【掲載日:平成25年2月26日】
岩根踏み 夜道は行かじと 思へれど 妹によりては 忍びかねつも
妻問い男 黒髪思い
夜道辿って 門口至り
逸る思いで 待ち続けるが
思い届かず 野宿の朝か
ぬばたまの 黒髪敷きて 長き夜を 手枕の上に 妹待つらむか
《あぁお前 長いこの夜 待っとんか 独り枕に 黒髪靡かして》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六三一)
ぬばたまの 妹が黒髪 今夜もか 我がなき床に 靡けて寝らむ
《また今日も あの児黒髪 靡かして 寝てるんやろか わし居らんのに》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二五六四)
行かぬ我を 来むとか夜も 門閉さず あはれ我妹子 待ちつつあるらむ
《行かれんに あの児このわし 来るかなと 門も閉めんと 待っとんやろか》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二五九四)
岩根踏み 夜道は行かじと 思へれど 妹によりては 忍びかねつも
《岩を踏む 夜道止めとこ 思うけど あの児思たら 辛抱が出来ん》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二五九〇)
月夜よみ 妹に逢はむと 直道から 我れは来つれど 夜ぞ更けにける
《月良えで あの児に逢おと 近道で 早よ行こしたが 夜更けて仕舞た》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二六一八)
白栲の 我が衣手に 露は置き 妹は逢はさず たゆたひにして
《わしの袖 霜置いてるに まだ逢えん あの児あかんで 躊躇ろてからに》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六九〇)
奥山の 真木の板戸を 音早み 妹があたりの 霜の上に寝ぬ
《がっしりの 板戸軋んで よ開けんで 側の霜上 寝て仕舞たんや》【正述心緒】
―作者未詳―(巻十一・二六一六)
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