【掲載日:平成25年9月10日】
かく恋ひむ ものと知りせば 夕置きて 朝は消ぬる 露ならましを
深い恋焦れは 女も辛い
いっそ露なり 儚う消えよ
焦がれ消える日 月消える日や
止まん焦がれは 死ぬまでずっと
み狩りする 雁羽の小野の 櫟柴の 馴れはまさらず 恋こそまされ
《雁羽小野 櫟の柴木の 馴れる云う 馴れ(親しみ)は増えんと 焦がれが増える》【櫟に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四八)
(櫟柴=ナラ→ナレ=馴れ)
み吉野の 秋津の小野に 刈る草の 思ひ乱れて 寝る夜しぞ多き
《秋津小野 刈ると乱れる 萱草みたい 心乱れて 寝る夜多いんや》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇六五)
朝霜の 消ぬべくのみや 時なしに 思ひわたらむ 息の緒にして
《霜みたい 消える思いで 絶え間無に 恋続けんか 息絶え絶えで》【霜に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四五)
かく恋ひむ ものと知りせば 夕置きて 朝は消ぬる 露ならましを
《こんなにも 焦がれすんなら いっそこと 露で居ったら 良かった思う》【露霜に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇三八)
久方の 天つみ空に 照る月の 失せなむ日こそ 我が恋止まめ
《うちの恋 鎮まりするん 大空に 照る月消えて 無うなる日やで》【月に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇〇四)
妹待つと 御笠の山の 山菅の 止まずや恋ひむ 命死なずは
《この恋は 御笠山菅 止まんまま 焦がれんかいな 死ぬまでずっと》【菅に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇六六)
(妹を待って窺い見る→ミ笠)(山菅→止まず)
山菅の 止まずて君を 思へかも 我が心どの この頃は無き
《山菅の ずっとあんたを 思い詰め うちの心は もう死んでるわ》【菅に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五五)
恋ふること まされる今は 玉の緒の 絶えて乱れて 死ぬべく思ほゆ
《ここへ来て 焦がれ募って 堪らんで 心乱れて 死に相やうちは》【玉に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇八三)