【掲載日:平成24年8月31日】
道の辺の 草深百合の 花笑みに 笑みしがからに 妻と言ふべしや
誘いの歌に 拒絶の歌に
後朝別れ 引き留め歌に
夫浮気の 詰りの歌に
果ては歌垣 しくじり歌に
【時に臨みて】
佐伯山 卯の花持ちし 愛しきが 手をし取りてば 花は散るとも
《佐伯山 卯の花持つ児 良え児やで 手ぇ繋ごかな 花散るやろが》
―古歌集―(巻七・一二五九)
時ならぬ 斑の衣 着欲しきか 島の榛原 時にあらねども
《時期違うが 斑染め衣 着てみたい 榛の木実時 違うんやけど》
―古歌集―(巻七・一二六〇)
(まだ若い おぼこの児やが まあ良とするか)
道の辺の 草深百合の 花笑みに 笑みしがからに 妻と言ふべしや
《うちちょっと 百合花みたい 微笑たけど その気なりなや あつかましいに》
―古歌集―(巻七・一二五七)
月草に 衣ぞ染むる 君がため 斑の衣 摺らむと思ひて
《露草で 衣染めてんや あんたにと 斑染め衣 作ろと思もて》
―古歌集―(巻七・一二五五)
春霞 井の上ゆ直に 道はあれど 君に逢はむと た廻り来も
《湧水場 家から真直ぐの 道あるが あんた逢いとて 遠回で来た》
―古歌集―(巻七・一二五六)
暁と 夜烏鳴けど この岡の 木末の上は いまだ静けし
《夜明けすぐと 夜鴉鳴くが 山の上 梢静かや 夜明けまだやで―もう一寸居ろ―》
―古歌集―(巻七・一二六三)
黙あらじと 言の慰に 言ふことを 聞き知れらくは 悪しくはありけり
《気まずいと 思もて慰め 言うのんを 分かって聞くん 辛いもんやで》
―古歌集―(巻七・一二五八)
山守の 里へ通ひし 山道ぞ 茂くなりける 忘れけらしも
《山守が 里通とった 山道は 偉ろ繁ったで 道忘れたらしな》
―古歌集―(巻七・一二六一)
(よう来てた あの人来んと 長なって仕舞た)
あしひきの 山椿咲く 八つ峰越え 鹿待つ君が 斎ひ妻かも
《椿咲く 峰々越えて 鹿を待つ あんたのうちは 飾りの妻か》
―古歌集―(巻七・一二六二)
(狩りや言て よう出掛けるが 嘘違うやろか)
西の市に ただ独り出でて 目並べず 買ひてし絹の 商じこりかも
《西の市 一人出掛けて 買うた絹 見比べせんで 買い損このたで》
―古歌集―(巻七・一二六四)
(歌垣で 見込み違ごたで 良女思うたに)
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