ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

金村・千年編(02)わしも詠うぞ 吉野宮

2010年12月30日 | 金村・千年編
■平成22年12月30日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★人麻呂を 習い金村 従駕歌 歌う吉野の 宮処

たぎの 御舟みふねの山に 瑞枝みづえざし しじひたる とがの 
いやつぎつぎに 万代よろづよに かくし知らさむ み吉野の 蜻蛉あきづの宮は
 
《急流の ほとりそびえる 三船山 え枝いっぱい 付けたとが 葉ぁ次々に 付ける
 何時いつの世までも 続いてく 吉野の里の 蜻蛉宮あきづみや
神柄かむからか たふとくあらむ 国柄くにからか 見がしからむ 山川を きよさやけみ 
うべし神代かみよゆ 定めけらしも

《神さんやから とうといで 国土くにえから かれるで 山川ともに 清らかや
 昔にここを 大宮所みやどこと 決めなさったも もっともや》
                         ―笠金村―〔巻六・九〇七〕 
毎年としのはに かくも見てしか み吉野の 清き河内かふちの たぎつ白波
《来る年も  また来る年も 見たいんや 吉野の川の 激しい波を》
                         ―笠金村―〔巻六・九〇八〕 
山高み 白木綿花しらゆふはなに 落ちたぎつ たぎ河内かふちは 見れど飽かぬかも
けへんな 白木綿花ゆうはなみたい ほとばしり 流れて下る 川の激流ながれは》
                         ―笠金村―〔巻六・九〇九〕 
【ある本の反歌】 
神柄かむからか 見が欲しからむ み吉野の たぎ河内かふちは 見れど飽かぬかも
《神さんが 宿ってはるから 見たいんや 吉野の滝は けへんこっちゃ》
                         ―笠金村―〔巻六・九一〇〕 
み吉野の 秋津あきづの川の 万代よろづよに 絶ゆることなく またかへり見む
《いつまでも  水の絶えへん 秋津川 また見に来るで またまた見ィに》
                         ―笠金村―〔巻六・九一一〕 
泊瀬女はつせめの 造る木綿花ゆふはな み吉野の たぎ水沫みなわに 咲きにけらずや
《咲いてるで 吉野の滝の 波の上 はつむすめ 造る言う木綿花はな
                         ―笠金村―〔巻六・九一二〕 




【うべし神代ゆ】へ


金村・千年編(01)延々続く あの火は何や

2010年12月27日 | 金村・千年編
■平成22年12月日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★慕われし 志貴皇子しきみこ居らん 萩の花 何知らぬ気に 花こぼしてる

梓弓あずさゆみ 手に取り持ちて 大夫ますらをの 得物矢さつやばさみ 立ちむかふ 高円たかまと山に 
春野焼く  野火と見るまで もゆる火を いかにと問へば
 
武人ますらおが 手に持つ弓に 矢をつがえ 射るため向かう まとな 高円山たかまとめぐる 春の野を
 焼く火みたいに  燃えるのは 何の火ィかと 尋ねたら》
玉桙たまほこの 道来る人の 泣く涙 小雨に降り 白拷しろたへの ころもひづちて 立ちとまり われに語らく 
《道を来る人 顔上げて あふれる涙 雨みたい 着てる服まで 濡れそぼち 足をとどめて 語るには》
何しかも もとな問ふ 聞けば のみし泣かゆ 語れば 心そ痛き 
天皇すめろきの 神の御子みこの いでましの 手火たびの光そ ここだ照りたる

なんで聞くんや そんなこと 聞いたら余計よけい 泣けてくる 話すと胸が 痛うなる
 天皇おおきみさんの 御子みこはんが あの世旅立つ 送り火や こんないっぱい 光るんは》
                         ―笠金村かさのかなむら歌集―〔巻二・二三〇〕

高円の 野辺のへ秋萩あきはぎ いたづらに 咲きか散るらむ 見る人無しに
高円たかまとの 野に咲く萩は むなしいに 咲いて散ってる 見る人おらんで》
                         ―笠金村歌集―〔巻二・二三一〕 
三笠山 野辺行く道は こきだくも しげり荒れたるか ひさにあらなくに
うなって 日もたんのに 野辺の道 えらい荒れてる 三笠の山は》
                         ―笠金村かさのかなむら歌集―〔巻二・二三二〕
高円たかまとの 野辺の秋萩 な散りそね 君が形見かたみに 見つつしのはむ
《高円の 野に咲く萩よ 散らんとき あんたをしのぶ よすがと見たい》
                         ―笠金村歌集―〔巻二・二三三〕 
三笠山 野辺ゆ行く道 こきだくも 荒れにけるかも ひさにあらなくに
《三笠山 めぐる野の道 こんなにも 荒れてしもうた 日も経たんのに》
                         ―笠金村歌集―〔巻二・二三四〕 






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蟲麻呂編(15)お前もかいな ほととぎす

2010年12月23日 | 蟲麻呂編
■平成22年12月23日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★生まれての 習性悲し ほととぎす わしも独りや 仲良う仕様しょう

うぐひす生卵かひこの中に 霍公鳥ほととぎす ひとり生まれて 
が父に ては鳴かず が母に 似ては鳴かず

《鶯の 卵にじり 霍公鳥ほととぎす 生まれてみたが 独りぼち
 鳴き声父に  似て居らん 母の声にも 似とらへん》
の花の 咲きたる野辺のへゆ 飛びかけり 鳴きとよもし
たちばなの 花を散らし 終日ひねもすに 鳴けど聞きよし 
まひはせむ とほくな行きそ わが屋戸やどの 花橘に 住み渡れ烏

《卯の花咲いてる 野原飛び たちばなはなを 散らし鳴く
 ほんまええ声 礼するで 何処どこも行かんと うちの庭 はなたちばなに 住んどくれ》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五五〕 

かきらし 雨の降るを 霍公鳥ほととぎす 鳴きて行くなり あはれその鳥
霍公鳥ほととぎす 霧雨きりさめ降る 鳴いてった 住んで欲しいと 頼んでみたに》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五六 




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蟲麻呂編(14)ほんま阿呆やで 浦島はん

2010年12月20日 | 蟲麻呂編
■平成22年12月20日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★この話 どう聞いたやろ 蟲麻呂は 面白聞くか 悲しに聞くか

春の日の かすめる時に 
墨吉すみのえの 岸に出でゐて 
釣船つりぶねの とをらふ見れば 
いにしへの 事ぞ思ほゆる

《春の霞に  岸に出て
 釣り船見てたら 思い出す》 
水江みづのえの 浦島うらしまの子が 堅魚かつを釣り たい釣りほこり 七日なぬかまで 家にもずて 
《浦島はんは 魚釣る あんまり沢山ようけ 釣れるんで 七日も家に かえらんと》
海界うなさかを 過ぎて漕ぎ行くに 
海若わたつみの 神のをとめに たまさかに いぎ向い あひあとらひ ことりしかば

《沖いでたら 偶然に 海神娘おとひめさんに うたんや どっちとものう 一目ぼれ》
かきむすび 常世とこよに至り 海若わたつみの 神の宮の うちの たへなる殿に 
たづさはり 二人入りゐて ひもせず 死にもせずして 永き世に ありけるものを 

《手に手を取って 海神宮りゅうぐうに 甘い暮らしの 日が続く そのまま死なんと 暮らせたに》 
世の中の 愚人おろかひとの 吾妹子わぎもこに りてかたらく 
須臾しましくは うちに帰りて 父母ちちははに 事もかたらひ 
明日あすごと われはなむと 言ひければ

《あほやで浦島 言うたんや 一寸ちょっと帰って 親に言い じきに帰るて 言うたんや》 
いもがいへらく 
常世辺とこよべに また帰りきて いまごと はむとならば 
このくしげ 開くなゆめと そこらくに かためしこと

海神娘おとひめさんは 言うたんや
 帰って来たい 思うたら この箱開けたら あかんでと
 きつきつうに 言うたんや》
墨吉すみのえに 帰りきたりて 
家見れど 家も見かねて 里見れど 里も見かねて あやしみと そこに思はく 
家ゆ出でて 三歳みとせほとに 垣も無く いえせめやと

《帰って来たら 家はない 村もあれへん 奇怪おっかし
 家を出てから 三年で 家がうなる 筈はない》
この箱を 開きて見てば もとのごと 家はあらむと  玉篋たまくしげ 少し開くに 
白雲の 箱より出でて 常世辺とこよべに たな引きぬれば
 
もしやこの箱  開けたなら 元戻らんかと 箱開けた
 湧きでる煙 白煙 海神宮りゅうぐう殿じょうへと 流れてく》
立ち走り 叫び袖振り 反側こひまろび 足ずりしつつ たちまちに こころ消失けうせぬ 
若かりし はだもしわみぬ 黒かりし かみしらけぬ 
ゆなゆなは いきさへ絶えて のちつひに いのち死にける

《慌て走って 叫び転倒こけ 地団太踏んで 悔しがる みるみる元気 うなって
 しわくちゃ顔で 白髪しらがなり 息えで 死んでもた》
水江みづのえの 浦島の子が 家地いへどころ見ゆ 
《あのあたり 昔に浦島 住んでたところ》 
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四〇〕 
常世辺とこよべに 住むべきものを 剣太刀つるぎたち が心から おそやこの君
海神娘おとひめと 死なんとなごう 暮せたに ほんまアホやで 浦島はんは》 
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四一〕 






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蟲麻呂編(13)何を思うか 蟲麻呂さんよ

2010年12月16日 | 蟲麻呂編
■平成22年12月16日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★恋競い 憐れ留める この話 うない処女おとめの 墓処はかどころ

葦屋あしのやの うなひ処女をとめ
八年児やとせごの 片生かたおひの時ゆ 
小放髪をはなりに 髪たくまでに 
並びる 家にも見えず 
虚木綿うつゆふの こもりてませば 
見てしかと 悒憤いぶせむ時の 垣ほなす 人のふ時

芦屋あしやに住まう うないの処女おとめ
 つの歳から 年頃までも 隣も見せへん 箱入り娘
 見たいもんやと  胸焼き焦がし 引きも切らない 求婚話》 
血沼壮士ちぬをとこ うなひ壮士をとこの 盧屋ふせやく すすしきほひ あひ結婚よばひ しける時は 
やき太刀たちの 手柄たがみ押しねり 白檀弓しらまゆみ ゆぎ取りひて 
水に入り 火にも入らむと 立ち向ひ きほひし時に
 
血沼ちぬ壮士おとこと うなひの壮士おとこ 火花を散らす 嫁取りきそ
 こなた太刀たちげ かなたは弓で 水中みずなか火の中 いといもしない》
吾妹子わぎもこが 母に語らく 
まき いやしきわがゆゑ 大夫ますらをの 争ふ見れば 
生けるとも 逢ふべくあれや  ししくしろ 黄泉よみに待たむと 
隠沼こもりぬの 下延したはへ置きて うち嘆き 妹がるぬれば

《優しい処女おとめ 嘆きて母に
 こんな詰まらん 私のことで  あたら男が 命を賭ける
 生きての結ばれ 考えせずに  あの世で待つと 言い告げおいて
 本心隠し あの世の旅へ》 
血沼壮士ちぬをとこ その夜いめに 見取りつつき 追ひ行きければ 
後れたる 菟原壮士うはらをとこい あめあふぎ 叫びおらぴ 足ずりし たけびて 
如己男もころをに 負けてはあらじと 懸佩かけはきの 小剣をだち取りき ところづら め行きければ
 
血沼ちぬ壮士おとこは 夢見て知って 遅れてなるかと 死出追い旅に
 
 後で気の付く 菟原うはら壮士おとこ 叫び足ずり 歯ぎしりわめ
 負けるものかと おっとり刀 あの世までもと 後追いかける》 
親族うからどち い行きつどひ 永き代に しるしにせむと 遠き代に 語り継がむと 
処女墓をとめづか 中に造り置き 壮士墓をとこづか 此方こなた彼方かなたに 造り置ける
 
《残る家族は 悲しみ集い
 処女おとめの塚を 真ん中挟み 右と左に 壮士おとこの塚を 悲劇伝えに 造ってまつる》
故縁ゆゑよし聞きて 知られども 新喪にひもごとも きつるかも
《身内びとでは 無い者なのに いわれ聞いたら 泣かずにおれぬ》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一八〇九〕 
葦屋あしのやの うなひ処女の 奥津城おくつきを と見れば のみし泣かゆ
芦屋あしのやの 菟原処女うないおとめの 墓のとこ 通るたんびに 悲して泣ける》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一八一〇〕 
はかうへの なびけり 聞きしごと 血沼壮士ちぬをとこにし 寄りにけらしも
《墓の上 木の枝なびく やっぱりな 血沼壮士ちぬのおとこに 気があったんや》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一八一一〕 




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蟲麻呂編(12)節度使に出向く ご主人 お別れや

2010年12月13日 | 蟲麻呂編
■平成22年12月13日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★主人との 別れの辛い 蟲麻呂に 黄葉錦が 降りそそぎ来る

白雲の 龍田たつたの山の つゆしもに 色づく時に うち越えて 旅行く君は 
《木々が色づく 龍田を越えて いくさの旅に 出られるあなた》
五百重いほへ山 い行きさくみ あた守る 筑紫に至り 
山のそき 野のそき見よと ともを あかつかは

《山々越えて 筑紫に行って 監視の家来 あちこちって》
山彦やまびこの こたへむきはみ 谷蟇たにくぐの さ渡るきはみ 国形くにかたを し給ひて 
冬こもり 春さり行かば 飛ぶ烏の 早く来まさね 
 
《国の隅々すみずみ 巡視させて回り 任務を終えて また春来たら どうぞ早くに お戻りなさい》 
龍田道たつたぢの 丘辺をかへの道に つつじの にほはむ時の 桜花 咲きなむ時に 
山たづの 迎へ参出まゐでむ 君がまさば

《龍田の道に 紅花べにばなツツジ 桜の花の 咲く山道に 迎えに来ます 戻られたなら》 
                         ―高橋虫麻呂―〔巻六・九七一〕 
千万ちよろづの いくさなりとも ことげせず 取りてぬべき をのことそ思ふ
敵方てきがたが 幾千万でも 世迷言よまいごと 言わず討ち取る 男やあんた》
                         ―高橋虫麻呂―〔巻六・九七二〕 




【早く来まさね】へ


蟲麻呂編(11)声掛けたいが わしシャイやねん

2010年12月09日 | 蟲麻呂編
■平成22年12月9日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★目に付いた あの児可愛らし 独り身か 旦那居るんか わし見てるだけ
  
しな  片足羽川かたしはがはの さ丹塗にぬりの 大橋の上ゆ 
くれなゐの あか裾引き 山藍やまあゐもち れるきぬ着て ただ独り い渡らす児は 
 
塗りの綺麗きれえな 橋の上 あか穿いて あいの服 とおって来る児 可愛かいらしな》 
若草の つまかあるらむ 橿かしの実の 独りからむ 
はまくの しき我妹わぎもが 家の知らなく

《旦那るんか ひとり身か 口説きたいけど 伝手つてあれへん》
                         ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四二〕 
大橋の つめあらば うらがなしく 独り行く児に 宿やど貸さましを
《橋のそば 家があったら さみな あの児を連れて 泊まれるのにな》
                         ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四三〕 




片足羽川かたしはがはの】へ


蟲麻呂編(10)今年も咲くか桜花

2010年12月06日 | 蟲麻呂編
■平成22年12月6日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★昨日見た 桜花さくらは今日は 早やも散る 風よ吹くなよ 帰る日までは

島山を い行きめぐれる 川副かはぞひの 丘辺をかへの道ゆ 
昨日きのふこそ わがしか 一夜ひとよのみ たりしからに
 
《島山の 川沿い丘を 昨日きのう越え 一晩泊まった だけやのに》  
うへの 桜の花は たぎの瀬ゆ たぎちて流る 
君が見む その日までには 山下やまおろしの 風な吹きそと 
うち越えて 名にへるもりに 風祭かざまつりせな

《咲いてた桜 峯上みねうえの 花びら散って 激流ながれてく
 あんた見るまで  風吹くな
 風をしずめる まつりしょう 竜田の神さん 頼みます》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五一〕 
ゆきひの 坂のふもとに 咲きををる 桜の花を 見せむ児もがも
国境くにざかい 坂に咲いてる 桜花さくらばな 見せたりたい児 ったらええな》
                       高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五二〕 




【風祭せな】へ


蟲麻呂編(09)わしも主人も 桜が好きや

2010年12月02日 | 蟲麻呂編
■平成22年12月2日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★主従行く 難波往還 通いの道に 咲くは桜か 互いの心

白雲しらくもの 竜田の山の たぎの 小鞍をぐらみねに 咲きををる 桜の花は 
山高み 風しまねば 春雨はるあめの ぎてし降れば
 
《竜田の山の 激流ながれの上の 小鞍おぐらの桜 見頃やゆうに 風がつようて 春雨続き》
は 散り過ぎにけり 下枝しづえに 残れる花は 須臾しましくは 散りな乱れそ 
草枕くさまくら 旅行く君が かへり来るまで

《上の花びら  もう散ったけど せめて下のは 残って欲しい
 行って帰って 来るまでは》
                        ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四七〕 
わがゆきは 七日なぬかぎじ 竜田彦 ゆめ此の花を 風にな散らし
《すぐ帰る  七日と掛からん 桜花 竜田の神さん 散らさんといて》
                        ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四八〕 

白雲しらくもの 龍田たつたの山を 夕暮ゆふぐれに うち越え行けば たぎの上の 桜の花は 
咲きたるは 散り過ぎにけり ふふめるは 咲きぎぬべし
 
《竜田山 越える夕暮 激流さわの上
 いた桜は 散ってもた 蕾の花は これからよ》  
彼方こち此方ごちの 花の盛りに 見えねども 君が御行みゆきは 今にしあるべし
《全部満開 ちゃうけども ほんま時期とき 行かれるこっちゃ》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七四九〕 
いとまあらば なづさひ渡り むかの 桜の花も らましものを
《暇ないが 川を渡って 桜花はな取りに 行ってきたいな 向こうの峯の》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五〇〕 




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