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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

「万葉歌みじかものがたり」へのお誘い

2009年06月16日 | 歴史編
【掲載日:平成21年6月16日】

「万葉集」
それは、私にとって、生涯の伴侶となりつつある。
在りし日、犬養孝先生の講義に感銘を受け、犬養万葉の虜になってから、半世紀。
しかし、学究の徒とはならず、受け身での一観賞者に過ぎない日々を過ごしてきた。
また、その内容も、趣味の域を出ることなく、気の向いたとき、時間のあるとき、名著「万葉の旅」のページを繰り、時には、手に携えての故地散策程度のものであった。
しかし、このようなスタンスは、一変する。
きっかけは、「万葉の旅」記載故地三〇九ヶ所の完全踏破であった。
故地散策を重ねているうち、次第に募る「欲」に取り憑かれた。
記載故地の全てを訪ねてみたい。同じ場所に立ちたい。同じ写真を撮りたい。同じ角度・同じアングルで。出来ることなら、同じ季節の・・・。
探索は、始まった。故地の場所探し、ルート設定、列車便・バス便探し、僻地での宿探し。なかでも最大の苦労は、現地での撮影位置の特定。五十年近い歳月がもたらす、風土故地の変貌が待ち受けていた。困難極まる道筋ではあった。特に、運転免許なしの絶滅危惧種人間にとっては・・・。
しかし、計画・出発・道程・位置特定の喜び・帰路の充実感・事後の整理、これらの『わくわく』は、全ての困難を凌駕するに十分であった。
そして、完全踏破。
次に来たのは、達成感と虚脱感。
虚脱感を埋める、つぎの「欲」が、頭をもたげる。
「犬養孝揮毫歌碑の全探訪」。これは、もう麻薬だ。
最新除幕を合わせると、一三七基。
全探訪達成。またまた襲い来る虚脱感。
こうした虚脱感のなか、私は、犬養先生の功績に、改めての思いを馳せていた。
先生の数ある功績のなか、特筆すべきは、象牙の塔の中にあった「万葉集」を大衆一般のものとし、幾万とも知れない「万葉ファン」を誕生させたこと、これに尽きよう。
現在、万葉集の魅力を知らしめる活動に邁進している方々は大勢おられ、成果を挙げておられることも確かである。
それにも拘わらず、「万葉集」は、またも遠い存在になりつつあるのも現実である。
犬養先生が、鬼籍に入られた今、「犬養万葉ファン」も、高齢化の一途をたどりつつある。
一般の人々、特に若い世代の人たちに、万葉集が身近なものとして、その魅力を感じてもらう方法はないものであろうか。
切れかけた麻薬、禁断症状が出る前に、次なる「モルヒネ」を打たねばならない。
ふたつの思いが出会ったとき、「万葉歌みじかものがたり」の構想が生まれた。
万葉歌の訳をやろう。万葉集に収められた歌数は、四五〇〇首余り。全訳まで行くとすれば・・・。麻薬の効きは一生涯のものとなる。
さて、もう一方の課題のためには、何が必要か。
「万葉集を身近なものとして・・・」「身近なもの」「みじかなもの」・・・「短か・・・」
そうだ、短編の物語風にした歌解釈。これだ!
物語にすることで、歌の詠まれた状況・時代を見ることができる。そうすることで、歌の理解は深まり、身近なものとなる。
歌の現代訳では、関西風のニュアンスを織り込もう。何といっても、万葉時代の中心地は関西。関西言葉がスタンダードであったことに、疑いはない。訳が、関西風であることに、なんの躊躇がいろうか。いや、むしろ関西風が『歌ごころ』を伝えるに最適ではなかろうか。
加えて、訳は、彩(いろどり)のない散文訳でなく・・・。韻文調で・・・。
そこから見えてくる、古代日本の景色、風土、人としての喜び・悲しみ、恋のせつなさ・歓喜、愛の姿。
こうして、歌ごころ関西訳つきの「万葉歌みじかものがたり」は、誕生した。
評価のほどは、読者の皆様に委ねよう。
ただ、この麻薬、思わぬ副作用がある。
「原文」→「訳」と読んで、「原文」に目を戻してみると、
「あれあれ不思議、難しいと思った古典原文が味わい深さを伴って解(わか)るではないか」
「原文」を、文法・古語辞典・古典教養なしで、味わえる。こんな「訳文」があったであろうか。
しかも、これが古典の学習に繋がる。
「訳」→「原文」→「古語解釈」→「文法」と、スムースに進める。「枕ことば」「序ことば」の役目も分かる。名づけて『逆読み学習法』。
ともあれ、「万葉歌みじかものがたり」により、万葉時代の歌人(うたびと)が、何を、どのように感じ、歌にし、人間関係を形作っていたのかまでが、歌の理解と共に見えてくる。
『文法いらず、辞書いらず、素養もいらずに、分かる万葉』の門戸は、いま、あなたの前に開かれています。
初心の方、生徒さん、学生さん、愛好家、指導者の方、老若男女を問いません。
「一億人のための万葉集」に、ようこそ。
どうぞ、ズイと奥まで、お入りください。