令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

憶良編(13)春日暮らさむ

2009年09月16日 | 憶良編
【掲載日:平成21年9月30日】

春されば まづ咲く宿の 梅の花 
          独り見つつや 春日暮らさむ 


【結び松の碑 後ろは崖と海】


手文庫の中 
七夕歌を 整理した 憶良 
昔懐かしさに 思わず こぼれる笑み 

〔おお これは 紀伊国きのくに 行幸の供の時
 持統帝の時代であった 
 わしも 若かった 三十一の年か 
 磐代いわしろ
 道行く人 皆 思わずにはいない  有間皇子ありまのみこ
 手向けの歌〕 
白波の 浜松の木の むけぐさ 幾代までにか 年はぬらむ
《松の木に 幣布きれ結び付け 祈るんは ずうっと前から 続く習慣ならわし
                         ―山上憶良―〔巻九・一七一六〕 
天翔あまがけり ありがよひつつ 見らめども 人こそ知らね 松は知るらむ 
《空飛んで 皇子みこの魂 かよて来る 人間ひと見えんでも 松は知っとる》
                         ―山上憶良―〔巻二・一四五〕 

憶良 次の歌へと 目をやる 
秋の野に 咲きたる花を および折り かき数ふれば 七種ななくさの花
《秋の野に 咲いてる花を 数えたら 秋ずる花 種類は七つ》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五三七〕 
はぎの花 尾花をばな 葛花くずばな 瞿麦なでしこの花
女郎花をみなへし また藤袴ふぢばかま 朝貌あさがほの花

《萩の花 すすき葛花 撫子なでしこの花
女郎花おみなえし ふじばかまばな 桔梗ききょうばななり》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五三八〕 
〔これは うたじゃ 
 しかし 皆は よき歌という 
 人生の苦労も知らず 純粋に若かった 
 今に思うと 心に秘めた人を なぞらえたか〕 

〔これは これは また 懐かしい〕 
春されば まづ咲く宿の 梅の花 独り見つつや 春日暮らさむ 
《春来たら 最初さいしょ咲く花 梅の花 独り見るには 惜しい春やな》
                       ―山上憶良―〔巻五・八一八〕 
〔ああ 旅人殿を 思い出す 
 天平二年〔730〕正月の 梅花ばいかの宴
 大宰府の官人 三十二名が集いし宴 
 この歌に 旅人殿 目を潤ませておられた 
 奥様を 伴って来られた筑紫 
 その地で亡くされ 酒にうたげに ふけられていた
 都戻りの旅 独り戻りを 嘆かれたと聞く 
 その 旅人殿も 昨年 この世を去られた 
 人は むなしくなるが こうして 歌だけは残る〕

憶良に 人生・社会を 見つめる歌が 増えて行く 





<結び松の碑>へ