令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

歴史編(29)池に潜かず

2009年07月09日 | 歴史編
【掲載日:平成21年7月22日】

島の宮 まがりの池の 放ちどり 人目に恋ひて 池にかづかず

【草壁皇子の島の宮跡付近の明日香川】


「人麻呂 そちは 噂にたがわぬ 歌
 天の原の 神々の「国分くにわかち」からみ起こし
 天孫降臨のこと 
 浄御原きよみはら天皇すめらみことのこと
 そして わが子 草壁の 治世がなれば 
 春花の都 望月の都と よくぞ めたたえてくれた
 草壁も さぞかし 満足であろう」 

「さて 長歌の後は 反歌はんかじゃ」

持統女帝の うながしに 人麻呂 用意の歌を みあげる
ひさかたの あめ見るごとく あふぎ見し 皇子みこ御門みかどの 荒れまくしも
《慕いつつ 仰いで見てた 皇子みこ御殿みや 人住まへんで 荒れて行くんや》
                         ―柿本人麻呂―(巻二・一六八)
あかねさす 日は照らせれど ぬばたまの 夜渡る月の かくらくしも
《明るうに 日は照るけども 月みたい ひかってられた 皇子みこ見られへん》
                         ―柿本人麻呂―(巻二・一六九)
島の宮 まがりの池の 放ちどり 人目に恋ひて 池にかづかず
皇子みこがいた 宮の池住む 放ち鳥 人恋しいと 水にもぐらん》
                         ―柿本人麻呂―(巻二・一七〇)

殯宮あらきのみや 舎人とねりらのすすり泣きの中 ここ真弓の岡に 人麻呂の声が 流れる 
                    殯宮あらきのみや―埋葬に先立つ新城あら)での祀り

―――――――――――――――――――――

人麻呂は 思っていた 
(なんと 気丈な 
 あれほどに 即位を望まれていた 皇子みこ様を 亡くされ 悲嘆のふちに 沈まれているかと お思いしていたに
 この国は 揺るぎはせぬ このお方が られる限り
 わしも このお方について行けば 歌みとして 名をせられるやもしれぬ)

以後 草壁の遺児 軽皇子かるのみこ(文武天皇)の即位まで 持統帝の治世は続く 
しかし  
持統帝は 異常とも言える数の 吉野への行幸 
いさめを無視しての 伊勢行幸
近江へ 紀伊へ・・・ 

そこには 心 おだやかならない 持統が いたのか



<島の宮>へ

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