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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

蟲麻呂編(15)似ては鳴かず

2009年09月29日 | 蟲麻呂編
【掲載日:平成21年10月30日】

うぐひす生卵かひこの中に 霍公鳥ほととぎす ひとり生まれて
      が父に ては鳴かず が母に 似ては鳴かず



虫麻呂は  老境を迎えていた
独り暮らしが  身に付いている

常陸 
真間 
周淮すえ
筑波嶺 
竜田 
河内の大橋・・・ 
宇合うまかい様も いまは ない
桜が  好きで あられた
そうか  あの方も きっと・・・

「心任せにきよ」との おおせ 
今も  耳にある
伝承集めも  思うに任せて
もう  何も いらぬ
さしずめ わしの生きざま 霍公鳥ほととぎすのようじゃった

うぐひす生卵かひこの中に 霍公鳥ほととぎす ひとり生まれて 
が父に ては鳴かず が母に 似ては鳴かず

《鶯の 卵にじり 霍公鳥ほととぎす 生まれてみたが 独りぼち
 鳴き声父に  似て居らん 母の声にも 似とらへん》
の花の 咲きたる野辺のへゆ 飛びかけり 鳴きとよもし
たちばなの 花を散らし 終日ひねもすに 鳴けど聞きよし 
まひはせむ とほくな行きそ わが屋戸やどの 花橘に 住み渡れ烏

《卯の花咲いてる 野原飛び たちばなはなを 散らし鳴く
 ほんまええ声 礼するで 何処どこも行かんと うちの庭 はなたちばなに 住んどくれ》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五五〕 

かきらし 雨の降るを 霍公鳥ほととぎす 鳴きて行くなり あはれその鳥
霍公鳥ほととぎす 霧雨きりさめ降る 鳴いてった 住んで欲しいと 頼んでみたに》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一七五六 

ハハハ  逃げよったか
せっかく  独りぼっち同士 慰め合おう思ったに
『テッペンカケタカ 迷惑めいわく至極しごく
テンペンカケタカ  お構いなしに』
と鳴いて  行ってしまいよった
わしが  お前でも そうしたであろう
関わりごとは うとましいからのう

霧雨きりさめが 音もなく 草屋そうおくを濡らしていた