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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

古今相聞往来(上)編(37)神も憎ます

2013年03月29日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月29日】

あらそへば 神もにくます よしゑやし よそふる君が 憎くあらなくに




にくない人と 噂になった
あの 児噂が いろいろ多い
辛抱しんぼたまらん はばかめよ
 広げて それ使うんか

あらそへば 神もにくます よしゑやし よそふる君が 憎くあらなくに
《ムキなると ばち当たるう まあえか うわさの相手 嫌いでないし》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五九)
  
あられ降り とほ大浦おほうらに 寄する波 よしも寄すとも 憎くあらなくに
《まあえわ 言寄ことよせされて 仕舞しもたかて うちはあのひと きらちゃうから》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七二九)
                         (する→よしもす=他人が言い寄せる)

近江あふみの海 おき島山しまやま 奥まへて が思ふいもが ことしげけく
《心おく そっとこのわし 思てる児 なんでこんなに 艶聞うわさいんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七二八)
                                    (おきつ→おくまへて)

人言ひとごとを しげみと君を うづら鳴く 人の古家ふるへに 語らひてりつ
《噂て あんたあば うたけど 話しただけで 帰して仕舞しもた》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七九九)
  
ことくは 中はよどませ 水無みながは 絶ゆといふことを ありこすなゆめ
噂喧やかましンで ちょっとひかえや そやからて なったら あかんであんた》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七一二)
                             (水無みながは=流が絶えてる→絶ゆ)

あしひきの やまたちばなの 色にでて は恋なむを 人目ひとめかたみすな
《うちはもう 恋苦くるして顔に 出なんや 人目はばかん もうめよやな》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六七)
  
おほろかの わざとははじ 我がゆゑに 人に言痛こちたく 言はれしものを
《うちの所為せい ひどい噂を 立てられて えらいことした おもてんのんや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五三五)
  
の池の 小菅こすげを笠に はずして 人の遠名とほなを 立つべきものか
ちぎりまだ とらんうに 噂だけ えろう広げて なにんねんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七七二)
                    (笠に縫う=ちぎる)(遠名=遠くまで広がる噂)




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古今相聞往来(上)編(36)岩もと激(たぎ)ち

2013年03月26日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月26日】

高山の いはもとたぎち 行く水の おとには立てじ 恋ひて死ぬとも



噂立ったら 五月蝿うるさいけども
二人絆は 余計よけ強うなる
ひどい噂で 逢われはせんが
かたいで 心配しなや

かは千鳥ちどり む沢のうへに 立つ霧の いちしろけむな あひめてば
さわうえに 立つきり目立つ 二人して ちぎりしたなら 人目に立つやろな》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六八〇)
  
高山の いはもとたぎち 行く水の おとには立てじ 恋ひて死ぬとも
《山くだり 岩水音みずの 噂なぞ てんするで こいにしても》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七一八)
  
里人さとびとの 言寄ことよづまを 荒垣あらかきの よそにやが見む 憎くあらなくに
出来できてると みなうわさする 二人仲 ぃあるのんに 余所見よそみせならん》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六二)
  
浅茅あさぢはら 刈りしめ指して 空言むなことも そりし君が ことをし待たむ
加減かげんな 噂に立った あんたやが い寄り待つわ 嘘でもえで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七五五)
                     (しめは大事なところにう=原っぱにしめうのは意味がない)

あしたづの さわく入江の 白菅しらすげの 知らせむためと 言痛こちたかるかも
《この思い 知らせたろて 騒ぐんか 入江の鶴が 騒いどるに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六八)
                                    (白菅しらすげらせむ)

人言ひとごとを しげみと君に 玉梓たまづさの 使つかひらず 忘ると思ふな
《世の中の 噂あんまり ひどいんで 使いれんが 忘れたちゃうで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八六)
  
大船おほぶねの ともにもにも 寄する波 寄すとも我れは 君がまにまに
ともに あちこち寄せる うわさなみ ひどてもうちは あんたのもんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七四〇)




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古今相聞往来(上)編(35)梁(やな)打ち渡す

2013年03月22日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月22日】

阿太あだひとの やな打ち渡す 瀬を早み 心は思へど ただに逢はぬかも




噂広がる 一夜ひとよのうちに
あっという間の の変わり
一人 歩くも ひそひそチラリ
まして 逢うなぞ 思いも寄らず

人言ひとごとの しげると 逢はずあらば つひにや子らが おも忘れなむ
他人ひとの目を うかがいしてて わへんと あの児このわし 顔忘わすれんちゃうか》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五九一)
  
人目ひとめおほみ つねかくのみし さもらはば いづれの時か が恋ひずあらむ
他人ひとの目を はばかィを ごしてて 何時いつこのわしの がれむんや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六〇六)
  
佐保さほの内ゆ あらしの風の 吹きぬれば 帰りは知らに 嘆くぞ多き
佐保さほ里で 噂ひどうに 立って仕舞て かよい出来んと 嘆くいで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六七七)
                    (かえりはらに=行くことないと帰りはない=かよえない)

阿太あだひとの やな打ち渡す 瀬を早み 心は思へど ただに逢はぬかも
やな掛ける 川瀬かわせはようて 渡れんで 思いつのるが ようい行かん》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六九九)
                            (やな=川の瀬で魚をる仕掛け)
                         (瀬をはやみ=噂が立ってさまたげられて)

しなが鳥 猪名山ゐなやまとよに 行く水の 名のみそりし こもづまはも
とどろいて 流れる水か おとこに 噂だけ立ち われん妻や》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七〇八)
                                  (猪名山いなやまのみ)

牛窓うしまどの 波のしほさゐ 島とよみ そりし君は 逢はずかもあらむ
牛窓うしまどの 潮騒しおさい音が 響くに 噂立てられ うこと出来ん》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三一)




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古今相聞往来(上)編(34)浦に波立ち

2013年03月19日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月19日】

風吹かぬ 浦に波立ち なき名をも 我れはへるか 逢ふとはなしに


恋する 二人 隠れて忍ぶ
知られて仕舞たら 噂の餌食えじき
やっかみ噂  邪魔しの噂
 も葉もなしの からかい噂

紀伊の海の 名高なたかの浦に 寄する波 音高おとだかきかも 逢はぬ子ゆゑに
いもせん あのうわさ った 名高なたかうらの 波音なみおとみたい》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三〇)
  
あさ東風ごちに 越す波の よそにも 逢はぬものゆゑ 滝もとどろに
よそながら たことすらも いのんに 滝ごうごうの えらい噂や》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七一七)
                         (井堤いで越す波=外にあふれる→外目よそめ

風吹かぬ 浦に波立ち なき名をも 我れはへるか 逢ふとはなしに
《風しに 立つ波みたい われに 噂されたで たことないに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七二六)
  
我が背子せこに ただに逢はばこそ 名は立ため ことかよひに 何かそこゆゑ
めんこて うたうなら 仕様しょうないが 言伝ことづてだけで なんで噂や》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五二四)
  
いくばくも 降らぬあめゆゑ 我が背子せこが 御名みな幾許ここだく 滝もとどろに
《ちょっとしか うてないのに あんたの名 えらい広がり 降る滝水たきみたい》【比喩】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八四〇)
  
人間ひとまり あしかきしに 我妹子わぎもこを 相見あひみしからに ことぞさだおほ
他人ひと見てん すきにちらっと 垣根し 見ただけやのに 五月蝿うるさいこちゃ》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五七六)
  
人言ひとごとの しげりて 逢ふともや なほが上に ことしげけむ
けて 噂されん うたのに それでも世間 五月蝿うるさいこっちゃ》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六一)


古今相聞往来(上)編(33)我が木枕(こまくら)は

2013年03月15日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月15日】

へる紐 かむ日とほみ 敷栲しきたへの 我が木枕こまくらは こけしにけり




かよわぬ思い かかえる恋は
忍び待つほど みじめさ募る
あきら仕様しょうと 思うが出来ず
いだまくら 涙に濡れる

いへびとは 道もしみみに かよへども が待ついもが 使つかひぬかも
召使めしつかい 多数よけここの道 通るけど お前の使い 待つのにんで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五二九)
  
が恋ふる ことも語らひ なぐさめむ 君が使つかひを 待ちやかねてむ
がれてる 気持ち話して なぐさめに 仕様しょう思うに 使つかいもんわ》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四三)
  
かくだにも れは恋ひなむ 玉梓たまづさの 君が使つかひを 待ちやかねてむ
《こんなにも うちがれてる それやのに あんたの使つかい んのんかいな》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四八)
  
妹に恋ひ が泣く涙 敷栲しきたへの 木枕こまくら通り 袖さへ濡れぬ
《あの児い わし泣く涙 の枕 つとて袖まで 濡れて仕舞しもたで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四九)
  
へる紐 かむ日とほみ 敷栲しきたへの 我が木枕こまくらは こけしにけり
《結び紐 ほどかへん日ィ ごなって うちの木枕こまくら 苔えて仕舞た》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六三〇)
  
あひ見ては 千年ちとせぬる いなをかも 我れやしか思ふ 君待ちかてに
うてから もう千年か いやちゃうか 待たされ続け そううだけか》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五三九)
  
うつつには よしもなし いめにだに なく見え君 こひに死ぬべし
《死にやで 続けて夢に 出ててや 起きてて逢える 伝手つてないのんで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四四)
  
 問答】
が恋は なぐさめかねつ ま長く いめに見えずて 年のぬれば
《夢に出ん 日ィが続いて 年った 苦しいがれ いやないで》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八一四)
                          (夢に出ん=相手の思いが薄い)
長く いめにも見えず 絶えぬとも 片恋かたこひは やむ時もあらじ
《あんたこそ ゆめにもんと わりか うち一人でも 恋続けるで》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八一五)
 夢も出んやて もう終わりにしょ
  出んのあんたや 離しはせんで)




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古今相聞往来(上)編(32)山鳥の尾の

2013年03月12日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月12日】

あしひきの 山鳥やまどりの しだり尾の 長々ながながを ひとりかも




どんな威張いばって にしても
恋に落ちたら 男はみじ
日頃ひごろ言うこと 何処どこ行て仕舞しも
慣れん恋路に 狼狽うろたえばかり

大夫ますらをと 思へる我れを かくばかり 恋せしむるは しくはありけり
《男やと おもてるわしが なんのこと 恋に落ちるて どう仕様しょもないな》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八四)
  
面形おもかたの 忘るとあらば あづきなく をとこじものや 恋ひつつらむ
面差おもざしを 忘れる時が あるんなら あたら男が がれるもんか》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八〇)
  
つるぎ大刀たち 身にふる 大夫ますらをや こひといふものを しのびかねてむ
《身に大刀たちを びたこのわし 男やに えきれんのか 恋のごときに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六三五)
  
すがの根の ねもころいもに 恋ふるにし 大夫ますらをごころ 思ほえぬかも
心底しんそこに あの児に恋し 男やに しっかりごころ くして仕舞しもた》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七五八)
  
独り 寝る夜に 夜更けは長い
寝付き出来んで 転々てんてん
思うあの児が まぶたに浮かび
よるじゅうつうつ 夜明けが近い

あかときと かけは鳴くなり よしゑやし ひとりは けば明けぬとも
《朝来たと にわとりくが どでもえ ひとり寝るや 何時いつなと明けや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇〇)
  
思へども 思ひもかねつ あしひきの 山鳥やまどりの 長きこの
《忘れとこ 思うけどまた 思て仕舞う ひとり寝ならん この長いに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇二)
  
あしひきの 山鳥やまどりの しだり尾の 長々ながながを ひとりかも
《山鳥の 長いで この長い よるひとりで 寝んならんのか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇二 或る本)




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古今相聞往来(上)編(31)妹が踏むらむ

2013年03月08日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月8日】

かくばかり 恋ひつつあらずは あさに いもが踏むらむ つちにあらましを




がれ続けば 深刻しんこく募る
浦の海人あまなり 玉藻を刈ろか
 や磯・砂 成る方が増しや
いっそこの身が 果ててもえか

なかなかに 君に恋ひずは 比良ひらの浦の 海人あまならましを 玉藻たまも刈りつつ
《なまじっか あんたにがれ するよりか 比良ひら海人あまなり りしてるわ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七四三)
  
なかなかに 君に恋ひずは なはの浦の 海人あまにあらましを 玉藻たまも刈る刈る
《なまじっか あんたにがれ してるより なわうら海人あまに 成ってろ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七四三 或る本)
  
かくばかり 恋ひつつあらずは あさに いもが踏むらむ つちにあらましを
恋焦こいこがれ し続けてんと 朝晩に お前む土 成ったしや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六九三)
  
白波の 来寄する島の 荒磯ありそにも あらましものを 恋ひつつあらずは
《この気持ち がれ続けて 嘆くより ごつい荒磯あらいそ 成ったしや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三三)
  
潮満てば 水泡みなわに浮かぶ 真砂まなごにも はなりてしか 恋ひは死なずて
《恋しいて 死ぬな思い するよりは 水泡あわ浮く砂に 成るえで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三四)
  
住吉すみのえの 津守つもり網引あびきの 泛子うけの 浮かれか行かむ 恋ひつつあらずは
がれ しつづけせんと 浮子うきみたい かれながれて んで仕舞しまおか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四六)
  
我妹子わぎもこに 恋つつあらずは こもの 思ひ乱れて 死ぬべきものを
《あの児恋い がれ続けて 生きるより この胸つぶれ 死んだしや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六五)

 つるぎ大刀たち 諸刃もろはうへに 行き触れて 死にかもしなむ 恋ひつつあらずは
《恋いがれ し続けてんで いっそこと 大刀たちに身投げて 死んで仕舞しまおか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六三六)




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古今相聞往来(上)編(30)いたぶる波の

2013年03月05日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月5日】

風をいたみ いたぶる波の あひだなく が思ふ君は あひ思ふらむか



恋に没入はまれば 他も見えん
寝ても覚めても 面影おもかげ浮かび
がれは 絶え間続く
気逸らすすべない 待つ身であれば

白栲しろたへの そでを触れてよ 我が背子せこに が恋ふらくは やむ時もなし
たがそで わし共寝てから あんたへの うちのがれは 休みなしやで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一二)
  
咲く花は 過ぐる時あれど が恋ふる 心のうちは やむ時もなし
《咲く花は そのうち散るが うちの恋 がれまんで 散るときないわ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七八五)
  
宮材みやぎ引く 泉のそまに 立つ民の やむ時もなく 恋ひ渡るかも
そまやまに 働く民は 休みなし ひっきりなしの がれやうちは》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四五)
  
あしひきの 山下とよみ 行く水の 時ともなくも 恋ひ渡るかも
《山の下 音響ひびかす水は 限りない うちがれんも 限りなしやで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七〇四)
  
庭清み 沖へ漕ぎる 海人あまぶねの かぢ取るなき 恋もするかも
《波うて 沖かじは 休みなし うちのがれも 休むないわ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七四六)
                          (波風がないと舟を進めるのは楫しかない)

酢蛾島すがしまの 夏身なつみの浦に 寄する波 あひだも置きて 我が思はなくに
夏身なつみうら 寄せる波は ぁ置くが 間きなしやで うち思てんは》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七二七)
  
風をいたみ いたぶる波の あひだなく が思ふ君は あひ思ふらむか
《風強よて 揺れるなみやで ぁなしに うち思てるが あの人どやろ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三六)
  
大伴おほともの 御津みつの白波 あひだなく が恋ふらくを 人の知らなく
御津みつ寄せる 波ぁなしや うちかても なし思うが 知らん顔やで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三七)
  
大海おほうみに 立つらむ波は あひだあらむ 君に恋ふらく やむ時もなし
《海に立つ 波かて一寸ちょっと 休むのに あんたがれん 休むないで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七四一)




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古今相聞往来(上)編(29)眉根掻きつれ

2013年03月01日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月1日】

めづらしき 君を見むとこそ 左手ひだりての 弓取るかたの まゆきつれ



おとずれ待って 女はれる
来る か来ないか 来ないか来るか
んはずないに んのは怪訝おか
もしや夜道で 変事なんかたか

夕占ゆふけにも うらにもれる 今夜こよひだに 来まさぬ君を いつとか待たむ
《今夜来る うらないが とんのに えへんあんた 何時いつ来るんや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一三)
  
大海おほうみの 荒磯ありそ洲鳥すどり あさな 見まくしきを 見えぬ君かも
《毎朝に 洲鳥すどりる 毎朝に 見たいあんたは 一向いっこんわ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇一)
  
ならべて 君をませと ちはやぶる 神のやしろを まぬ日はなし
《毎晩に させてしと 神さんに ねごうてるんや 日ごと夜ごとに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六六〇)
  
めづらしき 君を見むとこそ 左手ひだりての 弓取るかたの まゆきつれ
滅多めったん あんた来てし 願いして ひだりまゆき 待ってるのんに》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五七五)
                         (左手ひだりて大事だいじほう=「めづらしき」に対応たいおう

あしひきの やまさくらを け置きて が待つ君を れかとどむる
さくらを はなしして 待ってるに 何方どなたがあんた 引き留めてんや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一七)
  
待ちかねて 内にはらじ 白栲しろたへの 我が衣手ころもでに 露は置きぬとも
っとって あんたまだやが 家入はいらんで うちの袖口そでぐち 露で濡れても》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六八八)
  
高山に たかべさ渡り 高々たかたかに が待つ君を 待ちでむかも
背伸せのびして 首ごにして 待つうちは あんた出迎え 出来るんやろか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇四)
                         (たかべ〈小鴨こがも〉→高々たかだか

真袖まそで持ち とこうちはらひ 君待つと りしあひだに 月かたぶきぬ
《両袖で とこきよめて あんた待ち そうことる 月西のや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六六七)





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