【掲載日:平成26年2月28日】
悪木山 木末ことごと 明日よりは 靡きてありこそ 妹があたり見む
あの山向こに 妻待つ我が家
馬よ急げや 早よ顔見たい
家待つ妻も 顔早よ見たい
急ぎ帰れよ 道真っ直ぐに
悪木山 木末ことごと 明日よりは 靡きてありこそ 妹があたり見む
《悪木山 梢全部 伏せてんか あの児辺りを わし見たいんで》
―作者未詳―(巻十二・三一五五)
(悪木山=筑紫野芦城山?)
いで我が駒 早く行きこそ 真土山 待つらむ妹を 行きて早見む
《さぁ馬よ 真土山越え 早よ急げ 待ってるあの児 早よ逢いたいに》
―作者未詳―(巻十二・三一五四)
鈴鹿川 八十瀬渡りて 誰がゆゑか 夜越えに越えむ 妻もあらなくに
《鈴鹿川 瀬ぇ多数渡り 誰のため 夜山道越えるか 妻居らんのに》
―作者未詳―(巻十二・三一五六)
(急ぐ自分へ問い掛け歌か?)
磐城山 直越え来ませ 磯崎の 許奴美の浜に 我れ立ち待たむ
《許奴美浜 うち待つよって 磐城山 真っ直ぐ越えて 帰って来てや》
―作者未詳―(巻十二・三一九五)
今に帰ると 便りは来たが
未だ帰らぬ 夫は何処だ
積もる不安の 心の裏で
もしや寄り道 疑心が過ぎる
熟田津に 舟乗りせむと 聞きしなへ 何ぞも君が 見え来ずあるらむ
《熟田津で 舟に乗る云て 聞いたのに あんたどしたか まだ帰らへん》
―作者未詳―(巻十二・三二〇二)
筑紫道の 荒磯の玉藻 刈るとかも 君が久しく 待てど来まさぬ
《長いこと あんた待つのに 帰らんな 筑紫荒磯で 玉藻ぉ刈っとんか》
―作者未詳―(巻十二・三二〇六)
(筑紫の藻ぉは さぞかしやろな)