前回、F-15のキット化50年の話を書いたばかりでしたが、本ブログでしばしばご紹介しておりますドイツの玩具「プレイモービル」も1974年2月2日にニュルンベルクのトイフェアでお披露目されてからちょうど50年ということで、本国のSNSでも動画でお祝いとなっておりました。さまざまなジャンルのプレイモービルの人形たちが「初代」の人形をお祝いするというコマ撮りアニメになっていて、最後は一同で記念撮影という内容でした。
プレイモービルはドイツのジオブラ・ブランドスタッター社(ジオブラ社と本稿では略)の製品です。ジオブラ社はもともとプラスチック製品を得意としていて、戦後は電話機、水上スキー、フラフープ、子供の学習机などを生産していました。ところが、70年代に入ってオイルショックで会社の経営が厳しくなります。ここからのストーリーはNHKでやっていた「プロジェクトX」のような番組が彼の地であれば必ず取り上げられそうな話なのですが、同社の玩具デザイナー、ハンス・ベック氏がプラスチック製の子供のおもちゃとして小さな人形に着目しました。コンセプトを練り上げ、デザインし、パーツを決めていったそうです。目と口だけのシンプルな顔の表情も「子供が描く人の顔は目と口だけ描かれていることが多い」というところからヒントを得たようです。構想段階では特徴のスマイルだけでなく、怒った顔なども考えていたようです。また、脚も片脚ずつ動かすことも考えたようでしたが、結局そこまでのギミックとはなりませんでした。1974年のトイフェアに出品したところ、オランダのバイヤーが興味を示したことを皮切りに、短い間に人気商品となりました。類似商品が生まれて訴訟沙汰になったり、東欧チェコで似たような玩具(イグラーチェク)が生まれたりしています。
日本では早いうちからこの人形のあだ名「クリッキー」を用いた「クリッキー坊や」の名称で売られていたようですし、日本法人の「日本プレイモビル」が販売を行っていたこともありました。80年代には明治のスナック菓子のおまけだったということもあり、一定の年齢の方はそこで出会っているようです。エポック社や増田屋、アガツマといったおもちゃメーカーが代理店になっていた時期もありましたが、アガツマの撤退後しばらく代理店がいない時期を経て、最近ではホットトイズジャパンが輸入しているほか、ドイツから直輸入により売られている商品もあるようです。
私がプレイモービルを買うようになったのは2007年のことですから、さすがに初代の製品などは入手できることはなく、専門店のプレモランドさんなどで展示されているのを見た程度でしたが、中古品やどこから出てきたのか未開封の古い製品などを入手したことがあって、その中にはかなり古いものもありました。
初期の製品は腕と手は一体に、脚と靴の区別もありません。足の裏には「1974」、「geobga」の刻印があります。
5センチの子供サイズが登場したのも後になってからでした。手首が360度回転するようになりました。
さらには赤ちゃんも登場します。
髪型や服装などもシンプルなものが多かったのですが、現在はバラエティに富むようになりましたし、表情もさまざまになっています。ばらしにくく、頑丈さを売りにしていましたが、バラバラにばらした状態で売られている「Fi?ures」もあります。かつては「暴力やホラーはやらない。流行を追ったものは作らない」としていましたが、レゴほどではありませんが企業や映像作品とのコラボ(スタートレックからNARUTOまで幅広いです)もさかんに行われるようになりました。独自に映画も作られましたが、残念なことにレゴ・ザ・ムービーほど話題になりませんでした。
50周年記念でおそらく商品も出ることになりましょうが、私のところにあるのは30周年、40周年のものなどです。
30周年のゴールデン騎士。メッキパーツがふんだんに使われていますので、いつもはパッケージにしまわれています。
40周年の際の騎士セット。左が初代の復刻です。初期の製品群には工事、騎士、ウェスタンなどがあったようです。
足の裏には1974と入っています。金型、残っているのでしょうか。
ジオブラ社は1971年に人件費の安かった地中海のマルタに工場を建設し、以来人形はほとんどがマルタで生産されていると聞きます。ドイツをはじめいくつかの地にプレイモービルの世界を体験できるテーマパークもあります。私もマルタに行ったことがあり、工場見学をさせていただきましたが、とても近代的で大きく、従業員もいきいと働いている感じが見て取れました。ジオブラ社は現在、玩具とレチューザというブランドの植木鉢が主力のようです。デザイナーのハンス・ベック氏も、会社を玩具メーカーとして引っ張ってきたホルスト・ブランドスタッター氏も故人となっており、時代と共にラインナップなども変わっていくことでしょう。個人的にはちょっと昔のシンプルさが残っていた製品が好きでしたが、子供の好みの変化、さらには大人世代への訴求(スタートレックとかA-Team、ナイトライダーなどはまさにそうでしよう)でさまざまな製品が出るようになったとしても、あのスマイルと製品全体が持つ優しさのような部分は残ってほしい、と思います。
参考文献・「Playmobil The story of a smile」Felicitas Bachmann著
プレイモービルはドイツのジオブラ・ブランドスタッター社(ジオブラ社と本稿では略)の製品です。ジオブラ社はもともとプラスチック製品を得意としていて、戦後は電話機、水上スキー、フラフープ、子供の学習机などを生産していました。ところが、70年代に入ってオイルショックで会社の経営が厳しくなります。ここからのストーリーはNHKでやっていた「プロジェクトX」のような番組が彼の地であれば必ず取り上げられそうな話なのですが、同社の玩具デザイナー、ハンス・ベック氏がプラスチック製の子供のおもちゃとして小さな人形に着目しました。コンセプトを練り上げ、デザインし、パーツを決めていったそうです。目と口だけのシンプルな顔の表情も「子供が描く人の顔は目と口だけ描かれていることが多い」というところからヒントを得たようです。構想段階では特徴のスマイルだけでなく、怒った顔なども考えていたようです。また、脚も片脚ずつ動かすことも考えたようでしたが、結局そこまでのギミックとはなりませんでした。1974年のトイフェアに出品したところ、オランダのバイヤーが興味を示したことを皮切りに、短い間に人気商品となりました。類似商品が生まれて訴訟沙汰になったり、東欧チェコで似たような玩具(イグラーチェク)が生まれたりしています。
日本では早いうちからこの人形のあだ名「クリッキー」を用いた「クリッキー坊や」の名称で売られていたようですし、日本法人の「日本プレイモビル」が販売を行っていたこともありました。80年代には明治のスナック菓子のおまけだったということもあり、一定の年齢の方はそこで出会っているようです。エポック社や増田屋、アガツマといったおもちゃメーカーが代理店になっていた時期もありましたが、アガツマの撤退後しばらく代理店がいない時期を経て、最近ではホットトイズジャパンが輸入しているほか、ドイツから直輸入により売られている商品もあるようです。
私がプレイモービルを買うようになったのは2007年のことですから、さすがに初代の製品などは入手できることはなく、専門店のプレモランドさんなどで展示されているのを見た程度でしたが、中古品やどこから出てきたのか未開封の古い製品などを入手したことがあって、その中にはかなり古いものもありました。
初期の製品は腕と手は一体に、脚と靴の区別もありません。足の裏には「1974」、「geobga」の刻印があります。
5センチの子供サイズが登場したのも後になってからでした。手首が360度回転するようになりました。
さらには赤ちゃんも登場します。
髪型や服装などもシンプルなものが多かったのですが、現在はバラエティに富むようになりましたし、表情もさまざまになっています。ばらしにくく、頑丈さを売りにしていましたが、バラバラにばらした状態で売られている「Fi?ures」もあります。かつては「暴力やホラーはやらない。流行を追ったものは作らない」としていましたが、レゴほどではありませんが企業や映像作品とのコラボ(スタートレックからNARUTOまで幅広いです)もさかんに行われるようになりました。独自に映画も作られましたが、残念なことにレゴ・ザ・ムービーほど話題になりませんでした。
50周年記念でおそらく商品も出ることになりましょうが、私のところにあるのは30周年、40周年のものなどです。
30周年のゴールデン騎士。メッキパーツがふんだんに使われていますので、いつもはパッケージにしまわれています。
40周年の際の騎士セット。左が初代の復刻です。初期の製品群には工事、騎士、ウェスタンなどがあったようです。
足の裏には1974と入っています。金型、残っているのでしょうか。
ジオブラ社は1971年に人件費の安かった地中海のマルタに工場を建設し、以来人形はほとんどがマルタで生産されていると聞きます。ドイツをはじめいくつかの地にプレイモービルの世界を体験できるテーマパークもあります。私もマルタに行ったことがあり、工場見学をさせていただきましたが、とても近代的で大きく、従業員もいきいと働いている感じが見て取れました。ジオブラ社は現在、玩具とレチューザというブランドの植木鉢が主力のようです。デザイナーのハンス・ベック氏も、会社を玩具メーカーとして引っ張ってきたホルスト・ブランドスタッター氏も故人となっており、時代と共にラインナップなども変わっていくことでしょう。個人的にはちょっと昔のシンプルさが残っていた製品が好きでしたが、子供の好みの変化、さらには大人世代への訴求(スタートレックとかA-Team、ナイトライダーなどはまさにそうでしよう)でさまざまな製品が出るようになったとしても、あのスマイルと製品全体が持つ優しさのような部分は残ってほしい、と思います。
参考文献・「Playmobil The story of a smile」Felicitas Bachmann著