【掲載日:平成26年3月14日】
うち靡く 春さり来れば 小竹の末に 尾羽打ち触れて 鴬鳴くも
巻十収む 歌の数 百が五つと 三十九
人麻呂歌集を 除いても 百が四つと 七十一
その構成は 如何ならん 春夏秋冬 四季の歌
季節風物 詠み込みし 雑歌 相聞 歌競い
春の雑歌は 華やかで 木々の双璧 梅柳
春降る雪に 霞・月 鳥は鶯 花桜
春の訪れ 告げるは誰か
春告げ鳥の 鶯然り
梅に柳に 飛び懸け巡り
鳴く声聞けば 春心は躍る
うち靡く 春立ちぬらし 我が門の 柳の末に 鴬鳴きつ
《門先の 柳の枝で 鶯の 鳴き声しとる 春来たらしな》
―作者未詳―(巻十・一八一九)
冬こもり 春さり来れば あしひきの 山にも野にも 鴬鳴くも
《冬去って 春が来たんで 鶯が 山でも野でも 囀り鳴くよ》
―作者未詳―(巻十・一八二四)
紫草の 根延ふ横野の 春野には 君を懸けつつ 鴬鳴くも
《春来たら 鶯鳴くよ 横野原 まるであんたに 聞かせたい様に》
―作者未詳―(巻十・一八二五)
春されば 妻を求むと 鴬の 木末を伝ひ 鳴きつつもとな
《春来たら 連れ欲し云うて 鶯が 梢伝うて やたら鳴いとる》
―作者未詳―(巻十・一八二六)
うち靡く 春さり来れば 小竹の末に 尾羽打ち触れて 鴬鳴くも
《春来たら 篠の梢に 尻っぽ羽根 振り触れさして 鶯鳴くよ》
―作者未詳―(巻十・一八三〇)
春霞 流るるなへに 青柳の 枝くひ持ちて 鴬鳴くも
《春霞 流れとる時 嘴に 柳枝咥えて 鶯鳴くよ》
―作者未詳―(巻十・一八二一)
梓弓 春山近く 家居れば 継ぎて聞くらむ 鴬の声
《春が来て 山近か家に 居てはると 鶯の声 聞き続けかな》
―作者未詳―(巻十・一八二九)
梅の花 咲ける岡辺に 家居れば 乏しくもあらず 鴬の声
《梅花が 咲いてる岡の 家居ると 聞き放題や 鶯の声》
―作者未詳―(巻十・一八二〇)