【掲載日:平成23年8月12日】
新しき 年の初めは 弥年に 雪踏み平し 常かくにもが
書持の 夢での 歌批評
家持は 詠う喜び 感じていた
(そうじゃ 歌は 楽しむもの
上手くなろう
先人に 追いつこう
などと 思うては ならぬのじゃ
これこそ 歌が宿しおる心
歌と遊ぶ
これじゃ これ
やはり 書持 歌の師じゃ)
天平勝宝二年(750)暮から 翌年初め
雪の日が続く
【十二月】雪の日
この雪の 消残る時に いざ行かな 山橘の 実の照るも見む
《この雪が 消え斑なる 時分来たら 橘実照るん 見に行こかいな》
―大伴家持―(巻十九・四二二六)
【正月二日】守館での宴 時に雪四尺
新しき 年の初めは 弥年に 雪踏み平し 常かくにもが
《瑞兆の 雪踏み固め 新年に 集う宴を 毎年したい》
―大伴家持―(巻十九・四二二九)
【正月三日】介内蔵縄麻呂館の宴
降る雪を 腰になづみて 参り来し 験もあるか 年の初に
《積る雪 腰で掻き分け 来た甲斐が ある云うもんや 初春らしな》
―大伴家持―(巻十九・四二三〇)
積もりし雪を 固め積んで
白い巌の 彫刻にして
なでしこ花を 布もて作り
趣深く 飾りし庭に
なでしこは 秋咲くものを 君が家の 雪の巌に 咲けりけるかも
《撫子は 秋に咲くのに この庭の 雪積み岩の 上で咲いとる》
―久米広縄―(巻十九・四二三一)
雪の山斎 巌に植ゑたる なでしこは 千世に咲かぬか 君が插頭しに
《雪の庭 雪岩植えた 撫子は 守殿の髪で ずっと咲くかな》
―遊行女婦蒲生―(巻十九・四二三二)
うち羽振き 鶏は鳴くとも かくばかり 降り敷く雪に 君いまさめやも
《羽ばたいて 鶏が鳴いても こないにも 雪積ってて 帰れまへんで》
―内蔵縄麻呂―(巻十九・四二三三)
鳴く鶏は いやしき鳴けど 降る雪の 千重に積めこそ 我が立ちかてね
《鶏鳴いた また鳴いたけど 山ほどに 雪積ったで 腰上げられん》
―大伴家持―(巻十九・四二三四)