ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

旅人編(26)帰って来たら 余計寂しがな

2010年10月28日 | 旅人編
■平成22年10月28日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★思うてた 寂しさ越えて 侘びしがな ここ佐保家の 茂った庭は

かへるべく 時は成りけり 京師みやこにて 手本たもとをか わがまくらかむ
《帰る時  とうと来たけど 帰っても 誰の手 枕に したらええんや》
                         ―大伴旅人―〔巻三・四三九〕 
みやこなる れたる家に ひとり寝ば 旅にまさりて 苦しかるべし
《戻っても さみし家での 独り寝は 苦しいこっちゃ 野宿するより》
                         ―大伴旅人―〔巻三・四四〇〕 

人もなき 空しき家は 草枕くさまくら 旅にまさりて 苦しかりけり
愛妻ひとらん うつろな家に 暮らすんは 旅よりもっと むなしいこっちゃ》
                         ―大伴旅人―〔巻三・四五一〕 
いもとして 二人ふたり作りし わが山斎しまは たかしげく なりにけるかも
《その昔 お前と作った うちの庭 木ィ鬱蒼うっそうと 繁ってしもた》
                         ―大伴旅人―〔巻三・四五二〕 
吾妹子わぎもこが ゑし梅の樹 見るごとに こころせつつ 涙し流る
《手ずからに  お前の植えた 梅の木を 見るたび泣ける 胸込み上げて》
                         ―大伴旅人―〔巻三・四五三〕 



【植えし梅の木】へ


旅人編(25)筑紫懐かし 友無き侘びし

2010年10月25日 | 旅人編
■平成22年10月25日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★帰り来て 都任務の 傍らで 筑紫の友が ふと甦る

わがころも 人になせそ 網引あびきする 難波なには壮士をとこの 手には触るとも
《この衣 漁師まがいに 着さすなよ 漁師まがいの 難波壮士あんたえが》
                         ―大伴旅人―〔巻四・五七七〕 

 
今よりは やまみちは 不楽さぶしけむ わがかよはむと 思ひしものを
《大宰府へ  通う山道 楽し無い 今までずっと 楽しかったに》
                         ―葛井大成ふぢゐのおほなり―〔巻四・五七六〕
天地あめつちと 共に久しく 住まはむと 思ひてありし いへの庭はも
《いつまでも  いついつまでも 住みたいと 思うてたんやで あんたの庭に》
                         ―大伴三依おおとものみより―〔巻四・五七八〕

君がため みしまちざけ やすの野に ひとりや飲まむ ともしにして
《友無しで  独り飲むんか この酒を あんたのために 造ったいうに》
                         ―大伴旅人―〔巻四・五五五〕 

まそ鏡 見かぬ君に おくれてや あしたゆうへに さびつつらむ
《気心の 知れたあんたに 置いてかれ さみしいこっちゃ 朝夕ずっと》
ぬばたまの くろかみかはり 白髪しらけても 痛き恋には ふ時ありけり
《黒い髪 しろなるほどに 年齢とし取って こんな苦しい 恋するやろか〔相手男やのに〕》
                         ―沙弥満誓さみまんせい―〔巻四・五七二、五七三〕

ここにありて 筑紫つくし何処いづち 白雲しらくもの たなびく山の 方にしあるらし
《都から 筑紫何処どこやと 見てみるが 雲の棚引く 遥かかなたや》
くさの 入江に求食あさる あしたづの あなたづたづし ともしにして
《毎日を  心もとのう 暮らしてる お前さん言う 友置いてきて》
                         ―大伴旅人―〔巻四・五七四、五七五〕 



筑紫つくし何処いづち】へ


旅人編(24)辿る海路に 寂しさ沁みる

2010年10月21日 | 旅人編
■平成22年10月21日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★鞆の浦 敏馬の崎が 呼び起こす 愛し我妹の 在りし姿

吾妹子わぎもこが 見しともうらの むろの木は 常世とこよにあれど 見し人ぞ
《お前見た 鞆のむろの木 変われへん それ見たお前 いまもうらん》
鞆の浦の  磯のむろの木 見むごとに 相見し妹は 忘らえめやも
《むろの木を  見るたびお前 思い出す 一緒に見たんが 忘れられんが》
磯のうへに 根ふむろの木 見し人を いづらと問はば 語り告げむか
《磯の上  根張るむろの木 教えてや 見てたあの人 どこ行ったんや》
                       ―大伴旅人―〔巻三・四四六~四四八〕 

妹と来し 敏馬みぬめの崎を 帰るさに 独りし見れば 涙ぐましも
敏馬みぬめさき お前と見たな 帰りみち ひとりで見たら 涙とまらん》
行くさには  二人我が見し この崎を 独り過ぐれば 心悲しも
《来るときは 二人で見たな このみさき ひとりとおるん 悲してならん》
                       ―大伴旅人―〔巻三・四四九、四五〇〕 






【磯のむろの木】へ


旅人編(23)心逸(はや)るが 波風怖い

2010年10月18日 | 旅人編
旅人編(20)
■平成22年10月18日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★郎党は 主人先立ち 都へと 辿る船路は 望郷ぼうきょと不安 

わが背子せこを が松原よ 見渡せば 海人あま少女をとめども 玉藻刈る見ゆ
《おお見える アガ松原から 眺めたら 磯で少女おとめら 玉藻刈ってる》
                         ―三野連石守みののむらじいそもり―〔巻十七・三八九〇〕
荒津あらつの海 しほしほち 時はあれど いづれの時か わが恋ひざらむ
《海の潮  満ち干の時は 決まってる わしの思いは 引く時ないわ》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九一〕 
いそごとに 海人あま釣船つりふね てにけり わが船泊てむ 磯の知らなく
《磯どこも  漁師の船が 泊まってる わしら泊るん どこの磯やろ》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九二〕 
昨日きのふこそ 船出ふなではせしか 鯨魚いなさ取り 比治奇ひぢきなだを 今日けふ見つるかも
船出ふなでしたん 昨日みたいに 思うたが 早いもんやな ヒジキの灘や》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九三〕 
淡路島あはぢしま 渡る船の 揖間かぢまにも われは忘れず 家をしそ思ふ
《船の梶 あいだ狭いが そんなも わし家のこと 忘れられへん》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九四〕 
大船おほふねの 上にしれば 天雲あまくもの たどきも知らず 歌乞わが
《船の上 波に揺られて 頼りない 何時いつ着くんやろ 懐かし家に》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九八〕 
あま少女をとめ いざく火の おぼほしく 都努つのの松原 思ほゆるかも
《ぼんやりと  津野の松原 見えとおる なんとは無しに 懐かしいがな》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九九〕 
玉はやす 武庫むこわたりに あまづたふ 日の暮れゆけば 家をしそ思ふ
《きらきらと  武庫の海峡 日ィ暮れる 夕暮れ寂して 家思い出す》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九五〕 
家にても たゆたふ命 波の上に 思ひしれば 奥処おくか知らずも
《この命 うちに居っても 頼りない 船の上では なお頼りない》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九六〕 
大海の 奥処おくかも知らず 行くわれを 何時いつ来まきむと 問ひし児らはも
《海越えて 何処どこまで行くか 分からんに 何時いつ帰るかと あの児が聞いた》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九七〕 





【潮干潮満ち】へ


旅人編(22)連れて行きたい お前やけれど

2010年10月14日 | 旅人編
■平成22年10月14日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★大宰府を 離れる馬上 振り返る 思い重なる 水城の別れ

おほならば かもかもむを かしこみと 振りき袖を しのびてあるかも
《いつもやと 袖振るけども 門出かどでには はしたないかと 辛抱しんぼするんや》
                         ―児  島―〔巻六・九六五〕 
倭道やまとぢは 雲がくりたり しかれども わが振る袖を 無礼なめしとふな
《道雲に 隠れてしもたで ええかなと 袖振るけども 堪忍かんにんしてや》
                         ―児  島―〔巻六・九六六〕 
倭道やまとぢの 吉備きびの児島を 過ぎて行かば 筑紫つくしの児島 思ほえむかも
《帰り道  吉備の児島を 通るとき きっと思うで 筑紫の児島》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九六七〕 
大夫ますらをと 思へるわれや 水茎みづくきの 水城みづきの上に 涙のごはむ
《男やぞ 水城の上で 涙なぞ いてたまるか 女のために》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九六八〕 





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旅人編(21)わしも一緒に 帰りたいんや

2010年10月07日 | 旅人編
旅人編(20)
■平成22年9月日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★友旅人 送る憶良は 気が滅入る ひなに残るは 寂してならん

あま飛ぶや 烏にもがもや 都まで 送りまをして 飛び帰るもの
《飛ぶ鳥に  なってあんたを 都まで 送って行って 戻ってきたい》
人もねの うらぶれるに 龍田たつた山 御馬みま近づかば 忘らしなむか
《こっちみな しょんぼりやのに 龍田山 近くに見たら 忘れんちゃうか》
言ひつつも 後こそ知らめ とのしくも さぶしけめやも 君いまさずして
さみしさは あんたるうち まだ浅い ほんまさみしさ ってもたあと》
万代よろづよに いまし給ひて あめの下 まをし給はね 朝廷みかど去らずて
《ずううっと 長生きされて 国のため 活躍してや 朝廷みかどに居って》
                         ―山上憶良―〔巻五・八七六~八七九〕 

あまざかる ひな五年いつとせ 住ひつつ 都の風俗てぶり 忘らえにけり
きょうはなれ ここの田舎に 五年り みやこ風情ふぜいを 忘れてしもた》
かくのみや いきらむ あらたまの く年の かきり知らずて
《いつまでも 溜息ためいきついて 暮らすんか 今年も来年つぎも その翌年つぎとしも》
ぬしの 御霊みたま給ひて 春さらば 奈良の都に 召上めさげ給はね
《頼みます  あんたの引きで 春来たら 奈良の都に 呼び戻してや》
                        ―山上憶良―〔巻五・八八〇~八八二〕 





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旅人編(20)あんたとは 別れとないで

2010年10月04日 | 旅人編
■平成22年10月4日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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大和への 帰還かなった 旅人はん せめて別れの 宴で遊ぼ★

さきの 荒磯ありそに寄する 五百重波いほへなみ 立ちてもても わがへる君
《あんたへの 思い次々 波みたい 岬回って 荒磯ありそに寄せる》
                         ―門部石足かどべのいはたり―〔巻四・五六八〕
韓人からひとの ころもむとふ むらさきの こころみて 思ほゆるかも
《紫に めたあんたの ころも見て わしの心も 寂しさまる》
大和やまとへに 君が立つ日の 近づけば 野に立つ鹿しかも とよみてそ鳴く
《大和へと  あんた帰る日 近こなると 悲しんやろか 鹿鳴き騒ぐ》
                         ―麻田陽春あさだのやす―〔巻四・五六九、五七〇〕
月夜つくよよし 河音かはとさやけし いざここに くもかぬも 遊びてかむ
《月きれえ 流れもきよい さあみんな 行くも残るも 楽しいやろや》
                         ―大伴四綱―〔巻四・五七一〕 





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