ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

旅人編(02)さあさ皆して 憂さ晴らそうや

2010年07月26日 | 旅人編
■平成22年7月26日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★筑紫咲く 歌壇麗し 頼もしや 心大和へ 都へ飛ぶが

あをによし 寧楽なら京師みやこは 咲く花の にほふがごとく 今さかりなり
《賑やかな 平城ならみやこは 色えて 花咲くみたい 今真っ盛り》 
                         ―小野老をののおゆ―〔巻三・三二八〕

やすみしし わご大君おほきみの きませる 国のうちには 京師みやこし思おもほゆ
大君おおきみの 治めてなさる この国で やっぱりみやこが えなと思う》
藤波ふぢなみの 花は盛りに なりにけり 平城ならみやこを 思ほすや君
《藤のふさ 波打つみたい 花見ごろ みやこ恋しか どやそこの人》
                         ―大伴四綱おおとものよつな―〔巻三・三二九、三三〇〕

わがさかり また変若をちめやも ほとほとに 寧楽ならみやこを 見ずかなりなむ
《も一遍いっぺん 若返りたい そやないと 平城ならみやこを 見られへんがな》
わがいのちも つねにあらぬか 昔見し きさ小河をがはを 行きて見むため
《この命 もうちょっとだけ べへんか きさの小川を また見たいんで》
浅茅あさぢはら つばらつばらに ものへば りにしさとし 思ほゆるかも
《何やかや つらつらつらと 思うたび 明日香の故郷さとが 懐かしいんや》
わすれくさ わがひもに付く 香具かぐ山の りにしさとを 忘れむがため
《忘れ草 身に付けるんは 香具山の 故郷さと忘れよと 思うためやで》
わが行きは ひさにはあらじ いめのわだ にはならずて ふちにあらぬかも
《筑紫には ごうはらん 夢のわだ 浅瀬ならんと 淵でってや》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三三一~三三五〕 

しらぬひ 筑紫つくし綿わたは 身につけて いまだはねど あたたかに見ゆ
《珍しい 筑紫の真綿まわた わしのに てみてへんが ぬくそに見える》
                         ―満誓まんせい―〔巻三・三三六〕

億良おくららは 今はまからむ 子くらむ そのかの母も を待つらむそ
《憶良めは ぼちぼち帰らして もらいます 子供も女房よめも 待ってますんで》
                         ―山上憶良―〔巻三・三三七〕 







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旅人編(01)仕え大事や泣き言言うな

2010年07月22日 | 旅人編
■平成22年7月22日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★筑紫行く これが別れか 象小川 清らか流れ 何時何時までも

吉野よしのの 芳野よしのの宮は やまからし たふとくあらし かはからし さやけくあらし 
あめつちと 長く久しく 万代よろづよに 変らずあらむ 行幸いでましみや

吉野宮よしのみや 山えよって 貴いし 川えよって きよらかや
 ずうっとずっと 続いてや 何万年も 続いてや 大君なさる このお宮》
                         ―大伴旅人―(巻三・三一五) 
昔見し きさ小河をがはを 今見れば いよよさやけく なりにけるかも
《今見たら 前よりずっと うなった きさ清流ながれの 清々すがすがしさよ》
                         ―大伴旅人―(巻三・三一六) 




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憶良編(18)憶良大夫(ますらお)死んでたまるか

2010年07月19日 | 憶良編
■平成22年7月19日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★今わきわ 必死憶良は 足掻あがきする 死んでたまるか このままここで

をのこやも 空しくあるべき 万代よろづよに 語りくべき 名は立てずして
丈夫ますらおと 思うわしやぞ のちの世に 名ぁ残さんと 死ねるもんかい》
                       ―山上憶良―〔巻六・九七八〕 





壮士をのこやも】へ


憶良編(17)負けてたまるか病ごときに

2010年07月15日 | 憶良編
■平成22年7月15日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★病気して 気ィ弱なって 仕舞たけど 負けてられんで 子がさいんや

たまきはる うちかぎりは たひらけく 安くもあらむを 
事も無く くあらむを 世間よのなかの けくつらけく

《生きてるうちは  病気せず 楽に死にたい おもうても
 世の中うっとし ままならん》
いとのきて 痛ききずには 鹹塩からしほそそくちふが如く 
ますますも 重き馬荷うまにに 表荷うはに打つと いふことのごと 
老いにてある わが身の上に 病をと 加へてあれば 

《塩を生傷なまきず 塗るみたい 追い荷重荷に 積むみたい
 老い身に病気 重なって》 
昼はも 嘆かひ暮し よるはも 息衝いきづきあかし 
年長く 病みし渡れば 月かさね 憂へさまよ
 
《夜は溜息 昼嘆き 長患いの 続くうち》 
ことことは 死ななと思へど 五月蠅さばへなす さわどもを 
てては しには知らず 見つつあれば 心はえぬ
 
《いっそ死のかと おもたけど 餓鬼どもって 死なれへん
 子供見てると 胸痛む》 
かにかくに 思ひわづらひ のみし泣かゆ
《なんやかや 考えあぐねて 泣くばかり》 
                         ―山上憶良―〔巻五・八九七〕 
慰むる 心はなしに 雲がくり 鳴き行く鳥の のみし泣かゆ
《安らかな  気持ちなれんと ピイピイと 鳥鳴くみたい ずっと泣いてる》 
                         ―山上憶良―〔巻五・八九八〕 
すべも無く 苦しくあれば で走り ななと思へど 児らにさやりぬ
《苦しいて あの世行こかと おもうても 子供邪魔して 死ぬことでけん》
                        ―山上憶良―〔巻五・八九九〕 
富人とみひとの 家の児どもの み くたつらむ きぬ綿わたらはも
《金持ちの  家の子供は 着もせんと え服 ってる 絹や綿入れ》
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇〇〕 
荒栲あらたへの 布衣ぬのきぬをだに 着せかてに くや嘆かむ むすべを無み
《捨てるよな  ボロ服さえも 着ささんと 嘆いてみても どうにもならん》 
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇一〕 
水沫みなわなす いやしき命も 栲繩たくなはの 千尋ちひろにもがと 願ひ暮しつ
《泡みたい  すぐ消えるよな 命でも 長生きしたい おもうて暮らす》
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇二〕 
倭文手しつたまき 数にもらぬ 身にはれど 千年ちとせにもがと 思ほゆるかも
安物やすもんの 飾りみたいな このわしも せめて長生き したいと思う》 
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇三〕 







うちかぎりは たひらけく】へ


憶良編(16)無事に帰りや遣唐使

2010年07月12日 | 憶良編
■平成22年月日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★誉れある 決死船出の 遣唐使 無事帰れよと この歌捧ぐ

神代より らく 
そらみつ やまとの国は 皇神すめがみの いつくしき国 言霊ことだまの さきはふ国と 
語りぎ 言ひ継がひけり 今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知りたり

《大和の国は  神代から 威厳あふれる 神の国 言霊ことだまかなう さちの国
 語り継がれて 今の世の あまねく人の 知るところ》 
さはに 満ちてはあれども 高光る 日の朝廷みかど かむながら めでの盛りに 
あめした まをし給ひし 家の子と えらび給ひて
 
数多あまたの人の る中で 天皇すめらみことの 思し召し めでたき者と 選ばれて》 
勅旨おほみこと いただき持ちて もろこしの 遠き境に つかはされ まかいま 
《お言葉持って からの国 遠きつかいに 出かけらる》
海原うなはらの にもおきにも かむづまり うしはいます もろもろの 大御神おほみかみたち 船舳ふなのへに 導きまを 
きしおき治める 海神うみがみは 船に先立ち お導き》
天地あめつちの 大御神たち やまとの 大国霊おほくにみたま ひさかたの あま御空みそらゆ あまかけり 見渡し給ひ 
天地神あめつちがみと 大和神やまとがみ 空駆け渡り お見守り》
ことをはり 還らむ日には またさらに 大御神たち 船舳ふなのへに 御手みてうち懸けて 
墨繩すみなはを へたる如く あちかをし 値嘉ちかさきより 大伴の 御津みつ浜辺はまびに 
ただてに 御船みふねてむ
 
《お役目終えて 帰る日は 神々すべて 打ち揃い 舳先へさきつかまえ 引き戻す
 値賀島ちかじま通って 難波なにわはま ひとすじ道に 戻りませ》
つつがく さきして 早帰りませ
《無事な行きを 祈ります》
                         ―山上憶良―〔巻五・八九四〕 
大伴の 御津みつの松原 かききて われ立ち侍たむ  早帰りませ
《大伴の 御津みつの松原 掃き清め わし待ってるで 早よ帰ってや》
                         ―山上憶良―〔巻五・八九五〕 
難波津に 御船みふねてぬと 聞きこば ひもけて 立走たちばしりせむ
難波なにわ津に 船帰ったと 聞いたなら 取るもん取らんと 駆けつけまっせ》
                         ―山上憶良―〔巻五・八九六〕 





言霊ことだまさきはふ国と】へ


憶良編(15)大事な息子死なしてしもた

2010年07月08日 | 憶良編
■平成22年7月8日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★うろたえる 憶良嘆きは 如何ばかり 老いて生した子 死なして仕舞しも

世の人の たふとび願ふ 七種ななくさの 宝もわれは 何為なにせむに 
わがなかの 生れ出でたる 白玉の わが子古日は

《みんな欲しがる 宝はいらん うちに生まれた 可愛かわいい古日》
明星あかほしの くるあしたは 敷栲しきたへの とこ去らず 立てれども れども 共にたはぶ
《朝に起きたら 枕もとよる どこにっても じゃれ付いてくる》
夕星ゆふづつの ゆふへになれば いざ寝よと 手をたづさはり 父母も うへさがり 
三枝さきくさの 中にを寝むと うつくしく が語らへば

《日暮れが来たら 早よ早よよと おとうもおかあも 並んで一緒いっしょ
 可愛かわいらしに うんやこの児》
何時いつしかも 人と成りでて しけくも よけくも見むと 大船おほぶねの 思ひたのむに 
思はぬに 横風よこしまかぜの にふぶかに おほぬれば
 
おおれ 善し悪し別に 楽しみやなと おもうていたに 悪い病気に かかってしもた》 
すべの 方便たどきを知らに 白栲しろたへの 手襁たすきを掛け まそ鏡 手に取り持ちて 
あまつ神 仰ぎ乞ひみ くにつ神 伏してぬかづき 
かからずも かかりも 神のまにまにと 立ちあざり われ乞ひめど

《どしたらえか 分からんよって 白いたすきに 鏡を持って
 天の神さん 頼むと祈り くにの神さん なんとかしてと 気ィ狂うほど おがんでみたが》
須臾しましくも けくは無しに 漸漸やくやくに 容貌かたちくづほり あさあさな 言ふことみ 
たまきはる 命絶えぬれ 

一寸ちょっとうは なること無しに 生気うなり 息絶え絶えで 幼い命 無くしてしもた》
立ち踊り 足り叫び 伏し仰ぎ 胸うち嘆き 手にてる が児飛ばしつ 世間よのなかの道
《飛び上っては 地団太じだんだ踏んで ぶっ倒れては 胸きむしり 抱いたあの児を 思わず投げた
 あってえんか こんなこと》
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇四〕 

わかければ 道行き知らじ まひむ 黄泉したへ使つかひ ひてとほらせ
《礼するで あの世の使い 背負せおたって ちっちゃいよって 道知らんから》
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇五〕 

布施ふせ置きて われは乞ひむ あざむかず ただきて 天路あまぢ知らしめ
布施ふせ添えて おがみますんで 天国に 間違いうに 連れてったって》
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇六〕 





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憶良編(14)貧者お互い寒さは辛い

2010年07月05日 | 憶良編
■平成22年7月5日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★世の中の 貧しき者の 代わりなり 憶良一言 申し上げます

風雑まじり 雨降るの 雨まじり 雪降るは すべもなく 寒くしあれば 
《雨風吹いて 雪までじり 我慢もできん 寒さの夜は》
堅塩かたしほを りつづしろひ 糟湯酒かすゆざけ うちすすろひて しはぶかひ 鼻びしびしに 
しかとあらぬ ひげかき撫でて
 
《塩をつまんで うす酒すすり せきして鼻たれ 無いひげでて》
あれきて 人は在らじと ほころへど 
《ワシは偉いと  言うてはみても》
寒くしあれば 麻衾あさぶすま 引きかがふり ぬのかたぎぬ 有りのことごと 服襲きそへども 寒き夜すらを
《寒いよってに 安布団ふとんかぶり 有るもん全部 重ねて着ても それでもさむて たまらん晩を》
われよりも 貧しき人の 父母は さむからむ 妻子めこどもは ふ泣くらむ 
この時は 如何いかにしつつか が世は渡る

《もっと貧乏びんぼな お前の家は 父母おやは飢えてて 妻や子泣いて 毎日どないに 過ごしてるんや》 
天地あめつちは 広しといへど ためは くやなりぬる 日月ひつきは あかしといへど ためは 照りや給はぬ 
世間せけんひろても わしには狭い 明るい日や月 わしには照らん》  
人皆か のみや然る わくらばに 人とはあるを 人並ひとなみに あれれるを 
みんなそやろか ワシだけやろか ワシも人間ひとやで 人並みやのに》
綿も無き 布肩衣ぬのかたぎぬの 海松みるごと わわけさがれる 襤褸かかふのみ 肩にうち懸け 
《綿なし服は 海藻かいそうみたい 肩に掛けたら びらびら垂れる》
伏廬ふせいほの 曲廬まげいほの内に 直土ひたつちに わら解き敷きて 父母は まくらかたに 
妻子めこどもは あとかたに かくて うれさまよ
 
《傾く家の 土間どまわら敷いて 父母おやは枕に 妻子つまこは足に 固まりうて うれいて嘆く》
かまどには 火気ほけふき立てず こしきには 蜘蛛くもの巣きて いひかしく 事も忘れて 
ぬえどりの 呻吟のどよるに
 
《釜に蜘蛛くも 火のないかまど めしき忘れて うめいてばかり》
いとのきて 短き物を はしると へるが如く しもと取る 里長さとをさが声は 
寝屋戸ねやどまで 立ちばひぬ かくばかり すべ無きものか 世間よのなかの道

むち持つ役人 手加減なしに 寝てるとこ来て がなって叫ぶ 世の中これで えんか ほんま》
―山上憶良―〔巻五・八九二〕 





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日めくり万葉集<12月>(その10)

2010年07月01日 | 日めくり万葉集
■平成22年7月1日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★防人は 筑紫の空で 家思う はるか彼方の あのあばら家を

いはろには あしけども 住み良けを 筑紫に至りて こふしけはも
あしき すすけ家でも 住み良いで 筑紫着いたら 恋し思うで》
                         ―物部真根もののべのまね―(巻二十・四四一九)

★連れて来た 妻を亡くした 旅人はん 筑紫の空で 空しさ嘆く

世間よのなかは むなしきもの 知る時し いよよますます 悲しかりけり
《人の世は からっぽなんやと 知ったんや おもうてたより ずうっと悲しい》
                         ―大伴旅人―(巻五・七九三)