ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

源氏:桐壺(21)大臣の御里に

2014年03月13日 | 七五調 源氏物語



大臣おとどの御里に
     ―左大臣おとど娘を妻にとて―


宮中 下がり 源氏君
その夜左大臣おとどの おやしき
婿むこ取り儀式 この上の
 きまでのもの 丁重さ

若やか源氏君げんじ 見る左大臣おとど
目映まばゆ可愛かわいと ご覧なる

 の姫は 年上で
源氏君げんじを見るに まだ子供
似合わぬさまに 気詰まりも







臣下一等 左大臣さのおとど
みかど信頼 あつきにて

正室なるは みかどとは
 の同じの 皇女にて
夫婦 共々 華やかな
系譜つながり持てる 家なるに
そこに源氏君げんじを 迎えたは

次春宮とうぐう祖父の 右大臣
やがて 国政 掌握の
その威勢をも しのぐかに

左大臣ひだりおとどは 幾人いくたり
夫人ふじんとの中 数多いくたお子
 に姫との 同母なる
兄の蔵人くろうど 少将しょうしょう
若く 魅力の 人なりし

右大臣みぎのおとどは 蔵人少将しょうしょう
両家 悪きの 仲なれど
見過ごし するの 出来ずとに
大切育ての の姫の
       (四番目娘)
婿むこと迎えて 居りしにて

                         【蔵人少将くろうどのしょうしょう
                           近衛少将と蔵人を兼務による呼び名

迎え婿君 大切だいじ
両家同じき 婿舅むこしゅうと


源氏:桐壺(20)侍所に罷で給ひて

2014年03月10日 | 七五調 源氏物語




侍所さぶらひまかたまひて
    ―加冠かかん左大臣おとどに賜わるは―


拝礼舞はいれいまいを 終えしのち
休息所 にて 時過ごし
皆の御酒みき召す 宴席へ
席は親王 次席ならびせき

隣に座すは 左大臣さのおとど
今夜こよいのことと ソと耳も
気恥ずかしさに 返答へんさず













折しも内侍ないし 伝えしは
左大臣ひだりおとどを 召す宣旨せんじ

                         【内侍ないし】=内侍掌なおしのじょう
                          ・内侍所の三等官
                          ・その第一席が宣旨を伝える役
                         ・(=勾当こうとうの内侍)

ろく下げ渡し 取り次ぎの
てい付き命婦みょうぶ 捧げるは
慣例なりし 大袿おおうちぎ
御衣おおんぞたぐい 一領ひとそろい
(帝衣服)

                         【大袿おおうちぎ
                          禄(祝儀)として賜わる袿 裄丈ゆきたけが大きく 着るときは普通の袿に仕立て直す
                         ※うちぎ表衣うえのきぬである狩衣かりぎぬ直衣のうしの中に着る衣

酒杯さかづきたまう おついでと
みかど念押し 左大臣おとどへと

  幼子の
    元服為すに
  末永の
   契る次第を
    知らしめししや

                           いとけなき
                             初元結もとゆいに
                            長き世を
                            ちぎる心は
                              結び込めつや

お心遣い  胸沁みて
  
  元服の
    折の契りの
      末長ごは
     誓い言葉の
      守れる限り

                           結びつる
                            心も深き
                              元結もとゆひに
                             濃き紫の
                             色しせずは






席をくだりし 左大臣
庭にり立ち 拝礼舞まいを舞う

終えし左大臣おとどに 更にまた
左馬寮ひだりめりょうの 馬一頭
蔵人所くろうどどころ 鷹一羽
手ずから 褒美 下げ渡す

                         【左馬寮ひだりのめりょう
                           馬の飼育・調練・馬具調達を掌る馬寮の一つ
                           太政官直属の官司
                         【蔵人所くろうどどころ
                           帝直属の役所
                           宮中諸行事の取り締まり


階段きざはし根方 親王みこ達と
上達部かんだちめらが 居並びて
ろく賜わるに 列を為す

この日お礼と 源氏君げんじから
みかど献上 品々の
折櫃物おりひつものや 籠物かごもの
(折り詰め料理類)(果物類)
右大弁うのだいべんが ご用意に

官吏 の者に 与えなす
屯食とんじき並び 唐櫃からひつ
(強飯握り飯) (絹入り箱)
 こそ庭も 狭しとに

次春宮とうぐう元服 時よりも
 も多くて 更にまた
この上無くの 盛大ごうかにて


源氏:桐壺(19)この君の御童姿

2014年03月06日 | 七五調 源氏物語




この君の御童姿わらわすがた
      ―元服為すの源氏君げんじきみ



わかわらわの 髪形かみかたち
変える に未練 ありしかど

よわい十二の 元服の
日迎えみかど お手ずから
世話し式例しきれい 更増しの
儀式たらんと おぼ










先年せんねん第一皇子いちみこ 元服の
紫宸殿ししんでんでの 立派なる
評判 高き 儀式にも
劣らず なるの ものにてぞ

所々しょしょに催す 祝宴も
任に当たるの 内蔵寮くらつかさ
穀倉院こくそいんなど こぞりてぞ
規定きまり遂行すすめは 簡素な」と
特命ありて ぜい尽す
儀式 となるに 進め為す

                    【紫宸殿ししんでん
                      内裏の殿舎の一つ
                      即位、長賀、節会などの公式の儀式を行う場
                    【内蔵寮くらつかさ
                      中務省に属し宮中の宝物 帝の装束などを納める倉を管理
                    【穀倉院こくそういん
                      宮廷行事における宴膳をまかなう役所


みかどお住まい さいます
清涼殿に 加冠かかんの場
東廂ひがしひさしに しつらえて

東向きての みかど椅子
冠者かんざの席と 加冠かかん
左大臣席 前に











申の刻なり 座す源氏君げんじ
 午後四時)
角髪みずら結いたる 表情や
童顔わらわがおなる 色つやは
髪形かたち変えるに 惜しばかり

ぎ役の 大蔵卿おおくらきょう
 よらかなるの 髪切るの
心苦しげ  顔したる
ご覧みかどは 今さらに

桐壺更衣こうい見たらば・・・」 思いしも
いいやならじと こらえ為す


                    【大蔵卿おおくらきょう
                      大蔵省の長官
                     大蔵省=諸国から納める「調」などの収納・管理等を掌る役所



加冠かかんを終えて 休息所
そこでお着替え さいまし

でて東の 庭りて
拝礼舞はいれいまいを 演ずるに
涙落とすの 同座みな

みかど格別 たまらずて
ふと忘れいた 桐壺更衣こういとの
昔思い 悲しくと

 若にての 髪上げは
美損そんずやの 気掛かりも
案に相違の 新愛あいらしげ
加えなされ し お姿に

加冠かかん役なる 左大臣さのおとど
妻はみかどと 同母なる
皇女なりしが そのした
大切だいじ育ての 娘して

かね次春宮とうぐう きさきにと
所望ありしを 逡巡ためらう
源氏君きみ妻合めあわせ かんがうに

みかどに向けて そのむね
奏しご意向 うかがうに

「元服なした あとにても
 適す後見人こうけん 無き故に
 そちなる娘 添臥そいふし
 してそのまま あと婿に」
うながしたるに 腹ぞ決む


                    【添臥そいふし
                      春宮・皇子などの元服の夜、公卿の娘を添い寝させること



源氏:桐壺(18)御辺り去り給はぬを

2014年03月03日 | 七五調 源氏物語



あたり去り給はぬを
       ―藤壺慕う源氏君げんじきみ



「源氏のきみ」と なるお子は
みかどそばを 離れずと

繁く 渡らす 藤壺に
付きて参るに その姫宮みや
恥じ隠れも 随意ままならず








後宮みやに仕える きさき
 我れぞ」と思う 器量しも
若き盛り の 過ぎにしの
召され お年に 比ぶるに
若く 可愛げ 藤壺ぞ

                          【妃】
                          ・帝の夫人の総称
                          ・主として皇后・中宮
                          ・女御・更衣を含める場合も

見るに御簾みす陰 隠れるに
容易たやす拝見みつけの 源氏わか

桐壺更衣ははぎみお顔 しかととは
記憶おぼえさぬに 「似たるや」と
典侍ないしのすけが 申すとに
幼心おさなごころに 慕わしと
お思い なるか 参りたや
なつき見たやと 思うらし


みかど思うに 藤壺みや源氏げんじ
愛情おもい注ぐに 区別たがい無く

「そなたこの子の 母親はは似るに
 うとい避けずと まといしも
 礼無き取らず 可愛い
  顔立ち目元 さも似たり
 母子おやこと言えど とうるにて」

言い付け為すに 源氏わか
幼心おさなごころの 喜びを
花や紅葉もみじに こと寄せて
参りし折は お持ち


源氏のわかの お慕いを

藤壺みやと折り合い 悪しきにて
桐壺更衣こうい憎悪にくしの 思返かえりてや
不快思うの 弘徽殿こきでん



「世にたぐい無き」 とぞ見られ
世人よひと美貌きりょう 評される
藤壺みやと比ぶに 更増しと
つやと美々びびしく 愛らしに
わかを称すに 「光る君」

藤壺みやも並びて 寵愛おぼえまた
それぞれ 深く あるからに
 輝く日の宮」 呼ばれなる