中つ巻(03)久米歌響く 大和野に

2013年02月04日 | 古事記ものがたり
■久米歌響く 大和野に

やがて 進みて 伊波礼比古命いわれひこ
忍逆おさか大室おおむろ お着きなる

そこは土雲つちぐも 縄張りで
岩穴群居たむろ うなり声









 
伊波礼比古命いわれひこみこ 一計いっけい
賊のもとへと 馳走ちそ届け 
大刀たちいたる 給仕まかない
送り込みしに 計略けいさず
歌聞こえば てよとて

その歌まさに この歌ぞ

忍坂おさか大きな 岩室いわむろ
賊が大勢 集い

  忍坂おさかの 大室屋おおむろや
  人さわに 来入きい
如何いかに大勢 集うとも
武勇 自慢の 久米兵士 
持てる槌棒つちぼう 石棒で
一撃もとに ち殺す

  人さわに 入りりとも
  勇猛みつみつし 久米くめの子が
  くびつつい 石つついもち
  ちてしまん











武勇自慢の  久米兵士 
持てる槌棒つちぼう 石棒で
さあさ今ぞよ ち殺せ

  勇猛みつみつし 久米くめの子らが
  くびつつい 石つついもち
  今たぱ らし
           ―古事記歌謡(十一)―
聞いた兵士は ち掛かり
たちまち賊は 滅び去る

のち伊波礼比古命みことが 登美毘古とみびこ
撃つにうたいし 歌ぞこれ 









武勇自慢の  久米兵士 
植える粟畑はたけの 一株ひとつ香韮にら
根と芽まとめて くく
一網いちもう打尽だじん ち取れや

  勇猛みつみつし 久米くめの子らが
  栗生あおうには 香韮からみ一本ひともと
  そ根がもと そ根芽つなぎて
  ちてしまん
           ―古事記歌謡(十二)―

武勇自慢の  久米兵士 
植える垣根の 山椒さんしょ実の
ひりりうらみは 忘れじと
(兄の恨みは)
あだ果たせよや ち殺せ

  勇猛みつみつし 久米くめの子らが
  垣下かきもとに 植えし山椒はじかみ
  口ひひく 我は忘れじ
  ちてしまん
           ―古事記歌謡(十三)―

神の風吹く  伊勢の海
大きな石に い回る
細螺しただみみたい 地をって
執念しゅうねん一途いちず ち殺せ

   神風の 伊勢の海の
  大石おいしに もとほろう
  細螺しただみの いもとほ
  ちてしまん
                ―古事記歌謡(十四)―