理解不能な撮影方法。
映画100年の中で、その技術は日進月歩、新しい手法が様々開発されている。
昔ウオン・カーウァイ監督の「欲望の翼」を観たとき、ラスト近くで、カメラが階段を上がってゆくシーンがある。
そのカメラの動きの流麗さに驚いた。多分当時の撮影技法で「コプターカム」と呼ばれる、ラジコンヘリコプターにカメラを取り付け撮影されたものと思しい。
いわゆる今で言う「ドローン撮影」の魁である。しかし当時は「どうやって撮影したのか」と自信疑問を持ったものだ。
今回紹介する映画は「1917」。
第一次世界大戦をテーマにした実話である。
ストーリーとしては、ごく単純で、フロントラインに攻撃中止の命令を、一等兵二人が自力で届けると言うものだ。(内一人は途中で死んでしまうが)
この映画の凄さは、ストーリー展開ではない。その撮影技術だ。
この映画の宣伝文句にもなっている「2時間1カット1シーン撮影」だ。
1カット1シーンと言うのは、一度もカットをかけず、次のシーンの始まりまで1台のカメラで撮影する方法だ。
日本映画では「溝口健二」が得意としていたものだ。
しかしせいぜいどの映画でも、この撮影方法は十数分程度もあればいいところで、2時間これを続けること自体無謀である。
私は最初からこのことに疑念を持ってこの映画と接触した。
そして、それが本当か、目を皿のようにして、私はこの映画を観た。
確かに、行けども行けどもカットがかかった形跡はない。常に1台のカメラで登場人物を追っている。
狭い道も、広い草原も、実に上手くカメラが回り込みながら、被写体をのがさない。
私はストーリー展開も上の空、その技術にあっけにとられた。
ただし、始まりから50分程のところで、一旦数秒間の暗転がある。カメラの前が暗くなって何も撮っていない状態があるのだ。
下世話な私は、ここで一旦カットがかかったのではと、推察している。
この映画の最大の見せ場は、兵隊が伝令を指揮官に届けるシーンだろう。
兵隊は真っすぐカメラに向かってはしってくる。カメラはその兵隊を真正面から撮る。
そのカメラは、常に一定の距離を保ち、ぶれることなく見事にそのシーンを撮り終える。
それも「レールショット」を使った気配がない。
想像に難くないが、人を後ろから撮るショットとより、前から撮るショットは遥かに難しい。
なぜなら、カメラマンが後ろ向きに、被写体を追わない限り無理だからだ。
ここまでくると、とても人間技ではない。
あとあとの楽しみで、この映画の撮影技法はまだ調べていない。マジックの種明かしを見るようでちょっと切ない気がするのだ。
監督は、サム・メンデス。
アメリカンビューティやロードツゥパーテションを作った名匠だ。
彼にとってもこの映画の製作は「賭け」だったのではないか。
その賭けに彼は見事に勝ち、素晴らしい映画を世に残した。
まだ観ていない方には、是非観ることをお勧めするとともに、決して予備知識を得ずに観ていただきたい。
きっと、その作りに驚かれるだろう。
2019年、イギリス、カラー、119分、監督サム・メンデス
映画100年の中で、その技術は日進月歩、新しい手法が様々開発されている。
昔ウオン・カーウァイ監督の「欲望の翼」を観たとき、ラスト近くで、カメラが階段を上がってゆくシーンがある。
そのカメラの動きの流麗さに驚いた。多分当時の撮影技法で「コプターカム」と呼ばれる、ラジコンヘリコプターにカメラを取り付け撮影されたものと思しい。
いわゆる今で言う「ドローン撮影」の魁である。しかし当時は「どうやって撮影したのか」と自信疑問を持ったものだ。
今回紹介する映画は「1917」。
第一次世界大戦をテーマにした実話である。
ストーリーとしては、ごく単純で、フロントラインに攻撃中止の命令を、一等兵二人が自力で届けると言うものだ。(内一人は途中で死んでしまうが)
この映画の凄さは、ストーリー展開ではない。その撮影技術だ。
この映画の宣伝文句にもなっている「2時間1カット1シーン撮影」だ。
1カット1シーンと言うのは、一度もカットをかけず、次のシーンの始まりまで1台のカメラで撮影する方法だ。
日本映画では「溝口健二」が得意としていたものだ。
しかしせいぜいどの映画でも、この撮影方法は十数分程度もあればいいところで、2時間これを続けること自体無謀である。
私は最初からこのことに疑念を持ってこの映画と接触した。
そして、それが本当か、目を皿のようにして、私はこの映画を観た。
確かに、行けども行けどもカットがかかった形跡はない。常に1台のカメラで登場人物を追っている。
狭い道も、広い草原も、実に上手くカメラが回り込みながら、被写体をのがさない。
私はストーリー展開も上の空、その技術にあっけにとられた。
ただし、始まりから50分程のところで、一旦数秒間の暗転がある。カメラの前が暗くなって何も撮っていない状態があるのだ。
下世話な私は、ここで一旦カットがかかったのではと、推察している。
この映画の最大の見せ場は、兵隊が伝令を指揮官に届けるシーンだろう。
兵隊は真っすぐカメラに向かってはしってくる。カメラはその兵隊を真正面から撮る。
そのカメラは、常に一定の距離を保ち、ぶれることなく見事にそのシーンを撮り終える。
それも「レールショット」を使った気配がない。
想像に難くないが、人を後ろから撮るショットとより、前から撮るショットは遥かに難しい。
なぜなら、カメラマンが後ろ向きに、被写体を追わない限り無理だからだ。
ここまでくると、とても人間技ではない。
あとあとの楽しみで、この映画の撮影技法はまだ調べていない。マジックの種明かしを見るようでちょっと切ない気がするのだ。
監督は、サム・メンデス。
アメリカンビューティやロードツゥパーテションを作った名匠だ。
彼にとってもこの映画の製作は「賭け」だったのではないか。
その賭けに彼は見事に勝ち、素晴らしい映画を世に残した。
まだ観ていない方には、是非観ることをお勧めするとともに、決して予備知識を得ずに観ていただきたい。
きっと、その作りに驚かれるだろう。
2019年、イギリス、カラー、119分、監督サム・メンデス