【掲載日:平成26年3月11日】
草枕 旅行く君を 荒津まで 送りぞ来ぬる 飽き足らねこそ
旅題材の 問答歌は
旅先恋を 詠った歌か
舟出遅らせ 焦がれてみても
所詮旅恋 別れが運命
【問答】
豊国の 企救の長浜 行き暮らし 日の暮れゆけば 妹をしぞ思ふ
《企救の浜 日がな一日 歩き来て 日ィ暮れてくと あの児が恋し》
―作者未詳―(巻十二・三二一九)
豊国の 企救の高浜 高々に 君待つ夜らは さ夜更けにけり
《まだ来んか もう来るかなと 背伸びして あんた待つ夜 更けて仕舞たで》
―作者未詳―(巻十二・三二二〇)
【問答】
十月 時雨の雨に 濡れつつか 君が行くらむ 宿か借るらむ
《十月の 時雨降ってる あんたさん 濡れて行くんか 宿借りとんか》
―作者未詳―(巻十二・三二一三)
十月 雨間も置かず 降りにせば いづれの里の 宿か借らまし
《十月の 晴れ間もなしに 降る雨に どこの里宿 借りたら良んや》
―作者未詳―(巻十二・三二一四)
【問答】
玉の緒の 現し心や 八十楫懸け 漕ぎ出む船に 後れて居らむ
《一生懸命 楫多数並べ 沖向けて 漕ぎ出す舟に 遅れてなるか》
―作者未詳―(巻十二・三二一一)
八十楫懸け 島隠りなば 我妹子が 留まれと振らむ 袖見えじかも
《漕ぐ舟が 島隠れたら お前振る 留まれ云う袖 見えん様なるで》
―作者未詳―(巻十二・三二一二)
【問答】
白栲の 袖の別れを 難みして 荒津の浜に 宿りするかも
《どうしても 別れ出来んで 荒津浜 舟出遅らし 宿取ったんや》
―作者未詳―(巻十二・三二一五)
草枕 旅行く君を 荒津まで 送りぞ来ぬる 飽き足らねこそ
《旅に行く あんた送って 荒津まで 来て仕舞たんや 名残が惜して》
―作者未詳―(巻十二・三二一六)
【問答】
荒津の海 我れ幣奉り 斎ひてむ 早帰りませ 面変りせず
《荒津海 幣を祀って 祈り仕様 早よ帰ってや 旅痩せせんと》
―作者未詳―(巻十二・三二一七)
朝な朝な 筑紫の方を 出で見つつ 哭のみぞ我が泣く 甚も術なみ
《毎朝に 遙か筑紫を 望み見て どう仕様も無うて 泣くのんやろな》
―作者未詳―(巻十二・三二一八)