ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

金村・千年編(13)波頭遥かな 旅空憂い

2011年02月07日 | 金村・千年編
■平成23年2月7日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★遣唐使 無事な往き来で つつが無い 帰り願うて 金村詠う

玉襷たまだすき 懸けぬ時無く いきに わがふ君は 
うつせみの 世の人なれば 大君おほきみの みことかしこみ
 
一時いっときも 忘れもせんと 気に懸けて わしが大事や 思うひと
 人の世つとめ 果たすため 天皇おおきみさんの めい受けて》
夕されば たづが妻呼ぶ 難波潟なにはがた 三津みつさきより 
大船に 真楫繁貫まかじしじぬき 白波の 高き 荒海あるみを 島伝ひ い別れ行かば
 
《難波のかたの 三津の崎
 梶いっぱいの 大船で 波の立ってる 荒海あらうみの 島を伝うて 出かけらる》
とどまれる われはぬさ引き いはひつつ 君をば待たむ はや還りませ
《後に残った このわしは 向けのぬさを まつりして 待ってるよって 早よ帰ってや》
                         ―笠金村―〔巻八・一四五三〕 
波のうへゆ 見ゆる小島こしまの 雲隠り あな息づかし 相別れなば
《波しの 小島を雲が 隠すよに あんたと別れ 溜息ためいきでるよ》
                         ―笠金村―〔巻八・一四五四〕 
たまきはる いのちむかひ 恋ひむゆは 君がみ船の 楫柄かじからにもが
《死にそうな 思いをしつつ がるより あんたの船の 梶になりたい》
                         ―笠金村―〔巻八・一四五五〕 

秋萩あきはぎを 妻問つまど鹿こそ 独子ひとりごに 子持てりといへ 
鹿児かこじもの わが独子の 草枕 旅にし行けば
 
《秋の萩 妻にしたいと 鳴く鹿は ひと小鹿  持つという
 その鹿みたい 独り子の うちの子供が 旅に行く》 
竹珠たかだまを しじにり 斎瓮いはひべに 木綿ゆふ取りでて 
いはひつつ わが吾子わがこ 真幸まさきくありこそ

たけたまいっぱい 刺しいて 神まつつぼ ぬさ垂らし
 み慎んで うちの子が 無事であってと 祈りする》
                         ―作者未詳―〔巻九・一七九〇〕 
旅人たびびとの 宿りせむ野に 霜降しもふらば わが子羽ぐくめ あめ鶴群たづむら
《宿る野に 霜が降ったら 天の鶴 羽根を広げて うちの子かばえ》
                         ―作者未詳―〔巻九・一七九一〕 



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金村・千年編(12)我ら大夫(ますらお) 任務が大事

2011年02月03日 | 金村・千年編
■平成23年2月3日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★乙麿を 追うて金村 越前へ 変の帰趨は 知らぬが花よ

草枕 旅行く人も 行きれば にほひぬべくも 咲ける萩かも
《萩の花  色の着くほど 咲いとおる 旅で行く人 ちょっと触れても》
伊香山いかごやま 野辺のへに咲きたる 萩見れば 君が家なる 尾花をばなし思ほゆ
《咲く萩を 伊香いかごの山で 見かけたら あんたの家の 尾花が浮かぶ》
                       〔乙麿さまの屋敷の尾花・・・〕 
               ―笠金村―〔巻八・一五三二、一五三三〕 

大夫ますらをの 弓上ゆずゑおこし つる矢を のち見む人は 語りぐがね
《このわしが 弓引きしぼり 射た矢見て 言いぎ行けよ 後に見る人》
                       〔高木に矢を射旅の安全祈る〕 
塩津しほつ山 うち越え行けば が乗れる 馬そつまづく いへふらしも
《わしの馬 塩津越えてて つまづいた 家で心配 してるできっと》
               ―笠金村―〔巻三・三六四、三六五〕 

こしうみの 角鹿つのがの浜ゆ 大船おほふねに 真梶貫まかじぬきおろし いさなとり 海路うなぢに出でて 
あへきつつ わが漕ぎ行けば 
 
こしくにの 角鹿つのが浜から 大船に 梶をいっぱい 取りつけて 苦労しながら いでくと》
大夫ますらをの 手結たゆひが浦に 海未通女あまをとめ しほ焼くけぶり 草枕 旅にしあれば ひとりして 見るしるしみ 
海神わたつみの 手に巻かしたる 玉襷だすき けてしのひつ 日本島根やまとしまね

手結たゆいの浦で 海人あまの児が 塩を焼いてる 煙立つ 面白いなと 思うけど ひとりで見ても 甲斐がない
 心に懸けて 思うのは 大和の家の ことばかり》 
こしうみの 手結たゆひが浦を 旅にして 見ればともしみ 日本やまとしのひつ
《越の海 手結たゆいの浦を 旅したら 珍しけども 大和が恋し》
               ―笠金村―〔巻三・三六六、三六七〕 

大船おほふねに 真梶繁貫まかじしじぬきき 大君おほきみの みことかしこみ 磯廻いそみするかも
《大船に 梶をいっぱい 取りつけて 任務大事と 磯巡視めぐりする》
                         ―石上大夫いそのかみのまへつきみ―〔巻三・三六八〕
「まさに  おっしゃる通り 乙磨殿の 行かれる道 私めも ついて参ります」
もののふの おみ壮士をとこは 大君の まけのまにまに 聞くといふもの
《朝廷に 仕える男子おのこ 言いつかる 任務一途に つかえるべきや》
                         ―笠金村歌中―〔巻三・三六九〕 






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金村・千年編(11)冬の任務は 寒うてならぬ

2011年01月31日 | 金村・千年編
■平成23年1月31日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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めい受けて 石上いそかみ布留ふるに 寝起きして 都の家が 恋しかお主

うつせみの 世の人なれば 大君おほきみの みことかしこみ 
磯城島しきしまやまとの国の 石上いそのかみ 布留ふるの里に 紐解ひもとかず 丸寝まるねをすれば
 
《人の世に 生まれたつとめ 果たすため 天皇おおきみさんの めい受けて
 大和の国の 布留の里 任務つとめ大事と ごろ寝する》
わがせる ころもれぬ 見るごとに 恋はまされど 
色にでば 人知りぬべみ 冬の夜の 明かしも得ぬを 
ずに われはそ恋ふる いも直香ただか

《着てる着物は よれよれや それ見るたんび 家恋し
 そぶり見せたら 他人ひとが知る なかなかけん 冬のよる
 まんじりせんと おまえをば 恋し思たら まぶたに浮かぶ》
                         ―笠金村歌中―〔巻九・一七八七〕 
布留ふる山ゆ ただに見渡す みやこにそ ず恋ふる 遠くあらなくに
《布留からは 遠くもないに 寝られんで 恋しい思う みやこのおまえ》
                         ―笠金村歌中―〔巻九・七一八八〕 
吾妹子わぎもこが ひてし紐を 解かめやも えば絶ゆとも ただふまでに
かへんぞ おまえ結んだ ひもやから 例え切れも 逢うまで解かん》
                         ―笠金村歌中―〔巻九・七一八九〕 



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金村・千年編(10)役目大事と 都に残る

2011年01月27日 | 金村・千年編
■平成23年1月27日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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乙麿おとまろの 越前赴任 留守居する 笠村役目 果たして何ぞ

人と成る ことはかたきを わくらばに 成れるわが身は
しにいきも 君がまにまと 思ひつつ ありしあひだ
 
《人間に 生まれて来るの むつかしに たまさか生まれた このわしや
 生きるも死ぬも お前様 思うままにと 思てたが》 
うつせみの 世の人なれば 大君おほきみの みことかしこみ 
天離あまざかる 夷治ひなをさめにと 朝鳥あさどりの 朝立ちしつつ 群鳥むらどりの 群立むらだち行けば 
まりて われは恋ひむな 見ずひさならば

つとめ果すは 世の習い 天皇おおきみさんの めい受けて
 地方赴任の 遠い旅 朝になったら 出発や みんな揃うて 出かけらる 
 残るこのわし 寂しいわ しばらく会えん 日が続く》
                       ―笠金村歌中―〔巻九・一七八五〕 
越路こしぢの 雪降る山を 越えむ日は まれるわれを けてしのはせ
《越へ行く  雪の降る山 越える日は 残ったわしを 思い出してや》
                         ―笠金村歌中―〔巻九・一七八六〕 




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金村・千年編(09)金村歌は 千年に似たり

2011年01月24日 | 金村・千年編
■平成23年1月24日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★仲良しの 千年金村 歌競い 相手得意の 歌心こころで歌う

鯨魚いなさ取り 浜辺はまへを清み うちなびき ふる玉藻に 
朝凪あさなぎに 千重ちへなみ寄せ 夕凪ゆふなぎに 五百重いほへなみ寄す
 
なびくよに 清い浜辺に える藻に 朝波寄せる 夕方も》
つ波の いやしくしくに 月にけに 日に日に見とも 今のみに 
飽きらめやも 白波しらなみの いめぐれる 住吉すみのえの浜

《その波みたい 次々と 毎月毎日 見にたい 今の満足 するだけじゃ
 もったいないな 白波の 花が咲いてる 住吉すみのえ浜辺はまべ
                         ―車持千年くるまもちのちとせ―〔巻六・九三一〕
白波の 千重に来寄する 住吉すみのえの 岸の黄土はにふに にほひて行かな
《次々と 白波寄せる 住吉すみのえの 黄色きいろの土で 服染めようや》〔住吉の黄土はにゅうは染料として有名〕
                         ―車持千年―〔巻六・九三二〕 

大君おほきみの さかひたまふと 山守やまもりすゑ  るとふ山に 入らずはまじ
《天領や 言うて締め出し 番置いて 監視してても はいらでくか》
                      〔女官にだって 声を掛けるで〕
見渡せば 近きものから 石隠いそがくり かがよふたまを 取らずは止まじ
《覗き見て 近い思ても 岩の陰 輝く真珠 取らんとくか》
                    〔女官言うても 物にしたるで〕
韓衣からころも 服楢きならの里の 島松しままつに 玉をし付けむ き人もがも
《庭の松 キナラの里の 名木や 似合う玉欲し ひと欲しな》
                    〔ええ女には 似合男にあいが要るで〕
男鹿をしかの 鳴くなる山を 越え行かむ 日だにや君に はた逢はざらむ
《鹿でさえ  つれ呼び求め 鳴く言うに 旅出るあんた 逢わんといくか》
                         ―笠金村歌中―〔巻六・九五〇~九五三〕 



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金村・千年編(08)塩焼きの娘子見たいな 波越えて

2011年01月20日 | 金村・千年編
■平成23年1月20日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★朝凪に 遥か見えるは 松帆浦 君臣和しての 印南野行幸

名寸隅なきすみの 船瀬ふなせゆ見ゆる 淡路島 松帆まつほの浦に 朝凪あさなぎに 玉藻刈りつつ 
夕凪に 藻塩もしほ焼きつつ あま少女をとめ ありとはけど
 
名寸隅なきすみの 浜から見える 松帆浦 朝にたまを 刈っとおる
 夕方藻塩もしお 焼いとおる 可愛かいらしぉが るらしい》
見に行かむ よしの無ければ 大夫ますらをの こころは無しに 手弱女たわやめの おもひたわみて 
徘徊たもとほり われはぞふる 船楫ふなかじ

《逢いたいけども 伝手つてうて 男のくせに しょぼくれて 女みたいに ぐずぐずと
 行きたいおもて 悩んでる 行く船無いし 梶もない》
                         ―笠金村かさのかなむら―〔巻六・九三五〕
玉藻刈る あま少女をとめども 見に行かむ 船梶ふねかぢもがも 波高くとも
《玉の藻を 刈ってるむすめ 見に行こう 波たこうても 船や梶し》
                         ―笠金村―〔巻六・九三六〕 
行きめぐり 見とも飽かめや 名寸隅なきすみの 船瀬ふなせの浜に しきる白浜
名寸隅なきすみの 船泊まり浜 寄せる波 どっから見ても 飽けへんこちゃ》
                         ―笠金村―〔巻六・九三七〕 



名寸隅なきすみの】へ


金村・千年編(07)さすが難波や 照る日も違(ちゃ)うで

2011年01月17日 | 金村・千年編
■平成23年1月15日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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いにしえに 栄えし都 難波宮 帝の行幸で 賑わい元に

る 難波の国は 葦垣あしかきの りにしさとと 
人皆の おもやすみて つれも無く ありしあひだ
 
《その昔 都のあった 難波宮なにわみや
 今となっては 誰もかも とんと昔と 忘れ去り 見向きもせんと ったけど》
績麻うみをなす 長柄ながらの宮に 真木柱まきはしら 太高ふとたか敷きて 食国をすくにを 治めたまへば 
《昔の宮の 長柄宮ながらみや 立派な柱 高々と 立ててその地に 行幸いかれたら》
沖つ鳥 味経あぢふの原に もののふの 八十伴やそともは いほりして みやこなしたり 旅にはあれども
味経あじふの原で 伴の人 大勢寄って 泊まるんで 都出来たで 仮宮やけど》
                         ―笠金村―〔巻六・九二八〕 
荒野あらのらに 里はあれども 大君の 敷きす時は 都となりぬ
《荒れ野やと 思うていても 天皇おおきみが 行幸みゆきされたら そこが都や》
                         ―笠金村―〔巻六・九二九〕 
海少女あまをとめ 棚無たなな小舟をぶね らし 旅の宿りに かぢおと聞ゆ
《漁師の 小舟を漕いで 出たらしい 梶音かじおとしてる 宿で寝てると》
                         ―笠金村―〔巻六・九三〇〕 



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金村・千年編(06)人麻呂殿に 及びはせぬが

2011年01月13日 | 金村・千年編
■平成23年1月13日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★吉野へと 聖武天皇 行幸みゆきさる 昔違うて 君臣和して

あしひきの み山もさやに 落ちたぎつ 吉野の川の 川の瀬の 清きを見れば 
上辺かみへには 千鳥しば鳴き 下辺しもへには かはづ妻呼ぶ 
ももしきの 大宮人おおみやびとも をちこちに しじにしあれば
 
さわやかな 激流ながれこだま 響いてる 吉野の川の 川の瀬の 清い流れの 上流で
 千鳥鳴いてる 下流かりゅうでは 蛙妻呼び 鳴いとおる
 大宮人も あちこちで 大勢って 遊行あそんでる》
見るごとに あやにともしみ 玉葛たまかづら 絶ゆること無く 万代よろづよに かくしもがもと 
天地あめつちの 神をそ祈る かしこくあれども

《心かれる いつ見ても 何時何時いついつまでも このままで あって欲しいと 祈るんや
 神さんよろしゅう 願います》
                         ―笠金村―〔巻六・九二〇〕 

万代よろづよに 見とも飽かめや み吉野の たぎ河内かふちの 大宮所おおみやどころ
永遠とわまでも 見飽けへんなあ この吉野 はげし流れの 大宮所》
                         ―笠金村―〔巻六・九二一〕 
皆人の 命もわれも み吉野の たぎ常磐ときはの つねならぬかも
《このわしも 皆の命も 永久とわ続け 吉野の滝の この岩みたい》
                         ―笠金村―〔巻六・九二二〕 



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金村・千年編(05)きっと良え児が 待っとるで

2011年01月10日 | 金村・千年編
■平成23年1月10日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★大君の 行幸楽しや 春の野で 良え児逢えたら 言うことないな

三香みかの原 旅の宿りに 玉桙たまほこの 道の行きひに 天雲あまくもの よそのみ見つつ 
言問こととはむ よしの無ければ こころのみ 咽せつつあるに
 
三香みかの旅 道で出逢うた 可愛かいらし 気にはなるけど
 声かけの 切っ掛けうて 胸詰まり くるし思いで いたけども》
天地あめつちの 神祇かみこと寄せて 敷拷しきたへの 衣手ころもでへて 自妻おのづまと 
たのめる今夜こよひ 秋の夜の 百夜ももよの長さ ありこせぬかも

《なんたる神の  引き合わせ 思いもかけず 話でき 一緒泊まれる この夜は
 〔春の短い 夜やけど〕  秋の夜長の 百倍の 夜の長さに 成って欲し》
                         ―笠金村―〔巻四・五四六〕 
天雲あまくもの よそに見しより 吾妹子わぎもこに 心も身さへ 寄りにしものを
《一目見て 惚れて仕舞しもうた あのむすめ 身ィも心も 取られてしもた》
                         ―笠金村―〔巻四・五四七〕 
今夜このよるの 早く明くれば すべをみ 秋の百夜ももよを 願ひつるかも
《このよるは 早よに明けたら あかんがな 秋の長夜の 百倍欲しい》
                         ―笠金村―〔巻四・五四八〕 




【三香の原】へ


金村・千年編(04)代わりにわしが 詠うてやるか

2011年01月06日 | 金村・千年編
■平成23年1月6日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★行幸やと あんたご機嫌 お供やが うち留守番で 独り寂しで

大君の 行幸みゆきのまにま 物部もののふの 八十伴やそともと で行きし うつくつま 
天皇おおきみさんの 行幸みゆきに付いて お伴の人と 出かけたあんた》
天飛あまとぶや 軽の路より 玉檸たまだすき 畝火うねびを見つつ 麻裳あさもよし 紀路きぢに入り立ち  真土山まつちやま ゆらむ君は 
《軽の道から 畝傍を眺め 紀の国はいって 真土まつちの山を 越えて行くんか いとしいあんた》
黄葉もみちばの 散り飛ぶ見つつ にきびにし われは思はず 草枕 旅をよろしと 思ひつつ 君はあらむと 
黄葉もみじ散るのを 綺麗きれいとながめ うちのことなど すっかり忘れ 旅楽しもと おもうてなさる》
あそそには かつは知れども しかすがに 黙然もだもありえねば 
《そんな気持も 分かるんやけど ひとり待つんは 辛抱出来ん》
わが背子せこが ゆきのまにまに 追はむとは 千遍ちたびおもへど 手弱女たわやめの わが身にしあれば 
《あんた行く道  追いかけ行こと 思うてみても 女の身では》
道守みちもりの はむ答を 言ひらむ すべを知らにと 立ちて爪つまづく
《道の番人 問い詰めされて 言い訳できる 自信がうて 出かけるのんを 躊躇ためらうこっちゃ》
                         ―笠金村―〔巻四・五四三〕 
おくれゐて 恋ひつつあらずは 紀伊の国の 妹背いもせの山に あらましものを
《あんたはん あとに残って しのぶより 妹背の山で りたいもんや》〔一緒に居れる〕
                         ―笠金村―〔巻四・五四四〕 
わが背子せこが あとふみ求め 追ひ行かば 紀伊の関守い とどめてむかも
《追いかけて あんた行く道 辿たどっても 紀伊の関守 めるんやろな》
                         ―笠金村―〔巻四・五四五〕 


うつくしつまは】へ


金村・千年編(03)わしも詠うと 千年が続く

2011年01月03日 | 金村・千年編
■平成23年1月3日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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時代とき移り 従駕の歌に 登場は 大君外れ 我が妻恋し

うまごり あやにともしく 鳴る神の 音のみ聞きし 吉野の 真まき立つ山ゆ 見おろせば
うらややんで うわさ聞いてた 吉野宮 山の上から ながめ見る》
川の瀬ごとに け来れば 朝霧あさぎり立ち 夕されぱ かはづ鳴くなへ 
ひも解かぬ 旅にしあれば のみして 清き川原かはらを 見らくし惜しも

《川瀬川瀬に 明けたら 朝に霧立ち 夕方は 蛙鳴く声 聞こえてる
 妻を残して 来た旅や 清い川原を わしひとり 見るのんしい 一緒に見たい》  
                         ―車持千年くるまもちのちとせ―〔巻六・九一三〕
たぎの 三船の山は かしこけど 思ひ忘るる 時も日も無し
急流たきの上 そびえる三船山やまは えけども お前のことが 忘れられへん》
                         ―車持千年―〔巻六・九一四〕 
【ある本の反歌】 
千鳥鳴く み吉野川の 川音かはとなす 止む時無しに 思ほゆる君
《続けざま  波音続く 吉野川 お前思うの 続けざまやで》
                         ―車持千年―〔巻六・九一五〕 
あかねさす 日並ひならべなくに わが恋は 吉野の川の 霧に立ちつつ
《旅に来て 日も経たんのに 恋つのる 吉野の川で 霧が立つよに》
                         ―車持千年―〔巻六・九一六〕 



【止む時無しに】へ


金村・千年編(02)わしも詠うぞ 吉野宮

2010年12月30日 | 金村・千年編
■平成22年12月30日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★人麻呂を 習い金村 従駕歌 歌う吉野の 宮処

たぎの 御舟みふねの山に 瑞枝みづえざし しじひたる とがの 
いやつぎつぎに 万代よろづよに かくし知らさむ み吉野の 蜻蛉あきづの宮は
 
《急流の ほとりそびえる 三船山 え枝いっぱい 付けたとが 葉ぁ次々に 付ける
 何時いつの世までも 続いてく 吉野の里の 蜻蛉宮あきづみや
神柄かむからか たふとくあらむ 国柄くにからか 見がしからむ 山川を きよさやけみ 
うべし神代かみよゆ 定めけらしも

《神さんやから とうといで 国土くにえから かれるで 山川ともに 清らかや
 昔にここを 大宮所みやどこと 決めなさったも もっともや》
                         ―笠金村―〔巻六・九〇七〕 
毎年としのはに かくも見てしか み吉野の 清き河内かふちの たぎつ白波
《来る年も  また来る年も 見たいんや 吉野の川の 激しい波を》
                         ―笠金村―〔巻六・九〇八〕 
山高み 白木綿花しらゆふはなに 落ちたぎつ たぎ河内かふちは 見れど飽かぬかも
けへんな 白木綿花ゆうはなみたい ほとばしり 流れて下る 川の激流ながれは》
                         ―笠金村―〔巻六・九〇九〕 
【ある本の反歌】 
神柄かむからか 見が欲しからむ み吉野の たぎ河内かふちは 見れど飽かぬかも
《神さんが 宿ってはるから 見たいんや 吉野の滝は けへんこっちゃ》
                         ―笠金村―〔巻六・九一〇〕 
み吉野の 秋津あきづの川の 万代よろづよに 絶ゆることなく またかへり見む
《いつまでも  水の絶えへん 秋津川 また見に来るで またまた見ィに》
                         ―笠金村―〔巻六・九一一〕 
泊瀬女はつせめの 造る木綿花ゆふはな み吉野の たぎ水沫みなわに 咲きにけらずや
《咲いてるで 吉野の滝の 波の上 はつむすめ 造る言う木綿花はな
                         ―笠金村―〔巻六・九一二〕 




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金村・千年編(01)延々続く あの火は何や

2010年12月27日 | 金村・千年編
■平成22年12月日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★慕われし 志貴皇子しきみこ居らん 萩の花 何知らぬ気に 花こぼしてる

梓弓あずさゆみ 手に取り持ちて 大夫ますらをの 得物矢さつやばさみ 立ちむかふ 高円たかまと山に 
春野焼く  野火と見るまで もゆる火を いかにと問へば
 
武人ますらおが 手に持つ弓に 矢をつがえ 射るため向かう まとな 高円山たかまとめぐる 春の野を
 焼く火みたいに  燃えるのは 何の火ィかと 尋ねたら》
玉桙たまほこの 道来る人の 泣く涙 小雨に降り 白拷しろたへの ころもひづちて 立ちとまり われに語らく 
《道を来る人 顔上げて あふれる涙 雨みたい 着てる服まで 濡れそぼち 足をとどめて 語るには》
何しかも もとな問ふ 聞けば のみし泣かゆ 語れば 心そ痛き 
天皇すめろきの 神の御子みこの いでましの 手火たびの光そ ここだ照りたる

なんで聞くんや そんなこと 聞いたら余計よけい 泣けてくる 話すと胸が 痛うなる
 天皇おおきみさんの 御子みこはんが あの世旅立つ 送り火や こんないっぱい 光るんは》
                         ―笠金村かさのかなむら歌集―〔巻二・二三〇〕

高円の 野辺のへ秋萩あきはぎ いたづらに 咲きか散るらむ 見る人無しに
高円たかまとの 野に咲く萩は むなしいに 咲いて散ってる 見る人おらんで》
                         ―笠金村歌集―〔巻二・二三一〕 
三笠山 野辺行く道は こきだくも しげり荒れたるか ひさにあらなくに
うなって 日もたんのに 野辺の道 えらい荒れてる 三笠の山は》
                         ―笠金村かさのかなむら歌集―〔巻二・二三二〕
高円たかまとの 野辺の秋萩 な散りそね 君が形見かたみに 見つつしのはむ
《高円の 野に咲く萩よ 散らんとき あんたをしのぶ よすがと見たい》
                         ―笠金村歌集―〔巻二・二三三〕 
三笠山 野辺ゆ行く道 こきだくも 荒れにけるかも ひさにあらなくに
《三笠山 めぐる野の道 こんなにも 荒れてしもうた 日も経たんのに》
                         ―笠金村歌集―〔巻二・二三四〕 






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