【掲載日:平成25年11月26日】
橡の 衣解き洗ひ 真土山 本つ人には なほ及かずけり
馴れた女房が わしには似合い
ずっとこのまま この世で一緒
一緒の朝は 烏よ鳴くな
このまま居って 迎えよ明日
桜麻の 麻生の下草 早く生ひば 妹が下紐 解かずあらましを
《妻生まれ 早よであったら わし下紐を 解く幸せ 出会えんかった》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四九)
三輪山の 山下響み 行く水の 水脈し絶えずは 後も我が妻
《これからも ずっとお前は わしの妻 三輪山下の 水ある限り》【山に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇一四)
橡の 衣解き洗ひ 真土山 本つ人には なほ及かずけり
《普段着を 着る様に馴れた 古女房 お前がわしに 一番似合い》【山に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇〇九)
(衣解き洗い=また打ち直す=マツチ→真土→本つ)
大君の 塩焼く海人の 藤衣 なれはすれども いやめづらしも
《海人の着る 藤衣褻れてる お前かて 馴れて古いが 若こ見えるがな》【衣に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九七一)
朝烏 早くな鳴きそ 我が背子が 朝明の姿 見れば悲しも
《朝烏 そんな早うに 鳴きないな 帰るあの人 見るん悲しで》【鳥に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇九五)
佐保川の 川波立たず 静けくも 君にたぐひて 明日さへもがも
《佐保の川 波が静かで 落ち着くわ 落ち着くあんた 明日まで居ろ》【川に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇一〇)
谷狭み 嶺辺に延へる 玉葛 延へてしあらば 年に来ずとも
《仲ずっと 続くん云なら 構へんで 年に一度の 逢瀬無うても》【葛に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇六七)
(七夕違ごて・・・)
春日野に 浅茅標結ひ 絶えめやと 我が思ふ人は いや遠長に
《二人仲 続けたい思う あの人に 末長ご無事に 居って欲しんや》【浅茅に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五〇)
(浅茅標結い絶えめや=広い野原の浅茅の標結いは終りがない)