磐代の 浜松が枝を 引き結び
真幸くあらば また還り見む
皇子は 紀の湯へと 引き立てられて行く
皇太子 中大兄皇子の 尋問が待つ
(赤兄に嵌められた)
無念の思い 遣る方ない 有間皇子
時に 斉明天皇四年(658)
中大兄皇子は 天皇と 紀の湯に
密命を帯び 皇子を 訪なう 蘇我赤兄
赤兄は言う
「皇子 今の世を どう見られる
民に 不満が 募っております
さきごろ お亡くなりの 父君孝徳帝は 皇太子に殺されたも同然
留守の今こそが 好機」
有間皇子は 乗ってこない
赤兄 更に言う
「今の政治に 三失あり
一に 大いに倉を建て 民の財を・・・」
皇子 弱冠十九歳
狂気装いつつも 胸に秘めた思いに 火が点く
紀の湯へ 早馬は飛ぶ
無実信じるか 有間皇子
諦め果てるか 有間皇子
ここ 岩代の地霊に 祈るは何
磐代の 浜松が枝を 引き結び 真幸くあらば また還り見む
《松の枝 結んで祈る 無事ならば 礼に寄ります 岩代の神》
―有間皇子―(巻二・一四一)
家にあれば 笥に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る
《家ならば 器に供えて 祈るのに 旅先やから 椎で供える》
―有間皇子―(巻二・一四二)
尋問を 無事終えた有間皇子 待つは 藤白坂の悲劇
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