【掲載日:平成25年8月27日】
白真弓 斐太の細江の 菅鳥の 妹に恋ふれか 寝を寝かねつる
浅い恋焦れは 救いがあるよ
恋し寝付けん 伝えて焦がれ
口吐き出るは あの人名前
忘れ草にも 愚痴言て嘆く
恋衣 着奈良の山に 鳴く鳥の 間なく時なし 我が恋ふらくは
《奈良山で ひっきりなしの 鳥の声 間なし止まんで わし焦がれんは》【鳥に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇八八)
白真弓 斐太の細江の 菅鳥の 妹に恋ふれか 寝を寝かねつる
《番仲 良え鴛鴦を 見とったら お前恋して わし寝付けんが》【鳥に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇九二)
妹が目を 見まく堀江の さざれ波 しきて恋ひつつ ありと告げこそ
《逢いとうて 堀江さざ波 寄せる様に 焦がれ頻りと あの児に言うて》【海に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇二四)
(見まく欲り→堀江)
(波がしく=重なり来る→しきて<頻り>)
との曇り 雨布留川の さざれ波 間なくも君は 思ほゆるかも
《雨降りの 布留のさざ波 絶え間ない あんた思うん うちも間なしや》【川に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇一二)
ま菅よし 宗我の川原に 鳴く千鳥 間なし我が背子 我が恋ふらくは
《宗我川原 鳴く千鳥やで 間ぁ無しや あんた恋して うち焦がれんは》【鳥に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇八七)
玉襷 懸けねば苦し 懸けたれば 継ぎて見まくの 欲しき君かも
《呟きを せんと辛いが 口すると 余計逢いとなる あんたさんやで》【襷に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九九二)
(襷を懸ける→<名前を口に>懸ける)
忘れ草 垣もしみみに 植ゑたれど 醜の醜草 なほ恋ひにけり
《忘れ草 垣に仰山 植えたけど 役立たず草 恋止まへんわ》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇六二)
大崎の 荒磯の渡り 延ふ葛の 行方もなくや 恋ひ渡りなむ
《葛蔓 伸び先どっち この恋の 続く焦がれは 何処向かうんか》【葛に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇七二)