ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

憶良編(09)わし残るんか寂しいで

2010年05月31日 | 憶良編
■平成22年5月31日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★旅人はん 都へ帰る わしひとり 筑紫残され 寂しいこっちゃ

あま飛ぶや 烏にもがもや 都まで 送りまをして 飛び帰るもの
《飛ぶ鳥に なってあんたを 都まで 送って行って 戻ってきたい》 
人もねの うらぶれるに 龍田たつた山 御馬みま近づかば 忘らしなむか
《こっちみな しょんぼりやのに 龍田山 近くに見たら 忘れんちゃうか》
言ひつつも 後こそ知らめ とのしくも さぶしけめやも 君いまさずして
さみしさは あんたるうち まだ浅い ほんまのさみしさ ってもたあと》
万代よろづよに いまし給ひて あめの下 まをし給はね 朝廷みかど去らずて
《ずううっと 長生きされて 国のため 活躍してや 朝廷みかどに居って》
                      ―山上憶良―〔巻五・八七六~八七九〕 

あまざかる ひな五年いつとせ 住ひつつ 都の風俗てぶり 忘らえにけり
きょうはなれ ここの田舎に 五年り みやこ風情ふぜいを 忘れてしもた》
かくのみや いきらむ あらたまの く年の かきり知らずて
《いつまでも 溜息ためいきついて 暮らすんか 今年も来年つぎも その翌年つぎとしも》
ぬしの 御霊みたま給ひて 春さらば 奈良の都に 召上めさげ給はね
《頼みます あんたの引きで 春来たら 奈良の都に 呼び戻してや》 
                      ―山上憶良―〔巻五・八八〇~八八二〕 





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日めくり万葉集<12月>(その5)

2010年05月27日 | 日めくり万葉集
■平成22年5月27日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★春と秋 どっちがえか 歌競い 判定任され 額田王おおきみ詠う

冬こもり  春さり来れば    
    鳴かざりし 鳥も鳴きぬ
        咲かざりし  花も咲けれど
    山をしげみ 入りても取らず
        草ふかみ 取りても見ず

秋山の  木の葉を見ては
    黄葉もみちをば 取りてぞしの
        青きをば 置きてぞなげ
           そこしうらめし

    秋山われは 

≪冬ってもて 春来たら
   鳴けへんかった 鳥も鳴く 
      咲けへんかった 花も咲く 
 そやけども      山茂ってて はいられん
       草深いから 取られへん 
 秋山はいって 葉ぁ見たら
    紅葉こうようした葉は え思う
       けど青い葉は つまらへん               そこが かなんな 
 うう~ん・・・秋やな うちは 

                          ―額田王―(巻一・一六)

憶良編(08)神功皇后韓国渡る

2010年05月24日 | 憶良編
■平成22年5月24日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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領巾ひれ振りの 旅のついでに 足伸ばし 深江八幡 鎮石いし見に寄った

けまくは あやにかしこし 足日女たらしひめ 神のみこと 韓国からくにを たひらげて 
御心みこころを しづめ給ふと い取らして いはひ給ひし 真珠またまなす 二つの石を 
世の人に 示し給ひて 万代よろづよに 言ひぐがねと

神功じんぐうの 皇后はんが 韓国からくにの 征伐行く時 持ってった 心しずめの 祈り石
 二つを見せて 世の人に 後々あとあとまでも 言い継げと》
わたの底 沖つ深江の 海上うなかみの 子負こふの原に み手づから 置かし給ひて 
かむながら かむさびいます 奇魂くしみたま 今のをつつに 尊きろかむ

《海を望める 子負こふの丘 自らまつる 神の石
 年月としつきって 今見ても なんと尊い この石よ》
                         ―山上憶良―〔巻五・八一三〕 
天地あめつちの ともに久しく 言ひげと 此の奇魂くしみたま 敷かしけらしも
《この話 ずうっとずっと 伝えよと お置きになった 神宿り石》 
                         ―山上憶良―〔巻五・八一四〕 




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日めくり万葉集<12月>(その4)

2010年05月20日 | 日めくり万葉集
■平成22年5月20日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★初々し 嫁前にして 戯れる 男の顔が だらし見える
はねかづら 今する妹が うら若み みみいかりみ 付けし紐解く
《やっとこさ 大人になった お前ちゃん ねて笑うて 帯ほどくんや》
                         ―作者未詳―<巻十一・二六二七> 

★吉野川 宮滝上の 夏実川 山迫ってて すぐ日ィ暮れる
吉野なる  夏実の川の 川淀に 鴨ぞ鳴くなる 山蔭にして
《夏実川  淀む川辺で 鴨鳴くよ 夕暮早い 山陰あたり》
                         ―湯原王―<巻三・三七五> 

★防人に 行く道すがら 見る花に 母の思影 またまた浮かぶ
時々の  花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ
《時期時期に 花咲くのんに なんでまた おぁいう名の 花咲かんのや》
                         ―丈部真麻呂はせつかべのままろ―<巻二十・四三二三>


憶良編(07)佐用姫はんは袖を振る

2010年05月17日 | 憶良編
■平成22年5月17日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★憶良はん やっとれたな 佐用姫が 袖振った言う 領布ひれ振り岳に
○山の名の由来歌 
遠つ人 松浦まつら佐用さよひめ 夫恋つまごひに 領布ひれ振りしより へる山の名
佐用さよひめはん おっと恋しと 領布ひれ振った 付いた山の名 そこから来てる》
○後の人 付け加えての歌 
山の名と 言ひ継げとかも 佐用さよひめが この山のに 領布ひれを振りけむ
《山に名を 付けて伝えて いはって 佐用さよひめはんが 領布ひれ振りはった》
○更に後の人 付け加えての歌 
万代よろづよに 語り継げとし このたけに 領布ひれ振りけらし 松浦まつら佐用さよひめ
《いつまでも 語り継いでと この山で 領布ひれ振ったんや 佐用さよひめはんが》
                         ―?―〔巻五・八七一~八七三〕 

○更に更に後の人 付け加えての歌 
海原うなはらの 沖行く船を 帰れとか 領布ひれ振らしけむ 松浦まつら佐用さよひめ
《沖へ行く 船還ってと 命がけ 領布ひれ振りはった 佐用さよひめはんが》
行く船を 振りとどみかね 如何いかばかり こほしくありけむ 松浦まつら佐用さよひめ
《恋し船 めさすことが 出けへんで 悔しかったろ 佐用さよひめはんは》
                         ―山上憶良?―〔巻五・八七四~八七五〕 





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日めくり万葉集<12月>(その3)

2010年05月13日 | 日めくり万葉集
■平成22年5月13日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★良え浦や 浜はうても 構めへんで お前居ったら わし満足や

石見いはみうみ つの浦廻うらみを 浦しと 人こそ見らめ かたしと 人こそ見らめ よしゑやし 浦は無くとも よしゑやし 潟は無くとも 
《石見の国の 都野つのの浦 よろし湊も 浜もない
 かまへんえで 湊なし 浜はうても この海は》
鯨魚いなさ取り 海辺をさして 和多豆にきたづの 荒磯ありその上に か青なる 玉藻おきつ藻 
朝羽振あさはふるる 風こそ寄せめ 夕羽振ゆふはふる 浪こそ来寄れ

《魚捕れるし 磯の上 朝には風が 夕べ波 青い玉藻を 持って来る》 
浪のむた か寄りかく寄り 玉藻なす 寄り寝し妹を 露霜つゆしもの 置きてしれば
《その藻みたいに 寄りうて 寝てたお前を 置いてきた》
この道の 八十隈やそくまごとに よろづたび かへりみすれど
いやとほに 里はさかりぬ いや高に 山も越え来ぬ

《振り向き振り向き 来たけども お前る里 遠なるし 山たこなって へだたるし》
夏草の 思ひしなえて しのふらむ いもかど見む
《胸のつぶれる 思いして お前のるとこ 見たなった》
なびけこの山
《邪魔する山よ 飛んでまえ》 
                         ―柿本人麻呂―(巻二・一三一)

憶良編(06)ほんまはわしも行きたいのんや

2010年05月10日 | 憶良編
■平成22年5月10日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★仕事やと 言うて断わり 憶良はん ホンマはわしも 行きたかったな

松浦県まつらがた 佐用比売さよひめの子が 領巾ひれりし 山の名のみや 聞きつつらむ
《佐用姫が 領布ひれ振ったう 山の名を 聞かすだけかい 独り残して》
帯日売たらしひめ 神のみことの らすと 御立みたたしせりし 石をたれ見き
帯日売たらしひめ 釣りするうて 立った石 見るんは誰や わしも見たいわ》
百日ももかしも 行かぬ松浦まつら 今日けふ行きて 明日はなむを 何かさやれる
《百日も 掛るわけない 松浦路まつうらじ 行って帰るに さわりがあるか》
                         ―山上憶良―〔巻五・八六八~八七〇〕 





【何か障れる】へ


日めくり万葉集<12月>(その2)

2010年05月06日 | 日めくり万葉集
■平成22年5月6日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★どんな良え 宝物たからもんかて 飽きくるで なんぼ飲んでも 酒飽けへんで

あたひ無き たからといふとも 一坏つきの にごれる酒に あにさめやも
《極上の  高値の宝 なんかより 酒一杯が わしにはええで》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四五〕 

★ただ単に 鶴の飛んでく 景色やに 黒人詠うと 寂し聞こえる

桜田さくらたへ たづ鳴き渡る 年魚市潟あゆちかた 潮干しほひにけらし 鶴鳴き渡る
年魚市潟あゆちかた 潮引いたんや 桜田へ 鶴鳴きながら 飛んで行くがな》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七一〕 

少咋おくいはん ちょっと加減を しとかんと 偉い目合うで わしは知らんで

くれなゐは うつろふものそ つるはみの 馴れにしきぬに なほかめやも
くれないは すぐ色あせる 地味じみ色の 着なれたふくに まさるもんない》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十八・四一〇九〕