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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

憶良編(5)老男(およしを)はかくのみならし

2009年09月24日 | 憶良編
【掲載日:平成21年9月17日】

常磐ときはなす かくしもがもと 思へども
             世の事なれば とどみかねつも



我にかえった憶良
〔この歳になって なにを 青いこと 
 昔の夢を いつまで だかえているのか
 人の世を 渡ってきた者としての  老成の歌を うたってみねば・・・〕

世間よのなかの すべなきものは 年月は 流るる如し 
取りつつき 追ひるものは 百種ももくさに め寄りきた

《人の世なんて ままらん 月日経つのは あっゅう間
 苦労の種は 次々と》 
少女をとめらが 少女をとめざびすと からたまを 手本たもとかし 
同輩児よちこらと たづさはりて 遊びけむ 時の盛りを 
とどみかね すぐりつれ みなわた かぐろき髪に 何時いつか しもの降りけむ 
くれなゐおもての上に 何処いづくゆか しわきたりし
 
《若い少女むすめが 身を飾り 仲好し同士で たわむれる 年の盛りは またたく間
 緑の黒髪 白髪しらが生え 綺麗きれえな顔に しわ増える》
大夫ますらをの 男子をとこさびすと つるぎ太刀たち 腰に取りき 猟弓さつゆみを にぎり持ちて 
赤駒に くらうち置き はひ乗りて 遊びあるきし 世間よのなかや つねにありける
 
《男盛りを 自慢げに 刀を差して 弓持って 
 馬にまたがり 遊んでも そのまま過ごせる 訳やない》 
少女をとめらが さす板戸を 押し開き い辿たどりよりて 玉手たまでの 玉手さしへ 
の 幾許いくだもあられば
 
いをかけて 目当ての児 腕巻き抱いて 寝る夜は 長く続かん そのうちに》 
つかづゑ 腰にたがねて か行けば 人にいとはえ かく行けば 人ににくまえ 
老男およしをは かくのみならし たまきはる 命惜しけど せむすべも無し

《杖突きながら 腰曲げて 行く先々で 嫌われる 
 年取るうんは そんなこと 生きてる限り 仕様しょうがない》
                         ―山上憶良―〔巻五・八〇四〕 

常磐ときはなす かくしもがもと 思へども 世の事なれば とどみかねつも
《欲張って あれこれしたい おもうても これが世の中 あきらめなはれ》
                         ―山上憶良―〔巻五・八〇五〕 

そこには まだ 諦めきれない 憶良がいた 
                    〔嘉摩三部作の三〕