令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

憶良編(15)わが子古日は

2009年09月14日 | 憶良編
【掲載日:平成21年10月2日】

世の人の たふとび願ふ 七種ななくさの 宝もわれは 何為なにせむに 
わがなかの 生れ出でたる 白玉の わが子古日は・・・



年齢とし老いてしたわが子古日の死 悲嘆の憶良

世の人の たふとび願ふ 七種ななくさの 宝もわれは 何為なにせむに 
わがなかの 生れ出でたる 白玉の わが子古日は

《みんな欲しがる 宝はいらん うちに生まれた 可愛かわいい古日》
明星あかほしの くるあしたは 敷栲しきたへの とこ去らず 立てれども れども 共にたはぶ
《朝に起きたら 枕もとよる どこにっても じゃれ付いてくる》
夕星ゆふづつの ゆふへになれば いざ寝よと 手をたづさはり 父母も うへさがり 
三枝さきくさの 中にを寝むと うつくしく が語らへば

《日暮れが来たら 早よ早よよと おとうもおかあも 並んで一緒いっしょ
 可愛かわいらしに うんやこの児》
何時いつしかも 人と成りでて しけくも よけくも見むと 大船おほぶねの 思ひたのむに 
思はぬに 横風よこしまかぜの にふぶかに おほぬれば
 
おおれ 善し悪し別に 楽しみやなと おもうていたに 悪い病気に かかってしもた》 
すべの 方便たどきを知らに 白栲しろたへの 手襁たすきを掛け まそ鏡 手に取り持ちて 
あまつ神 仰ぎ乞ひみ くにつ神 伏してぬかづき 
かからずも かかりも 神のまにまにと 立ちあざり われ乞ひめど

《どしたらえか 分からんよって 白いたすきに 鏡を持って
 天の神さん 頼むと祈り くにの神さん なんとかしてと 気ィ狂うほど おがんでみたが》
須臾しましくも けくは無しに 漸漸やくやくに 容貌かたちくづほり あさあさな 言ふことみ 
たまきはる 命絶えぬれ 

一寸ちょっとうは なること無しに 生気うなり 息絶え絶えで 幼い命 無くしてしもた》
立ち踊り 足り叫び 伏し仰ぎ 胸うち嘆き 手にてる が児飛ばしつ 世間よのなかの道
《飛び上っては 地団太じだんだ踏んで ぶっ倒れては 胸きむしり 抱いたあの児を 思わず投げた
 あってえんか こんなこと》
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇四〕 

わかければ 道行き知らじ まひむ 黄泉したへ使つかひ ひてとほらせ
《礼するで あの世の使い 背負せおたって ちっちゃいよって 道知らんから》
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇五〕 

布施ふせ置きて われは乞ひむ あざむかず ただきて 天路あまぢ知らしめ
布施ふせ添えて おがみますんで 天国に 間違いうに 連れてったって》
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇六〕