ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその110-西鶴一代女

2013年10月09日 | 邦画
圧倒される力強い傑作。

人間うまく行かないときはとことんどん底まで叩き落とされることがある。
人生様々である。
自分と他人の人生を比べ他人に嫉妬する人も少なくあるまい。
どん底まで叩き落された人生、果たしてそこで「希望」は持てるのか、あとは「どん底」から這い上がるだけの力を持っていれば幸福になれるのか。
自身そのことを考えることがしばしばある。
しかし結論はまだ出ていない。
今回紹介する映画は昨日このブログで紹介した日本映画三巨匠の一人「溝口健二」の作品「西鶴一代女」
である。
ストーリを紹介しておこう。
或る荒れ果てた寺に娼婦達が集まっている。
その中に主人公の老いた厚化粧をしてもその老いを隠せない娼婦がいた。
彼女は百姓が焚き火をしているところへ寺のそうから引きずり出され晒し者にされる。
彼女はいたたまれなく寺の羅漢堂へ入る。
そこに並ぶ仏像を見ながら彼女は自分の歩んできた人生を振り返りはじめる.......
時代設定は江戸時代ごろであろうか。
ここに描かれた主人公の女性はもともと御所づとめする裕福な家庭の娘だった。
しかし実らぬ恋をしたときから彼女の人生は転落する。
男たちに翻弄されながら彼女は必死に生きてゆく。
その過程を溝口健二は見事に力強く描き続ける。
彼の代名詞でもある「ワンシーンワンカット」の長撮り。
主人公を俯瞰で捕らえ彼女が旅を続ける姿を名がまわしでとったショットなどは彼の真骨頂であろう。
溝口健二は他にも「大阪(なにわ)エレジー」「祇園の姉妹」など男に翻弄されながも力強く生きてゆく様を描いた映画を撮っている、まるで女性に対する「自立」への応援歌のように。
溝口健二の評価は日本ではあまり高くないと私は想っている。
しかし欧州での評価は高い。
彼の懇親を込めたこの作品まだ観ていない方には是非観ることをお勧めする。
1952年日本製作、1952年4月日本公開、モノクロ148分、監督:溝口健二、ヴェネツィア映画祭国際賞受賞。