【掲載日:平成25年10月29日】
石上 布留の高橋 高々に 妹が待つらむ 夜ぞ更けにける
逢うの待つんは 辛ろても嬉し
夜が更けても 待つ児が居れば
髪に霜置き 庭出て待つも
逢瀬叶えば 至福が待つよ
あしひきの 山より出づる 月待つと 人には言ひて 妹待つ我れを
《山に出る 月待ってるて 人に言て あの児待ってる わしなんやけど》【月に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇〇二)
石上 布留の高橋 高々に 妹が待つらむ 夜ぞ更けにける
《布留川に 架かる高橋 背伸びして あの児待つのに 夜ぉ更けて仕舞た》【橋に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九九七)
あしひきの 山を木高み 夕月を 何時かと君を 待つが苦しさ
《山繁り 遅い月の出 待つみたい 何時か何時かと 待つん辛いで》【月に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇〇八)
君待つと 庭のみ居れば うち靡く 我が黒髪に 霜ぞ置きにける
《あんた待ち 庭出てずっと 居ったんで うちの黒髪 霜置いて仕舞た》【霜に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四四)
君待つと 庭のみ居れば 白栲の 我が衣手に 露ぞ置きにける
《あんた待ち 庭出てずっと 居ったんで うちの袖口 露置いて仕舞た》【露霜に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四四 或る本)
わたつみの 沖つ玉藻の 靡き寝む 早来ませ君 待たば苦しも
《靡き藻の 寄り添て一緒 共寝たいんで あんた早よ来て 待つのん辛い》【藻に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇七九)
露霜の 消やすき我が身 老いぬとも また若ちかへり 君をし待たむ
《露みたい 消える身やけど 年齢食ても また若こなって あんた待つと仕様》【露霜に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四三)