ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

古事記ものがたり・下つ巻(01)哀れ黒比売 歩行にて帰る

2013年04月25日 | 古事記ものがたり
■哀れ黒比売くろひめ 歩行かちにて帰る

応神おうじん天皇おおきみ そのお子の
大雀命おおさざきみこ 即位して
仁徳にんとく天皇おおきみ お成りなる

仁徳にんとく天皇おおきみ 国見して
炊煙けむり立たぬは 貧困まずしきや
 以後の課役かえきを 免ずべし」












おそう雨風 宮殿みや破れ
れ降る雨に つくろわず
て受けて 雨ける

三年みとせの後の 国見には
民のかまどは にぎわいて
課役復活もどりて 宮殿みやさか









仁徳にんとく天皇おおきみ 皇后おきさき
葛城曽都彦かつらぎそつひこ 娘にて
石之日売命いわのひめみこ 申すなり 

嫉妬そねみ心の ただ成らず
仁徳天皇きみの気移り 耳するや
火点ひつうらみの 足もだ

片や仁徳天皇おおきみ おみな好き
吉備きび海部あまべの 黒比売くろひめ
してそばにと 思い
呼びて寵愛ちょうあい 思いしに
石之日売命いわひめこわと 逃げ帰る

帰り乗る船 遠望のぞみ見て
仁徳にんとく天皇おおきみ 謡う歌

沖に小舟が 連なりて 
いと黒比売くろひめ われの児が
故郷くにへ帰るぞ ああ黒比売くろひめ

  沖方おきえには 小舟おぶねつららく
  黒鞘くろざやの 美児まさずこ我妹わぎも
  国へくだらす
               ―古事記歌謡(五十三)―

聞いた石之日売命いわひめ 人りて
船の黒比売くろひめ 引き下ろし
歩行かちにて行けと 追い払う

恋しさつのる 仁徳天皇おおきみ
淡路島あわじ見たい」とたばかりて
吉備きびを望みて 謡う歌








難波なにわの津より 船出ふなでして
われおさめる 国見れば
淡島あわしまおのごろ 島向こう
檳榔びろうえる 島見える
遠く離れた 吉備島きびしま見える

  押し照るや 難波なにわの崎よ
  ちて 我が国見れば
  淡島あわしま おのごろ島
  檳榔あじまさの 島も見ゆ
  けつ島見ゆ
                ―古事記歌謡(五十四)―

つのいとしさ 島伝しまづた
吉備きびに至りて 供御くご給う
吸物すいもの煮るに 黒比売くろひめ
青菜 摘む丘 登り来て
仁徳天皇おおきみ謡う 楽し歌








山の畑に いた青菜
吉備きびの乙女と 摘むならば
 しや嬉し さて楽しやな

  山方やまがたに ける青菜も
  吉備人きびひとと 共にしめば
   楽しくもあるか
                ―古事記歌謡(五十五)―

楽し一時ひととき 過ぎ去りて
別れ黒比売くろひめ 謡う歌

吹く西風にしかぜは 大和やまとへと
天皇きみ雲共に 離れても
我れ天皇おおきみを 忘れはまい

  やまとに 西風にし吹き上げて
  雲離れ 退りとも
   我忘れめや
               ―古事記歌謡(五十六)―

大和やまと帰るは 誰夫どなたかな
山下やましたくぐる 水の
ひそやかしたう 我が天皇きみなれや

  やまとに くはつま
  こもの 下よえつつ
  くはつま
                ―古事記歌謡(五十七)―


古事記ものがたり・中つ巻(24)大山守命は 我れこそ天皇と

2013年04月22日 | 古事記ものがたり
大山守命おおやまもりは 我れこそ天皇きみ

応神おうじん天皇おおきみ 崩御みまかりて
約束さだめ通りに 大雀命おおさざき
和紀郎子わきいらつこを 天皇おおきみ

かねて不承知 大山守命やまもり
ひそ軍備そなえを 聞く大雀命さざき










注進しらせ受けたる 和紀郎子いらつこ

宇治川岸辺きしべ 伏せ手
山に幔幕まんまく 仮宮みや

舎人とねり仕立てて にせ天皇きみ
見せて 山上 座らせる

さらにみずから かじ取りの
布衣ぬのふくまわし 身を変装やつ
川縁かわべり立ちて 敵を待つ

和紀郎子いらつこるは 川向こう
 の上だと 狙い付け
大山守命おおやまもりは 渡し場へ

舟に乗り込み きて問う
「山にしし 射殺すは
 かなうや否や 答えせよ」

和紀郎子いらつこふんす 漕ぎ手言う
しし射殺すは 否なるぞ」

如何いかなる理由わけぞ そも言うは」

「我れ幾度いくたびと 試すにも
 狙いかないし ためし無し」

川のなかばに 舟進み
和紀郎子いらつこさおで 岩突くに

立てる大山守命やまもり 蹌踉よろめきて
樹脂あぶら船板 足取られ
水没はま水中みずなか 謡う歌









宇治の川岸 渡し場に 
上手じょうずさおる 人らば
ただたりて 助けよ我れを

  ちはやぶる 宇治のわたり
  さお取りに 速けん人し
  我が左右もこ
                ―古事記歌謡(五十一)―

助け 来たりと 思うやに
置きし伏せ手の 矢がねら

射られ流され 大山守命やまもり
やがて 沈みて 川の底

亡骸なきがら探し 川さら
見付けしたる 和紀郎子いらつこ
かぎで引き上げ 謡う歌










宇治の川岸 渡し場に 
そびえて立てる まゆみの木
伐採って仕舞しまおう 思えども
取倒って仕舞しまおと 思えども

  ちはや人 宇治のわたり
  渡りに 立てる梓弓あずさゆみまゆみ
  いらんと 心はえど
  い取らんと 心はえど
産みし応神天皇おおきみ 思い出し
一緒育そだ兄弟姉妹はらから 思い
いたまし思い いてきて
いとし思いが き来たり
伐採らず置いたる まゆみの木

  本方もとえは 君を思い出
  末方すええは 妹を思い出
  いらなけく そこに思い出
  かなしけく ここに思い出
  いらずぞ来る 梓弓あずさゆみまゆみ
                ―古事記歌謡(五十二)―

天皇おおきみ就任つくに 適任ふさわし
大雀命さざきなりしと 和紀郎子いらつこ

いや和紀郎子いらつこと 大雀命おおさざき

ゆずり譲られ 日数ひかず

やがて和紀郎子いらつこ 身罷みまかりて
後を継いだは 大雀命おおさざき




古事記ものがたり・中つ巻(23)御代栄えよと 御酒奉る

2013年04月18日 | 古事記ものがたり
御代みよ栄えよと 御酒みきたてまつ

吉野元々もと住む 国主くずらして
大雀命おおさざきみこ おきなる 
御大刀たち伏しおがみみ 謡う歌

応神天皇おうじんおおきみ 御子みこさんの
大雀命おおさざきみこ 大雀命おおさざき
かせたまえる その大刀たち
手元剱もと一本ひともと 剣先さき分かれ
冬木幹下みきした 潅木かんぼく
揺動そよぐ如くに さやさやと

  品陀ほんだの 日の御子みこ
  大雀おおさざき 大雀おおさざき
  かせる大刀たち
  もとつるぎ すえ振る
  冬木ふゆきの すから下木したき
   さやさや
                ―古事記歌謡(四十八)―









    ――――――――――
吉野白樫しらかし まつる地で
横臼よこうす造り 御酒みきかも
造りし御酒みきを ささげるに

口の仕草しぐさで つづみ打ち
舞って 踊って 謡う歌












聖白樫かしの林で 横臼よこうす
造りかもした 御酒みきなれば
香りゆたかに 召し上がれ
我れらあがめる 父なる天皇きみ

  白樫かしに 横臼よくすを作り
  横臼よくすに みし大御酒おおみき
  美味うまらに 聞こしもち
  まろが
                ―古事記歌謡(四十九)―
    ――――――――――
百済国くだらくにから 朝貢みつぎ来る

牡牝おすめす馬や 大刀たち大鏡かがみ

和迩吉師わにきし持ちて 献上たてまつ
論語十巻 千字文せんじもん

鍛冶かじたくみに 機織はたおり

酒の醸造つくりの 須須許理すすこり

献上けんじょう酒に 応神天皇すめらみこ
酔う て浮かれて 謡う歌










須須許理すすこりみし この御酒みき
酔うたぞわれは この御酒みき
太平たいへい御酒みきに 笑顔御酒みき
われは酔うたぞ この上なしに

  須須許理すすこりが みし御酒みき
  われいにけり
  ことぐし ぐし
  われいにけり
                ―古事記歌謡(五十)―



古事記ものがたり・中つ巻(22)眉目好き比売を 我が妻に

2013年04月15日 | 古事記ものがたり
眉目みめ比売ひめを 我が妻に

長兄あに大山おおやまの もりみこと
次兄つぎ大雀命おおさざき みこと呼び 応神おうじん天皇おおきみ お問いなる

年上としうえ子供 年下としした
 いずれ子供が いとしやな」

長兄あに大山守命おおやま 答えるに
「我れ年上が いとしや」と

次兄つぎ大雀命おおさざき 意を察し
「上成人おとな故 下いとし」

応神おうじん天皇おおきみ うなづきて
さざき申すが 当得たり」










 やがてにくだる みことの
長兄あに部民べのたみ 取り仕切れ
 次兄つぎは天下の 政務まつり
 皇位こうい継ぐのは 和紀郎子いらつこぞ」













    ――――――――――
日向国ひゅうが豪族 娘なる
髪長比売かみながひめの 眉目みめきを
望み応神天皇おおきみ 難波なにわ

ふと目に止めた 大雀命おおさざき
天皇きみに願いて 我が妻に」
建内宿祢たけうちすくね 受給たまわりて
応神天皇すめらみこへと 告げ置きし

新嘗祭にいなめ後の 豊明とよあかり
うたげの席で 応神天皇すめらみこ
柏葉かしわに盛った 御酒おみき
髪長比売ながひめ持たせ 大雀命さざきへと

時に応神天皇おおきみ 謡う歌










野蒜のびる摘みにと 御子みこ連れて
摘み行く途中すがら 道ほと
ただよう香り 花橘たちばな
上枝うわえだ鳥が り枯らし
下枝人 が 取り枯らし
残る中枝 付くつぼみ
あから蕾の 乙女児おとめご
欲しと言うなら しとしょう

  いざ子ども 野蒜のびる摘みに
  ひる摘みに 我が行く道の
   香ぐわし 花橘は
  上枝ほつえは 鳥居枯いがらし
  下枝しづえは 人取り枯らし
  三つ栗の 中つ
  ほつぼみ 赤ら娘子おとめ
  いざさば らしな
                ―古事記歌謡(四十四)―

われが好みの 依網池よさみいけ
堰杭せきくい打つを 気付かずに 
蓴菜じゅんさい採るも 気付かずて 
何とこのわれ 間抜けよな
ええい悔しや われ間抜けよな

  水たまる 依網よさみの池の
  くい打ちが しける知らに
  ぬなわり えけく知らに
  我が心しぞ いや愚鈍おこにして
   今ぞ悔しき
                ―古事記歌謡(四十五)―

髪長比売ながひめ得たる 大雀命おおさざき
 しや嬉し 謡う歌

果ての地古波陀こはだ 住む乙女
遥か眉目噂うわさの 聞きしかど
共寝ともねしたぞよ 古波陀こはだの乙女

  道のしり 古波陀こはだ娘子おとめ
  かみごと 聞こえしかども
  あいまくら
                ―古事記歌謡(四十六)―
果ての地古波陀こはだ 住む乙女
拒みも無しに 共寝ともねした
何といとしや 古波陀こはだの乙女

  道のしり 古波陀こはだ娘子おとめ
  あらそわず 寝しくをぞも
  うるわしみ思う
                ―古事記歌謡(四十七)―



古事記ものがたり・中つ巻(21)宇治の見初めは 矢河枝比売

2013年04月11日 | 古事記ものがたり
■宇治の見初みそめは 矢河枝比売やかわのえひめ

仲哀ちゅうあい天皇おおきみ そのお子の
品陀和気命ほんだわけみこ 即位して
応神おうじん天皇おおきみ お成りなる

応神おうじん天皇おおきみ 近江国
巡りおさめの 宇治野うじのにて
葛野かずの望みて 謡う歌








繁る葛野かずの 見てみれば
居並ぶ家並やなみ 見てとれる
これぞ国つ あかしなり

  千葉ちばの 葛野かずのを見れば
  百千ももちる 家庭やにわも見ゆ
  国のも見ゆ
                ―古事記歌謡(四十二)―

宇治木幡こはたで 乙女

何処いずこ娘」と 問い掛けに
比布礼能意富美ひふれのおおみ 娘にて
 宮主矢河みやぬしやかわ 枝比売えひめ」とぞ

 明日に逢わん」と言い置くに
帰り枝比売えひめが 経緯いきさつ
父に伝うに 「そは天皇きみぞ」

待つに日明けて 応神天皇きみ来たり
馳走ちそう致して 酒杯はいささ

酒杯はい手に応神天皇きみが 謡う歌

ぜんなるかには 何処どこの蟹
い道たる 角賀つぬが
横這よこはい歩き 何処どこへ行く
伊知遅島いちじ美島みしま 辿たどり来て
もぐり息止め あえぎつつ
難儀なんぎあゆみの 湖畔こはん

  このかにや 何処いずくの蟹
  ももづたう 角鹿つぬがの蟹
  横らう 何処いずくに到る
  伊知遅島いちじしま 美島みしまに着き
  鳰鳥みおどりの かずき息づき
  段差しなだゆう 佐佐那美道ささなみじ







されどこのわれ すいすいと
木幡道こはたみち来て 逢いし児は
後ろ姿も 端正きらきら
白い歯並び しいひし

  すくすくと 我がませばや
  木幡こはたの道に わしし娘子おとめ
  後姿うしろでは 小楯おだてろかも
  歯並みは 椎菱しいひし
櫟井いちいで取れる 丸迩坂わにさ
 にある土 赤み帯び
 にある土 黒み帯ぶ
中の程よい 土りて
直火じかびを避けた 眉墨まゆずみ
黒々いた 児に逢いき

  いちいの 丸迩坂わにさの土を
  初土はつには はだ赤らけみ
  底土しわには 丹黒にぐろゆえ
  三つ栗の その中つ
  かぶ突く 真火まひには当てず
  まよき に書き垂れ
  わししおみな









こんな児ならと 思う児に 
こんな 児ならと 思う児が
今目の前に 向い
われに寄り添い ここに

  もがと 我が見し児ら
  くもがと 我が見し児に
  真正面うたたけだに 向かいるかも
  い添いるかも
                ―古事記歌謡(四十三)―

これが枝比売えひめの 産む宇遅能うじの
和紀郎子わきいらつこは 応神天皇きみかな




古事記ものがたり・中つ巻(20)神は約束すに 守れるを

2013年04月08日 | 古事記ものがたり
■神は約束やくすに 守れるを

天之日矛あめのひぼこが 新羅国しらぎ出て
但馬国たじま至るに 持ち来たる
神の宿れる つ宝
















つらぬいた たま二連
浪振る切るの 領巾ひれ二つ
風振る切るの 領巾ひれ二つ
沖津おきつ辺津へつの 二鏡ふたかがみ

これぞ伊豆志いずしの 神社やしろ
八つ の大神 なるぞかし

伊豆志いずし大神 娘にて
伊豆志袁登売いずしおとめの かみなるを
八十やその神々 求婚もとめしが
いずれ神とて かないなし

ここにいますは 二柱ふたはしら

兄神あにがみ名をば 秋山之あきやまの
下氷壮士したひおとこと 申すあり
弟神おとがみ名をば 春山之はるやまの
霞壮士かすみおとこと 申すにて








下氷壮士したひ霞壮士かすみに け図る

袁登売おとめ求婚もとめに 門先もんさき
 我れ追われしに 如何いかに」

容易たやすかない 我れなれば」

「成れば我が衣服ふく お前にと
 身丈みたけかめにて 酒かも
 山海珍味 馳走ちそうなす」

霞壮士かすみ経緯いきさつ 母ぐに
一夜ひとよの内に 作りしは
藤蔓ふじつるみし 衣装ふくくつ
弓矢しつらえ 藤蔓ふじ仕立て

袁登売おとめと向かい 家出霞壮士かすみ
衣装ふくくつ弓矢ゆみや 藤花ふじが咲く

かわや立て置く 藤花ふじ弓矢
袁登売おとめ面妖おかしと 持ち行くに
跡付け霞壮士かすみ の内へ
思いかないて 子まで

けの成就なしとげ 告げ言うに
下氷壮士したひうらやみ 知らぬ顔

次第しだい告げるに 母は言う
「神は約束やくすに 守るもの
 人間ひとに染まるや 兄神あにがみは」

ただち竹り かごみて
まぶし石 竹葉に包み
かまどに置きて のろいする











「竹葉しおれに しぼ
 潮干くさまに からびよ
  石が沈みに 病み伏せよ」

八年やとせ苦しむ 兄神あにがみ
生気せいき失い せ細り
み衰えて 死ぬ思い

うれい泣く 兄神あにがみ
さとし許して のろい解く

時に下氷壮士したひは 蘇生よみがえ




古事記ものがたり・中つ巻(19)天之日矛ぞ 神功皇后祖先

2013年04月04日 | 古事記ものがたり
天之日矛あめのひぼこぞ 神功皇后こうごう祖先

神功皇后じんぐうこうごう その母は 

新羅しらぎ国王 息子なる
天之日矛あめのひぼこの 五代目の
子孫高額たかぬか 比売命ひめみこと

天之日矛あめのひぼこが やまと
来たる説話は 次に











昔々に 沼ほと
身分下なる 昼寝ひるね
ほとに一条 射す日光ひかり

身分下 なる 男見て
不可解ふかかい思い あと付ける

 産んだは 赤い玉
もらいて 腰げる

谷間たにまに 持てる田に
耕作人たがやしびとの 食い物と
牛に背負せおわせ 来る道に

天之日矛あめのひぼこが とがめ立て
「山に牛連れ いぶかしい
 殺しらうに 相違たがいなし」

しきりの 弁解いいわけ
聞かぬ天之日矛ひぼこに 赤玉たま渡す

飾り棚うえ 赤い玉
一夜くれば 眉目みめ乙女

めとりし乙女 作る膳
美味びみなる珍味 朝夕に

味に慣れたる天之日矛あめひぼこ
やがて傲慢ごうまん 膳そし

わらわ誰かと 存知ぞんじおる
 元は日の射す ひがしくに
 祖先おやの国へと 戻りなん」

逃げて 小舟で 海に浮き
着くはやまとの 難波なにわの津











追い天之日矛ひぼこ 海神かみはば
む無しやなと 船かえ
但馬国たじま至りて 留まれる

天之日矛ひぼこ子孫の 四代目が
かくの実の 多遅摩毛理たじまもり




古事記ものがたり・中つ巻(18)御酒を醸すは 少名御神

2013年04月01日 | 古事記ものがたり
御酒みきかもすは 少名御神すくなかみ

建内宿祢すくね 太子みこ連れて
喪船もぶねみそぎに 高志こし角賀つぬが

鎮座います大神おおかみ 太子みこ夢に

「我れと太子みことの 名を替えよ」
めいかしこみて お受けす」
「然らば朝に 浜まい
 名替えの礼物れいを たまわらん」

し朝の 浜見れば
浦埋め尽す 海豚いるかむれ
「我れにたまわり なりしや」

御食みけさかなを たまわるに
大神おおかみたたえ 贈る名を
御食津大神みけつおおかみ 名付けたり

今に気比大神けひかみ 伝え云う









角賀つぬが戻るに 神功皇后
 rt>こうごう

はらい祝いと 待つ酒宴うたげ

酒杯はいを勧めて 謡う歌

この御酒みき
われかもした 御酒みきならず
かもされたるは 常世とこよにて
岩姿いわとお立ちの 少名御神すくなかみ
めて寿ことほぎ 舞い踊り
祝い寿ことほぎ 樽めぐ
くだされし 御酒みきなるぞ
さあみ干せや さあさ さあ

 








  この御酒みきは 我が御酒みきならず
  くしかみ 常世とこよいま
  いわ立たす 少名御神すくなみかみ
  神寿ぎ 寿くるおし
  豊寿ぎ 寿もとほ
  まつ御酒みき
  さずせ ささ
                ―古事記歌謡(四十)―










幼な御子みこ故 建内たけうちの
宿祢すくね代りて 謡う歌

この御酒みきかもす 人さぞや
たたく太鼓を うすに乗せ
うたいつつ かもしなし
まいながら かもすにて
くもこの御酒さけ この御酒みき
 と楽しや さあさ さあ

  この御酒みきを みけん人は
  そのつづみ うすに立てて
  歌いつつ みけれかも
  舞いつつ みけれかも
  この御酒みきの 御酒みき
  無性あやに うた楽し ささ
                ―古事記歌謡(四十一)―


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