令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

人麻呂歌集編(05)恋ひぬ前(さき)にも

2012年01月31日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月31日】

何せむに 命ぎけむ
        我妹子わぎもこに 恋ひぬさきにも 死なましものを




かよわん この恋は
          消えてしまえよ  この世から

実り の恋が ある一方で
実らん 恋は 苦して辛い
届かん思い かかえて独り
何時いつまで続く むなしの日々よ

玉桙たまほこの 道行かずあらば ねもころの かかる恋には 逢はざらましを
《あの道を 歩かなんだら こんなにも くるし恋には 逢わんかったに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九三)
かくばかり  恋ひむものぞと 知らませば 遠くも見べく ありけるものを
《こんなにも 焦がれくるしん 知ってたら 知らん顔して っといたのに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七二)
かくのみし 恋ひや渡らむ たまきはる 命も知らず 年はにつつ
《こんなにも 焦がれ続けて もう命 どうでもえと 思う日々やで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七四)
何せむに 命ぎけむ 我妹子わぎもこに 恋ひぬさきにも 死なましものを
 何でまた ここまで生きて 来たんやろ あの児知る前 死んだよかった》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七七)
恋ひ死なば 恋ひも死ねとや 玉桙たまほこの 道行く人の ことも告げなく
《恋しいて 死ぬなら死ねて うんかい 道行く人は 知らん顔やで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七〇)
こひするに しにするものに あらませば が身は千度ちたび にかへらまし
《恋したら 苦しみ死ぬと うんなら うち千遍せんべんも 死んで仕舞しもてる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九〇)
恋ひ死なば 恋ひも死ねとか 我妹子わぎもこが 我家わぎへかどを 過ぎて行くらむ
《苦しいて 恋ぐるいして 死ねんか あの児この家 素通すどおりしてく》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇一)
我れゆのち まれむ人は 我が如く こひする道に ひこすなゆめ
《これからに まれる人 わしみたい くるこいみち 歩かんときや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七五)


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人麻呂歌集編(04)紐解き開(あ)けし

2012年01月27日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月27日】

垣ほなす 人は言へども
        高麗こまにしき 紐けし 君ならなくに




二人うても 世の中は しがらみ多て 恋苦し

一緒 居たいが 逢われん日には
せめて 夢でと お互い思う
夢出てんと がれが募る
恋焦こが先途せんどで 寝付きも出来でき

うつつには ただには逢はずいめにだに 逢ふと見えこそ が恋ふらくに
じか逢えん せめて夢でも その顔を 見せて欲しんや がれとんので》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五〇)
が心 すべもなし 新夜あらたよの 一夜ひとよもおちず いめに見えこそ
《この気持 どしたらほぐれ 出来るやろ 来る来る夜に 夢てや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四二)
我妹子わぎもこに 恋ひすべながり いめに見むと れは思へど ねらえなくに
《恋しいて たまらんよって 夢見よと 思て寝たけど られはせんが》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一二)
ぬばたまの そのいめにをし 見え継ぐや 袖る日なく れは恋ふるを
《夢の中 うち出続けて おるやろか 袖乾かわく間無しに 焦がれてるんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四九)

内緒 の恋は その内知れる
隠し隠す が 噂は千里
やっかみ連れて 中傷うわさしき
世間五月蝿うるそて 逢瀬おうせがならん

垣ほなす 人は言へども 高麗こまにしき 紐けし 君ならなくに
仰山ぎょうさんに うわさされるが あの人と まだ帯いて うち共寝とらんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇五)
たまきはる までと定め たのみたる 君によりてし ことしげけく
《あんたをば 命限りに 頼り仕様しょと 決めたうちやに 五月蝿うるさいこっちゃ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九八)
しましくも 見ぬばこほしき 我妹子わぎもこを れば ことの繁けく
一寸間ちょっとまも 見んと恋しい 可愛い児に 毎日たら 五月蝿うるさいこっちゃ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九七)
ただに逢はず あるはうべなり いめにだに 何しか人の ことの繁けむ
五月蝿うるそうて じかに逢えんの 仕様しょうないが なんで夢まで 他人ひと五月蝿うるさいや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四八)


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人麻呂歌集編(03)その名は告(の)らじ

2012年01月24日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月24日】

百積ももさかの 船かくり入る 八占やうらさし
           母は問ふとも その名はらじ




結ばれ恋は 有頂天うちょうてん
          二人 の他は 見えやせん


実った 恋は 離してなるか
逢う たが最後 死ぬまで一緒
この 世は全て 二人のためよ
怖いものとて なんにもないぞ

百積ももさかの 船かくり入る 八占やうらさし 母は問ふとも その名はらじ
《八方で 占いしたり 詰問いたかて おかんに名前 うち言わへんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇七)
                          (百積の船隠り入る=百石積みの船が入る浦→占)
思ひ寄り 見ては寄りにし ものにあれば 一日ひとひほども 忘れて思へや
《見てれて うてまた惚れ したお前 一日いちにちたりと 忘れてへんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇四)
玉かぎる 昨日きのふゆふへ 見しものを 今日けふあしたに 恋ふべきものか
昨日きのうばん うたとこやに 朝来たら なんでなんやろ またまた恋し》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九一)
なかなかに 見ずあらましを あひてゆ こほしき心 まして思ほゆ
《逢われんで 恋し思てた 時よりも 逢うたそのあと 余計よけ恋しがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九二)
ならべば 人知りぬべし 今日けふの日は 千年ちとせのごとも ありこせぬかも
《毎日は みなに知れるで 今日の日が 千年分も 続かんやろか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八七)
ゆゑもなく 我が下紐したびもを けしめて 人にな知らせ ただに逢ふまでに
《うちの下紐ひも ほどかすなんて 悪い人 内緒ときや 逢えんなるで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一三)
                          (相手が思ってくれてる→下紐が解ける) 
ぬばたまの  この夜な明けそ 赤らひく 朝行く君を 待たば苦しも
《このよるは 明けて欲しない 明日あした朝 帰して仕舞たら 待つんつらいが》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八九)
我が背子せこが 朝明あさけの姿 よく見ずて 今日けふあひだを 恋ひ暮らすかも
《朝帰る あんたの姿 う見んと 一日いちにち焦がれ 暮らすんやろか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四一)
あらたまの 年は果つれど 敷栲しきたへの 袖へし子を 忘れて思へや
《年暮れる けど忘れんで この年を 初めて共寝たん 今年やさかい》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一〇)


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人麻呂歌集編(02)夕かたまけて

2012年01月20日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月20日】

何時いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども
            ゆふかたけて 恋ひはすべなし




初恋うぶこい過ぎて 目覚めざめたら 一緒る児が 欲しゅうなる

 に目覚めて 焦がれる時は
何をてても あの児が浮かぶ
人目忍んで かようてみるが
思案 思案で 逢えずに帰る

このころの らえぬは 敷栲しきたへの 手枕たまくらまきて 寝まくりこそ
《このところ う寝られんの 夜来ると お前と共寝たい 思てるからや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四四)
何時いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども ゆふかたけて 恋ひはすべなし
何時いつ言うて 焦がれむ時 いけども 特に夕暮れ 恋してならん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七三)
忘るやと 物語ものがたりして 心り ぐせど過ぎず なほ恋ひにけり
《忘れと おしゃべりごとで まぎらし してもし切れん 余計よけ恋しなる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四五)
人のる 味寝うまいずて しきやし 君が目すらを りし嘆かむ
《皆してる 共寝ともねもせんで 可愛い児に せめて一目と せつい恋や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三六九)
恋ふること 慰めかねて でて行けば 山を川をも 知らずにけり
恋苦くるしいの 抑え出けんで 出てきたが 無我の夢中むちゅうで ここ来て仕舞しもた》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一四)
行き行きて 逢はぬいもゆゑ ひさかたの あめつゆしもに 濡れにけるかも
夜通よどおしに あの児逢いとて 歩きめ 夜明けの露に 濡れて仕舞しもたで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九五)
君に恋ひ うらぶれれば くやしくも 我が下紐したびもの ふ手いたづらに
《恋しいて しょぼくれてるに ええいもう 下紐結むすぶこの手が もつれてならん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇九)
うつくしと いもを 人皆の 行くごと見めや 手に巻かずして
《可愛いなと 思うお前に 知らん顔 して行けるかい 共寝ともねもせんと》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四三)
赤らひく 肌も触れずて ぬれども 心をには 我が思はなくに
《気かいで まだ肌合わし 共寝とらんが ろてる訳と ちゃうんやからな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九九)


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人麻呂歌集編(01)我が思(も)ふ君は

2012年01月17日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月17日】

うち日さす 宮道みやぢを人は 満ち行けど
             ふ君は ただ一人のみ




巻の七から 十二まで まれし巻の そこここに
人麻呂歌集 数多あまたある 歌の習いに よとてか
いにしえ歌の お手本を 先に並べた 編み姿
そぞろ歩きに 巻々まきまきで 拾い探して 集めみた

人麻呂歌集 歌かたち 短歌多くて 三百余 
 に旋頭歌 三十五 長歌も少し 含まれる
歌の題材 豊かにて 正述せいじゅつ心緒しんしょ 比喩ひゆの歌
寄物陳思きぶつちんしに 相門歌そうもんか 七夕たなばた多て 三十九
問答うたに りょの歌 はるあきふゆの ぞうの歌

正述せいじゅつ心緒しんしょ 何物ぞ ただ心緒おもいを 述べるとは
心思いを 直接に 物に寄せずに うたう歌


ただの心の 代表は 言わずもがなの 恋の歌

先ずの手始め うぶうた集め
心思うが 口にはせん
垣間見た だけ 心は弾む
清ら な思い あの児に届け

うち日さす 宮道みやぢを人は 満ち行けど ふ君は ただ一人のみ
《大通り 人仰山ぎょうさんに 通るけど うち思うは 一人だけやで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八二)
垂乳根たらちねの 母が手はなれ かくばかり すべなきことは いまだせなくに
かあちゃんの 手元離れて うちこんな ない気ぃ もう初めてや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三六八)
白栲しろたへの 袖をはつはつ 見しからに かかるこひをも れはするかも
《白い袖 ほんのちょっぴり 見ただけで こんな切無せつない 恋するなんて》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一一)
朝影に が身はなりぬ 玉かきる ほのかに見えて にし子ゆゑに
恋苦くるしいて こんなせたで ちらと見て かして仕舞しもた あの児の所為せいで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九四)
心には 千重ちへに思へど 人に言はぬ が恋妻を 見むよしもがも
 心秘め 胸いっぱいに 思うてる わしのあの児に どしたら逢える》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七一)
妹があたり 遠く見ゆれば あやしくも れは恋ふるか 逢ふよしなしに
《あの児いえ 遠く見えてる それだけで 胸ときめいた 逢えもせんのに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇二)
たまさかに 我が見し人を 如何いかならむ よしをもちてか また一目ひとめ見む
偶々たまたまに 見掛けたあの児 今度また 見る切っ掛けが いもんやろか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九六)
玉くせの 清き川原かはらに みそぎして いはふ命は 妹がためこそ
 清らかな 川原に出かけ 身ぃ清め 命祈るん あの児のためや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇三)


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家待・変そして因幡へ編(13)いや重(し)け吉事(よごと)

2012年01月13日 | 家待・変そして因幡へ編
【掲載日:平成24年1月13日】

あらたしき 年の始めの 初春の
        今日けふ降る雪の いや吉事よごと




明けて  天平宝字三年(759)正月
昨夜ゆうべからの雪が 見事に積もった
新春の朝日に えている
家持は 憂鬱ゆううつであった

 もう我々の時代は終わったのか
大伴 はこの国では
 のない氏族に成り下がったのか
 金村・狭手彦さでひこ以来の
もの のふの大伴は
どこ へ行ったのか
 ひな国守こくしゅごときに 留まってなるものか)

あらたしき春 迎えたというに
出て くるのは ぐちばかり

憂憤ゆうふんを押し殺して 
新年 の朝賀に臨む
賀を済ませてのうたげ
郡司ぐんじの面々が居並ぶ
み国守 家持のはからい
 は 歌会で始まる

それぞれ 
旧年 の内に精進した
 れこそはを披露する
いずれ の歌も
新年の迎えを寿ことほぐものだ
朗々 たる歌声の響くなか
家持 は推敲を重ねていた
順はめぐ
最後に 国守である家持がうた
列する 人々は
緊張のうちに耳をそばてる

あらたしき 年の始めの 初春の 今日けふ降る雪の いや吉事よごと
新年しんねんと 立春はつはる重なり 雪までも こんなえこと ますます積もれ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四五一六)

年始 に立春の重なるめでたさ 
新雪 の清らかさ
降る 雪を思わせる「の」の繰り返し
ますます積み重なれと吉事よごとの寿ぎ
 
感嘆 のどよめきが静かに広がった

ひとり家持は 鬱然うつぜんたる思いでいた
(あらまほし吉事よごと か・・・)

数々の 歌停止ちょうじ
その時々 わけ無しとしないが
つい に 家持の歌作り
因幡の雪に うずもれる 

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家待・変そして因幡へ編(12)相(あひ)か別れむ

2012年01月10日 | 家待・変そして因幡へ編
【掲載日:平成24年1月10日】

秋風の 末吹きなびく 萩の花
        ともに插頭かざさず あひか別れむ




梅の花に代え 馬酔木あしびが 庭をいろどっていた
同じく 中臣清麻呂きよまろが屋敷
今日も こうしん派の集いうたげが 持たれていた

風物を楽しみ 景をみ 花を
風雅 に遊び 歌に結ぶ
これ 
政界の傍流ぼうりゅうに追いやられ
主流派の目を うかがいながらの宮仕え
不安からの 逃避む無きわざ

鴛鴦をしの住む 君がこの山斎しま 今日けふ見れば 馬酔木あしびの花も 咲きにけるかも
鴛鴦おしどりが んでる庭を 今日見たら 馬酔木あしびの花も 咲いとおるがな》
                         ―三形王みかたのおおきみ―(巻二十・四五一一)

池水に 影さへ見えて 咲きにほふ 馬酔木あしびの花を 袖に扱入こきれな
いけみずに 影をうつして 咲き誇る 馬酔木あしびの花を そでき入れ
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四五一二)

いそかげの 見ゆる池水 照るまでに 咲ける馬酔木あしびの 散らまくしも
《磯景色げしき うつす池水 輝かせ 咲いてる馬酔木あしび 散らすんしな》
                         ―甘南備伊香かんなびのいかご―(巻二十・四五一三)

馬酔木あしび咲く庭 
何時いつしか 春のおぼろは 更けていく

天平 宝字二年(758)六月十六日
家持 に 突如の任
因幡いなばこくしゅ
上国じょうこくではあるが ちゅうべんとしては 左遷
奈良 麻呂の変 家持に及びしか

七月五日 大原今城いまき
家持 送別酒宴うたげ
集いし旧知とも 飲み うたい 交歓こうかん尽くすも
別れの酒は にが

秋風の 末吹きなびく 萩の花 ともに插頭かざさず あひか別れむ
《秋風が 吹きなびかせる 萩の花 髪插頭かざさんで 別れんやろか》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四五一五)

秋風吹く 都門みやこもんくぐ
山陰 任地に向かう 家持
同じく 天離あまざかるひなとはいえ
越中へ向かいし気負きおいに比べ
辿たどる 道の気重さ 
一概 年齢とし所為せいばかりでない

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家待・変そして因幡へ編(11)御代(みよ)遠(とほ)退(そ)けば

2012年01月06日 | 家待・変そして因幡へ編
【掲載日:平成24年1月6日】

高円たかまとの 野のうへの宮は 荒れにけり
             立たしし君の 御代みよとほ退けば




わしての 唱和しょうわが続く中
 言うとなく 
話題は 昔のき日に移っていく
あれ は 天平十年(738)ころ であったろうか
聖武のみかどの 高円たかまど離宮遊行ゆうこう
橘諸兄もろえ様が 右大臣となり 政権を保たれていた
かれこれ  二十年か
それぞれに 若く 青雲の志 いだいておった
藤原広嗣ひろつぐ反乱このかたの 政局混迷
みやこ放浪の末の 廬舎那大佛るしゃなだいぶつ造立ぞうりゅう
徐々に力付けし 藤原仲麻呂なかまろ台頭たいとう
そんな 中 高円離宮は 
訪ねる人とて無く 荒廃こうはい
そして 帝崩御ほうぎょ 橘諸兄もろえ様他界 
ついに 変の勃発ぼっぱつ
藤原仲麻呂なかまろの権力完全掌握しょうあく

それぞれが 胸の去来きょらいを包んだまま
今は 荒れ果てた 高円たかまど離宮みやを偲ぶ

高円たかまとの 野のうへの宮は 荒れにけり 立たしし君の 御代みよとほ退けば
高円たかまどの うえ宮は 荒れて仕舞た あのかた御代みよ 遠なったんで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四五〇六)

高円たかまとの うへの宮は 荒れぬとも 立たしし君の 御名みな忘れめや
高円たかまどの 峰の上宮うえみや 荒れたけど お立ちの御名みなは 忘れられんが》
                         ―大原今城おおはらのいまき―(巻二十・四五〇七)

高円たかまとの 野辺のへくずの すゑつひに 千代ちよに忘れむ 我が大君おほきみかも
高円たかまどの 野辺葛蔓つるの 先々も 忘れるような 天皇おおきみちゃうぞ》
                         ―中臣清麻呂なかとみのきよまろ―(巻二十・四五〇八)

くずの 絶えずしのはむ 大君おほきみの しし野辺のへには しめふべしも
葛蔓つるの先 先々しのぶ 天皇おおきみの ご覧の野辺を 荒らしてなるか》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四五〇九)

大君おほきみの ぎてすらし 高円たかまとの 野辺のへ見るごとに のみし泣かゆ
天皇おおきみが 今もご覧の 高円たかまどの 野辺見るたんび 泣けて来るがな》
                         ―甘南備伊香かんなびのいかご―(巻二十・四五一〇)

しみじみ とした 空気漂う中
往古いにしえ偲ぶ 面々
思い出す  野辺吹く風 
今更ながら 胸み渡る

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家待・変そして因幡へ編(10)今日けふ)の主人(あるじ)は

2012年01月03日 | 家待・変そして因幡へ編
【掲載日:平成24年1月3日】

しきよし 今日けふ主人あろじ
         いそまつの つねにいまさね 今も見るごと




中臣清麻呂なかとみのきよまろ
庭に池 水めぐる岸辺に松 
梅花うめはなほころび 水面みなも揺らすは鴛鴦おしどり
こうしん派 つどうたげ さすがに 気の張りは無い

うらめしく 君はもあるか やどの梅の 散り過ぐるまで 見しめずありける
うらめしな 清麻呂あんたずるいで ここの梅 散って仕舞うまで 見させんといて》
                         ―大原今城おおはらのいまき―(巻二十・四四九六)
見むと言はば いなと言はめや 梅の花 散り過ぐるまで 君が来まさぬ
《見たいなと 言うたら見せた 梅の花 散って仕舞うまで んといてから》
                         ―中臣清麻呂なかとみのきよまろ―(巻二十・四四九七)

梅の花 をかぐはしみ とほけども 心もしのに 君をしぞ思ふ
《梅のの 清麻呂あんたかぐわし 遠いけど 心一途いちずに しとうています》
                         ―市原王いちはらのおおきみ―(巻二十・四五〇〇)

梅の花 咲き散る春の 長き日を 見れどもかぬ いそにもあるかも
梅花うめはなが 咲き散る春の 日暮れまで 見きん景色 この池磯辺いそべ
                         ―甘南備伊香かんなびのいかご―(巻二十・四五〇二)

君がいへの 池の白波しらなみ 磯に寄せ しばしば見とも かむ君かも
《池の磯 寄せる白波 しばしばや しばしば見ても 清麻呂あんた素晴らし》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四五〇三)

うるはしと あがふ君は いやに ませ我が背子せこ 絶ゆる日なしに
《素晴らしと 思う家持あんたよ 毎日も かよておいでや 日ぃやさんと》
                         ―中臣清麻呂なかとみのきよまろ―(巻二十・四五〇四)

磯の浦に つねむ 鴛鴦をしどりの しきあが身は 君がまにまに
いけきしに 鴛鴦おしどりの し思う 私の命 お心次第しだい
                         ―大原今城おおはらのいまき―(巻二十・四五〇五)

八千種やちくさの 花はうつろふ 常盤ときはなる 松のさえだを 我れは結ばな
《色々な 花はしおれる 常緑つねあおの 松枝まつえだ結び 弥栄いやさか祈ろ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四五〇一)
しきよし 今日けふ主人あろじは いそまつの つねにいまさね 今も見るごと
したわしい 主人あるじ清麻呂あんた 今のまま 達者でって 松の葉みたい》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四九八)
我が背子せこし かくしきこさば 天地あめつちの 神をる 長くとぞ思ふ
《そんなに うてくれるか 神さんに お願い頼み 長生き仕様しょうか》
                         ―中臣清麻呂なかとみのきよまろ―(巻二十・四四九九)

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