【掲載日:平成24年10月19日】
我が背子を 何処行かめと さき竹の 背向に寝しく 今し悔しも
生きて居りゃこそ 仲良うできる
後で悔やむは 甲斐なき仕業
玉は砕ける 花散り枯れる
独り寝明ける まんじり無しに
幸はひの いかなる人か 黒髪の 白くなるまで 妹が声を聞く
《どんなにか 幸せやろな 黒い髪 白成るまでも 妹声聞ける人》
―作者未詳―(巻七・一四一一)
我が背子を 何処行かめと さき竹の 背向に寝しく 今し悔しも
《あの人は 何処も行かへん 思い込み 背ぇ向け寝たん 悔やまれるがな》
―作者未詳―(巻七・一四一二)
庭つ鳥 鶏の垂り尾の 乱れ尾の 長き心も 思ほえぬかも
《鶏の 長うに伸びた 尾ぉみたい のんびり気持ち うちようならん》
―作者未詳―(巻七・一四一三)
薦枕 相枕きし子も あらばこそ 夜の更くらくも 我が惜しみせめ
《薦枕 して寝たあの児 居るんなら 夜の更けるん 惜し思うのに》
―作者未詳―(巻七・一四一四)
玉梓の 妹は玉かも あしひきの 清き山辺に 撒けば散りぬる
《あぁあの児 玉やったんか 灰にして 山で撒いたら 散って仕舞たで》
―作者未詳―(巻七・一四一五)
玉梓の 妹は花かも あしひきの この山蔭に 撒けば失せぬる
《あぁあの児 花やったんか 灰にして 山で撒いたら 消えて仕舞たで》
―作者未詳―(巻七・一四一六)
名児の海を 朝漕ぎ来れば 海中に 鹿子ぞ鳴くなる あはれその鹿子
《名児海を 朝漕いでくと 海の上 鹿鳴いとるで あぁあの昔鹿も(遠い昔に 死んで仕舞たんや)》
―作者未詳―(巻七・一四一七)
【昔の鹿のものがたり】
昔刀我野に 棲む番鹿
牡鹿通うよ 淡路の野島
待つは年若 側妻の雌鹿
ある夜夢見た 牡鹿が問うた
「背中に雪積み 薄が生えた」
聞いた妻鹿 占のて答う
「薄生えるは 射られし矢ぞよ
雪の積もるは 塩漬け運命
海を渡れば 猟師に射られ
塩漬け肉に されるが前兆」
妻鹿の諌めに 聞く耳持たず
牡鹿野島へ 海へと渡る
待つは釣船 矢番え猟師
夜明け静寂に 鹿子鳴く声が
(摂津国風土記逸文より)
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