令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

人麻呂歌集編(33)春立つらしも

2012年05月29日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月29日】

ひさかたの あま香具山かぐやま このゆふへ かすみたなびく 春立つらしも



春のぬくもり 気をあたためて
霞棚引き 春宵はるよい暮れる
茂る木の葉に ふるすぎえだ
明日香あすか山々 霞が隠す

ひさかたの あま香具山かぐやま このゆふへ かすみたなびく 春立つらしも
《香久山に 春の夕方 今まさに 霞なびいて 春来てるんや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八一二)
いにしへの 人のゑけむ 杉がに 霞たなびく 春はぬらし
い昔 誰かが植えた 古杉枝すぎえだに 霞なびくよ 春来たらしい》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八一四)
子らが手を 巻向山まきむくやまに 春されば しのぎて 霞たなびく
まきむくの 山に春来た 木ぃの葉を おおい尽くして 霞なびくよ》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八一五)
玉かぎる ゆふさり来れば 猟人さつひとの つきたけに 霞たなびく
薄明うすあかり 照る夕暮ゆうぐれが 近づくと つきたけに 霞がなびく》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八一六)
今朝けさ行きて 明日あすにはねと ひし子か 朝妻山あさづまやまに 霞たなびく
《帰っても また晩てと 朝妻つまの 朝妻山あさづまやまに 霞棚引く》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八一七)
                          (明日=一日は日没から始まると考えた=今晩)
子らが名に けのよろしき 朝妻あさづまの 片山かたやまきしに 霞たなびく
《聞いたなら いとしい思う 朝妻あさづまの 山の片岸 霞なびくよ》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八一八)



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人麻呂歌集編(32)春雨すらを

2012年05月25日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月25日】

あぶす 人もあれやも 家人いへびとの 春雨すらを 間使まつかひにする


その他諸々 ぞうの歌 季節風景 自然
人の営み む故に 気持伝える 歌もある

春が来たなら え立つ草木
山をいろどる 白つつじ花
 の芽吹きに そぼ降る雨は
 待つ人の 涙の雨か

 鷺坂での歌】
やましろの 久世くせ鷺坂さぎさか 神代かみよより 春はりつつ 秋は散りけり
《山城の 久世の鷺坂さぎさか 神代から 春は芽吹めぶくし 秋ぁ散らす》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一七〇七)
栲領巾たくひれの 鷺坂さぎさか山の 白つつじ 我れににほはに 妹に示さむ
鷺坂さぎさかの 山に咲いてる 白つつじ ふくに付いてや 妻見せるんで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一六九四)
                               (栲領巾=白栲の領巾→白い→白鷺)
白鳥しらとりの 鷺坂さぎさか山の 松蔭まつかげに 宿やどりて行かな けゆくを
鷺坂山さぎさかの 松の木陰こかげに 泊ろかな 夜もぼつぼつ けてくからに》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一六八七)
 名木川での歌】
ありきぬの つきてがに 杏人からひとの 浜を過ぐれば 恋しくありなり
《船きしに 寄せて漕いでや 杏人からひとの 浜の素通すどおり 悔しいよって》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一六八九)
                             (あり衣の→身に纏い付く→辺につきて)
衣手ころもでの 名木なぎ川辺かわへを 春雨はるさめに 我れ立ちると 家おもふらむか
名木なぎ川の 岸辺で春雨あめに 濡れてわし 悩むん家で 知ってるやろか》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一六九六)
家人いへびとの 使つかひにあらし 春雨の くれど我れを らさく思へば
 家からの 使いやろうか 春雨が 避けよ思ても 濡らしよんのは》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一六九七)
あぶす 人もあれやも 家人いへびとの 春雨すらを 間使まつかひにする
す人が らんに家人あいつ 春雨あめ使こて 様子見に来る 気にしてるんや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一六九八)
あぶす 人もあれやも ぎぬを いへにはらな 旅のしるしに
す人が らへんのんで 濡れたふく 家に送るわ 旅苦くろ分かるに》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一六八八)



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人麻呂歌集編(31)立てる白雲

2012年05月22日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月22日】

はしたての 倉橋山に 立てる白雲 
見まくり 我がするなへに 立てる白雲



逢い と思ても 逢われん人を
せめて 陰から チラとも見たい

【見つかんこわいが 見ないで居れん】
住吉すみのえの いでの浜の 柴な刈りそね
娘子をとめらが あかの裾の 濡れて行かむ見む

住吉すみのえの はましば 刈ったらあかん
 娘らの 濡れ行くすそ 隠れ見るんで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二七四)
港の 葦の末葉うらばを 誰れか手折たをりし 
我が背子が 振る手を見むと 我れぞ手折たをりし
 港ある 葦の葉先を 誰折ったんや
  あの人の 振る手見とうて うち折ったんや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八八)
【例え火の中 水中みずなか越えて】
あめにある 一つ棚橋たなはし いかにか行かむ 
若草の  妻がりと言はば 足飾りせむ
《天にある 板張り橋は ここにはいで
 逢い行くに 瀬渡り用の くつ用意せな》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三六一)
 一人行く旅 寂しゅう侘し】
あをみづら 依網よさみの原に 人も逢はぬかも 
いはばしる 近江県あふみあがたの 物語りせむ
依網よさみはら だれぞにひょいと 会われんもんか
  会えたなら 近江の国の 話するんで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八七)
えの見つけた 今夜も逢える】
高麗こまにしき ひも片方かたへぞ とこに落ちにける 
明日あすし なむと言はば 取り置きて待たむ
高麗こまにしき ひもの片っぽ とこ落ちてたで
 今晩こんばんに また来るなら 置いといたろか》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五六)
 ここであの人 馬休めんや】
この岡に 草刈る小子わらは なしか刈りそね 
ありつつも 君が来まさば 御馬みまくさにせむ
 なあ坊や ここの岡草 そんなに刈りな
 伸びてたら あの人来たら 馬餌うまえさするに》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九一)
 旅見る月に 顔映らんか】
あさづきの 日向ひむかの山に 月立てり見ゆ 
遠妻とほづまを 持ちたる人し 見つつしのはむ
 日ぃ暮れて 向かいの山に 出た月見える
 さとに 妻置く旅人ひとは 見てしのぶかな》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九四)
 逢いと思たら それそこ見えた】
はしたての 倉橋山に 立てる白雲 
見まくり 我がするなへに 立てる白雲
はしたての 倉橋山くらはしやまに 出た白雲しらくも
  出て欲しと 思てた時に 出た白雲や》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八二)



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いよいよ本になります!!

2012年05月19日 | 人麻呂歌集編
平成24年4月19日

万葉歌みじかものがたりが いよいよ本になります。
刊行は5月中旬~下旬です。
主要書店の店頭に並ぶ・・・はず・・・です。
見掛けられない場合は 出版元の「JDC出版」にお問い合わせ下さい。
全十巻構成で まずは第一巻「歴史編」がでます。
表紙は次のようです。



また 宣伝用のパンフレットの表と裏は それぞれ次のようです。
(裏は字が小さくて読みづらいですが 本を買って頂ければよく見えると思います)





人麻呂歌集編(30)笠にも編(あ)まぬ

2012年05月18日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月18日】

はしたての くらはしかはの 川のしづすげ
 我が刈りて 笠にもまぬ 川のしづすげ





思い通わぬ  恋路は辛い
けどもあきらめ 出来できんと嘆く

 男哀れや 諦め悪い】
うつくしと 我がいもは 早も死なぬか
 けりとも 我れに寄るべしと 人の言はなくに

いとしいと わしの思う児 早よ死なんかな
 生きてても わしに靡くん 滅多めったいんで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五五)
何せむに 命をもとな 長くりせむ
 けりとも いもに やすく逢はなくに

《何でまた 命ごにと 思うんやろか
 生きてても あの児に逢える 確証はず無いのんに》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五八)
 良えとこ行ったが 詰め甘かった】
はしたての くらはしかはの 川のしづすげ
 我が刈りて 笠にもまぬ 川のしづすげ

はしたての 倉橋川の かわしずすげ
 刈ったまま 笠まなんだ かわしずすげよ》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八四)
                       菅を刈る=契る 笠に編む=結婚する)
さかいなしの 恋路は損や】
うちひさす みやを行くに 我がれぬ
 玉のの 思ひ乱れて 家にあらましを
《逢いとうて 大通とおり行ったら ぉ破れたで
 つらいけど 家で待ったら かったやろか》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八〇)
他人ひと見られんと 風なら逢える】
いきに 我れは思へど 人目おほみこそ 
  吹く風に  あらばしばしば 逢ふべきものを
《命け うち思てるに 五月蝿うるそて逢えん
 もし風に 成れたとしたら 常時しょっちゅ逢えるに》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五九)
【小胸おどらせ 垣間見したに】
人の親 娘子児をとめごゑて もる山辺から 
 あさな かよひし君が ねば悲しも
《親が子を 守る守山もりやま あたりを通り
 朝たんび てたあんたが んのん悲し》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三六〇)
 恋の切り株 またまた芽吹く】
あられり 遠江とほつあふみの かはやなぎ 
 刈れども またもふといふ かはやなぎ
あられる 遠江とおつおおみの かわ
 刈ったかて またえるう かわ柳》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九三)
 負けてたまるか 年寄りするな】
はしたての 倉橋川くらはしかはの いはの橋はも 
 男盛をざかりに 我が渡りてし いはの橋はも
はしたての 倉橋川の あの石の橋
  若い時 わしも渡った あの石の橋》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八三)



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人麻呂歌集編(29)いかなる色に

2012年05月15日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月15日】

君がため ぢから疲れ 織れるころも
 春さらば いかなる色に りてばよけむ




知って欲しいが 知られんいや
聞いて欲し欲し 惚気のろけと自慢

 自慢するんか 気ィ引くためか】
大刀たちしり さや入野いりのに くず引く我妹わぎも
 そでもち 着せてむとかも 夏草るも

《わしのため 入野いりの葛蔓くずを 引いてるむすめ
 両袖ふたそでの ふく着せよして 刈るよ邪魔じゃま夏草くさ
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二七二)
 楽し嬉しも あんたの為や】
君がため ぢから疲れ 織れるころも
 春さらば いかなる色に りてばよけむ

《あんたため 精魂せいこん込めて ったふく
 春来たら 何色なにいろ染めよ あんたのために》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八一)
 秘密の場所や 大事にしとこ】
池のの 小槻をつきしたの 小竹しのな刈りそね
 それをだに 君が形見に 見つつしのはむ

《池のそば つきしたの しの刈りないな 
その場所は あの人偲ぶ よすがの場所や》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二七六)
あめにある 日売ひめ菅原すがはらの 草なりそね
 みなわた か黒き髪に あくたし付くも

何時いつも行く 姫菅原すがはらの 草刈らんとき
 共寝たときに あの児の髪が よごれるさかい》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二七七)
【離れんいやや あんた付いてこ】
あさの 君が足結あゆひを 濡らす露原
 早く起き でつつ我れも 裳裾もすそ濡らさな

《朝帰る あんたあしひも 露原つゆはら濡らす
 一緒いっしょ起き うちもち すそ濡らそ》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五七)
 こんなうちにも 良えとこあんや】
やましろの 久世くせ若子わくごが しと言ふ我れ
 あふさわに 我れをしと言ふ 山背の久世

《山城の 久世のぼんぼん うちよめして
 嘘ちゃうで うち欲しんや 久世のぼんぼん》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三六二)
 内緒内緒や 言うたらあかん】
わたの底 沖つ玉藻の 名告藻なのりその花
 妹とれと ここにしありと 名告藻なのりその花

海底うみそこの 沖の玉藻や 名告藻なのりそばな
 あの児わし 此処ここること 名告藻なのりそばなよ》
                         (な告りそ=言うたらあかん)
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九〇)
 主人自慢は 自分の自慢】
住吉すみのえの の君が うまのりごろも
 さひづらふ 漢女あやめゑて 縫へるころも

《仕えてる 旦那の 馬乗り服は
 先進せんしんの 渡来とらい女に 縫わせた服や》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二七三)



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人麻呂歌集編(28)奴(やっこ)かもなき

2012年05月11日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月11日】

住吉すみのえの 小田をだを刈らす子 やっこかもなき
 奴あれど 妹がみためと わたくし刈る





旋頭歌せどうか調子 五七七ごひちひち 更に続けて 五七七ごひちひち
 元は掛け合い 二人歌 一人二役 歌もある

単調仕事 節調子リズムが助く 
そこ で生まれた 旋頭歌音頭
はや揶揄からかい ちょっかい誘い
生活くらしに根付く 笑いの節調子リズム

上手じょうずしてるで 取りるためか】
住吉すみのえの 小田をだを刈らす子 やっこかもなき
 奴あれど 妹がみためと わたくし刈る

住吉すみのえの 田ぁ刈るあんた らんか下男げなん
 てるけど あの児のためや この手で刈るで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二七五)
年増としま女の 売り込み歌か】
春日はるひすら 田に立ちつかる 君は悲しも 若草の 妻なき君が 田に立ちつか
《休みでも 田ぁで働く あんた可哀想かわいそ 嫁はんが らんかあんた 田で働いて》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八五)
【婚儀の席の 新郎茶化ちゃかし?】
新室にひむろの かべくさ刈りに いましたまはね 草のごと 寄り合ふ娘子をとめは 君がまにまに
《新築の 壁にする草 刈りたどうや 草のに 寄り添う娘 思いのままよ》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五一)
新室にひむろを しづむ子が 手玉てだまらすも 玉のごと 照らせる君を 内にとまほ
《新築の 家しずめの 鈴鳴らしてる花嫁よ 「婿殿どうぞ」 申されなされ》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三五二)
 偉ろうなっても 人妻取るな】
やましろの 久世くせやしろの 草な手折たをりそ おのがと 立ち栄ゆとも 草な手折たをりそ
《山城の 久世のやしろの 草手折たおるなよ 出世して えろなったて 草手折たおるなよ》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八六)
めかこまして 誰待ってんや】
ばやしに せる鹿ししやも 求むるによき 白栲しろたへの 袖巻き上げて 鹿しし待つ我が
林中はやしなか む鹿獲るに 都合つごえのんか 良えふくの 袖たくしあげ 鹿待つあんた》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九二)

 まさか思うが 俺のんやろか】
なつかげの 妻屋つまやしたに きぬ我妹わぎも うらけて 我がためたば ややおほ
《夏木陰こかげ 妻屋つまやの中で 布切る娘 わしのため 切るんやったら 一寸ちょと小さいで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二七八)
【うまくおだてて 物するつもり?】
あづさゆみ 引津ひきつなる 名告藻なのりその花 むまでに 逢はずあらめやも 名告藻なのりその花
《お前ちゃん 引津の浜の 名告藻なのりそばなや 手付かずを わしも思う 名告藻なのりそばなや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二七九)
一寸ちょっと兄ちゃん ここ来て休み】
かきしに 犬呼び越して 鳥猟とがりする君 青山の 茂き山辺やまへに 馬休め君
《垣根越し 犬呼び出して 鷹狩かりするあんた 葉ぁ繁る 山のほとりで 休みやあんた》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二八九)



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人麻呂歌集編(27)天(あま)の川道(かはぢ)を

2012年05月08日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月8日】

大空おほそらゆ かよふ我れすら がゆゑに あま川道かはぢを なづみてぞ




【地上】きらめく星が 並んで見える

あまかは 水さへに照る 舟てて 舟なる人は いもと見えきや
《天の川 水にえてる 舟着いた 漕ぐ彦星ひと妻に 逢えたんやろか》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一九九六)

【天上】つか逢瀬おうせ 時こそまれ

大空おほそらゆ かよふ我れすら がゆゑに あま川道かはぢを なづみてぞ
《空自在じざい かよ彦星わしやが 逢いとうて 天の川え 難儀なぎして来たで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇一)
恋ひしくは 長きものを 今だにも ともしむべしや 逢ふべきだに
ごに 焦がれ待ったで さあ今や 心くまで この過ごそや》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一七)
万代よろづよに たづさはりて あひ見とも 思ひ過ぐべき こひにあらなくに
《ずううっと 一緒つなぎ ったかて それで気の済む 恋とちがうで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二四)

 【地上】夜は更けゆく 夜明けは間近

一年ひととせに 七日なぬかのみ 逢ふ人の 恋も過ぎねば けゆくも
一年いちねんに 七夕きょうよるしか 逢えん人 思尽くせんままに 夜更けてくで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇三二)

 【天上】夜明け近づく 尽くせぬ思い

遠妻とひづまと まくらへて 寝たる夜は とりな鳴き 明けば明けぬとも
《やっと逢え 手ぇからまして 共寝る夜は とりげて 明けんなら明け》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二一)
あひらく らねども いなのめの 明けさりにけり 船出ふなでせむ妻
《十分に 逢瀬おうせ尽くした えんけど よる明けて仕舞た 戻船ふね出さならん》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二二)
そめて 幾許いくだもあらねば 白栲しろたへの 帯ふべしや 恋も過ぎねば
とこいて まだもないに 帯付ける うたらあかん うちまだらん》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二三)

 【地上】夜明け無情に 白々明ける

が恋ふる 妹のみことは らに 袖振る見えつ 雲がくるまで
彦星ひこぼしよ いとしの妻は 袖振るよ 別れしいて 姿かげ消えるまで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇九)



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人麻呂歌集編(26)靡(なび)かふ見れば

2012年05月04日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月4日】

天のかは みづかげくさの 秋風に 靡かふ見れば 時はにけり




【天上】星のまたたき 湧きる思い
が恋ふる おもわ 今夕こよひもか 天の川原かはらに いはまくらまく
《恋い慕う あかっぺは 今宵こよいまた 川石いしを枕に 独寝てるんやろか》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇三)

【地上】助け出来できんか 空いけども
己夫おのづまに ともしき子らは てむ津の 荒磯ありそ巻きて寝む 君待ちかてに
恋夫こいづまに 滅多めった逢えん子 待ち兼ねて 磯まくらして 寝てるんやで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇四)

【天上】待った日近い 胸おど
が待ちし あきはぎ咲きぬ 今だにも にほひに行かな 彼方人をちかたびと
《待ちに待つ 秋萩咲いた もうじきに 逢いに行けるで 川向こうの人に》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一四)
天のかは みづかげくさの 秋風に 靡かふ見れば 時はにけり
《川水辺みずべ 草秋風に 靡いてる 逢える季節が とうと来たんや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一三)
長く 恋ふる心ゆ 秋風に いも聞こゆ ひも解き行かな
何時何時いついつと 恋待つ胸に 秋風かぜ運ぶ お前の声や さあ共寝に行くぞ》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一六)

【地上】さあ七夕きょうなった 見逃しならん
天の川 かぢおと聞こゆ 彦星ひこぼしと 織女たなばたつめと 今夜こよひ逢ふらしも
《天の川 楫音かじおとしてる 彦星ひこぼしと 織姫おりひめぼしが 今夜きょう逢うんやな》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二九)

 【天上】船は行く行く 荒波小波
我が背子せこに うら恋ひれば 天の川 夜船よふね漕ぐなる かじおと聞こゆ
《あんた待ち 恋し恋しと 思てたら 夜船よぶね漕ぐ梶 聞こえて来たで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一五)
天のかは 去年こぞの渡りで 移ろへば 川瀬を踏むに 夜ぞけにける
《天の川 今年流れが 変わったで 浅瀬探して よるけて仕舞た》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一八)
が恋を つまは知れるを行く船の 過ぎてべしや ことも告げなむ
《待つうちを 知ってるのんに 船くで なんでやねん 声掛けたいに》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一九九八)
天のかは 夜船よふねを漕ぎて けぬとも はむと思ふへや 袖へずあら
夜通よどおしに 船漕ぎ続け けても 逢わんでくか 共寝ないでくか》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二〇)



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人麻呂歌集編(25)安の渡りに

2012年05月01日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月1日】

天のかは やすわたりに 舟けて 秋立つ待つと いもげこそ


【天上】毎夜うかがう 川向こあた

白雲の 五百重いほへかくり とほくとも よひさらず見む いもがあたりは
《白雲が 隠し隠して 遠いけど 毎晩見るで お前とこ
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二六)
白玉しらたまの 五百いほつどひを きもみず 我れは寝かてぬ 逢はむ日待つ
《白玉の 多数ようけの飾り 付けたまま うち寝つけんわ 逢う日待ってて》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一二)

【地上】星がらめく 川岸こて

彦星ひこぼしは 嘆かす妻に ことだにも 告げにぞつる 見れば苦しみ
《彦星は 妻嘆くんを 可哀想かわいそと 言葉掛けよと 岸出て来てる》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇六)

【天上】声よ届くか こ岸までも

天の川 いむかひ立ちて こひしらに ことだに告げむ 妻問ふまでは
 川に向き 立って見てても 恋しだけ 言葉交わそや せめて逢うまで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一一)
天のかは やすわたりに 舟けて 秋立つ待つと いもげこそ
《天の川 安の渡し場 舟浮かし 秋待ってるて 織姫あのこに言うて》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇〇)
よしゑやし ただならずとも ぬえ鳥の うらりと 告げむ子もがも
《逢われんの 仕様しょうないのんで 恋しいて 嘆いとるて う子らんか》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇三一)
ぬばたまの 夜霧にこもり とほくとも いもが伝へは 早くげこそ
《夜霧出て 隠れとおうて 見えんけど 妻の言伝ことづて 早よ聞かしてや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇八)
秋されば 川霧立てる 天の川 川に向きて 恋ふるぞ多き
《秋来たら 霧立つ川に 向かいて 恋し思うて 過ごす夜いで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇三〇)

【地上】ああ待ちがれ 星消えかかる

久方の 天の川原かはらに ぬえ鳥の うらげましつ すべなきまでに
《天の川 川原待つ人 織姫おりひめは 嘆きしおれて いたわしほどや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一九九七)



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