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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

古今相聞往来(下)編(28)衣(きぬ)解(と)き洗ひ

2013年11月26日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年11月26日】

つるはみの きぬき洗ひ 真土山まつちやま もとつ人には なほかずけり



れた女房にょうぼが わしには似合にあ
ずっとこのまま この世で一緒
一緒の朝は からすよ鳴くな
このままって 迎えよ明日あした
  
桜麻さくらをの 麻生をふ下草したくさ 早くひば 妹が下紐したびも かずあらましを
《妻まれ よであったら わし下紐ひもを ほどく幸せ 出会えんかった》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇四九)
   
三輪みわやまの 山下やましたとよみ 行く水の 水脈みをえずは のちも我が妻
 これからも ずっとお前は わしの妻 三輪山下の 水ある限り》【山に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇一四)
   
つるはみの きぬき洗ひ 真土山まつちやま もとつ人には なほかずけり
《普段着を 着るれた 古女房にょうぼ お前がわしに 一番似合にあい》【山に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇〇九)
                          (衣解き洗い=また打ち直す=マツチ→真土→本つ)
  
大君おほきみの 塩焼く海人あまの 藤衣ふぢころも なれはすれども いやめづらしも
海人あまの着る 藤衣ころもれてる お前かて れて古いが こ見えるがな》【衣に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九七一)
   
朝烏あさがらす 早くな鳴きそ 我が背子せこが 朝明あさけの姿 見れば悲しも
朝烏あさがらす そんな早うに 鳴きないな 帰るあの人 見るん悲しで》【鳥に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇九五)
   
佐保さほがはの 川波立たず 静けくも 君にたぐひて 明日あすさへもがも
《佐保の川 波が静かで 落ち着くわ 落ち着くあんた 明日あしたまでろ》【川に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇一〇)
   
せばみ 嶺辺みねへへる 玉葛たまかづら へてしあらば 年にずとも
《仲ずっと 続くんなら かまへんで ねんに一度の 逢瀬おうせうても》【葛に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇六七)
                          (七夕違ごて・・・)
  
春日野かすがのに 浅茅あさぢしめひ えめやと が思ふ人は いやとほなが
《二人仲 続けたいう あの人に すえご無事に ってしんや》【浅茅に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇五〇)
                    (浅茅標結い絶えめや=広い野原の浅茅の標結いは終りがない)


古今相聞往来(下)編(27)雲梯(うなて)の社(もり)の

2013年11月22日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年11月22日】

思はぬを 思ふと言はば とりむ 雲梯うなてもりの 神し知らさむ




仲良し二人 ご機嫌しき
わす言葉に 軽口かるくちじる
身代みがわり鏡 のぞけば二人
嘘で好きん 当たるでばち
  
近江あふみの海 へたは人知る おきつ波 君をおきては 知る人もなし
近江おうみうみ 岸辺はみんな 知ってるが 沖波知るん あんたしか無い》
(うちのこと 上辺うわべみんな 知ってるが 心知ってん あんたしか無い)【海に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇二七)
   
真澄鏡まそかがみ 見ませ我が背子せこ 我が形見かたみ てらむ時に 逢はざらめやも
身代みがわりに この真澄鏡まそかがみ 持ってたら あんた見たとき えるで二人》【鏡に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九七八)
   
桃花ももめの 浅らのころも 浅らかに 思ひて妹に 逢はむものかも
《桃めの 色の浅い 軽い気で お前にたり するもんかいな》【衣に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九七〇)
   
思はぬを 思ふと言はば とりむ 雲梯うなてもりの 神し知らさむ
《嘘ついて きやてなんか うたなら 雲梯うなて神さん ばち当てはるで》【鳥に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三一〇〇)
   
かむさびて いはほふる 松が根の 君が心は 忘れかねつも
いわえる 松の根みたい 変わらへん あんたの気持ち うち忘れんで》【松に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇四七)
   
梓弓あづさゆみ 末中すゑなかためて よどめりし 君には逢ひぬ 嘆きはやめむ
《付き合いが しばらあいだ よどんでた あんたえたで 嘆くんめる》【弓に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九八八)
                          末中ためて=弓の末と握りを張ったまま
                                 =止めて→淀めりし=止まっていた)
  
十五日もちのひに でにし月の 高々たかたかに 君をいませて 何をか思はむ
《背伸びして 待ってたあんた 此処ここる うことないで 気ぃ満月まんげつや》【月に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇〇五)

古今相聞往来(下)編(26)草と分(わ)く分(わ)く

2013年11月19日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年11月19日】

紫草むらさきを 草とく す鹿の 野はことにして 心はおな




二人ふたり気持ちが 通うてれば
住むの別でも 心はひと
決めたあんたと ひも結び
名前わんで 死んだとしても
  
丹波道たにはぢの 大江おほえの山の さなかづら えむの心 我が思はなくに
かずらつる えんと伸びる 二人仲 えるやなんて 思いもせんで》【葛に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇七一)
   
紫草むらさきを 草とく す鹿の 野はことにして 心はおな
《草別けて 寝る鹿ちゃうが 別々に 住んで寝てるが 心ひとつや》【鹿に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇九九)
   
梓弓あづさゆみ 引きみゆるへみ 思ひみて すでに心は 寄りにしものを
《色々と 思案しあん考え した末に もううち心 あんたべったり》【弓に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九八六)
   
今さらに 何をか思はむ 梓弓あづさゆみ 引きみゆるへみ 寄りにしものを
 もう何も 悩まんとくわ いろいろと 思たんやけど あんたに決めた》【弓に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九八九)
  
  
真玉またまつく 遠近をちこちねて 結びつる 我が下紐したびもの くる日あらめや
いま今後こんご こて結んだ 下紐したひもが ほどける日ぃが 来ることないわ》【紐に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九七三)
                          (真玉つく=玉を通す紐=緒→お→おちこち)
  
みさごる 荒磯ありそふる 名告藻なのりその よし名はらじ 親は知るとも
《あんたの名 うち絶対に わへんで 二人の仲を 親知ったかて》【藻に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇七七)
                          (名告藻=な告りそ=告げたらあかん)
  
わたつみの おきひたる 縄海苔なはのりの 名はかつてらじ 恋ひは死ぬとも
《あんたの名 うち絶対に わへんで たとえがれて 死んだとしても》【藻に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇八〇)

古今相聞往来(下)編(25)月草の移ろふ心

2013年11月12日 | 古今相聞往来編(下)
【掲載日:平成25年11月12日】

ももに 人は言ふとも つきくさの 移ろふ心 我れ持ためやも



恋の訴え 甘さが香る
わしを忘れな 仲絶やさんで
あんたかるか この胸の内
気ぃ変わるやて そんなんいわ
  
我妹子わぎもこや を忘らすな 石上いそのかみ そで布留ふる川の えむと思へや
《なぁお前 わし忘れなや わしかても 仲えるやて 思いもせんで》【川に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇一三)
                          (袖振る→布留)(布留川の水絶えん→絶えん)
  
赤駒あかごまの い行きはばかる 真葛原まくずはら 何のこと ただにしよけむ
《もどかしいで 馬行きなずむ 真葛原まくずはら 人伝てごて じかえに》【葛に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇六九)
   
何ゆゑか 思はずあらむ ひもの 心に入りて こひしきものを
《思わんと られへんがな うちの胸 取り込まれ仕舞て 恋しんやから》【紐の緒に寄せて】
                          作者未詳―(巻十二・二九七七)
                          (紐の緒=結ぶと食い込む→入りて)
  
石走いはばしる 垂水たるみの水の しきやし 君に恋ふらく 我が心から
いとおしと あんた思う気 ほんまやで うちの本心 分かるなあんた》【滝に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇二五)
                          (垂水の水が走る→ハシきやし)
  
うちひさす 宮にはあれど つきくさの 移ろふ心 我が思はなくに
宮仕みやづかえ してるんやけど 露草の うつろう気持ち うち持たへんで》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇五八)
                         (宮仕えの女は気が多い?)(露草=すぐに色せる)
  
ももに 人は言ふとも つきくさの 移ろふ心 我れ持ためやも
《なんやかや 噂立つけど 露草の うつ心 持たんでうちは》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇五九)
   
鴨すらも おのが妻どち あさりして おくるるあひだに 恋ふといふものを
《鴨でさえ 同士どしえさを あさるとき 一寸ちょとはなれたら 恋しがるで》【鳥に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇九一)