ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその379-にっぽんぱらだいす

2019年09月05日 | 邦画
弾ける女性のパワー

昭和33年3月、売春禁止法に伴い、売春宿は全て廃業となった。
日本の遊郭文化の終了である。
私は年齢柄、売春宿には行ったことはないが、昔テレビでその当時を振り返った番組が放送しており、何とも粋な遊び場であったと聞く。
現在は風営法もひかれて、更にこのような商売は、ビジネスライクな男女関係になっている。
今回紹介する映画は「にっぽんぱらだいす」
戦後から売春禁止法に至るまでの、そこで働く女たちを題材にした映画である。
ストーリーを紹介しておこう。

終戦直後、疎開先から東京へ戻ってきた蔵本は、昔遊郭のあった「桜場」の焼け跡にたどり着く。
そこで蔵本は、一緒に疎開先から戻った遊女達と、桜場に遊郭を再現して、大いに発展させる。
しかし、蔵本にも悩みがあった。みなしごとして幼い頃に引き取った女性、光子。
彼女にも客を取らせたかったが、本人は頑なに拒んでいた。
そんな折、材木業で成り上がった老人紀伊国屋が訪ねてくる。
彼は光子に一目ぼれし、是非身請けしたいと蔵本に懇願する。
それを蔵本は光子に話すのだが.......

この監督、映画の撮り方は実に巧みで上手い。観て私は驚いた。
更にこの映画が、デビュー作ではないか。映画の作りの上手さは本物である。
恥ずかしながら、私はこの監督については無知で、監督のことを調べてみたが、戦後、喜劇を中心に撮っていたようである。
私は知らなかったのだが、戦後すぐに桜場では、GHQからの指令で、アメリカ人を相手にする「慰安所」として、アメリカ人専用の売春宿を作っている。
これは、日本史の裏歴史と言えるのではないか。
そしてそれも数年後GHQの命令で、性病防止と言うことで慰安所も閉鎖になる。
蔵本は、その後桜場に自分の売春宿「ハレム」を作り、大いに成功する。
一方、光子は、材木業で財を成した紀伊国屋に一目ぼれされ、初めて自分の体を彼に開く。
そんな光子は、頑なに桜場から出ることを拒み、桜場以外の土地には行ったことがなかった。
その後、昭和33年3月に売春禁止法が施行されることになり、ほとんどの桜場で働いていた遊女はトルコ風呂に移ることになる。
ここに300年続いた遊郭「桜場」はその歴史に幕を下ろすことになる。
そしてついにその日がやってきた、客たちが別れを惜しみ「蛍の光」を唄う中、光子は自らの人生に幕を下ろす。

なにかこう書くと湿っぽい映画に見られるが、この映画は、遊郭で働く逞しい女性のパワーが全開した、日本映画の隠れた傑作である。
女性の、女性による解放を謳った映画と見てもいいだろう。
観ていない方がいらっしゃったら、是非観ることをお勧めする。

1964年、日本製作、モノクロ、91分、監督:前田陽一