令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

古今相聞往来(上)編(03)現(うつつ)に見ては

2012年10月30日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成24年10月30日】

いめのみに 見てすら幾許ここだ 恋ふるは うつつに見てば ましていかにあらむ




 女心に 芽吹いた恋は
ほのか明かりの 灯火ともしびみたい
さくともるが しんは赤い
揺れる火影ほかげが 夢見を誘う

秋風の 千江ちえ浦廻うらみの 木屑こつみなす 心は寄りぬ のちは知らねど
後先あとさきの ことわからんが うち気持ち あんたに寄った みたいに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七二四)
  
遠くあれど 君にぞ恋ふる 玉桙たまほこの 里人さとびとみなに れ恋ひめやも
《遠いけど あんた一人に 恋してる この里ひとが 多数よけるけども》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五九八)
  
天雲あまくもの 八重やへ雲隠くもがくり 鳴る神の おとのみにやも 聞きわたりなむ
くもなかで 鳴りひびる 雷か あんたの噂 うち聞くだけや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五八)
  
杜若かきつはた つらふ君を いささめに 思ひでつつ 嘆きつるかも
見目みめの良え あんたなんと 思い出し そのたびうちは 溜息ためいき出るで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五二一)

窓越まどごしに 月おし照りて あしひきの あらし吹くは 君をしぞ思ふ
え月が 窓から照って 風の吹く よるはあんたが 恋してならん》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六七九)

思ふらむ その人なれや ぬばたまの ごとに君が いめにし見ゆる
《うちのこと 思てくれてる うことや 来る来るに 夢んは》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六九)
                          (こちらの夢に出るのは 相手が思っているから)

いめのみに 見てすら幾許ここだ 恋ふるは うつつに見てば ましていかにあらむ
《夢見ても こんながれる うちやのに ほんまうたら どうなるんやろ》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五五三)




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古今相聞往来(上)編(02)赤裳裾引き

2012年10月26日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成24年10月26日】

立ちて思ひ てもぞ思ふ くれなゐの あか裾引き にし姿を




離れてしたう 恋あこがれは
逢瀬おうせ求めて 彷徨さまよい歩く
やがて 出会いを 果たしてみても
焦がれ慕いは いや増しつの

我妹子わぎもこに またも逢はむと ちはやぶる 神のやしろを まぬ日はなし
《またあの児 わせて欲しと 神さんに ねごうてるんや 日ごと夜ごとに》【寄物陳思】
                         ―作者未詳―(巻十一・二六六二)
  
立ちて思ひ てもぞ思ふ くれなゐの あか裾引き にし姿を
《立ってても 座っとっても 目ぇ浮かぶ 赤い裳裾すそ引く あのあと姿すがた》【正述心緒】
                         ―作者未詳―(巻十一・二五五〇)
  
あらたまの 寸戸きへ竹垣たけがき 網目あみめゆも 妹し見えなば れ恋ひめやも
竹垣たけがきの 網目とおして せめてもに お前見えたら がれせんのに》【正述心緒】
                         ―作者未詳―(巻十一・二五三〇)
  
いもが目の 見まくしけく 夕闇ゆふやみの ごもれる 月待つごとし
夕闇ゆうやみの 樹茂しげみ隠れの 月待ちや あの児いたい 思う気持ちは》【寄物陳思】
                         ―作者未詳―(巻十一・二六六六)
  
ぬばたまの わたる月の ゆつりなば さらにやいもに が恋ひらむ
《渡る月 西にかたむき 沈んだら あの児思うて せつうなるで》【寄物陳思】
                         ―作者未詳―(巻十一・二六七三)
  
思ひにし あまりにしかば すべをなみ でてぞ行きし そのかどを見に
こいしいて 思い余って たまらんで 出かけ仕舞た あの児もんまで》【正述心緒】
                         ―作者未詳―(巻十一・二五五一)
  
道のの 草を冬野に 踏み枯らし れ立ち待つと いもげこそ
道端みちばたの 草を踏み踏み 待ってるて だれぞあの児に 伝えて来てや》【寄物陳思】
                         ―作者未詳―(巻十一・二七七六)




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古今相聞往来(上)編(01)髪に綰(た)くらむ

2012年10月23日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成24年10月23日】

振分けの 髪を短み 青草あをくさを 髪にくらむ いもをしぞ思ふ



巻十一に 納めるは 四百九十しひゃくくじゅうの 歌の数
人麻呂歌集かしゅを 除いても 三二九さんにいきゅうの 大歌群
ここに集めし 内容は 全て揃って 相聞そうもん
万葉集の 又の名を 恋歌こいうた歌集と 言う所以ゆえん
旋頭歌せどうか 短歌 歌かたち 内容表現 いろいろに
正述せいじゅつ心緒しんしょ 問答 寄物陳思きぶつちんしに 比喩ひゆの歌

万葉集に む形 編者意向の うたじゅん
歌形式と  表現の 種類同じを 並べしが
これら全てを きほぐし 歌内容に 目を留めて
恋の諸相しょそうを 拠所よりどこに 並べてみたで ご覧あれ

 の始まり 昔も今も
何のことない 一寸ちょとした弾み
男単純 見た目にれる
惚れてのぼせて あとも出来ん

奥山の がくりて 行く水の おと聞きしより つね忘らえず
さわやかな かくながれの 水音の 評判ひょうばん聞いて 気もそぞろやで》【寄物陳思】
                         ―作者未詳―(巻十一・二七一一)
                               (評判=あの児の評判)
振分けの 髪を短み 青草あをくさを 髪にくらむ いもをしぞ思ふ
かみの毛が みじこ青草くさを わえ付け 大人おとなってる あの児可愛かいらし》【正述心緒】
                         ―作者未詳―(巻十一・二五四〇)
  
あしひきの 山鳥やまどりの尾の ひと越え 一目ひとめ見し子に 恋ふべきものか
《山一つ 越えたとこる あの児見て 一目れやて そんなんあるか》【寄物陳思】
                         ―作者未詳―(巻十一・二六九四)
                                   (
花ぐはし あしかきしに ただ一目ひとめ 相見あひみし子ゆゑ 千度ちたび嘆きつ
またぞろに 溜息ためいき出るん 垣根し ちらと目のた あの児の所為せいや》【正述心緒】
                         ―作者未詳―(巻十一・二五六五)
  
色にでて ひば人見て 知りぬべし 心のうちの こもづまはも
《顔色に がれたら 見つかるな 心で思う 内緒ないしょの児やで》【正述心緒】
                         ―作者未詳―(巻十一・二五六六)
  
心には 千重ちへしくしくに 思へども 使つかひらむ すべの知らなく
《心では せんまんもに 思うても 使つかかた わし分からへん》【正述心緒】
                         ―作者未詳―(巻十一・二五五二)

旋頭歌せどうか】元掛け合いの二人歌 一人二役歌もあり
  五七七を二度詠う
正述せいじゅつ心緒しんしょ】心思いを直接に 物に寄せずに詠う歌
寄物陳思きぶつちんし】景色や物にたくし付け 心思いを詠う歌
比喩ひゆ歌】人の姿態すがたおこないや 感情こころを物に置き換えて
 寓意ぐうい含ませ詠う歌
【問答】二つの歌を並べ置き 掛け合い機微きびを詠う歌




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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(35)背向(そがひ)に寝しく

2012年10月19日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年10月19日】

我が背子を 何処いづちかめと さき竹の 背向そがひしく 今し悔しも




生きてりゃこそ 仲うできる
後で悔やむは 甲斐なき仕業しわざ
玉はくだける 花散り枯れる
独り明ける まんじり無しに

さきはひの いかなる人か 黒髪の 白くなるまで 妹が声を聞く
《どんなにか しあわせやろな 黒い髪 しろ成るまでも 妹声こえ聞ける人》
                           ―作者未詳―(巻七・一四一一)
我が背子を 何処いづちかめと さき竹の 背向そがひしく 今し悔しも
《あの人は 何処どこも行かへん 思い込み け寝たん 悔やまれるがな》
                           ―作者未詳―(巻七・一四一二)
庭つ鳥 かけり尾の 乱れ尾の 長き心も 思ほえぬかも
にわとりの なごうに伸びた ぉみたい のんびり気持ち うちようならん》
                           ―作者未詳―(巻七・一四一三)
薦枕こもまくら あひきし子も あらばこそ くらくも しみせめ
薦枕こもまくら して寝たあの児 るんなら よるけるん し思うのに》
                           ―作者未詳―(巻七・一四一四)
玉梓たまづさの 妹は玉かも あしひきの 清き山辺やまへに けば散りぬる
《あぁあの児 玉やったんか 灰にして 山でいたら 散って仕舞しもたで》
                           ―作者未詳―(巻七・一四一五)
玉梓たまづさの 妹は花かも あしひきの この山蔭やまかげに けばせぬる
《あぁあの児 花やったんか 灰にして 山でいたら 消えて仕舞しもたで》
                           ―作者未詳―(巻七・一四一六)
名児なごの海を 朝漕ぎ来れば 海中わたなかに 鹿子かこぞ鳴くなる あはれその鹿子かこ
名児なご海を 朝漕いでくと 海の上 鹿鳴いとるで あぁあの昔鹿しかも(遠い昔に 死んで仕舞たんや)》
                           ―作者未詳―(巻七・一四一七)

 昔の鹿のものがたり】
刀我野とがのに 棲むつがい鹿しか
牡鹿おじか通うよ 淡路の野島
待つは年若 側妻そばめ雌鹿めじか
ある夜夢見た 牡鹿おじかが問うた
背中せなに雪積み すすきが生えた」
聞いたつま鹿じか うらのて答う
すすき生えるは 射られし矢ぞよ
 雪の積もるは 塩漬け運命さだめ
 海を渡れば 猟師りょうしに射られ
 塩漬け肉に されるが前兆しるし
妻鹿つまいさめに 聞く耳持たず
おじ鹿野島へ 海へと渡る
待つは釣船 矢つが猟師りょうし
夜明け静寂しじまに 鹿子かこ鳴く声が
 摂津国風土記逸文より)






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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(34)まこと二代(ふたよ)は

2012年10月16日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年10月16日】

世間よのなかは まこと二代ふたよは かざらし 過ぎにし妹に はなく思へば




ひつぎく人 歌う歌 これが挽歌ばんかの 由来ゆらいなり
嘆きやめど 甲斐はない きて戻らぬ かの人よ

 死別れは この世の定め
定め知りつつ  残るは嘆く
 れも一度 叶わぬ願い
がり立つ雲 偲びの草か

鏡なす 我が見し君を 阿婆あばの野の はなたちばなの 玉にひりひつ
《明け暮れに 見てたあんたを 阿婆あばの野で 花橘たちばなぃと 思うてろた》
                          ―作者未詳―(巻七・一四〇四)
秋津野あきづのを 人のくれば 朝きし 君が思ほえて 嘆きはまず
秋津野あきつのと 聞いたら朝に いて来た あんたおもうて 嘆きまらん》
                          ―作者未詳―(巻七・一四〇五)
秋津野あきづのに 朝る雲の せゆけば 昨日きのふ今日けふも き人思ほゆ
秋津野あきつので 朝かる雲 消えてくと 昨日きのうも今日も 思いすんや》
                          ―作者未詳―(巻七・一四〇六)
隠口こもりくの 泊瀬はつせの山に 霞立ち 棚引く雲は 妹にかもあらむ
泊瀬はつせ山 霞み立ち込め ただようて たゆとう雲は あの児やろうか》
                          ―作者未詳―(巻七・一四〇七)
狂言たはことか 逆言およづれことか 隠口こもりくの 泊瀬はつせの山に いほりせりといふ
《信じへん だましてるんや 間違まちがいや あの児泊瀬はつせの 山住むんは》
                          ―作者未詳―(巻七・一四〇八)
秋山の 黄葉もみちあはれと うらぶれて りにし妹は 待てどまさず
《秋山の 黄葉もみじかれ しょんぼりと 山はいった児 帰ってんが》
                         作者未詳―(巻七・一四〇九)
世間よのなかは まこと二代ふたよは かざらし 過ぎにし妹に はなく思へば
人間ひとの世に もう一回は 無いらしな ったあの児に われんもんな》
                          ―作者未詳―(巻七・一四一〇)




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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(33)なほや老いなむ

2012年10月12日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年10月12日】

かくしてや なほやいなむ み雪降る 大荒木おほあらきの 小竹しのにあらなくに


巡り合わせの え人れば
き目会う人 その裏るぞ
臆病おくびょ油断に 間ぁ悪い人
嘆きそれぞれ いろいろ世間せけん

伏越ふしこえゆ 行かましものを まもらふに うち濡らさえぬ 波まずして
ふせ越えを 行ったかった 躊躇ためろうて 波間なみまはかれで 濡れて仕舞しもたで》【海に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三八七)
(びくついてたら 見つかって仕舞た)

白菅しらすげの 真野まの榛原はりはら 心ゆも 思はぬれし ころもりつ
白菅しらすげの 真野まの榛原はりはらの はんで その気いのに ふくめて仕舞た》【木に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三五四)
(意にまへんに 契って仕舞しもた)

膝に伏す 玉の小琴をごとの 事なくは いたく幾許ここだく れ恋ひめやも
《あの小琴こごと 思いがけう うしのうて 恋しさ募り 辛抱しんぼたまらん》【琴に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三二八)
                               (事なくは=変事がなかったら)
一寸ちょっと油断で 取られる破目はめや)

葛城かづらきの 高間たかま草野かやの はや知りて しめさましを 今ぞ悔しき
高間たかまある 萱野かやのはように 知ってたら つば着けたのに 手遅ておくれやんか》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三三七)
たまつく 越智をち菅原すがはら 我れ刈らず 人の刈らまく しき菅原
《悔しいで 越智おち菅原すがはら わしごて 他所よその誰かが 刈るうのんは》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三四一)
山高み ゆふかくりぬ 浅茅あさぢはら のち見むために しめはましを
《山こて よ暮れた 浅茅あさじはら 次来るしるし した良かったに》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三四二)
 後の祭りや 言われてみても)

かくしてや なほやいなむ み雪降る 大荒木おほあらきの 小竹しのにあらなくに
《こないして 年取るんかな 人も見ん 雪の荒木野あらきの 篠竹しのだけみたい》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三四九)
(もっと良男えおとこ 思もてる内に)

世間よのなかは つねかくのみか 結びてし 白玉のの 絶ゆらく思へば
《世の中は こんなもんかい つないだる 白玉たまひもかて 切れるんやから》【玉に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三二一)
(あんなかとうに ちぎったくせに)





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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(32)解(と)き洗ひ衣(きぬ)の

2012年10月09日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年10月9日】

つるはみの あらきぬの あやしくも ことしき このゆふへかも



結ばれ したら 男は無邪気
軽口出るわ 惚気のろけは言うわ
親密度合どあい 深まり行けば
古女房ふるにょうぼうも また味が出る

楽浪ささなみの 志賀津しがつの浦の 舟乗ふなのりに 乗りにし心 つね忘らえず
《忘れへん わしの心に 乗った児を 志賀津しがつの浦で 舟乗る様に》【船に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三九八)
百伝ももづたふ 八十やそ島廻しまみを 漕ぐ舟に 乗りにし心 忘れかねつも
 忘れんで わしの心に 乗った児を 八十島巡る 舟乗るみたい》【船に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三九九)
 あの児その気や 嬉しで嬉し)

たちばなの 島にしれば 川とほみ さらさずひし したごろも
《川とおの たちばな島に 住むよって さらしもせんで うた下衣ふくやで》【衣に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三一五)
(隠しとった児 とうとうろた)

佐保山を おほに見しかど  今見れば 山なつかしも 風吹くなゆめ
《佐保の山 気にもけんと 見とったが え山やんか 風吹き荒れな》【山に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三三三)
一寸ちょと見んうちに 綺麗きれなった)

我妹子わぎもこが やどの秋萩 花よりは 実になりてこそ 恋ひまさりけれ
《あの児いえ 庭の秋萩 花咲いて ぃに成ったら うなった》【花に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三六五)
(結ばれしたら 益々綺麗きれえ

つるはみの きぬは人みな ことなしと 言ひし時より しく思ほゆ
くぬぎふく 誰にもうで 無難ぶなんやと 聞いたでぐに となったがな》【衣に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三一一)
つるはみの あらきぬの あやしくも ことしき このゆふへかも
橡衣くぬぎふく ほどあろうて 草臥よれたんが 無性むしょうたいで なんや知らんが》【衣に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三一四)
おほろかに 我れし思はば したに着て なれにしきぬを 取りて着めやも
加減かげんに おもとったなら ふるして よれよれなった 下衣ふくまたんわ》【衣に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三一二)
(昔馴染なじみは 気遣きづからん)







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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(31)焼き足らねかも

2012年10月05日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年10月5日】

冬こもり 春の大野おほのを 焼く人は 焼きらねかも が心焼く



互い思いが 重なりうて
邪魔を退け 近づき出来た
交わすこと 甘味を帯びて
ごとまでに 心が通う

とりむ 雲梯うなてもりの 菅の根を きぬにかき付け 着せむ子もがも
《菅の根の みたいふこうに 心込め ふく着せくれる 可愛かわしな》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三四四)
(神さん頼む 大切だいじにするに)

磯の浦に 寄る白波 かへりつつ 過ぎかてなくは れにたゆたへ
《磯入江いりえ 来る白波は 重ね寄る 沖帰らんの 誰おもてやろ》【海に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三八九)
(近寄りたん お前思てや)

陸奥みちのくの 安達太良あだたら真弓まゆみ つる着けて 引かばか人の 我をことなさむ
安達太良あだたらの 弓につる着け 引いたなら 他人ひとこのわしに なんちゅうやろか》【弓に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三二九)
(皆のあこがれ められせんか)

冬こもり 春の大野おほのを 焼く人は 焼きらねかも が心焼く
《春の野で 野焼のやきする人 しりんで うちの胸まで 焼きがすんか》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三三六)
 罪な人やで あんたて人は)

近江あふみのや 八橋やばせ小竹しのを がずて まことありえむや 恋しきものを
八橋やばせしの 矢ぁにせんまま れんがな ほんま真っ直ぐ 矢に打って付け》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三五〇)
(気にったんは っとき出来ん)

はなはだも 降らぬあめゆゑ にはたづみ いたくな行きそ 人の知るべく
《そんな大量よけ りもせんのに 水たまり ザアザ流れな 聞こえるほどに》【雨に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三七〇)
たましかんに バタバタにな)

むかに 立てる桃の木 らむやと 人ぞささやく が心ゆめ
ぃ成らん 木や言う噂 気にしなや こうの峰の 桃の木さんよ》【木に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三五六)
(結ばれへんて うのん嘘や)




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巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編(30)我れ標(しめ)結(ゆ)ひつ

2012年10月02日 | 巻七(雑歌・比喩歌・挽歌)編
【掲載日:平成24年10月2日】

思ひあまり いたすべなみ たまたすき 畝傍うねびの山に 我れしめひつ


深海ふかみたまほど 情熱ちからが入る
 も取れんか しからばわしが

秋風は ぎてな吹きそ わたの底 沖なる玉を 手に巻くまでに
《秋の風 吹き続けるん ちょっと待ち うみそこ玉を だけでも》【玉に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三二七)
わたの底 沖つ白玉 よしをなみ つねかくのみや ひ渡りなむ
うみそこの 白玉たますべが いままで 続け欲し欲し おもてんのんや》【玉に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三二三)
深窓しんそう花に れたが運命さだめ
 警護まもり固いが どもならんのか)

高貴お方に あこがれしても
所詮しょせんこのうち 身分が違う
断念あきらめごころ 探してみるが
熱い情熱おもいが き上げくじ

み空行く 月読つくよみ壮士をとこ ゆふさらず 目には見れども 寄るよしもなし
《空を行く あのお月さん 毎晩に 見えてるけども 近づき出来できん》【月に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三七二)
あまくもに 近く光りて 鳴る神の 見ればかしこし 見ねば悲しも
《空の上 光りとどろく 雷か 見たら恐怖おとろし 見えんとさみし》【雷に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三六九)
 身分高過ぎ 近づけんがな)

いはたたみ かしこき山と 知りつつも れはふるか なみにあらなくに
立派ええ岩の とうとい山や 知っとって 恋して仕舞しもた ぶんわんのに》【山に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三三一)
いはが根の こごしき山に 入りめて 山なつかしみ でかてぬかも
《岩ごつて けわし山やに はいり込み なんか気にり 出ることできん》【山に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三三二)
奥山の 岩に苔し かしこけど 思ふ心を いかにかもせむ
《奥の山 苔蔓延はびこって こわいけど なんや行きとて どう仕様しょもないで》【山に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三三四)
 行こか戻ろか いや戻らんで)

世の中 ひょいと 間違い起こる
思いがけずに 乗るたま輿こし

思ひあまり いたすべなみ たまたすき 畝傍うねびの山に 我れしめひつ
《どう仕様しょうも 出来できんでわしは ひとめの しめ畝傍うねびの お山にうた》【山に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻七・一三三五)
 手ぇも届かん 思てた人と)



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