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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(12)明石の水門(みと)に

2012年07月31日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月31日】

我が舟は 明石の水門みとに 漕ぎてむ 沖へなさかり さけにけり



山陽みちは 西へと延びる
遥か筑紫の 遠御門とおみかどまで
難波なにわ出た船 を追いかけて
辿たどふなみち 見聞きの景色

 山陽道 摂津・播磨・備前】
朝霞あさがすみ まず棚引く 竜田山 舟出ふなでせむ日は れ恋ひむかも
《朝霞 常時いつも棚引く 竜田山 名残なごりしいで 船出ふなでの日には》
                            ―古集―(巻七・一一八一)
朝凪に かぢ漕ぎて 見つつし 御津みつの松原 なみしに見ゆ
朝凪なぎ漕出て 眺めながらに 来た御津みつの 松原波間なみま 隠れて仕舞しまう》
                            ―古集―(巻七・一一八五)
大海おほうみに あらしな吹きそ しなが鳥 猪名ゐなの港に 舟つるまで
海原うなばらに 嵐来るなよ みなと せめてこの船 そこ着くまでは》
                            ―古集―(巻七・一一八九)
いにしへに ありけむ人の 求めつつ きぬりけむ 真野まのはりはら
《ここの原 昔の人も 来て採って ふく摺染めた云う 真野まの榛原はりはらや》
                            ―古集―(巻七・一一六六)
印南野いなみのは 行き過ぎぬらし 天伝あまづたふ 日笠ひかさの浦に 波立てり見ゆ
印南野いなみのは 通り過ぎたで ほらあそこ 日笠ひかさ浦やで 波立ってるん》
                            ―古集―(巻七・一一七八)
家にして れは恋ひむな 印南野いなみのの 浅茅あさぢうへに 照りし月夜つくよ
《戻ったら 思い出すやろ 印南野いなみのの ちがやに照った あのえ月夜》
                            ―古集―(巻七・一一七九)
荒磯ありそ越す 波をかしこみ 淡路あはぢ島 見ずか過ぎなむ 幾許ここだ近きを
荒磯あらいそを 越す波こわて 淡路あわじ島 見んとくんか すぐそばやのに》
                            ―古集―(巻七・一一八〇)
粟島あはしまに 漕ぎ渡らむと 思へども 明石の門波となみ いまださわけり
粟島あわしまに 渡りたいなと 思うけど 明石海峡 まだ波高い》
                            ―古集―(巻七・一二〇七)
我が舟は 明石の水門みとに 漕ぎてむ 沖へなさかり さけにけり
《この船は 明石港に とまりする 沖へりなや もう夜更よふけやで》
                            ―古集―(巻七・一二二九)
山越えて 遠津とほつの浜の 岩つつじ 我が来るまでに ふふみてあり待て
遠津浜とおつはま そこに咲いてる 岩つつじ わし帰るまで つぼみ付けとき》
                            ―古集―(巻七・一一八八)
てて かし振り立てて いほりせむ 名児江なごえ浜辺はまへ 過ぎかてぬかも
《船めて 杭打ちもやい とまろやな 名児江なごえ浜辺の 素通すどおしで》
                            ―古集―(巻七・一一九〇)



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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(11)箱根飛び越え

2012年07月27日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月27日】

足柄あしがらの 箱根飛び越え 行くたづの ともしき見れば 大和やまとし思ほゆ



近江 若狭は 畿内に近い
気楽気持が ただよい見える
東山道とうさんひがし さすがに異郷いきょう
見聞き のすべて 珍し見える

 東山道 近江】
近江あふみの海 港は八十やそち 何処いづくにか 君が舟て 草結びけむ
近江おうみ海 港多数よけある その何処どこに あんた船め 宿してんやろ》
                            ―古集―(巻七・一一六九)
楽浪ささなみの 連庫山なみくらやまに 雲れば 雨ぞ降るちふ 帰り我が背
連庫なみくらの 山くも出たら 雨やう 帰っといでや なぁお前さん》
                            ―古集―(巻七・一一七〇)
大御船おほみふね ててさもらふ 高島の 三尾みをの勝野の なぎさし思ほゆ
《見えてるん 大君おおきみふねの 風待ちの 三尾の勝野の あのなぎさやで》
                            ―古集―(巻七・一一七一)
                           (大君が行幸時に雲の具合で船待ちをした三尾)
何処いづくにか 舟乗りしけむ 高島の 香取かとりの浦ゆ 漕ぎる舟
《あの船は 何処どこの港を 出て来たか 香取かとりの浦を とおり漕ぐんは》
                            ―古集―(巻七・一一七二)
高島の 安曇あど白波は さわけども 我れは家思ふ いほり悲しみ
安曇川あどがわの 白波なみ騒がしが 耳そぞろ わし家恋し 旅さみしいて》
                            ―古集―(巻七・一二三八)

 北陸道 若狭】
若狭わかさなる 三方みかたの海の 浜きよみ い行きかへらひ 見れど飽かぬかも
若狭わかさくに 三方みかたの海は 浜清い 行きつ戻りつ 見きん景色》
                            ―古集―(巻七・一一七七)

 東山道 飛騨】
飛騨ひだ人の 真木まき流すといふ 丹生にふの川 ことかよへど 舟ぞ通はぬ
飛騨人ひだひとが 流す丹生川にうは 瀬ぇはげし 声届くけど 船かよわんで》
                            ―古集―(巻七・一一七三)

 東海道(東) 常陸・下総・相模】
あられ降り 鹿島かしまの崎を 波高み 過ぎてや行かむ 恋しきものを
鹿島かしま崎 波高いから 素通すどおりや 寄って行きたい おもとったのに》
                            ―古集―(巻七・一一七四)
なつ引く 海上うなかみがたの 沖つに 鳥はすだけど 君はおともせず
海上潟うなかみの 沖の砂州さすには 鳥つどい 五月蝿うるさいが あんたおとし》
                            ―古集―(巻七・一一七六)
足柄あしがらの 箱根飛び越え 行くたづの ともしき見れば 大和やまとし思ほゆ
足柄あしがらの 箱根を越えて 鶴行くで 大和こてる わしうらやまし》
                            ―古集―(巻七・一一七五)



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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(10)己(おの)が妻呼ぶ

2012年07月24日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月24日】

ゆふなぎに あさりするたづ しほ満てば 沖波高み おのが妻呼ぶ




見事景色に いやされしても
旅はつらいし 命がかる
 妻離れ 夜風が寒い
鳴くかりつるに わびしさ募る

いへさかり 旅にしあれば 秋風の 寒きゆふへに 雁鳴き渡る
《家はなれ 旅空たびぞら行くと 秋の風 さむ吹くよいに 雁鳴いてくで》
                            ―古集―(巻七・一一六一)

古代 社会の 行政区画
畿内七道しちどう 律令決める
七道これぞ 太平洋たいへよ沿いに 
西さいなんとうの 海道うみみち区画 内海うちうみ行くは 山陽みち
日本海沿い 山陰みちに 北陸みちが 北へと続く
山中辿たどる 東山道とうさんみちは 近江西端にしはし 北陸奥むつまでよ

【畿内 大和近辺きんぺん
玉櫛笥たまくしげ みもろと山を 行きしかば 面白くして いにしへ思ほゆ
《三輪山の ふもとあたりを 辿たどったら 太古たいこ昔が しみじみせまる》
                            ―古集―(巻七・一二四〇)
ぬばたまの 黒髪山を 朝越えて 山下やましたつゆに 濡れにけるかも
黒髪山くろかみを お前しのんで 朝越えて 山すそつゆに 濡れて仕舞しもたで》
                            ―古集―(巻七・一二四一)
あしひきの 山行きらし 宿借らば 妹立ち待ちて 宿やど貸さむかも
《山道を 行き暮れて仕舞た 宿さがそ え児待ってて 宿貸さへんやろか》
                            ―古集―(巻七・一二四二)
見渡せば 近き里廻さとみを たもとほり 今ぞ我がる 領巾ひれ振りし野に
《気ィいて すぐやおもたに 中々なかなかで やっと着いたで 領巾ひれ振った野に》
                            ―古集―(巻七・一二四三)
                            (出掛け別れにあの児が領巾振った野に)

 東海道(西) 伊勢・尾張】
円方まとかたの 港の洲鳥すどり 波立てや 妻呼びたてて に近づくも
円方まとかたの なぎさる鳥 波立って れ呼び鳴いて 岸寄って来る》
                            ―古集―(巻七・一一六二)
年魚市潟あゆちがた しほにけらし 知多ちたの浦に 朝漕ぐ舟も 沖に寄る見ゆ
年魚市潟あゆちがた 潮引いてくか 知多ちた浦に 朝に漕ぐ船 沖寄る見える》
                            ―古集―(巻七・一一六三)
しほれば ともに潟にで 鳴くたづの 声とほざかる 磯廻いそみすらしも
《潮引けば 干潟ひがた群れ鳴く 鶴の声 とおなってくで こ磯行くか》
                            ―古集―(巻七・一一六四)
ゆふなぎに あさりするたづ しほ満てば 沖波高み おのが妻呼ぶ
夕凪ゆうなぎで えさ採る鶴は 潮ちて 沖波こて れ呼び鳴くよ》
                            ―古集―(巻七・一一六五)
いめのみに ぎて見えつつ 小竹しの島の 磯越す波の しくしく思ほゆ
《毎晩に 夢出るあんた 恋しいで しのしま波の しくしくしくと》
                            ―古集―(巻七・一二三六)



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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(09)遠里(とほさと)小野の

2012年07月20日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月20日】

住吉すみのえの とほさと小野をのの はりもち れるころもの 盛り過ぎゆく



住吉すみのえ浜は 沖波おきなみ寄せて
浜はきよいし 波音さや
名児なご吾児あご海は 干潟が続く
玉藻刈ろうや 白玉たま拾おうや

 摂津にして作れる歌(二)】
住吉すみのえの 沖つ白波 風吹けば 来寄きよする浜を 見れば清しも
住吉すみのえの 沖立つ白波なみは 風吹くと 岸に寄せ来て 浜清々すがすがし》
                            ―古集―(巻七・一一五八)
住吉すみのえの 岸の松が根 うちさらし 寄せ来る波の 音のさやけさ
住吉すみのえの 浜ある松の 根ぇ洗ろて 寄せてくる波 音すずやかや》
                            ―古集―(巻七・一一五九)
住吉すみのえの 岸に家もが 沖にに 寄する白波 見つつしのはむ
住吉すみのえの 岸に家し 沖立って 岸寄せる波 見て楽しむに》
                            ―古集―(巻七・一一五〇)
大伴の 御津みつ浜辺はまへを うちさらし 寄せる波の 行方ゆくへ知らずも
《寄せてくる 波何処どこって 仕舞しまうんか 御津みつの浜辺の 打ち寄せ波は》
                            ―古集―(巻七・一一五一)
かぢの音ぞ ほのかにすなる 海人あま娘子をとめ 沖つ藻刈もかりに 舟出ふなですらしも
かじの音 かすか聞こえる 漁師あま娘子おとめ 沖の藻刈りに ふねすらしな》
                            ―古集―(巻七・一一五二)
名児なごの海の 朝明あさけのなごり 今日けふもかも 磯の浦廻うらみに 乱れてあるらむ
名児なご海で 朝の見栄みばえの 潮だまり 浦のあちこち 今日もあるかな》
                            ―古集―(巻七・一一五五)
住吉すみのえの 名児なご浜辺はまへに 馬立てて 玉ひりひしく つね忘らえず
住吉すみのえの 名児なごの浜辺で 馬めて 玉ろたんを 今も思うで》
                            ―古集―(巻七・一一五三)
時つ風 吹かまく知らず 吾児あごの海の 朝明あさけしほに 玉藻刈りてな
《潮風が 吹く知れんけど 吾児あご海で 夜明け干潟ひがたで 玉藻を刈ろや》
                            ―古集―(巻七・一一五七)
雨は降る 仮廬かりいほは作る いつの間に 吾児あご潮干しほひに 玉はひりはむ
《雨降って 小屋作ってて 行けんがな 吾児あごの引き潮 玉拾いに》
                            ―古集―(巻七・一一五四)
住吉すみのえの とほさと小野をのの はりもち れるころもの 盛り過ぎゆく
住吉すみのえの とおさとの野の はんの木で 摺染めたこのふく 色せてくで》
                            ―古集―(巻七・一一五六)
難波なにはがた 潮干しほひに立ちて 見渡せば 淡路あはぢの島に たづ渡る見ゆ
難波なにわ浜 干潟ひがたに立って 見渡すと 淡路あわじの島へ 鶴飛んでくで》
                            ―古集―(巻七・一一六〇)



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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(08)垂水(たるみ)の水を

2012年07月17日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月17日】

いのちをし さきくよけむと 石走いはばしる 垂水たるみの水を むすびて飲みつ


瀬戸内 兵庫 東部の歌と
大阪 湾の 海辺の歌と
名高い埴生はにゅう 染料土せんりょつち
拾う て帰ろ 恋忘れ貝

 摂津にして作れる歌(一)】
しなが鳥 猪名野ゐなのれば  有馬山ありまやま 夕霧立ちぬ 宿やどりはなくて
の野を はるばる来たが 有馬山ありまから 夕霧きり出て来たに 宿るとこない》
                            ―古集―(巻七・一一四〇)
武庫川むこがはの 水脈みをはやみと 赤駒あかごまの 足掻あがたぎちに 濡れにけるかも
《武庫の川 流れはようて 馬足掻あがき 飛沫しぶきが飛んで わし濡れて仕舞た》
                            ―古集―(巻七・一一四一)
いのちをし さきくよけむと 石走いはばしる 垂水たるみの水を むすびて飲みつ
《この命 ごとねごうて 垂水たるみ神水みず 手ぇにすくうて わし飲んだんや》
                            ―古集―(巻七・一一四二)
さ夜更けて 堀江漕ぐなる 松浦舟まつらぶね かぢおと高し 水脈みを早みかも
よるけて 堀江漕ぎ行く 松浦舟まつらぶね かじせわし 潮早いんや》
                            ―古集―(巻七・一一四三)
くやしくも 満ちぬる潮か 住吉すみのえの 岸の浦廻うらみゆ 行かましものを
《悔しいな 潮ちてきた 住吉すみのえの 浦をつとうて 行きたかったに》
                            ―古集―(巻七・一一四四)
妹がため 貝をひりふと 茅渟ちぬの海に 濡れにし袖は せど乾かず
《お前にと 貝ひろおして 茅渟ちぬ海で 袖濡らしたで かわかん程に》
                            ―古集―(巻七・一一四五)
めづらしき 人を我家わぎへに 住吉すみのえの 岸の埴生はにふを 見むよしもがも
いとを うち住ましたい 住吉すみのえの 岸の埴生はにゅうを 見るすべしな》
                            ―古集―(巻七・一一四六)
めて 今日けふ我が見つる 住吉すみのえの 岸の埴生はにふを 万代よろづよに見む
《馬つらね わしが今日見た 住吉すみのえの 岸の埴生はにゅうを またまた見たい》
                            ―古集―(巻七・一一四八)
いとまあらば ひりひに行かむ 住吉すみのえの 岸に寄るといふ 恋忘れ貝
ぁあると ひろい行きたい 住吉すみのえの 岸に寄るう 恋忘れ貝》
                            ―古集―(巻七・一一四七)
住吉すみのえに 行くといふ道に 昨日きのふ見し 恋忘れ貝 ことにしありけり
住吉すみのえに つうじる道で 昨日見た 恋忘れ貝 名前倒れや》
                            ―古集―(巻七・一一四九)



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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(07)舟渡せをと

2012年07月13日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月13日】

宇治川うぢがはを 舟渡せをと 呼ばへども 聞こえざるらし かぢの音もせず



以下のりょうた しゅうが載せる
奈良朝初期に さかのぼる歌
吉野うたうは 山川誉める
山背やましろ歌は 宇治川風情

 吉野にして作れる歌】
かむさぶる 岩根いはねこごしき み吉野の 水分山みくまりやまを 見れば悲しもっ
神々こうごしい 岩のひしめく 水分みくまりの 山を見てたら 胸せまや》
                            ―古集―(巻七・一一三〇)
皆人みなひとの ふるみ吉野 今日けふ見れば うべも恋ひけり 山川清み
《みんなみな 見たがる吉野 今日見たで 山川よて 成程なるほど思た》
                            ―古集―(巻七・一一三一)
いめのわだ ことにしありけり うつつにも 見て来るものを 思ひし思へば
《夢のわだ 夢とちがうで 目の前や 見とてたまらん おもてたわだや》
                            ―古集―(巻七・一一三二)
皇祖神すめろきの 神の宮人みやひと ところづら いやとこしくに 我れかへり見む
代々だいだいの つかえの人も 見た吉野 わしらまたまた 見によ吉野》
                            ―古集―(巻七・一一三三)
                            (ところづら=やまいもの蔓→とこしく)
吉野川 いはほかへと 常盤ときはなす 我れはかよはむ 万代よろづよまでに
《吉野川 岩とかしわは 永久とこしえや わしも永久とこしえ かようできっと》
                            ―古集―(巻七・一一三四)

山背やましろにして作れる歌】
宇治川うぢがはは 淀瀬よどせなからし 網代あじろひと 舟呼ばふ声 をちこち聞こゆ
《宇治川は 渡る淀瀬ないで 網代あじろ海人あま 呼びわす声 あちこちしてる》
                            ―古集―(巻七・一一三五)
宇治川うぢがはに ふる菅藻すがもを 川はやみ らずにけり つとにせましを
《宇治川の 流れはようて える菅藻ぉ 取れんかったで 土産みやげ思たに》
                            ―古集―(巻七・一一三六)
宇治人うぢひとの たとへの網代あじろ 我れならば 今は寄らまし 木屑こつみずとも
《物引寄せる 網代あじろ浮かぶで 宇治聞くと 寄る前 うち寄るからね》
                            ―古集―(巻七・一一三七)
                      (網代=女を引き寄せる男に譬えた 木屑=詰まらん女)
宇治川うぢがはを 舟渡せをと 呼ばへども 聞こえざるらし かぢの音もせず
《宇治川を 渡してくれと 叫んでも 聞こえへんのか 楫音かじおとせんで》
                            ―古集―(巻七・一一三八)
ちはやひと 宇治うぢ川波を 清みかも 旅行く人の 立ちかてにする
《宇治の川 波清いんで 旅の人 くんしいて 川ながめてる》
                            ―古集―(巻七・一一三九)
                     (ちはや人=猛々しく勢いの激しい人→流れの激しい宇治川?)




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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(06)いまだ経なくに

2012年07月10日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月10日】

年月としつきも いまだなくに 明日香川 瀬々せぜゆ渡しし 石橋もなし



自然風物 歌中うたなか
人の生活くらしの 関わり歌が
明日香故郷ふるさと 偲びの歌や
湧水わきみず巡る 暮らしの場面
琴にたくした 妻偲び歌

清き瀬に 千鳥妻呼び 山のに 霞立つらむ 神奈備かむなびの里
《この季節 千鳥れ呼び 山間やまあいは 霧立つやろか 神奈備かんなび里は》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二五)

年月としつきも いまだなくに 明日香川 瀬々せぜゆ渡しし 石橋もなし
《そんなにも っとらんのに 明日香川 瀬渡し石の 橋もう無いわ》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二六)

落ちたぎつ 走井はしりゐ水の 清くあれば 置きては我れは 行きかてぬかも
ほとばしる 流れ湧き水 きよい わしこれ置いて くこと出来ん》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二七)

馬酔木あしびなす 栄えし君が 掘りし井の 石井いしゐの水は 飲めど飽かぬかも
馬酔木あしび花 羽振はぶりのあんた 掘った井戸 湧き出る水は 美味おいしいで》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二八)

琴取れば 嘆き先立つ けだしくも 琴の下樋したびに 妻やこもれる
《琴取ると 嘆きさき来る もしかして 琴のの中 お前るんか》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二九)
                                (妻を亡くした男の歌か)



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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(05)今日の小雨に

2012年07月06日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月6日】

我妹子わぎもこが あかの裾の ひづちなむ 今日けふ小雨こさめに れさへ濡れな



自然 現象 雲 雨 霧に
  苔 草と 植物続き
千鳥 河鹿かじかと 動物続く
景色 の誉めか あの児のことか

大海おほうみに 島もあらなくに 海原うなはらの たゆたふ波に 立てる白雲
海原うなばらの れる波間に 白雲くも出てる 見渡す限り 島無いのんに》
                          ―作者未詳―(巻七・一〇八九)
我妹子わぎもこが あかの裾の ひづちなむ 今日けふ小雨こさめに れさへ濡れな
《この雨に あの児の赤裳裾もすそ 濡れてるか わしもこの雨 濡れて行こかな》
                          ―作者未詳―(巻七・一〇九〇)
とほるべく 雨はな降りそ 我妹子わぎもこが 形見のころも れ下に
《ずぶ濡れに なるまでりな わし下に あの児着とった ふく着てるんや》
                          ―作者未詳―(巻七・一〇九一)
ぬばたまの 我が黒髪に りなづむ あめ露霜つゆしも 取ればにつつ
《黒髪に りるつゆじも 手に取って 見よとおもても 取るたび消える》
                          ―作者未詳―(巻七・一一一六)
島廻しまみすと 磯に見し花 風吹きて 波はすとも らずはまじ
《島めぐり 磯で見た花 綺麗きれえ かぜなみ来ても 取らいでくか》
                          ―作者未詳―(巻七・一一一七)
み吉野の 青根がみねの 苔むしろ れかりけむ 経緯たてぬきなしに
青根峰あおねみね 苔のむしろは 見事やな 縦横糸たてよこなしで 誰ったやろ》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二〇)
妹らがり 我がかよの 小竹しのすすき 我れしかよはば なび小竹しの
《お前とこ かよみちの 細竹しのすすき わし通る時 なびいて道空けや》
                         ―作者未詳―(巻七・一一二一)
山のに 渡るあきさの きてむ その川の瀬に 波立つなゆめ
《あいさ鴨 山を渡って り立つ瀬 川の瀬波よ つんやないで》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二二)
佐保川の 清き川原かはらに 鳴く千鳥 かはづと二つ 忘れかねつも
《佐保川の 清い河原で 鳴いとった 千鳥と河鹿かじか 忘れられんな》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二三)
佐保川に さわける千鳥 さけて が声聞けば ねかてなくに
《佐保川で 騒ぐ千鳥よ けて 声聞いたなら 寝るに寝られん》
                          ―作者未詳―(巻七・一一二四)



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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(04)檜隈川の

2012年07月03日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年7月3日】

檜隈ひのくま 檜隈ひのくまがはの 瀬を早み 君が手取らば こと寄せむかも



泊瀬はつせ 布留川ふるがわ 川の瀬清い
渡る檜隈ひのくま あの児と一緒
 の名前に 事寄せ歌う
可愛かわいあの児が この目に浮かぶ

泊瀬川はつせがは 白木綿花しらゆふばなに 落ちたぎつ 瀬をさやけみと 見にし我れを
白木綿花ゆうはなが くだけ散るで 瀬ぇ清い 泊瀬はつせの川を わし見に来たで》
                          ―作者未詳―(巻七・一一〇七)
泊瀬川 流るる水脈みをの 瀬を早み ゐで越す波の 音のさやけく
泊瀬はつせ川 逆巻さかまく流れ 早いんで せき越す波の 音清らかや》
                          ―作者未詳―(巻七・一一〇八)
檜隈ひのくま 檜隈ひのくまがはの 瀬を早み 君が手取らば こと寄せむかも
檜隈ひのくまの 川の瀬早い そやからて 手ぇつないだら うわさなるかな》
                          ―作者未詳―(巻七・一一〇九)
斎種ゆだねく 新墾あらき小田をだを 求めむと で濡れぬ この川の瀬に
《清めもみ しん田圃たんぼ さがそして 瀬ぇで足装束しょうぞく 濡らして仕舞しもた》
                          作者未詳―(巻七・一一一〇)
いにしへも かく聞きつつか しのひけむ この布留ふるがはの 清き瀬の音を
《このままを 聞いたんやろか 昔かて この布留ふる川の 清らか瀬音》
                          ―作者未詳―(巻七・一一一一)
はねかづら 今する妹を うら若み いざ率川いざかはの 音のさやけさ
《初々し かずらかぶる児 さそおして いざ率川かわの 瀬音清らや》
                          ―作者未詳―(巻七・一一一二)
この小川をがは 霧ぞ結べる たぎちゆく 走井はしりゐに ことげせねども
《この川に 霧立ってるで 湧き水の そばで嘆きを 口したちゃうに》
                          ―作者未詳―(巻七・一一一三)
                                   (霧は嘆く息の象徴しょうちょう
我がひもを 妹が手もちて 結八川ゆふやがは またかへり見む 万代よろづよまでに
《わしのひも お前手でう 結八川ゆうやがわ また見に来るで 後々あとあとずっと》
                          ―作者未詳―(巻七・一一一四)
妹が紐 結八ゆふや河内かふちを いにしへの みな人見きと 此処ここれ知る
《お前紐結う 結八ゆうや洲処すどこ その昔 みんな見た言う そらもっともや》
                          ―作者未詳―(巻七・一一一五)



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