【掲載日:平成25年5月31日】
里人も 語り継ぐがね よしゑやし 恋ひても死なむ 誰が名ならめや
思い合うても 逢えんの辛い
まして通じん 尚更辛い
日がな一日 待ち暮らし為て
眉毛痒いが 一向に来んわ
立ちて居て 術のたどきも 今は無し 妹に逢はずて 月の経ゆけば
《いらつくで 手段手掛かり なにも無て おまえ逢えんで 日ィだけ経つん》
―作者未詳―(巻十二・二八八一)
今は我は 死なむよ我妹 逢はずして 思ひ渡れば 安けくもなし
《あぁお前 わしもう死ぬわ 逢われんで 思い焦がれて どう仕様も無うて》
―作者未詳―(巻十二・二八六九)
里人も 語り継ぐがね よしゑやし 恋ひても死なむ 誰が名ならめや
《ええいもう 焦がれ死んだる 里人に 悪言われんは 誰やろかいな》
―作者未詳―(巻十二・二八七三)
恋ひつつも 今日はあらめど 玉櫛笥 明けなむ明日を いかに暮らさむ
《恋い焦がれ 今日は何とか 過ごしたが また来る明日 どしたら良んや》
―作者未詳―(巻十二・二八八四)
世の中の 人のことばと 思ほすな まことぞ恋ひし 逢はぬ日を多み
《ありきたり 言うてん違うで ほんまうち 焦がれてるんや 逢えん日多て》
―作者未詳―(巻十二・二八八八)
逢はずして 恋ひ渡るとも 忘れめや いや日に異には 思ひ増すとも
《逢わへんで 焦がれ続くが 忘れへん 逆に日増しに 思いは増すで》
―作者未詳―(巻十二・二八八二)
いとのきて 薄き眉根を 徒に 掻かしめつつも 逢はぬ人かも
《この薄い 眉を甲斐無う 掻かさして あんた一向に 逢おとせんがな》
―作者未詳―(巻十二・二九〇三)
(眉が痒い=逢える前兆)